きょうは四月八日。学校では新学年の始まる季節である。例年なら桜の木の下で親子揃って写真におさまる光景が見られるのだが、今年は開花時期が早かったため、葉桜の下での撮影となっている。ここ下倉小に配属されて満十年を迎えた樺田保裕は来年定年退職を控えていた。老後の生活基盤として気候温暖で都心からも近い横須賀にマンションの購入を検討している。その理由は妻にあった。ここ数年冷え性に悩まされてきたからである。ところが夫婦の平穏な日々はGWを前にして途絶えてしまった。保裕が体育館裏で死体となって発見されたのだ。

発見者は
田端杜夫52才、用務員として永年学校を見守り続けてきた人物である。何事にも動じない男が普段とは違い、息急き切って保健室に駆け込んできたのは丁度入学式から一週間経ち、世間と同じ様に学校も落ち着きを取り戻しつつある日の午後であった。彼はその日、体の不調を訴え病院に寄ってから出勤していた。朝一番に終わっている筈の作業をするため体育館裏の焼却炉に行く途中で不幸にも仏様とのご対面となった訳である。遺体は司法解剖の結果、死後10〜12時間経過している事が判明した。なるほど、犯人の狙いは正にそこにあったのだ

 城西署の刑事
梨本勝雄はいつになく機嫌が良かった。毎年決まって彼を悩ませる花粉症が今年は軽い症状で済んでいるからだ。
「おい、ヤス。昼は軽くサンドイッチでもつまんどくか?」
「何言ってんすか〜。今日は流行のホットクレープ食べるって約束したじゃないですか!自分の言った事もう忘れてるんだから」
部下のヤスこと、
神田靖はいつもの様にあきれ顔で答えた。その時、捜査一課課長の綿貫透が姿を現し、
「なにくだらないことやってんだ!下倉小で殺しだっ。とっとと調べて来いっ!」
二人が現場へ急行すると、事件は新たな展開を見せていた。

梨本・神田の二人は迷宮入りしそうな数々の難事件を解決してきた名コンビである。移動中たわいもない話で盛り上がっていた彼らが現場に着くや否や表情を一変させ、辺りに緊張が走った。それまでの聞き込みから犯人らしき人物は目撃されておらず、物的証拠も一切見つかっていない。ここからが彼らの腕の見せ所である。しばらく経つと体育倉庫の方から悲鳴が上がった。二人が駆け付けると若い男が倒れている。すでに息はなく、死後硬直が始まっていた。後からの調べで
海原真二25才であることが判明。今年着任したばかりの新任教師であった。
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