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この背中に背負いしモノは(最遊記・悟浄)



「貴方が止めて下さいね」
俺の手を振り切って、アイツは少し微笑んだ。

カフスが手から地面に落ちた。膨れ上がる妖気がアイツの姿を変貌させていく。正気のねえ悟空を止めるのにこれしか手はないと、アイツは最初っから自分を賭けてたに違いない。だからバカ猿のアレをはずしたんだ。八戒はそーゆー奴だ。

どしゃぶりの雨の中で「殺してくれ」という目で俺を見た。緑の瞳が俺を見ていた。大切なモンなんて無い俺だった。だから背負っちまった。お前を・・。生きるなんざ、半端な俺にはたやすい事だったが、それだけだった。マジに生きるって事は前に進むって事だと俺はお前に言いたくなった。この俺がだぜ?

雨の中、ヤバイ奴等に殺されかけてる俺の前に「傘を届けに来た」と言って現れたお前。今度はお前が俺を救った。その時から俺達は互いを背負っちまった。前世からの因縁だか何だか知らねえが、確かな事はそれだけだった。この背中の重みだけだった。旅へ出ようが何があろうが、互いを背負ったままで俺達は進んでいった。

あの砂漠で三蔵を助けようと自らの制御をはずしたバカ猿。それを止められなかった事を悔やみ、その事が悟空を苦しめた事を嘆いていたアイツ。そのアイツが今日は俺に言った。

「もし僕が暴走したら、その時は貴方が止めて下さいね、悟浄」

俺にはお前を止められる強さはねーんだよ。それを嫌という程知っているお前が、なんで俺に頼むんだよ。それも「すみません」て・・それがお前なんだ。お前は何でも解っているようで計算しているようで、本当は最後には目をつぶっちまう奴なんだ。だから・・俺はお前を雨の中に置き去りに出来なかった。

覚悟はしてたって、そんな訳、ねーだろ。俺はいつだって臆病な卑怯者さ。殺されるのは俺の方だ。そう解っていても俺はお前を止めようとする。答え切れない信頼の重みに押しつぶされたとしても、俺は・・お前を止めようとするだろうよ。お前はそれを知っている。知っていて・・お前らの戦いの速さが、俺にはもう追いきれねーよ。それでも・・

雨が降りそうな空だな・・
湿った煙草はうまくねーけど、無いよりはマシなんだよ。
無いよりは、な。

そうよ、だから俺はここで見ていてやるさ。
お前の選んだやり方を。




06.03.02
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