−日記帳(N0.1587)2006年04月21日−
彗星物語(1)
(超新星爆発による太陽系の誕生)
−日記帳(N0.1588)2006年04月22日−
彗星物語(2)
(惑星と彗星の分かれ道)


人類初の超新星爆発の撮影記録(1987年2月24日)
(この爆発で発生したニュートリノを捕捉して小柴氏ノーベル賞受賞)

かつて半世紀の間、行方不明になり現在も分裂を続けている「シュバスマン・バハマン第3彗星」が、来月、5月12日に地球に最接近することから、ここ数日メディアもこの彗星を話題として取上げております。
ところが、彗星については発音の同じ水星、また同じように尾を引く流星と勘違いする方々もおられるようです。しかし、よくよく考えてみれば流星も実は彗星が尾を引きながら撒き散らした塵埃が地球の大気圏に突入して燃える際に光を放って一瞬、星になるわけですから彗星の孫のようなものです。そこで、今月末から双眼鏡で見ることが出来そうなこの彗星を楽しむためにも、彗星について知識を広めるべく今日から「彗星物語」を連載していきたいと思います。私にとって判り辛いことを中学生程度の拙い天文・物理知識で勝手に解釈しておりますので、以下の記述内容が正確さに欠けていることを予めお断りしておきます。

夜空に輝いている無数の星たちはまるで生きているかのように光を放っておりますが、その星たちにもやがて死が訪れます。
あの星の光は、実は水素爆弾と同じ原理でこの世で最も軽い元素の水素が核融合を起こしてヘリウムになる際に放出されるエネルギーによるものですが、太陽の質量のおよそ8倍以上の巨大な星は核融合を続けるたびに、水素→ヘリウム→酸素→鉄と次第に重い元素に変化し、それらが星の中心部に集まっていきます。すると、密度の高くなった中心部は重力も大きくなり、ついには自身の重力によって内部から崩壊し、超新星爆発と呼ばれる大爆発によって死んでいきます。新星は、この星自身は死滅しますがその死骸から新しい星が誕生することを意味しております。

47億年前、現在の太陽の近くで巨大な星が上述のプロセスで超新星爆発を起こして死に絶えました。その時に撒き散らされた星の死骸の破片は星間雲になって、回転しながら徐々に平たくなりやがてガス状の円盤状になり、その中心に原始太陽が誕生しました。その際約99%は太陽そのものとなりましたが、残りの約1%は太陽から飛び散って星となっていきましたが、その飛び散り方とその成分が飛び散った星のその後の運命を分けました。(注:実際はもっと複雑なプロセスを経て飛び散ったものと思われますが、後の話を判りやすくするためにここでは太陽から接線方向に飛び散ったことにします。)

まず、飛び散り方は飛び散る際の速度で代表させることが出来ます。その速度が第二宇宙速度(約11.2 km/s)以下なら例え、飛び散っても太陽の引力に対抗できる遠心力に相当する速度に至らないため再び太陽に戻ってしまい二度と星にはなれません。しかし、第二宇宙速度以上で飛び散った星たちには太陽から独立して星になる権利が与えられますが、第三宇宙速度(約16.7 km/s)以上で飛び散りますと飛び散ったまま宇宙の彼方に永遠に去っていく悲しい運命にさらされることになります。

第二宇宙速度以上で飛び散っていく星たちの運命はケプラーの法則による軌道方程式で表わさすことができます。この軌道方程式のパラメータに離心率eが有ります。この値によって星たちがどのような運動するかを知ることが出来ます。飛び散る速度が第三宇宙速度未満の場合は離心率は e<1.0 となって星たちは太陽を中心にその周りを周回することになり、晴れて太陽系の星となります。

その場合、離心率がe=0.0に近くなるほど真円軌道に近くなり、e=1.0に近くほど長径と短径の比が大きい長細い楕円軌道に近くなっていきます。惑星の中で最も 離心率が小さいのは金星でe=0.007 次いで海王星のe=0.009、地球は3番目でe=0.017 逆に最も大きいのは冥王星のe=0.249です。

もし、第三宇宙速度に等しくなるとe=1.0 となって星は放物線軌道、第三宇宙速度より大きくなるとe>1.0となって星は双曲線軌道を描き、いずれも宇宙の彼方に去って行き二度と太陽には戻れません。つまり、上述の第三宇宙速度以上になって宇宙の彼方に永遠に去っていく悲しい運命を辿るか否かの運命の分かれ目がe=1.0となるわけです。この関係を整理すると次のようになります。そして、明日はe<1.0となって晴れて太陽の周りを周回することになった星たちの次の運命に迫っていきたいと思います。

e=0.0 真円軌道(地球や金星がこれに近い)
e<1.0 楕円軌道(火星やハレー彗星等)
e=1.0 放物線軌道(彗星の一部)
e>1.0 双曲線軌道(その存在はまだ未確認))


今世紀最大級の明るさといわれるヘールボップ彗星
(97年3月20日に野田司氏撮影の画像を使わせて頂きました )

太陽から飛び散った後の軌道方程式の離心率がe<1.0となって、晴れて太陽の周りを周回することになった星たちには、飛び散った時の星たちの成分と大きさによる次なる運命が待ち受けていました。その運命は人間が勝手に決め付けた命名のしかたに過ぎないのですが、まず飛び散った時の大きさが1000km以上の9個の星を「水金地火木土天海冥王」として「惑星」と名付け、それ以下の星は惑星としてはは不合格として「小惑星」と名付けました。

ところがその後、クワオワー(直径約1300km)、セレス(直径約910km)、2004 DW(直径約1400km)などの小惑星が発見されるに及んで、惑星として堂々と名を連ねている冥王星(直径約2400km)との差は一体何なのだとの論議が出て、最近はこの冥王星を落第させて小惑星と呼ぼうとの意見が相次いでいることから、惑星と小惑星は厳密にはその差は無いと考えていいと思います。これら小惑星と呼ばれる小さな星は、軌道が分かっているものだけでも2万個以上は有ると言われ、その多くは火星と木星の軌道の間の「小惑星帯」と呼ばれるゾーンに集まっております。

従って、飛び散った星たちの運命を分けるのは、大きさではなくその成分ということになります。飛び散った時にその成分が惑星や小惑星のようなしっかりとした地質ではなくて氷(水の氷と、ガスの凍ったものの両方)と塵の混合物からなる核(汚れた雪だるまとも呼ばれる)を持った星たちがおりました。この星たちの核は、太陽に近付くと太陽から放射される熱によって蒸発して自らの周りを球状に覆い(コマと呼ばれる)、太陽からの放射圧と太陽風により、太陽と反対側の方向に尾(ダストテイルと呼ばれる)を引くようになります。そのため、これらの星たちは彗星(彗=ほうき)と呼ばれ、惑星と差別されました。

この彗星にも離心率eによって後の運命が分けられました。e=1.0 となって星は放物線軌道、第三宇宙速度より大きくなるとe≧1.0になった彗星は放物線か双曲線を描いて飛び散ったまま宇宙の彼方に永遠に去っていきました。幸いにも、e<1.0になった彗星は比較的eが1に近くて長円軌道を描くものの惑星と同じように太陽の回りを周回するようになりました。そこで、前者は非周期彗星、後者は周期彗星と呼ばれるようになりました。1995年現在、878個の彗星が確認されこのうち184個が周期彗星でこれ以外の彗星の軌道は決っていないようです。

惑星や小惑星は比較的円に近い楕円軌道をとるものが多いのに対し、彗星は離心率eが大きいため非常に細長い楕円や放物線、双曲線の軌道をとるものが多いようです。また、彗星の本体となる核は小惑星より更に小さく直径1キロから大きくても数十キロ程度のために他の大きな星からの引力の影響を受やすく、小惑星のように落ち着いて決った軌道をとれないまま惑星や小惑星の重力ではじき飛ばされたりして、太陽系のずっと外にあって太陽系をすっぽり包んでいる「オルトの雲」まで飛ばされ、今度はお隣の恒星の重力でまた別の場所に飛ばされ、飛んでいった先に大きな星があればその重力でまた飛ばされて・・・といった具合に宇宙を転々と放浪する彗星もあります。

こうして、太陽から飛び散る時の三つの条件(速度、大きさ、成分)を全て満たした星が惑星として太陽系の優等生の星となり、大きさだけが満たされなかったものが小惑星として及第し、大きさ、成分が満たされなかったものが彗星として落第生のレッテルを貼られながらも太陽族として他の大きな天体に苛められながらも我慢強く太陽の回りを周回しております。そして、三つの条件全てが満たされなかった星は非周期彗星として放物線や双曲線を描きながらいずれ遠い宇宙の彼方に去っていきます。このように惑星も小惑星も彗星も元をただせば同じ星から生まれ、その超新星爆発の後の条件の違いでそれぞれに分かれていったのでした。


前 頁 へ 目 次 へ 次 頁 へ