−日記帳(N0.1673)2006年07月16日−
瞬間湯沸し器の事故に思う(1)
(ガス機器の点検の重要性)
−日記帳(N0.1674)2006年07月17日−
瞬間湯沸し器の事故に思う(2)
(山根さん夫妻の執念)


瞬間湯沸し器による死亡事故で謝罪するパロマの幹部

我が家での給湯は以前は浴室の隣室に設置された瞬間湯沸し器を利用していました。この瞬間湯沸し器は現在の家を新築した時から業者の指定で取り付けられており、最初は特に問題も無く順調に使っておりました。ところがある日のこと、ボーンと鈍い音を発して瞬間湯沸し器が炎に包まれましたが直ぐに炎は消え、大事には至りませんでしたが使用不能状態になりました。早速、業者を呼んで点検してもらったところ、老朽化が進んで器内で漏れたガスに導火が引火したのが原因とのことでした。点検を怠った我々にも非が有ると考えメーカーにクレームすることは止めました。そのメーカー名は忘れましたが聞きなれない社名でした。

そこで、業者が推薦した瞬間湯沸し器に変えてからは無事使用し続けてきましたが、容量が小さくて風呂を沸かすのに時間がかかること、湯温のオン・オフと温度コントロールを浴室で出来ないことなどの不満がつのり、本体屋外設置の浴室リモコン式の給湯器に変えて現在に至っておりますが、室内に一酸化炭素が流れる心配も無く快適に使用しております。石油温風器でも、ガスの瞬間湯沸し器でも燃焼ガスや排ガスがゴムホースなどを通る場合が多く見られます。松下電器製のFF石油温風機の不具合による一酸化炭素中毒で全国で2名の方々が亡くなられましたが、その原因はゴムホースの劣化でした。

私はゴムホースの寿命はせいぜい10年程度と考えております。松下電器の場合は14年以上も前に製造された製品で不具合が発生し、松下電器は200億円にも上る費用を投じてその回収を現在尚、行なっております。飲食品に賞味期限が有るように製造物にも寿命が有ります。殆どの場合、寿命が来ても部品交換すれば再び使用できますので、寿命がきたことで生命を脅かす恐れのある製造物では法定点検が義務付けられております。例えば、自動車、船舶、エレベーター等がそうです。ところが、石油温風機や今回問題になっている瞬間湯沸し器などでは、法定点検の義務はなく消費者の自主判断に委ねられております。

今回、死亡事故を起こしたパロマの製の瞬間湯沸し器の事故原因には安全装置の不正改造も有りますが、部品の劣化も事故になり得ることを同社は公表しております。一般に電化製品の保証期間は1年程度ですが、保証期間が過ぎたからといって製造者が免責になるとは限りません。日本には欧米諸国と同様に、消費者が製造物の品質上の不具合や誤使用により生命・財産を脅かされる等の損害を蒙った場合は、その法の定める行為を怠った場合、製造者は消費者にその損害を賠償する責任を負うという製造物責任法(PL法)が制定され、責任が及ぶ期間が購入後10年間と定められているからです。

従って、今回の瞬間湯沸し器の事故原因がゴムホース等の部品の劣化等による製品の寿命によるものだったとしても、そのような寿命がきている古い製品を点検・修理しないで使用することの危険性を充分に説明していなかった場合はこのPL法が適用されることも有り得ると考えられます。しかし、瞬間湯沸し器のような家庭で使う製品に 自動車の車検のような法定点検の義務を負わせることは現実にはできません。そこで、ガス機器のように不正な使用や点検不充分の状態で使用する場合には生命に危険が及ぶような製品については法定点検に準ずるような制度の整備が必要と考えます。

例えば、製品に点検時期を明記するとか、点検時期が近づいたら製造者が通知を郵送するとか、このようなことを怠った製造者への罰則を強化するとかあるいは業界ぐるもでテレビ等を通して一般に周知徹底させるとか、いろいろと考えられると思います。また、マスコミもガス機器に纏わる事故については弱い立場の消費者になりかわって製造者側に不正が有ると思われる場合は取材を通して追求する義務が有ると思います。


死亡した山根敦さん

今から10年前の1996年3月18日のことでした。島根県松江市で自営業を営む山根健二さん(57)のもとに悲報が伝えられました。それは、東京都港区のワンルームマンションで一人暮らしをしていた息子さんの山根敦さん(当時21歳)自宅で死亡していたとの知らせでした。上京して変わり果てたわが子の遺体と対面した健二さんは、死後1ケ月を経て腐乱状態にあったわが子の死に顔を奥さんに見せるのは忍びがたいと心に決め火葬されるまで見せなかったと述懐されております。

そこで、この事故の捜査を担当した警視庁赤坂署に死亡原因を尋ねたところ「心臓発作ではないか」としか聞かされませんでした。しかし、息子さんの自宅を訪ねて息子さんを発見した息子さんの友人は周囲の状況から考えてかねて心臓発作との死亡原因に疑問を抱いておりました。その友人が健二さんにもう一度死亡原因について警視庁に問合せることを奨めたこともあって、健二さん再び警視庁赤坂署に出向いて事故当時の資料の有無を問い合わせました。

しかし、署の担当者からは10年以上も前のことでもあり、署内には該当するような資料は無いとの回答しか得られませんでした。しかし、その時その担当者が遺体を検分した監察医務院に何らかの資料が残っているのではとの言葉に望みを繋いで同院の医師に問い合わせたところ、「死因は一酸化炭素中毒。それも考えられない濃度。事件性がある」と教えられたのでした。この所見は警視庁赤坂署のそれとは大きく食い違っていることから、健二さんも息子さんの死因に疑問を抱くようになりました。息子さんの死に顔を見とれなかった奥さんにはその思いがことの他強く、警視庁赤坂署に何回も何回も再捜査をするよう訴え続けたのでした。

そこで、この熱心な山根さん夫妻からの訴えを受けて、既に業務上過失致死罪の時効(5年)は過ぎていたにもかかわらず警視庁捜査1課が再捜査を開始し、保存してあった湯沸かし器を鑑定したところ、安全装置に連動するコントロールボックス(制御装置)が不正に改造され、不完全燃焼によって高濃度の一酸化炭素が発生することが判明したのでした。 事故当時の行政解剖の結果では死後約1か月が経過しており、死因は、同室にあったパロマ工業製の湯沸かし器から発生した一酸化炭素による中毒死であることは判明していたものの当時の捜査では一酸化炭素の発生し原因を特定するには至っておりませんでした。

しかし、ここで疑問が残るのは、何故事故当時、山根さんたちに心臓発作などと事実とは異なる死亡原因を山根さんたちに警視庁赤坂署は告げたことと、同類の事故情報がこの事故の前後に有りましたので再捜査の動機は有ったのにもかかわらず今年3月に山根さんたちの訴えで漸く再捜査に着手したことです。山根さんたちの訴えが無くてもいずれはこの事件が明るみになったか知れませんが、その遅れの間に同類の事故で尊い命が奪われた恐れは充分考えられます。その意味でも山根さんたちの執念が実ったことは大きな成果だったと思います。


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