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僕らの上に降る雪は(最遊記・八戒)


雪が降っています。ジープもこれでは走れません。
この宿に足止めになってから、二日が経ちました。
悟浄の吸う煙草の煙を逃がす為に、僕は窓を開けました。
「うー、さみー」
悟浄は肩をすくめました。
「貴方が閉め切った部屋で煙草を吸うからですよ」
「ワリ」
そう言いながら又煙草に火を点ける、しょうがない人ですね、悟浄は。

煙の苦さが、あの雪の日の苦い記憶を思い出させました。
耶雲さん・・妖怪の子供達を守ろうとして殺してしまった人。
あんな風に中途半端に正気でいるのは、何と残酷なのでしょうか。
そう思いながらも・・僕らも妖怪なのですから。
たとえ今は平気でも、いつ負の波動に侵されてしまうか。

「いっそ狂ってしまえるなら、その方が良いかもしれませんね」
そうすれば、哀しい事も辛い思い出も忘れてしまえるから。
「オイオイ、何よ、いきなり」
「雪が・・」
悟浄もそれを思い出したようでした。
「アイツは、あれしか出来なかった。それはどうしようもねーよ」
両手を頭の後ろで組んで、椅子の背にもたれ、悟浄はテーブルの上に足を投げ出しました。
「俺は狂いたくねえな。可愛い子ちゃんを口説けなくなるだろ?」
「あはは、もうとっくの昔に女狂いになっていましたね」
「なによ、それ」
たあいない会話の間も雪は降っています。

僕らの旅はまだ続きます。
過去に置いて来た思い出は忘却というベールに覆われ、僕らはしばしそれを忘れたふりをします。けれども捨てて来てしまったわけではないのです。この雪の下に街があるように。僕らは旅で出会った様々な出来事を胸の奥に抱いたまま、西へ向かって行くのです。

悟浄、もしも僕が狂ってしまったら、貴方が殺して下さいね。
貴方の手で、この僕を・・・







05.12.16
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