独り言
(2)


ここでは、日々の生活の中のちょっとした出来事や、ふと感じたことなどを、つづってゆきたいと思います。


タイム・マシーンに乗って


99/11/30


 先日、昨年の春まで10年以上勤務していた職場に、久しぶりに所用で出張しました。
 そこは、バス2台を乗り継ぎ、家から50分ぐらいの近い距離にあり、いまの所のようなラッシュもなく、通勤は楽だったな、と思いながら、駅からのバスに乗ると、早ければ15分くらいで行けるはずなのに、道路が大渋滞で、倍以上の時間がかかりました。今の通勤の大変さばかりが気になっているけど、そういえば、いつもいつも、朝大渋滞に巻き込まれるので、かなり早めに家をでていたんだっけ、と、思い出します。

 バスを降りると、道には落ち葉が積もり、空気も澄んでいます。この辺は、埼玉県との県境で、緑が多いのです。都心のビルの中にあるいまの職場とは大きな違いです。あの頃は、駅から近い勤務先に憧れていて、自然に囲まれた良さに殆ど気付いていなかったのでした。

 来客用のスリッパに履き替え、事務所に挨拶をします。

 ここは、重い障害を持った方が、生活している施設で、この時間は、みな作業をしています。

 作業室に顔を出すと、席を立ってきてくれる人、立て板に水のように、近況を話してくれる人、ワープロの腕が上がったと報告してくれる人、声をかけると照れてしたを向いてしまう人、相変わらず憎まれ口を利いて気を引こうとする人などなど、みなあの頃と変わりなく、三者三様に、歓迎の気持ちを表してくれました。

 丁度転勤時に入所し、私がすっかり名前を忘れてしまった人も、私のことを覚えていてくれて、挨拶してくれます。

 間もなく休憩時間となり、廊下にでてきた人達は、セレスを取り囲んで、なつかしそうに話しかけています。

 きっとセレスも、いつもかわいがってくれた人達を、懐かしんでいることでしょう。

 そして私も、ここに入所している人達に、どれだけ励まされて仕事を続けてきたことか・・・、と思い出します。

 玄関を出る時、いつもいろいろお話した入所者の1人が、見送りに出てきてくれました。

 まるで、タイム・マシーンに乗って過去の世界を歩いたような、ふしぎな時間でした。




諏訪湖へのドライブ


99/11/23


 先日、いつもウォークの伴走をしてくださっているSさんと、ちょっと紅葉見物に諏訪湖へ行ってきました。

 朝8時、新宿駅で待ち合わせた私達は、首都高から中央高速へ。天気は最高!!これぞ正に遊び日和です。道路も、連休の谷間とはいえ、平日の月曜日のため、すいています。この時ばかりは、ウィークデーの週休も悪くはないな、と思いました。

 私はセレスと後部座席。セレスは、タクシーなどでは、ドアの方を向き、座席に顎を乗せて、我関せずといったポーズなのですが、この時は、私の膝に頭を乗せたり、前の座席の肘掛けに顎を乗せて、Sさんに甘えたりと、2人に加わっているようです。

 都心を離れ、郊外に出ると、景色はしだいに山がちになり、Sさんから、車窓の紅葉のさまを説明してもらいながら進みます。(とは言っても、今年はちょっと暖かいせいか、紅葉は、真っ赤、と言うより、錆朱色だそうですが)

 途中、八ヶ岳S.A.で小休止。芝生のベンチに腰掛け、木々のエキスをいっぱい含んだおいしい空気を深呼吸しました。

 11時過ぎ、諏訪湖畔に到着。小さな公園でひと休みして、水際に近づくと、さらさらと波音が聞こえ、そっと水に触れると、これが結構冷たいんです。セレスは、2・3口、飲んでいました。

 貸しボートやレンタサイクルをやっているお店を見付け、そこでまずお蕎麦やさんを紹介してもらい、信州蕎麦で腹ごしらえです。

和風の雰囲気を大切にしているそのお店の、お蕎麦のおいしかったこと!

 そして、先ほどのお店に戻り、タンデムを借りることにしました。ここで、一つ問題が生じました。そうです、セレスを連れては自転車に乗れないので、どこかに預けなければならないのです。
 自転車置き場に繋いでおく、と言うことも考えましたが、人の出入りが多く、心配です。そこで、先ほどの従業員に、お店の事務所の隅に置かせてほしいとお願いすると、最初は、幾ら訓練されていると言っても、飼い主と離れると、お客さんに何かするかもしれない。何かあった時にこちらとしては責任が持てない。責任者がいないので、私の一存では決められない。初めてのことで、扱いがわからない。
 などと言って、受け入れてくれません。

 「駅でも、JRがレンタサイクルをやっていますから、そちらへいらしたら」
 と、よその店に押しつけようとしたのには、呆れてしまいました。

 でも、ここで預かってもらえないと、私達は自転車に乗れないこと、この犬は訓練を受けていて、決して人に危害を加えないこと、何事も「初めて」を乗り越えなければ進まないことなどを話して、やっと承知してもらいました。

 さて、待望のタンデム自転車での湖畔めぐりに出発です。

 タンデム自転車とは、車輪は二つですが、サドルとペダルが前後にあり、動かないハンドルが後ろにも付いている、観光地にある2人乗りの自転車です。幼い頃から自転車が好きだった私は、このタンデム自転車で、自転車気分を味わっています。でも、一般の道路で乗れるのは、長野県だけ。他では、道交法で自転車の長さが規定され、公園やサイクリングロード以外では乗ることができないのです。

 波音を聞きながら、サイクリング・ロードを走ります。2人の息はぴったり。爽やかな風が頬を過ぎ、対岸の木々は真っ赤に色づいています。湖畔を1週すると18キロ余り、2時間程度と言うことでしたが、一部車道を走らなければならないということもあり、今回は「ガラスの里」を往復することにしました。

 30分ほどで「ガラスの里」に到着。そこで、20世紀初頭のガラス芸術家ルネ・ラリックの、当時としては斬新で、しかも奥行きのあるガラスアートを鑑賞しました。ガラス彫刻のような、触れる物には触ってみましたが、触れない物も、Sさんの説明を聞いていると、ガラスのふしぎな煌めきが、目に浮かんできます。

 先ほどの店に戻ると、セレスは、どんなに待ち遠しかったかといいたげに、尻尾をびゅんびゅん振って、喜びました。件の女性従業員は、相貌もすっかり穏やかに、「お昼のお蕎麦はおいしかったでしょう?」「湖畔を1週してきたのですか?」などと話しかけてきました。きっと、セレスが想像以上におとなしかったので、拒否したことが後ろめたくなったのではないでしょうか。

 続いてもう一つのお楽しみ、温泉を捜します。隣の茅野市に入って間もなく、プールと温泉に入れる、アクアランドという所を発見。そこで一風呂浴びることにしました。

 
 またここでもセレスを預けなければなりません。
 「温泉に入っている間、この盲導犬を預かっていただきたいのですが」
 受付の人は、
 「うぅーん、犬は中へは入れられないんだよね」と言います。
 「でも、この子は家の中で飼っていますので、外にはつなげないんです」というと、
 「あぁ、ここなら良いよ。ここに繋げば良いよ」
 と、男性従業員が、正面玄関から2・3段おりた、事務所の脇のスペースに、敷物を敷いてくれました。

 温泉は広くて清潔で、ジャグジーやサウナなどもあり、ゆっくり入れました。それに、美肌効果があるのか、肌がつるつるになるのです。

 お風呂から上がり、セレスの所へ行くと、セレスは大事にしてもらっていたようで、峠の釜飯の入れ物に、お水をもらって、リラックスして待っていました。

 私達は1日存分に楽しんで、爽やかな気分で、帰路に付きました。

 東京から車で2時間余りで、おいしい空気の中、こんなに楽しめる所があるなんて、感激でした。

 Sさん、ほんとに楽しい1日でしたね。どうもありがとう。

休日の楽しみ

                    
99/11/21


 夕べは友達と久しぶりに長電話してしまい、眠りについたのは深夜、そして、今日目が覚めたら、もうお昼を過ぎていました。

 今日は日曜日。久しぶりに特に予定がないので、家でのんびり過ごしています。

 ところで、休日には楽しみが二つあるんです。

 まず最初の楽しみは、朝食。仕事に行く日は、ご飯をしっかり食べて出るのですが、休日、それも特に出かける予定のない日は、パンと紅茶とスープ、それに果物と決めています。中でも、アールグレーの紅茶が楽しみなんです。

 幼い頃、コーヒーは刺激が強く、目に良くないから、と、禁止されていたため、割合紅茶を飲む機会の多かった私ですが、初めてアールグレーに出合ったのは、10年ほど前、奈良を旅行していた時でした。

 全盲の友達と、誘導ボランティアにお願いして、奈良の街を散策した時、森鴎外の別荘だったというところへ案内してもらったのです。

 表通りからちょっと入った静かな庭が、喫茶店になっていました。
 日除けのよし図の下にしつらえられたテーブルに腰掛け、ひと休み。そこで、手作りのケーキと一緒に出てきたのが、アールグレイ。ふんわり、でも頭の奥までしみこむような香りに、私は一時酔いしれてしまいました。

 それからはアールグレーが私の第1の嗜好品となりました。これをゆっくりと、香りを味わいながら飲んでいると、何かとっても幸せな気分になれるのです。


 もう一つの楽しみは、日曜日に限るのですが、アサヒ新聞日曜版の「ハーイ、アツ子です」と「いわせてもらお」を読むこと。「ハーイ、アツ子です」は、明るい奥さんアツ子さんとその家族の日常を表した4こま漫画で、「いわせてもらお」は、読者の日常の中の本の一こまの投稿記事なのですが、これらを母に読んでもらっていると、緊張がふっと解れて、とてもリラックスした気分になれるのです。

 近々、一人暮らしを考えている私ですが、一番つらいことは、これらの記事が、読めなくなってしまうことです。

 朝日新聞にはホームページがあり、「天声人語」や「一時」も含めて、多くの記事が掲載されていて、新聞を読めない私も、パソコンに取り込んで、音声で読む(聞く)ことができ、大変助かっていますが、今のところ、これらの記事は、出ていないようです


 さて、今週は、週休が変則な私は、3連休、1日多く幸せを感じられそうです。



Tさん、おめでとう!!


99/11/12



 「Tさんが、2頭目のアイメイトと、このあいだアイメイト協会を卒業したよ」
 そんなうわさを聞いて、私は、電話に飛びついていました。

 「エスターがね・・・、死んだの・・・!」
 半年前、アイメイト協会で同期だったTさんからそんな悲しい知らせがあってから、私は心の角で、Tさんのことが気がかりでしかたありませんでした。でも、電話をすると、どうしてもセレスの話になり、エスターを思い出させて、かえって悲しい思いをさせてしまうような気がして、連絡できずにいたのです。


 「この4日に卒業して、5日に鹿児島に帰ってきたの」
 久しぶりに聞くTさんの声は、あの時の、悲嘆にくれた声からすっかり立ち直り、とても明るく、いきいきしていました。

 「今度のレナは、とてもおとなしくてゆっくり歩いてくれるから楽なの。エスターの時は、私も家の周辺がよくわからなかったから、大変だったし、エスターにも苦労をかけたけど、今度は最初から順調なの」

 そんな話を聞きながら、私は、この半年間のTさんの心の奇跡―悲しみ・決意、そしてレナちゃんとの訓練の日々―を思い、胸がいっぱいになり、涙が溢れてきました。そうです、それは、いつか私も乗り越えなければならないであろう、大きな試練でもあるのです・・・。


 私が、東京に来ている間に連絡をくれなかったことをなじると、
「毎日あなたとセレスのことを思い出していたんだけど、忙しそうに飛び回っていると聞いて、会いに来てもらうのが申し訳なく思えて・・・」
との事。
気になって、あれこれ考えすぎて半年連絡できずにいた私と、同罪なのでした。

 「声を聞いていたら、会いたくなっちゃった。ほんとに、連絡すればよかった。レナとだったら東京に行けそうな気がするから、会いに行くからね」
 Tさんは、2頭目のアイメイトを得て、更に自信を深めたようでした。

 悲しみを乗り越え、レナちゃんと新たな出発を果たしたTさん、本当に、本当に、おめでとう!!




第九を歌おう


 99/11/8


 この9月、去年の冬に知り合った友達から、仕事関係の仲間の「第九を歌う会」への誘いの電話をもらいました。

 私は、以前から、参加したいと思いながらどうしても勇気が出なかったのですが、これはチャンス、と参加する決心をしました。

 そして、楽譜をボランティアの方に点訳していただき、練習用のテープを、昨年から参加しているその友達から借りて、環境はばっちり整いました。

 ところが、2回目の練習あたりからすっかり自信をなくしてしまいました。

 発生練習はびっちりだし、ドイツ語は以前ちょっとかじったから何とかなるだろうと思ったら大間違い!もうすっかり忘れてしまっていて、全然歌えません。それに、地域のコーラスに比べて進度が非常に早いのです。

 ただ、練習の前に新宿で友達ととる軽食が楽しみなのと、「絶対挫折させないからね」と言ってくれるその友達の言葉に支えられて、何とか練習に参加しました。

 そんな私ですが、アルトの先生は、全体練習の時よく隣へ来て一緒に歌ってくれ、「わからない所があったら、いつでもなんでも訊いてね」と言ってくださいます。

 それに、練習は、進度は速いものの、何度も同じ所をやってくれるので、少しずつメロディーを覚え、歌詞をメロディーに乗せられるようになってきました。

 そうなると、思いきり歌えるこの時間が楽しくもなってきました。

 前回の練習には友達は行けなかったけれど、一緒に参加している方達とお話しし、初参加の人達はみな大変なんだと言うこともわかりました。

 また、この間第九のCDを買い、初めてじっくり全曲通して聴き、第九のすばらしさを知り、意欲が湧いて来ました。

 今月中旬からは練習が週2会に増え、ちょっと大変ですが、12月19日のコンサート目指して、練習している仲間達と一緒にステージで一つの声をつくれるように、がんばろうと思うこの頃です。




クリスマス・コンサート


   99/10/27



 もう、10年以上前、知人が、柳貞子という方のスペイン歌曲のクリスマス・コンサートに誘ってくれました。当時は金子ゆかりのシャンソンに見せられ、スペインと言えばフラメンコしか思い浮かばなかった私でしたが、新しい世界を覗いて見るのもいいかな、と思い、御一緒させてもらいました。

 小さなホールで、ピアノを伴奏に歌われたスペイン歌曲は、私の想像とは全く違った、やさしく暖かいものでした。

 そして、柳さんが熱く語るスペインとは、どんな国なのだろうと、ちょっと興味をそそられたのでした。

 翌年、偶然にもスペインに行くチャンスがあり、10日余りの旅行から帰った私は、すっかりスペイン中毒におかされてしまいました。そして、改めて柳さんのコンサートを聴きたいといろいろ調べましたが、その年は、クリスマス・コンサートはありませんでした。

 その後、再びコンサートの情報を得られるようになり、何度か足を運ぶうちに、柳さんとお話しする機会にも恵まれ、ここ数年は、柳さんのクリスマス・コンサートが、私の1年の締めくくりとなっていました。

 でも、2・3年前に大病をしたという柳さんは、「あとどのくらい歌い続けられるかわからないけれど・・・」と口癖のように言われ、昨年のコンサートのあと、「お元気でいつまでも歌ってくださいね」と言った私に、「それはなんとも言えないけれど・・・」と、気弱な御返事をされました。

 そんな訳で、10月中旬を過ぎてもクリスマス・コンサートのお知らせが来ないのが、ちょっぴり気がかりな私でしたが、今日、柳さんからダイレクト・メールが届きました。
良かった!柳さん、お元気でおられるのですね!

 今年も、柳さんのスペイン歌曲で、クリスマスの雰囲気に浸り、この1年を締めくくることができそうです。




目覚ましセレス


10/22


 夏の間は私のパソコンが置いてある洋間にクーラーを付けて、夜もそこに寝ていたセレスも、気温が下がってきたので、私の寝室で眠るようになりました。

 さて、セレスは、目覚ましがなっても起きない私を起こすのが、自分の大切な仕事の一つだと思っているようです。

 まだセレスがこの家にきて二年目頃までは、家の中でもチェーンで繋いでいたので、私を起こす時の武器となったのは尻尾でした。そろそろ起きる時間だと感じると、尻尾でぱたぱたと畳を叩くのですが、たかが尻尾、されど尻尾、結構大きな音が出て、ちゃんと私を起こすことができたのでした。

 チェーンをはずすようになると、側に来るようになりました。

 最初はハウスで、自分の体をなめたりかいたりして音をたてているのですが、私が起きる様子がないと、おもむろに私の枕元にきて、ぶるぶるっ。これはてきめん。私はかなりぐっすり寝ていても、飛び起きてしまいます。

 ところが、セレスは今朝、久しぶりに私を起こしてくれたのですが、その方法は、これまでと違っていました。

 ハウスで音をたてるのは一緒です。これは、自分自身が目覚める過程でもあるのかもしれません。それから私の枕元にやってきたセレスは、私の耳元で、口をくちゅくちゅとならすのです。別に私の顔や耳をなめる訳でもなく、1〜2分、気長にお口くちゅくちゅをやっていました。これは以前の胴震い作戦と比べて、かなりソフトな、やさしい起こし方だと思いませんか?

 それでもなかなか目覚めない私に業を煮やしたセレスは、がばっと前足で私の頭をなでた、というか、叩いた、というか、引っかいた、というか・・・。遂に私は目を覚ましたのでした。

 セレスはセレスなりに、どんな起こし方が爽やかな目覚めを呼ぶか、考えているのかもしれませんね。




上高地に行ってきました


99/10/22


 ちょっと前のことになりますが、10月2日・3日に、友達とその友達、計七名(&盲導犬2頭)で、上高地に行ってきましたので、ご報告します。

 
2日。

 東京組は朝7時新宿発のスーパーあずさで松本へ。そこで松本組と合流、途中コンビニでお昼のお弁当など買い込んで、沢渡(さわんど)へ。自家用車はここまでなので、車を駐車場に入れて、バスに乗り換えです。車中は満席で私は補助椅子でしたが、セレスは椅子の下にうまく収まりました。9月の豪雨による土砂崩れ工事のため、時間を区切っての通行でしたが、思ったほど待つこともなくお昼過ぎには上高地に到着しました。

 お天気は最高、半袖でもちょっと動くと汗ばむくらいで、河童橋付近は観光客で賑わっていました。梓川の河原で昼食。せせらぎを聞きながら自然の中で食べると、コンビニ弁当でも、一味も二味もおいしく感じました。セレスは、すぐ近くを飛び交っている鴨に、興味津々の様子でした。

 ゆっくりお昼を食べた後、ケビンへ。小梨平のキャンプ場のケビンは、友達が交渉してくれました。「最初『以前盲導犬を入れたら、畳に傷を付けられたので、もう受け入れない事にした』と言っていたけれど、板の間に敷物を敷いてそこに置くという事で、OKになった」ということでした。

 普通旅館に宿泊する時は、畳でも敷物を敷いてそこに寝かせ、鎖で固定しているので、畳に傷を付けるような事はないのですが、そのユーザーはきっと盲導犬を自由にさせていたのでしょう。そして、盲導犬がはしゃいで部屋の中を走り回ったりして、畳に傷を付けてしまったのではないかと思われます。盲導犬ユーザーは、他のユーザーのためにも、マナーを守ってほしいものです。

 荷物をケビンに置き、大正池に散策に向かいました。ナナカマドがもう色づき始め、紅葉間近という感じです。木の匂い、おいしい空気、せせらぎの音、風のざわめき、素晴らしい景色・・・。気分はもう最高です!日の落ちるのが早いので、大正池の少し手前で引き返してきました。

 ケビンに戻ると夕食の準備。外で食べるつもりでしたが、夜7時を過ぎ、もうかなり冷え込んでいたので、中でテーブルを囲みました。メニューは、ご飯、ミルクシチュー、サラダ、それに、パン屋さんに勤めている人がパンを焼いてくれました。食べたり飲んだりしていると、初対面の人達もいつしか打ち解け、以前からの知り合いのように、和気藹々、、楽しいおしゃべりが夜遅くまで続きました。

 
3日。

 前夜から降り出した雨がまだしとしとと降っていたので、早めに下へ降りて、温泉に行こうという方向に話が進んでいましたが、天が味方してくれたのでしょうか、バスターミナルに着いた頃雨が上がったので、明神池へと向かいました。

 私はセレスのハーネスを持ち、サポーターの後ろ(時には前)を歩きます。盲導犬達も、気持ちが良いのでしょう、とてもうれしそう。街中より足どりもかろやかに、ハイペースで歩を進めます。細い木の橋や木道は、サポーターの後ろから、そのリュックにつかまり、セレスのリード(引き綱)を左手に持って歩き、セレスは、私の後ろを付いて来ます。行き交う人達は2頭の盲導犬に、好意的に言葉をかけてくれます。

 明神池の近くで昼食。いわな丸ごと1匹の甘露煮が入った嘉門次蕎麦は、なかなかの味。神社で、良い御縁があるようにと5円玉をお賽銭箱に投じて、帰路につきました。帰路は、緩やかなアップダウンの続く林道、セレスとの歩みも好調です。

 バスターミナルに戻るとながぁい行列ができていましたが、バスもどんどん動いていたので、間もなく乗り込み、松本で新しい友達と再会を約束して別れ、私達はあずさの人となったのでした。

 久しぶりにおいしい空気を満喫し、新しい友達もでき、とても充実した時間となりました。「上高地で良い思い出を作ってほしい」と、この旅行を企画してくれた友達に感謝です。今度は、野鳥のさえずりを聞ける新緑の頃、また訪ねられたらと思います。




やっぱり・涙が・・・

99/7/3

目が見えなくても 人の話を聞いたり 触ったり嗅いだり
本当に見るよりも もっともっといろんな事を
思い浮かべる事ができるんだもん

いつかウサギが空を飛ぶことが できると思い
人に笑われたこともあるけれど
すごいねって言った人もいた


 この詩は、体の不自由な子供達が書いた詩に曲を付けて、ボニージャックスが10年ほど前に出したアルバム「車椅子のおしゃべり」の中の1曲、「空飛ぶウサギ」の1節で、中学生の全盲の少女が書いたものです。

 私は5年前から、地域の女性合唱団で、コーラスを楽しんでいます。そして、昨秋のチャリティーコンサートで、このアルバムの中の10曲を女性合唱用にアレンジした組曲を歌いました。

 自分が目が不自由だという事で泣いた事はないのに、この歌を練習していると、何故か涙が出て、しかたありませんでした。
そしてコンサートのステージでも、、実は泣くまいと必死にこらえたのでした。

 まだ中学生の少女が、こんなにひたむきに前向きに生きているということが、何かせつないのかもしれません。自分でもどうしてこんなに涙が出てしまうのか、正直言ってわからないのです。

 この7月にある、劇団「ふぁんハウス」の講演の前座で、またこの組曲を歌うことになり、今日の練習で、久しぶりに歌いました。が、やっぱり涙があふれてしまいました。

 このアルバムには、他にも、素晴らしい歌が多く入っています。、子供の心って、なんて純粋で、感性が鋭いんでしょう!


盲導犬との山歩き


99/07/4


 私は山歩きは初心者なので、このようなテーマで意見を述べる資格はないかもしれませんが、今の私の考えをまとめてみます。

 よく、「盲導犬は町中を誘導するための訓練を受けているもので、山などを歩く訓練は受けていないではないか」という意見を聞きます。これは確かです。盲導犬は道の左側を歩き、段差や曲がり角で止まり、ユーザーの命令で曲がったりまっすぐに進むなどの次の行動に移る、その他、階段やエスカレーター、改札や電車・バスの乗り降りなどの訓練を受けています。

 でも、これらは日常の生活の中でも、かなり基本的なもので、ユーザーとともに暮らす中で、自分の生活に会わせて、ユーザーが、更に訓練している、というか日々の生活そのものが盲導犬の力量を拡げていっているのだと思います。。

 私はセレスとスペインを旅行します。セレスは日本の街を歩くことは訓練されていますが、スペインの様子はかなり違っています。道の端にテラスがあったり、駅の構造が違っていたり、おまけに私は静かな田舎町を旅するのが好きなので、かなり急な坂道や、ヘアピンカーブの道路を歩くこともしばしばです。初めの頃は戸惑っていたセレスが、これらを次々に学習し、次の時にはしっかりと私を誘導してくれるのには、目を見張るばかりです。

 そんなことから、山歩きも、ユーザーが山にも盲導犬の扱いにもなれていれば、ある程度は、盲導犬に学習させ、良きパートナーにできるのではないかと思うのです。

 また、「盲導犬がかわいそう」等という声も聞きますが、盲導犬にとっては、ユーザーといる時が一番幸せで、家に置き去りにされるのはなによりつらいのです。

それに、元々盲導犬に多いラブラドル・レドリバーは、元は狩猟犬で、ハンターが打ち落とした鳥を持ってくるのが仕事だったと聞いていますので、基本的な体力はかなりあるでしょうし、自然は大好きです。

 ですから、どこまでが盲導犬にできるか、というのは、ユーザーと、個々の盲導犬の力量にかかっていて、相対的に言えることではないと思うのです。

 盲導犬の誘導で歩ける所はハーネスを持って歩き、どうしても難しい所だけ、(それがほんの一部なら)サポーターに誘導してもらい、盲導犬は、リードで引っ張って行く、という方法もあるでしょう。

 また、盲導犬を置いて行くとなると、普段盲導犬と歩いている人が、仲間との待合せ場所まで、不慣れな杖で行かなければならない訳ですし、1人暮らしの人は、盲導犬を1人で留守番させられないので、誰かに預けて行かなければならないのです。これらのリスクも、考慮しなければならないでしょう。

 けれど、岩場や木の枝が転がっている道では、素足である盲導犬は怪我をするでしょうし、道幅が極端に狭く、盲導犬とユーザーが並んで歩けない所もあります。それに鎖場や、小川の飛び石、釣り梯子等、犬には困難に思える所もありますので、盲導犬との山歩きにはどうしても限界があると思います。

 最後に、私自身はというと、山はまだ初心者だし、セレスに怪我をさせたくないので、急なアップダウンが続くとか、極端に狭い道が続く、岩や木の枝等でセレスが怪我をしそうな所がある、というような山には、連れて行かないことにしています。


車内アナウンスあれこれ


99/07/04


 地下鉄に乗っていてふと気付いたのですが、バスでも電車でも、車内アナウンスって、録音テープの場合、殆ど女性の声ですね。スペインでは、列車でアナウンスがある場合は、女性と男性の掛け合いが多いようです。女性が「次の駅は」と言い、男性が、「●●です」と言い、他の路線への連絡がある時は、女性の声で説明するのです。なかなか良いアイディアだとは思いますが、男性の声がちょっとこもってぼそぼそしていて、肝心な駅名が聞き取れないため(私のスペイン語力のせいも多分にあるのですが)、やはり、全て周波数の高い女性の声の方が聞き易いように思います。

 ホームでは、私鉄の西武線や地下鉄有楽町線は、登りと下りのアナウンスを男性・女性と変えています。これは大変わかりやすくて助かります。都営三田線では、どちらも女性の声なので、出勤の時など、「あっ、アナウンスが聞こえるから電車が来るな」と、階段を駆け下りると、反対の電車だったりします。

 また、バスの車内アナウンスで商店などの広告が良く流れますが、これは私には大きな情報源です。最寄り駅に行くバスで、「イタリア料理の店●●は、踏切のすぐ側」と流れる度に、そうか、今度食べに行こう、と思うのです。まだ1度も行ってはいませんが。

 それに、旅行中に見知らぬ町のバスに乗って、広告のアナウンスを聞くと、「あぁ、この町でも人々が生活しているんだな」と旅情をかき立てられます。

 ところで、スペインのバスはアナウンスがありません。でも心配はいりません。長距離バスでは運転手さんが、おりる所で声をかけてくれますし、町中のバスでは、近くにいる乗客が、「どこまで行くの?」と聞いて、その停留所に着くと、誰かが教えてくれるのです。

 日本でも、たまに車内アナウンスがなかったり、、声をかなり小さく搾っていたりする電車に乗ることがありますが、これはかなり不安です。周りの人は特に心配しませんし、自分から「●●駅に着いたら教えてください」とお願いするのも、気が引けるからです。

 もっとも、アナウンスがしっかりあっても、ぼぉっと考え事をしていたり、居眠りしていたりして、乗り越しそうになることがときどきあります。それで、今日は危ないな、と思う時には、「セレちゃん、●●駅で降りるんだからね。起こしてね」と、声をかけることにしています。そうするとセレスがちゃぁんと起こしてくれる、という訳でもないのですが、周りの人が気にかけてくれて、降りる駅で声をかけてくれるのです。



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