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午前4時半、パリ到着、ニューカレドニアからフランスにバカンスにやってきたという(これ、反対じゃないのですよ)子供達と、待合い室で暫く過ごし、ターミナルを移動。もちろんセレスのトイレは忘れません。
パリからのフライトでは、座席を3つもらい、セレスは椅子の下で横になる事ができました。
機内食を食べ、スペイン語を話せるフライトアテンダントとおしゃべりして、ちょっとウォーミングアップなどして過ごします。
また、ここでセレスに食餌をやりました。本当は、冬時間ではスペインと日本では8時間の時差があるので、スペインでは11時にやるのが理想的なのですが、この日はバスターミナルにいるだろうから、水の調達や、荷物の管理の事など、ちょっと難しいだろうと思ったからです。
旅行中は、魚釣りの時に餌を入れておくビニールバケツのような物を持ち歩き、そこに乾いた粒粒のドックフードと、たっぷりの水を入れてやります。家では、餌をボールに入れる音を聞いただけでそわそわするセレスも、機内では準備がすっかり整うまでおとなしく待っています。そして、オーケーの命令で、静かに食べ始めるのです。近くに座っていた乗客達が、みな、おいしそうに餌を食べているセレスを覗き込み、何かほっとしたようなため息をもらしていたのが印象的でした。
そして、2時間でマドリッド到着。
飛行機を降りると地上職員が誘導してくれ、まず荷物を捜してくれました。ところが、何故か私の荷物はこの飛行機には乗っておらず、まだパリにあるとのこと。愕然としてしまいました。もう一人、日本人の男性が、3つの荷物のうち1つが届いていないと訴えていました。私の荷物は、必ずその日の宿泊先であるネルハのパラドール(国営ホテル)に夕方までに届くようにするからと言うので、その言葉を信じるしかありませんでした。
また、ここで、本当はセレスの検疫があり、書類(半年から1カ月前までに打った狂犬病の予防接種済み証明書と、出発前12日以内の健康診断書を、スペイン大使館でスペイン語訳し証明してもらった物)を提出しなければいけないのですが、提示を求められたことが1度もないので、前回から準備するのをやめてしまいました。万が一書類の提示を求められたらと、ちょっと心配でしたが、今回も大丈夫でした。
バラハス空港のアナウンスに、スペインに来たという実感がわき、地上職員との会話の声も弾みます。 そして外へ出ると、表現のしようがないのですが、スペイン独特の匂いが私を包み、胸がきゅんとなってしまいました。セレスも大きく深呼吸し、このスペインの匂いを感じているようでした。
空港からバスターミナル
地上職員にタクシー乗り場へ誘導してもらいます。
「できれば前もってお札を用意しておいた方がいいわね。もし間違えても、ここの運転手は、ごまかしちゃうかもしれないから。ここから南ターミナルまでは二千から三千ペセタでしょう」と、心配してアドバイスしてくれました。
実際、コインはだいたい見分けられるのですが、お札は、特に新札になってからは、大きさにあまり差がなくなってしまったので、見分けるのが大変難しくなりました。財布の中に、高額紙幣から順に重ねて入れておき、だいたい、どのお札を何枚持っているかを覚えておくようにしているのですが、使っているうちに忘れてしまい、順番も乱れてしまうのです。
私は、前回の旅行で残しておいたペセタの中から、一応三千ペセタ、確認してもらい用意しました。
「オラ」(こんにちは)
「オラ」(こんにちは)
タクシーに乗り込み、運転手さんと軽く挨拶を交わします。
セレスは、座席の下に横になり、顎を座席の上におきました。これが、タクシーに乗った時の、セレスのおきまりのスタイルなのです。
お天気の話や、観光客のことなど、ぽつぽつ話しているうちに、20分くらいでターミナルに着きました。
料金は2200ペセタ。この運転手さんは、良心的な方のようです。
運転手さんは、マラガ行きの切符の窓口に、私を誘導してくれました。
ところで、マラガまで何故バスを選んだかというと、まず、以前、同じアンダルシア地方のグラナダへゆく時、飛行機の便数は確か1日2本と少なく、バスの方が便が良かったから。そして、知り合いの人が、マラガまでよくバスでゆくと行っていたからでした。
ところが、窓口の人は、「次のバスは午後の2時発です。いいですか?」と言うのです。日本を発つ前、自宅からこのバスターミナルのインフォメーションに問い合わせた時は、確か12時半ぐらいのがあり、2時間ぐらいなら待ってもいいか、と思ったのですが・・・。その時、私は今日が日曜日であることに気付きました。日曜日は、ウィークデイとは出発時刻が違う場合が少なくないのです。 一応切符は買ったものの、4時間も待つことを思うと、途方に暮れてしまいました。でも、かといって、これからまた空港に戻り、飛行機でというのもなんだかばかばかしいし、鉄道も、良い時間のがあるかどうか判らないし、やはりここまできてしまったからには、バスでゆくしか無さそうです。
4時間のウェイティング
ここで4時間を過ごすと決心した私は、まずベンチを捜す事にしました。
そこへ警備員がやってきて、近くのベンチまで案内してくれ、訊かれるままに、2時発のマラガ行きに乗ること、その前に昼食を取りたいことなどを話すと、「じゃぁ、12時半頃食堂に案内しましょう」と言って、去って行きました。
すぐ側に公衆電話があったので、何人かの友達に、今スペインに付いた事を知らせ、時間をつぶします。宿泊先のネルハのパラドールにも、到着が11時頃になると連絡しました。私は、昨夏グラナダで買ったテレホンカードを持っていたのですが、そこにあった3台の公衆電話は、みな、カードは使用できないのです。南ターミナルは新しくなったと聞いていたので、これはちょっと意外でした。
ここは、待合い室と違ったオープンスペースなので、長く座っていると、寒さが身にしみてきます。床に横になっているセレスにとっては、なおさらでしょう。こんな結果になってしまったことを、セレスに済まなく思いました。
12時半になるとさっきの警備員がやってきて、近くのセルフサービスの食堂へ私を案内し、そこのウェートレスにバトンタッチです。そのウェートレスは私と一緒にトレイを持ち、メニューを説明しながら、私の選んだ料理をトレイに乗せてくれます。私は、ロシア風サラダと鰯の酢漬け、それにデザート(何を食べたか忘れましたが)を頼みました。
一人ぼそぼそと昼食をとっていると、別のウェートレスが、若い女性を案内してきました。その人も全盲の視覚障害者で、2時発のセビージャ行きに乗るので、昼食を取りにきたところだと言います。
私達は、意気投合し、食べる間も惜しむようにおしゃべりしました。
彼女は、大学で哲学を勉強していること、今、軍人で仕事のためカナリア諸島へ行く彼をバラハス空港まで送ったところで、これからウェルバの自宅へ帰るところであることなど話してくれ、点字でお互いのアドレスを交換しました。
マドリッドからネルハ
2時ちょっと前、新しい友達と再開を約束して別れ、先ほどの警備員とバスのホームに向かいます。
そして、セレスのトイレを済ませ、私とセレスはマラガ行きのバスに乗りました。
ステップを上がったところで、「飲物は何がいいですか?」と聞かれ、ちょっと驚きました。そう、このバスは、飲物付き、トイレ付きなのです。
座席まで案内してくれた運転手さんは、椅子のリクライニングのしかたや、座席の脇に付いた、オーディオ設備の使い方を説明してくれます。
丁寧に説明してくれていると、出発時間を過ぎてしまい、乗客の一人からひやかしの声がかかり、バスの中は大爆笑となりました。
バスは、3時間を過ぎた頃、ハエン県の小さな町で小休止です。私もバスを降り、バルでミルクティーを飲みました。そしてバスに戻ろうとして、びっくり、
「どのバスに乗るのかな?ここには、マドリッド〜セビージャ・マドリッド〜カディス・マドリッド〜マラガの3台が泊まっているよ」と、近くの人が言うのです。と言う事は、さっき知り合った彼女も、きっと同じバルで休んでいたのだろうと思うと、何となくうれしくなりました。
夜10時、アップダウンの道を快走したバスは、マラガ到着。そして、1時間待ち、10時に出発したバスは、11時にネルハに到着しました。
ネルハのタクシー
バスを降りると、心なしか海の匂いがします。
このバスターミナルは小さく、閑散としていました。そして、タクシーもありません。 バスの運転手さんが、
「タクシーを呼んで来るから、ここで暫く待っていて下さいね」と言って、行ってしまうと、非常に心細くなりました。
暫くして、車が私達の前に泊まったので、ほっとして乗り込みます。
運転手さんは人なつこそうな人で、話が弾みます。と、
「ビールでも飲みませんか?」と言い出しました。
「・・・いいえ・・・」
「ホテルに着いたらすぐ寝ちゃうの?食事は?なんかつまんでビールでも飲みましょう」 確かに、私は夕飯をまだ食べていません。それに、ホテルに着いても、もうレストランやバルは開いていないかもしれません。着いたばかりの町を、こんな時間に一人歩きするのはちょっと気が進みません。正直言って、この運転手さんの誘いには、説得力がありました。でも・・・、やはり、なれなれしすぎるその人に付いて行く気にはなりませんでした。
タクシーは、すぐにパラドールに付き、運転手さんは私の手を取って、フロントへと案内してくれました。普通、私達に歩きやすいのは、腕に軽く捕まる形態なのですが、この運転手さんは、私の手をしっかり握り、自由にさせてくれず、うれしそうに鼻歌を歌いながら、手をもてあそんで歩いて行きました。(ああ、誘いをことわって良かった。)と、心から思ったのでした。
最初の夜
「予約してある者です。先ほど、遅くなるとお電話もしたのですが・・・。」
フロントでパスポートを提示しながらそう言ってみました。
「はい、ちょっと待ってて下さい」 コンセルジェはそう言った後、もう一人のコンセルジェ(?)とひそひそと話しています。
「あのぉ、この犬に何か問題がありますか?」
日本では、盲導犬を受け入れてくれるホテルは、まだ多くはありません。スペインでは、94年頃、盲導犬連れの客をことわったホテルが新聞に投書され、世論の攻撃を受け、それ以来、どのホテルもことわれない状況になっていると、以前聞いた事があります。それに、パラドールは国営なので、盲導犬を連れているからと言う理由で、ことわると言う事はないはずです。そして、それが、私がパラドールを宿泊先に選ぶ理由の一つでもあるのです。
でも、いつまでもひそひそと話しているので、私は、不安になって訊いてみたのでした。
「いいえ、その犬は、きちんと訓練を受けた犬ですから、なんの問題もありませんよ」
私はほっとしました。どうやら、私の予約した部屋はスウィートルームで、それに気付かなかったコンセルジェが、他の部屋は何処も空いていないので、困って長引いてしまったと言うのが真相のようです。そういえば、予約時に、「少し高い部屋しか空いてないけどいいですか?」と訊かれたのでした。
やっと確認ができ、サインをします。サインは、私は、定規などを上のラインに合わせて置いてもらい、それをガイドにして書きます。
それから、荷物が届いているかどうか訊いてみました。
「いいえ、何も届いていません」
なんという事でしょう。がっくりして、体から力が抜けてゆきました。
「万が一届かなかったら、これをホテルのコンセルジェに見せて、連絡してもらって下さい」と、マドリッドのカウンターで渡された書類を置いて、部屋へ向かいます。
部屋は、一度中庭に出て、芝生を歩いたところにありました。中廊下は無く、テラスからドアを開けると、もうそこは部屋でした。 セレスは、ホテルに着いた頃から緩く尻尾を振っていましたが、部屋に入ると、ちぎれる程びゅんびゅんふり、ハーネスをはずしてやると、私に飛びつきます。そして、頭を床に何度もこすりつけてひっくり返り、喜びを全身で表していました。
部屋を一巡しながら、中の設備を説明してもらいます。セレスも私の後から付いてきて、確認しているようです。
バスルームは迷子になるほど広く、洗面台が二つ、洗面台の隣にシャワー室、それに大きなバスタブがあり、トイレはもう1枚ドアを通った奥にありました。家具もとても豪華です。
電話・ごみ箱・電気のスイッチ・ミニバーの中身などなど、細かく説明してもらいました。
ほっとするとお腹が空いたことに気が付いたので、ボーイさんに、ボカディージョ(スペイン風サンドイッチ)と水の1リットル瓶をルームサービスに頼んでもらいました。が、ボーイさんが出て行って間もなくやってきたウェートレスは、
「もうキッチンの鍵がしまってしまい、コックも帰ってしまったので、食べ物はありません」と、水だけ置いて行きました。しかたなく、家から持ってきた揚げせんべいで夕飯にします。
そこへ、ノックの音。もう人が来るはずはないけれど、とちょっと不安に思いながらドアを開けると、「荷物、ありました!」と、ボーイさんの声。そっと荷物に触れると、それは確かに私の愛しいソフトケースでした。(ああ、良かった!)心からほっとしたのでした。セレスも寄ってきて鼻を突けて確認し、ほっとしたようでした。
暫くして、またノック!今度は、さっきのウェートレスが、
「鍵を開けてキッチンに入ったんです。ハムとパンだけですが、無いよりはいいと思って・・・」と、二切れの、ボカディージョのような堅いパンとハムを持ってきてくれたのでした。あの後、何とかして私に食べる物を持ってきてくれようと、奔走してくれた様子が伝わってきて、胸が熱くなりました。
そして、ベットに横たわると、家を出てから40時間近くにおよんだ長旅の疲れで、一気に爆睡してしまいました。セレスも、ベッドの脇のカーペットに横たわり、熟睡しているようでした。

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