事件簿へ直行


独白
「探偵」でも「便利屋」でもない男。
「職業は」と訊かれたら、わかり易いから「探偵」と答えている。調べる目的や手法からは「探偵」業に類するが、 「あとはご自分でどうぞ」とはしないところが決定的に違う。だから、部外秘の「調査報告書」なんて面倒なものは作らないし出さない。その点で「調査探偵業」には属さず、従って私は「探偵」ではない。困っている事を解決するまで、或いは、納得するまで丸ごと引受けるから「探偵」ではなく「便利や」かもしれない。しかし、私は、それほど便利には動かないから「便利屋」とも言えないだろうな。。




平和主義者で社会正義の実践者ばかりだったら、680もの罪名を発明して人間を裁きにかけようとする法律は博物館行き、執行機関も無用の長物になる。探偵と弁護士は廃業、警察、検事、裁判官はごっそりリストラされるから本物の自由と平和が実現するな。賢人会議のアピールのように、この種のユートピア幻想には世界中が寛容だ。世界中の人たちがそれを望んでるからである。

現実は・・・そんな無駄な話はやめる、現実を見て欲しい。

犯罪発生件数は年280万件で高止まりしていて最早増加傾向にブレーキがかかった。以後、減少に向かうだろう。冗談言うなといいたいね、これは1つには捜査能力の限界の裏返しで、表れた数字の安易な解釈に過ぎない。実数とは思えない。例えば、「明白なる結婚詐欺」にあったマヌケな男がいた、その男にとっては多額の被害なので警察に訴えたところ「話し合ってお金返してもらいなさいよ」と追い返された事件があった。警察が忙しすぎる事は間違いない。事件性が希薄な場合は取り上げてなどいられないのだ。おかげさまで引き受けることになったこの事件は、私が交渉して取り返したから一部始終わかっている。明らかな詐欺罪を構成する事件だった。だから相手はせっかく手に入れた金をあわてて返したんだ。わかっててやってるということだ。

もう一つ、
知人に「通帳と判子」を持ち出され14万円無断で引き出されたので弁護士に相談したところ「微罪だからね」と笑われたケースもあった。「古本」を盗んで死んだ少年もいたというのに。
これも犯罪統計には加えられていない。治安がどうのというほどのモノではないからメクジラ立てることも無いが「減少傾向」なんて平気で公表すると気を緩めたために「犯罪被害者」になってしまう人が増えては困るということだよ。
統計に反映されない「犯罪」はともかく、日常のトラブルに至っては、数字の問題でなく自殺者の数から想像できるように事情の深刻化を体で感じるほどだ。

全国に20万人?、専業だけで3万人もいるといわれる探偵がますます増えるだろう。なぜなら、法律とその執行機関が扱うことの出来ない又は扱わないトラブルが頻発してるからである。だから探偵が増えると言うのは勿論冗談だが、相談内容や受件記録を観れば冗談も言いたくなるほどだ。

私の役目は、目指す相手に直に接触したり、裁判所を活用してトラブルを解決するシナリオを作って実践することにある。言ってみれば仕上げ職人のようなものである。
そんな役目柄、トラブルの原因や当事者双方の心理の深層に触れる機会が多い。何ともたわいない揉め事だ。そう、紛争の元なんて実に些細な出来事である事がほとんどだ。だから、だれでもちょっと注意すれば他人とのトラブル無しに済ませられると思う。

例えばこんなことがあった、車を洗った水が道のくぼみに溜まって凍ったために隣の爺さんと家族の平和な生活を一瞬で奪ってしまった出来事である。その爺さんは二度と自分の足で歩けなくなったからだ。車を洗った若者にどんな罰が下されるだろうか?重大な過失があったと看做されたとして、被害者の家族が運が悪かったんだと納得するだろうか?法律とその執行機関に果たして被害者が承服するような救済ができるだろうか?その町の自治会の世話役に何が出来るだろう? この事件は自治体や町会全体を巻き込んだ騒ぎになったが、道義上の責任もないはずの若者の親が全面的に賠償を認めたから納まったものの、もし、力のある親がなくて若者の全財産がローンのたっぷり残った車1台に過ぎなかったら?その上身軽な若者なら行方をくらますこともあるだろう。被害者の家族に何が出来るだろう? 警察は協力するだろうか。出来ないはずだ。ほとんどの場合やられ損になる。

思い悩んだ家族は、探偵なら手を貸してくれると知ったら、探偵事務所を探して相談に行くかも知れない。探偵が最後の選択ということになる。探偵ならせめて相手を見つけ出すところまではやってくれるだろう。それ以上のことは出来ないだろうが、些細な出来事が探偵を頼らざるを得ないほど深刻な事態を招ねく事例の1つである。

交通事故のトラブルにはこの種の相談が実に多い。しかし、年間負傷者120万人、死者重傷者3万人の「交通戦争」だからやむをえない。ハゲタカの介入を避けるため法律のガードが厳しく、探偵の出る幕なんてほとんどない。損保会社は1円でも払いを少なくするために、法を味方に社内ルールを鎧に、加害者ごと守りを固める。早期の決着を図るために泣き言など聞いてる暇がないからである。法律がその冷淡な仕打ちをみとめているからだ。被害者の無念さは経験あるものなら誰でも知っているはずだ。悔しいが全て1冊のマニュアルで片付けられ情念の入る隙などない。それでも月光仮面のように頑張る探偵もいるが果たして依頼人のためになっているかどうかは定かでない。

私が受けた相談や実際に扱った事件、日常誰にでも起こりうるトラブルを、依頼人と交わした「対話」で紹介してみたいと思う。
たまたまトラブルを抱えてしまった人がこの「対話」のどれかに出会い、役に立ったと思ってくれれば書いた甲斐があったということだ。余計な話かも知れんが、老人パワーが叫ばれる時代だというのに、子供や町の防犯をかって出る気骨ある老人のなんと少ないことだろう。探偵通信(12月から便利屋通信と変更)で、自警団を結成しろと繰り返し呼びかけている。公園のベンチに座ってるだけでいいんだとね。さっぱり反応なしさ。だからいじめが増え、小悪党が増えるから探偵も増えるんだ。とは言い過ぎか。


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