−日記帳(N0.1643)2006年06月16日−
また名大からノーベル化学賞候補
−日記帳(N0.1644)2006年06月17日−
殺人エレベーター(2)


テトラヘドロン賞受賞の山本尚名大名誉教授

ノーベル賞の受賞対象となる領域での学会、業界などの関連団体で殆ど無名に近い人が突然ノーベル賞を受賞するケースは極めて稀なことです。1974年の佐藤栄作氏、 2002年の田中耕一氏のノーベル賞受賞はその稀なケースに該当するものと考えられます。現に、これまでの日本人ノーベル賞受賞者はこのお二人を除き、事前に候補に挙げられたり、あるいはその関連団体で表彰されたりしております。特にノーベル・化学賞については、下記の英国の著名出版社と米国の化学会による権威ある賞を事前に受賞するとノーベル・化学賞を受賞する確率は極めて高くなることが知られております。

・テトラヘドロン賞(英国・パーガモン出版社)
・アーサー・C・コープ賞(米国・化学会)
・ロジャー・アダムス賞(米国・化学会)

実は、野依良治名大特任教授は2001年にノーベル・化学賞を受賞する前に上記の賞を全て受賞していたため、ノーベル・化学賞を受賞は時間の問題とされておりました。昨日、山本尚名大名誉教授(62歳:現シカゴ大教授)が、このうちのテトラヘドロン賞を受賞することが明らかになりました。このテトラヘドロン賞は有機化学分野では最も世界的に権威が有るとされていることから、山本教授は野依良治名大特任教授の場合と同様に、今後の有機化学分野での有力なノーベル賞候補者としてノミネートされることになりました。

山本教授は、野依良治名大特任教授と同様に京大卒業後、そのままハーバード大に移り、E.J.Coreyのところで博士号を取得し、その後一貫して名大でキラルなルイス酸を触媒とする有機合成反応及び不斉反応の開発を行ってきました。しかし、定年制のある日本の国立大を嫌って名大をを定年前に退職し、事実上定年制の無いシカゴ大へ移り、キラルなルイス酸触媒を用いたアルドール反応、α-アミノオキシ化反応、ニトロソアルドールーマイケル反応、NHK反応、桜井ー細見反応など不斉反応を中心に毎年10報以上の素晴らしい論文を報告していることが評価されたものと思われます。

山本教授はこのような研究を通して、有機化合物を作る際に反応を加速させる効果が高い独創的な酸触媒を開発しております。この触媒は医薬品や農薬などの合成に使われ、副作用の少ない薬を作る上でも威力を発揮しております。山本教授は1980年に名大工学部助教授となり1983年から2002年まで教授を務めております。14日に名大で行われた記者会見では「非常に名誉ある賞で、ありがたく思う・・・・・新しい触媒の開発が環境問題に貢献できることは無限にあり、社会的需要はとても大きい」と話しておりました。


国交省で頭を下げるシンドラー社のケン・スミス社長(中央右)ら幹部

6月7日の日記で、エレベーターのパイオニアで世界第一位の米国・オーティス社とその後に設立された世界第二位のスイス・シンドラー社を採り上げて、エレベーターの歴史に触れてみましたが今回、エレベーター事故で高校生が死亡した件について、そのメーカーであるシンドラー社の対応があまりにも無責任だったことから、このシンドラー社製のこのエレベーターを敢えて殺人エレベーターと呼んで日記のタイトルとしました。今日はその後の状況を含めて、シンドラー社の無責任ぶりを糾弾してみたいと思います。

6月3日午後7時20分頃、東京都港区芝の港区住宅公社マンション「シティハイツ竹芝」で、都立高2年、市川大輔さんが同マンション12階にある自宅に帰ろうとしてエレベーターに乗り、12階で停めて自転車にまたがったまま後ろ向きでエレベーターを降りようとした際、エレベーターが急上昇し、自転車ごとエレベーターの床と12階の天井に挟まれて窒息死するという痛ましい事故が起こりました。

このエレベーターは、建物屋上の機械室内にある巻き上げ機にワイヤをつるべ式に掛け、一方に「おもり」を、もう一方に「かご」をつるしてコンピューター制御のモーターで昇降させるという、殆どのエレベーターに一般的に採用されている仕組みになっておりました。そして、「かご」に付いている調速機がワイヤが切れて「かご」が所定速度以上で落下すると検知して「かご」を停止させ、また巻き上げ機に付いているブレーキによりフロアで停止している時や、何らかの原因で電源が切れた場合には「かご」が上下動しないよう位置が安全に保たれる仕組みになっております。

ところが当日、事故後に救急隊員が市川さんの体をエレベーターから引き出した後、マンション関係者がエレベーターの電源を切ったところ、このブレーキが正常に作動しておれば緊急停止するはずの「かご」が停止せずに電源を切ると同時に相当のスピードで最上部まで上がっていったと証言しておりますのでこの辺りに事故原因が有る可能性が有ります。従って、シンドラー社が主張するようにエレベーター本体そのものに事故原因は無いかも知れません。

確かにエレベーターは、本体、それを動かすコンピューターそして保守・点検の三つの要素によって運転されますが、その全てを支配するのは本体の基本設計です。従って、今回のような事故が発生した場合、本体の基本設計をしているシンドラー社は例え、事故原因が保守・点検に有ったとしても自社に一切の責任は無いとする態度は少なくとも道義的には許されません。この場合、PL法の適用は難しいと思われますが、もし適用されれば道義上では収まらず法的に民法上の賠償責任を負いかつ過失致死が立証されれば刑法上の罰を負うことになります。このような状況のもとで、この事故直後にとったシンドラー社の対応は次のように極めて無責任でメーカーの良心のひとかけらも見られませんでした。

・製造元のシンドラー・グループ本部(スイス)9日、「エレベーターの事
 故は不適切な保守点検か、閉じ込められた乗客による危険な行為
 が主因」とする声明を発表したこと。

事故原因は現在、警視庁で究明中でまだ特定化されていないのに、このように事故原因を断定することは論外の上、乗客の乗り方にまで事故原因が有るとするに到っては開いた口が塞がりません。それならばエレベーターには乗り方のマニュアルを見てから乗らねばならないことになります。エレベーターには幼児も老人も車椅子の方も乗りますから重量制限以内ならどんな人がどのように乗ろうとも安全に運転されなければ安心して乗れません。もし、彼等の言うように乗り方如何でこのような事故が起こり得るとするならば、まさにシンドラーエレベーターは殺人エレベーターと言わざる得ません。

今日は、糾弾は取りあえずここまでにして今後のシンドラー社の対応によっては更に日を改めて糾弾していきたいと思います。


前 頁 へ 目 次 へ 次 頁 へ