1月5日

    

セレスの検疫



成田からわが家へ

 

1月5日、午後3時半。無事飛行機は成田空港に到着。私とセレスは、地上職員の誘導で、まず、動物検疫のカウンターへ向かいます。
 実は、現在狂犬病の発生が無い日本では、犬が入国する際の検疫は大変厳しいのです。 まず、輸出国の獣医さんの健康証明書、1年から1ヶ月前までに打った狂犬病の予防接種済み証明書と、それらを輸出国の政府機関が証明するという書類を揃えなければなりません。
 そして更に、その犬は、検疫所で15日間係留され、狂犬病の恐れが無い場合入国する事ができるのです。
 けれどこの係留については、盲導犬の場合、使用者の生活権を重視し、自宅係留という措置がとられています。
 私達はこの際、犬を置く家や部屋の写真と最寄り駅から家までの詳細な地図を検疫所に提出し、毎日の健康状態を調査票に記入し(項目は沢山ありますが、全て異常無しなので、数字の1をひたすら記入します)、1週間後には検疫所に電話で中間報告をし(2年ほど前までは検疫所まで行っていました)、最終日には検疫官の訪問(やはり以前はこちらから行っていました)による最終検査を受けなければなりません。このように書くと自宅係留も大変そうですが、実際は書類上の制約だけで、生活上は全く拘束は無いので問題ありません。
 何より、輸出国、つまり私にとってはスペインでの書類の作成が、これまで私の大きな負担になっていました。
 狂犬病の予防接種済み証明書は、日本で出国前に提出した物が有効ですが、それにしてもスペインで証明してもらうためには、日本で半年以内に予防接種を打っておき、それをスペイン大使館でスペイン語に訳し証明してもらっておく必要があります。
 獣医さんに行くのは、これまでは友達やONCE(スペイン盲人協会)のソーシャルワーカーに予約してもらい、当日も一緒に行ってもらったので、スムーズに行きましたが、旅の途中で単独で行くとなると、大変だと思います。
 そして最も大変なのは、政府の機関による証明です。スペインでは農林水産省にあたる機関にこのような証明をする部署があり、その事務所は、日本のように国際空港や国際港にではなく、各県の県庁所在地にあります。田舎町の好きな私には、少ない日数の旅行で、県庁所在地をルートに入れるのも至難の業でした。
 そして、やはり事務所も、友達やONCEの人に一緒に行ってもらいましたが、そう言った証明を必要とする国はごく少ないので、そんな書類はいらないはず、と作ってもらえなかったり、あちこちの部署をたらい回しにされたり、バカンスシーズンで担当者が休みでもめたりと、殆どスムーズに行きませんでした。 そんな訳で、休みが長く取れない冬の旅行では、一昨年まではセレスを連れて行く事ができませんでした。
 ところが、この法律に、もし輸出国で健康に関する政府機関の証明が取れなかったら、係留期間を30日に延長する、という規定があったのです。盲導犬の場合は自宅係留の期間が延びる訳ですが、これは特に問題ではありません。
 この事を知ってから、私はスペインでの検疫の書類の作成もやめてしまいました。そしてこの冬も、セレスと一緒に、静かなアンダルシアの町を旅する事ができたのです。
 検疫所に、出発時に帰りの飛行機の日時を伝えておいたので、検疫のカウンターで書類を準備し、待ってくれていました(自宅の写真や地図は、以前の物を使ってくれました)。また、私がスペインで書類を作って来ないという事も想定していたようでした。書類に付いての説明を受け、幾つかの書類にサインをして、ここでの手続は終わりました。
 入国審査を終え、スーツケースを宅配便の窓口に預け、ちょっと建物の外に出てセレスのトイレをさせた後、地上職員は京成電車の改札口まで送ってくれました。
 スカイライナーで日暮里へ。JRで池袋へ。この辺になると、セレスは「私の庭よ」というように、足どりも悠々としてきます。
 そして、私鉄とタクシーを乗り継ぎ、よる7時過ぎ、わが家に到着しました。
 セレスは、ハーネスをはずすと、玄関に出てきた母に何度も飛びつき、頭を床にこすりつけてごろんごろんと転がり、服を脱がせる事もできないほどに、喜びを体中で表していました。    

終わりに

 
つたない旅行記を最後まで読んで下さってどうもありがとうございました。
 
最後に幾つか事後報告をします。 

年末に日本人のご夫妻と一緒に撮った写真は、1ヶ月以上経った今日も送られて来ません。奥さんが非常に熱心だっただけに、ちょっと拍子抜けです。 

マドリッドで会食の前に買った宝くじは、残念ながらはずれでした。でもスペインにピソを買う夢が捨てきれず、今度はグリーンジャンボを買いました。 

帰りのバラハス空港で私が飛行機のチケットと勘違いしてカウンターに出した紙は、行きに成田空港で宅配便で送った荷物を受け取った時渡された、帰りの宅配便用の伝票という事がわかりました。

そして2月7日、検疫官がセレスの最終検査のため家に来て下さり、セレスは、晴れて書類上も日本に入国する事ができました。 

ということで、この冬のアンダルシアの旅の報告を、これで終わりにします。 

                   

’98年2月

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