ゴメレス坂を登ると、なつかしさで胸がいっぱいになりました。そう、グラナダは3年前、2週間ほど滞在し、ここからアルハンブラ宮殿へ続く道は 私と相棒(盲導犬)の毎日の散歩コースだったのです。 あの時期は、クルスの祭りの最中で、町はセビジャーナス一色でしたが、今回は、普段の顔のグラナダでした。
夕方、その時ホームステイしていた家の辺りへ行ってみました。不覚にも今回住所のメモを持ってきていなかったのですが、相棒はもしかしたらその場所を覚えているかもしれません。
プラサ・ヌエバから、細い路地に入ります。確か近くにカナリアを飼っている家があったけど、今日は啼いていないかしら・・・?何本かの路地をくねくねと回ってみますが、あの時歩いた道とはちょっと違うみたいです。
「何かお探しですか?」小さな男の子を連れたセニョールが声をかけてくれました。訳を話すと、その辺の通りの名前を次々と言ってくれますが、なじみの名前はありません。
「判りやすいところへ戻って、もう1度歩いてみませんか?私達は時間があるから、一緒に探しましょう。」と、親切に言ってくれましたが、私の記憶も曖昧になっているし、そこまでしていただくのも気が引けたので、広い通りに出た所で、お別れしました。
次の日、当時通った語学学校を探しましたが、移転したとのことで、懐かしい先生方にお会いすることはできませんでした。
でも、バルのウェーターやお土産やさんのご主人から、「前にここにいたでしょう。よく見かけましたよ。」などと言われて、ふるさとに帰ってきたような気がしました。
前回行き損なったアルハンブラ宮殿は、お昼前に行ってみると、また大変な列で、今回も入れずじまいでしたが、また行く口実ができました。
で、私は海を体感したくて、遊覧船が出ているという近くのO grobeという町へ出かけました。
バス停のすぐ前のレストランで昼食を取り、さあ、出発です。
スペインで遊覧船に乗るのは、バルセロナの港めぐりに続き2度目。私と相棒だけで乗せてくれるか、ちょっと心配でしたが、そんな心配は全く無用でした。
港近くで通りすがりの人に、船にはどこで乗れるのか訊ねたら、その人は、側にいた遊覧船の船員に私を引き渡してくれました。
そして、その若い船員は、まるで私の不安を見抜いたかのように、
「乗るときも降りるときも一緒にいるから、なんにも心配いらないよ。その犬も全然問題ないからね。」と、私が何も聞かないうちに、言ってくれました。
チケットは、1500ペセタ。すぐ側のキヨスコに売っています。
2階のデッキに上がり、岸にいた人にカメラをわたして写真を撮って貰ったり、隣り合った人と言葉を交わしているうちに、出発。スピーカーからは、アバネラのような歌が流れ、リゾート気分たっぷりです。

遊覧船の上で
この船は、リアを上流まで登り、また港まで下ってくるというもの。で、途中、ムール貝の養殖をしているらしく、軽い冗談を交えての説明がありました。(残念ながら、私のスペイン語力では、30パーセント位しか解りませんでしたが・・・。)
波音がかすかに聞こえ、船はたまにちょっとだけ揺れながら、爽やかな風の中、リアを滑って行きます。
1時間の遊覧も終盤にさしかかった頃、「さあ、これからムール貝でフィエスタです」と放送が流れ、デッキは沸き返りました。
間もなく、1回の船室でゆでたての貝がテーブルに運ばれ、飲物も用意されました。
そして、大きさ別に盛られたムール貝をつまみに、リベイロの白ワインに、みな一時酔いしれたのでした。
迫力で勝負!
今回の旅では、相棒(盲導犬)が、レストランやバル、乗り物などで拒否される、という場面は殆どなく、ほっとしていたのですが、最後の最後に、ついに捕まってしまいました。
O Graveからの帰りのバスに乗り込んだ時、運転手が我が相棒に気付き、突然大声で怒鳴り始めたのです。
「犬は駄目だ!犬はバスに乗る事はできないんだ!」
「でも、これは犬といっても盲導犬です。盲導犬は乗る事ができるんですよ」
私が応えると、先に乗っていたお客さんも、後ろで列んでいた人たちも、口々に、「そうだよ、盲導犬はかまわないんだよ」と、加勢してくれます。
それでも、その運転手は、駄目だ、警察に怒られる、等々、言い続けています。
そのうちに周りのお客さん達が静かになってしまいました。みな、どうなるのかと、気をもんでいるのでしょう。早くなんとかしなければ・・・。気持ちが焦ります。
私は単語力が足りなくて、言いたい事が充分言えないけれど、知ってる言葉をずらずら連ねて、声高に応戦しました。
「だって、ここまでだってバスできたのよ。飛行機も電車も、そう、船だって乗れるんだからね!!スペインでは、法律で認められているのよ!」
ちょっとまずい事は、バス料金が225ペセタなのに、5千ペセタ紙幣しか持ってなかったという事です。そうでなければ、料金を置いて、さっさと乗り込んでしまったのですが・・・。
こんなやりとりが5分ほど続いたでしょうか。ついに、運転手は私の差し出していた5千ペセタ紙幣を取り、釣り銭をごそごそとかき集めだしました。
やったぁ!!私はおつりを貰うと、相棒を押し込むようにして、前から2列目の座席に座りました。
すると、また、運転手が怒鳴ります。
「駄目だよ。1番後ろの席に座って下さい。警察に怒られるんだから!」
この運転手、よほど、警察が恐いようです。
でも、座っちゃったら私の勝ち!「大丈夫。なんの問題もないから」と、そのまま行きました。
この運転手、私がバスを降りる時には、穏やかな人に戻っていました。
それにしても、運転手さん、あれこれ怒鳴りながらも、ちゃんと敬語(usted)を使っていたのには、頭が下がりました。