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| 【現地からのレポート】
《ブリュッセル イスキア センターの船出》
2010年11月29日
舟橋 倫子
11月23日、秋の紅葉の最後の名残のシーズンに、ブリュッセルでまた一つ、日本とベルギーの交流の花が豊かな果実を実らせました。
「ブリュッセル イスキア」の開設です。
耳慣れない方もいらっしゃるでしょうが、イスキアは、青森出身の佐藤初女(はつめ)さん、お一人によって始められたものです。
彼女は、何の力も・能力もない一個人が、何をできるのかを考えた結果、自宅を開放して、助けを求めて訪れるすべての人を無条件に受け入れるという活動を始められました。
そこで、彼女が何よりも大事に考えたのは、食事を提供することでした。
誠心誠意をこめて相手と向き合う手段として、心をこめて作った食事を共に食べる。
そのことによって、相手の心が開かれる、と考えられたからです。
「食は命」という彼女の姿勢は、心を失って、自分の生の実感を見失った人たちに、生きていることの意味と喜びを、言葉ではなく、ストレートに感じさせることになりました。

ブリュッセル イスキアにて
ブリュッセル イスキアの開設は、初女さんの精神に共鳴したベルギー人シメオンさんの献身的な活動によって実現しました。
彼は、人間にとって一番大切なものは何なのか?という、ある種哲学的な命題を考える過程で、日本文化と仏教に興味を持ち、四国を訪れた際にみた映画「地球交響曲第二番」で、初女さんの生き方に心から共感を覚えるに至ったそうです。
したがって、「ブリュッセル イスキア」のオープニングも、初女さんの活動を紹介するために、料理講習会という形をとりましたが、それは、単なる日本料理の講習会ではありませんでした。
他者と悩みを分かち合い、人々と共に生きる、今、目の前にある対象が人であれ、物であれ、それと真剣に向き合い、自分の能力のすべてを投入してその本質を生かすよう、全精力を注ぐ、という彼女の姿勢の具体的な表現だったのです。
その彼女の気迫あふれる料理は、言葉をこえて、参加したすべての、日本・ベルギーの人々に直接訴えかけ、究極の哲学として、感動を呼びました。
初女さんの文字を木に彫った看板は美しさをたたえ、参加者の思いをこめて飛ばされた気球は、どんよりとしたいつものベルギーの冬空に時現れた、美しい夕暮れの中を、ゆらゆらと揺れながら、どこまでもあがってゆきました。

初女さん直筆の文字を彫った「ブリュッセル・イスキア」の看板の贈呈
大切なものは、言葉ではなく、行いです。
「ブリュッセル イスキア」では、初女さんの精神をともに考えるために、ベルギーの素材の声をきいて、それを生かす活動・料理が、月に一度行われることになっています。
日本人である初女さんによって始められた、人間にとって一番大事なこと、日々の生活を大切に送ること、という精神が、ブリュッセルでどんな花を咲かせてくれるのでしょう。
人生で一番大切なことは?という問いに対して「出会い」と答えた、初女さんの言葉は、参加した人々へのなによりのプレゼントだったのではないでしょうか?
与えられる一瞬一瞬を、常に喜びと緊張をもって受け止めることができたら・・・・
彼女とともに過ごした時間は、まさに一期一会そのものでした。

【舟橋 倫子さんのプロフィール】
1967年 東京生まれ。現・ブリュッセル在住。
歴史学博士、専門・中世修道院史。
ブリュッセル自由大学所属。
◆ 佐藤初女さんの第二回ベルギー訪問の様子はこちら
◆ 佐藤初女さんの第一回ベルギー訪問の様子はこちら
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