「パンチ、これを見てみろ。なんだか判るか?」
部長が、机の側に置いてあるキャビネットの一番上の開いている引出しを、うんざりとした様子で指差した。
「いいえ」
パンチが罪の意識など感じてないような笑顔で答えた。片方の手に持った食べかけのチョコレートケーキを背中の後ろに隠している。
「いいか、パンチ、お前のファイルだ」
部長は、中身があふれそうになっているフォルダーを、他のボリュームの少ないフォルダーの間から引き出そうとしながら答えた。
「他の連中のフォルダーはもっと薄いんだ。それなのに、お前のときたら、もうこれ以上、1枚も始末書を入れる隙間も無いじゃないか。なぁ、バイクってのは、上にまたがる物で、下に入るものじゃないって事を思い出してみてくれんかね、いいか?」
部長は引出しをピシャリと勢い良く閉めた。しかし、引出しは閉まらずに跳ね返って、また開いた。パンチを睨みつけると、パンチのファイルを無理やりに押し込んで、ようやく引出しを閉めた。
「了解、部長」
パンチが一息で答えた。
「よし、それじゃ私の机から降りて、そのケーキの屑を片付けて持ち場に行け」
パンチはすばやく、机の上を手で掃くと、ケーキの屑を床に払い落とした。それから、ギトレアの部屋を出て、相棒のラ=フォージ巡査のところへ、走り寄って行った。ラ=フォージはちょうどメール受けの中身をチェックし終えて、通路を歩いてきたところだった。「おい、そこの二人は休憩中か?」
部長が席から叫んだ。
「いいえ」
二人は同時に返事をした。
部長は机の上の書類へと向かい直しながら、答えた。
「よし。それから、ラ=フォージ、そのニヤニヤ笑いを止めて、相棒がまたバイクを修理屋送りにしないようにしっかり言い聞かせろよ」
二人は会議室と休憩室の前を通り過ぎて、署の出口に向かって通路を急いで行った。そのとたんに、部長の通信機が音をたてた。
「ライカーからS−4へ」
ピカードは楽しそうに微笑みながら、机の上のマイクを調節した。
「こちらS−4、なんだ、副長?」
「お邪魔して申し訳ありませんが、長距離センサーが正体不明のエネルギーフィールドを捕らえました。我々のコースの障害になると思われます。すでに迂回するように進路を変更したのですが、そのエネルギーフィールドは迂回不可能になる勢いで広がりつつ有るようなのです」
「艦を停止しろ、副長。どういうことになっているのか確かめてみよう」
「了解、艦長」
ライカーは返事をするとすぐに、任務中の操舵手を見た。
「全艦停止」「コンピューター、プログラムの一時停止だ。現実の世界の方で何が起こっているのかを確認した後に、続ける」
ピカードがそう言うと、コンピューターのビープ音が鳴って、部長の部屋の外でのすべての動きが突然止まった。
ピカードはバリクザーが鉛筆でアーティの髪をつつこうとしている途中で動きを止めているのを見て笑った。ジョーディ・ラ=フォージ少佐がナンバー8712のバッジを身に付けたカリフォルニアハイウェイパトロールのオートバイ警官の姿で、ピカードに向かって大股で歩いてきた。
「そう言う事だ」
ピカードが言った。
「さて、データを呼び出さねばな。データ、セントラル分署の私の部屋に来てくれ」
ピカードがホロデッキの通信システムに向かって言った。
「そちらに向かっているところです」
データが答える声が聞こえてきた。10秒後には、データが白衣を後ろになびかせながら、角を曲がって、ピカードとラ=フォージのところへと来た。
「諸君、エンタープライズに戻るぞ。コンピューター、出口を開けろ」ホロデッキの出口が開くとすぐに3人は、出口の方へ向かった。そして、USSエンタープライズ NCC-1701-Dの第11デッキに出た。3人は黙ったまま歩いて、一番近くのエレベーターへと向かった。ピカードはエレベーターにブリッジに行くように命じて、それから、部下の方へ振り返って、手短に状況を説明した。
「ライカー副長が言うには、何か正体不明のエネルギーフィールドのようなものが我々の進路を妨害しているそうだ。データ、君はデータバンクのすべての記録を全面的に目を通して、比べてみてくれ。ラ=フォージ、君はブリッジ機関部のコンソールを使って、我々がそのフィールドを迂回する方法が無いかどうかを調べてくれ。できるだけ早く、この件を記録して解明したい。パンチョレロの奴を長いこと放っておいたら、ろくでもないことをしでかすに違いないからな」
「艦長」
データが口を開いた。
「動きを止められた者がどうやって……」
「ほんの冗談つもりだったんだが、データ」
ピカードがため息をついた時に、3人はブリッジに出た。
「あ〜あ」
データは返事をしながら、自分のオペレーションシステムの持ち場へと向かった。
ライカーが司令官の席から立ち上がって、右側に移動した。ピカードは腰を下ろそうとしたが、ガンベルトが邪魔で座れない事に気がついた。色々と装備のついたベルトを外すのに悪戦苦闘しているのを、ライカーや他のブリッジの乗組員達は笑いをこらえて見ていた。ピカードはベルトを椅子の横のコンソールに置くとすぐに、ライカーに向かって言った。
「その、なんだな。時々、君が私をこういった衣装を着たままブリッジに来させたいがために、事を起こしているのではないかと思うよ」
艦長がカリフォルニアハイウェイパトロールの制服を司令官の上着の着ているかのように整えようとしている時に、ライカーが答えた。
「時々、そんな事が出来たならと、思いますよ。次の手はどうしましょうか、あ……部長?」
ピカードが答えるより先に、ラ=フォージが大きな声をだした。
「艦長、こんなに強力なエネルギーフィールドはこれまで見たことがありません。後戻りをするか、少なくともこれ以上近づかないほうがいいでしょう」
「よろしい、調査を続けてくれ、ラ=フォージ」ジョーディがコンソールに向き直ると、ウォーフが近づいてきて、ジョーディがベルトから外してコンソールの上に置いた金色の警棒を指差して、尋ねた。
「あれは何だ?」
「警棒だよ、そう呼んでたと思うよ。接近して、群集を抑制するときに使うんだ」
「実に素晴らしい武器だ」
ウォーフが言った。
「自分もベイカー警官に会ってみたかった」
「それなら、次の時に俺達と来れば……艦長!エネルギーが真直ぐこちらに向かってきます、後退するべきです」
「確認しました」
データが応じた。
「舵取り、全推力で後退」
「エネルギーは増えつづけています、艦長。こちらに直進しています」
「ここから脱出する、最大ワープ!」
「艦長」
ラ=フォージが答えた。
「手遅れです、ワープエンジンが停止しました」ピカードが機関部長の方に振り向いたとたん、艦全体が激しく揺れて、横倒しになったようだった。ブリッジにいた全員が床に投げ出されて、非常事態を知らせるサイレンが突然、静寂を突き破った。データ少佐だけは何とか席にとどまっていたが、オペレーションシステムのコンソールがアンドロイドであるデータが全力で座席から落ちないようににしがみついたため、土台の部分から捻じ曲がってしまった。突然、正面スクリーンやブリッジのコンソール等のすべてのライトが点滅して、艦全体が沈黙した。しばらくすると、不気味な影をブリッジに落として、非常灯が点いた。電気系統からの煙が、技術部門のコンソールから漂ってきた。コンソールは火花を噴いていた。乗組員達は互いに助け合いながら、やっとの思いで立ち上がりだした。
ライカーはブリッジの歩き回って員数を数えて、尋ねた。
「全員、無事か?」
ブリッジのメンバー全員が、はっきりとしない返事をしたり、頷いたりして無事を伝えた。重傷者はいないようだった。他の乗組員達もブリッジと同様に無事であると良いのだが。ライカーは作戦遂行時のポジションへ移動して、艦のシステムを初期化し直し、何が起こっているのかを確かめようとした。
ピカードはゆっくりと、なんとか立ち上がると、航行コンソールへと向かった。データは自分のコンソールは、取り替えない限りは使えなくなっているので、座席から離れていた。
「いったい、何事が起こったと言うのか、データ?」
艦長は技術士官に向かって尋ねた。データがセンサーを再起動させるのに調整しようと振り向くと、ブリッジ中央のエレベーターの扉が開いた。ピカードがいったい誰がエレベーターを使えるようにしたのかと振り返ってみると、フランク・パンチョレロ警官がブリッジに飛び出してきた。
「あいつはどこだ?」
パンチは大股でブリッジに駆け込んでくると、そう叫んだ。それからラ=フォージの方へ向いて、声をかけた。
「さぁ、相棒、行くぞ。奴を捕まえよう! 何だってそんなところに突っ立ってるんだよ? 心配は要りませんよ、部長。奴を捕まえられなかったら、一生チョコレートケーキは食べませんよ」
パンチはエレベーターに駆け戻りながら、ピカードに向かって言った。エレベーターの扉が閉まる前に、パンチは隙間からひょいと顔を出して、ラ=フォージのほうを振り返って叫んだ。
「俺のバイクはまだ修理屋に有るんだ。正面で会おう」
エレベーターの扉が、シューと閉まると、驚いた様子のブリッジの乗組員達がピカードを見た。ライカーの声色が全員の内心の疑問を表していた。
「あれは誰ですか?」
「あれは」
ラ=フォージが答えた。
「俺の相棒です、と言うか、10分前にホロデッキでカリフォルニアハイウェイパトロールのフランク・パンチョレロとして作り出された存在です。艦長と、データと俺とで動かしていたプログラムの中での俺の相棒だったんです。俺達はプログラムを一時停止してここに戻って来たんだけど、どうしたことかホログラムがここのデッキまで歩いてきたらしい。どう思う、データ?」
データは、まるで無数の可能性のあるシナリオを検討していると言った風に首をかしげた。
「艦長、第1ホロデッキがまだ稼動中です、艦内のほかの動力が落ちてるにもかかわらずです。この事実と私達が今、見たものは、あの妙なエネルギーの雲に密接に関係して、ジョーディの仮説に合っています」
「興味深いな」
ピカードが返事をした。
「では、この艦に何が必要なのかを調べなければ。ラ=フォージ、あのホログラフは、君の事をベイカー警官で自分の相棒だと、真剣に思い込んでいるようだ。彼を追いかけて、何を必要として、何をしようとしているのかを見つけ出して来てはどうかね。用心するんだぞ、おそらく初めて接触する事だからな。その上、我々には、この事が平和的な物なのかどうなのかもまだ判っていないのだから。充分に警戒するように。残りの者達は、システムを再起動させる努力をしてくれ。データ、機関室へ行ってワープコアを動かせるようにしてくれたまえ」
「了解、艦長」
ひとわたり全員からの返事が、ブリッジにあふれ、乗組員達はそれぞれに、艦を復活させたり、システムの修理をしたりと言った仕事に向かって行った。ラ=フォージはエレベーターの扉へと向かって行ったが、艦全体の機能がまだ回復されていない様子から、扉が開くとは思ってもいなかった。ところが驚いた事に、ラ=フォージがセンサーの前に立つと同時に、扉が開いたのだ。艦長の方を振り返ったが、ピカードもただ肩をすくめるだけだった。深呼吸をすると、ラ=フォージはエレベーターへと入っていった。中に入ったとたん、扉が閉じて動き始めた。
「パンチのところへ連れて行ってくれれば良いけど」
頭の中で思った。
エレベーターから降りると、艦の通路でパンチがカリフォルニアハイウェイパトロールのバイクにまたがっていた。
「ちょうど良かった、ジョン」
パンチが大きな声で言った。
「さぁ、行こう!」ジョーディが信じられないと言った思いで見ている目の前で、通路の真中でもう一台のカリフォルニアハイウェイパトロールのバイクが実体化した。金色とブルーのヘルメットと、黄褐色の手袋も一緒にハンドルの上にのっていた。
「戦闘ブリッジに向かっているのかい?」
「やれやれ、先週、艦長と一緒にバイクの運転訓練のプログラムをやっておいて良かったよ」
内心で思いながら、バイクにまたがり、エンジンを始動させるとパンチを追った。艦の前方の円盤部分に当たる第5デッキでバイクを走らせながら、ラ=フォージはカリフォルニアハイウェイパトロールのバッジを軽く叩いた。中に仕込んだ通信機が音を立てると、ラ=フォージは話をした。
「ラ=フォージからブリッジへ」
「どうした、ラ=フォージ」
艦長の返事が聞こえてきた。
「聞こえているのは、警察のサイレンの音かね?」
「そうです、艦長」
ラ=フォージが答えた。
「パンチと自分は、第5デッキでバイクに乗っています。今、セクション11に近づいているところです。パンチがライトとサイレンを点けたので、自分もつけたところです。どうやら、我々は犯罪者か何かを追跡しているようです。待ってください、パンチが非常用エレベーターのところで止まりました」
「気をつけて進んでくれ、ラ=フォージ。それから、この回線は開けたままにしておくように」
「了解」
ラ=フォージは返事をすると、非常用エレベーターへと入っていった。普段はこのエレベーターは稼動していない。第1デッキにあるブリッジと第8デッキにある戦闘ブリッジ間のメインの移動経路だ。途中、第5デッキにだけ停まるのは、ここが、上級士官の居住区だからだ。
エレベーターがあっという間に3層分、降って行く中で、ラ=フォージがパンチに聞いた。
「ナニだって? ちがうよ。おいおい、俺達は空港へ向かっているんだよ。スレイトンはメキシコに向かおうとしているんだ。バイクじゃ捕まえられないだろう。もっと、早い乗り物が必要なんだ。お前のほうが操縦は上手いだろう、だから、お前が飛行機を飛ばして、俺がしっかり探すって訳さ、いいか?」
「お前の言うとおりだ、相棒。だけど、どこを見張れば良いかどうやってわかるんだ?」 「それは俺に任せておけ、大丈夫さ」
パンチの表情から笑顔が消えて、決意にあふれた真剣な表情がとって代わった。エレベーターが止まると、パンチは戦闘ブリッジの入り口に続く通路へと大股で進んでいった。ラ=フォージは策を思い浮かべながら、ゆっくりと歩いた。
「ジョン、来いよ!早くしないと奴を捕まえ損ねるぞ」
突然、ジョーディはアイディアがひらめいた。
「すぐ行く。セントラルに報告を入れて、部長に飛行する事を知らせるから。そうすれば、部長は国境警備隊に連絡をして、万一の場合に備えて地上で支援体制を整えさせられるだろう」
「そういつは良い、だけど、早くしろよ」
パンチはそう返事すると、ブリッジへと上がって行った。ラ=フォージは通信機に向かって話した。
「艦長、パンチは戦闘ブリッジに入ったところです。ブリッジのドアを開けられたと言う事は、どうやら彼は艦のすべてのエリアへ侵入と全機能の制御が可能なようです。自分達は、『スレイトン』と呼ばれている、誰かなのか物なのかを探しているようです。パンチは我々から逃走中のスレイトンを探すのに、自分に飛行機を操縦するように望んでいます。おそらく、『飛行機』はエンタープライズ号の事を言っているのではないかと思います。これからどうしましょうか?」
「この件に関しては、パンチと一緒に行く以外の選択枝があるとは思えんな。彼が艦全体の制御ができるのであれば、パンチはどうにしろ彼の行きたいところへと我々を連れて行くだろう。とすれば、怒らせない方が賢明だろう。ジョーディ、パンチについて行くんだ。どうにしろ、まだ、我々は君が艦を動かすのを止められないだろうから。データにこれから、スレイトンと言うのが、白バイ野郎ジョン&パンチにどこかで関わっていないかどうかを調べもらおう、相手が何か判らなければ、打ち負かす事は出来ないからな」
「了解」
ジョーディは返事をするとすぐにブリッジへと入っていった。パンチがもうすでに、司令官席に着いていたので、ラ=フォージはナビゲーションコンソールに向かった。
「準備はすべて出来た。国境パトロールは、万が一、俺達が奴を取り逃がしたときのために待機してくれる。まず、どっちの方角を探すんだ?」
「上等だよ。部長がこのちっぽけな事故を俺の頭越しに取り上げないでくれてうれしいよ。そうだな。南西寄りの南の方を探してみよう。高度3500フィートにしてくれ」
ジョーディは方角を全天球座標に置き換えて、船を方位158座標35に向けて、全速力にした。
「よぉし、さぁ、ガスを見つけないと、奴に逃げられるぞ!」
パンチが少し興奮した声で言った。
ほんのさっきまでブリッジからは何の反応も無かったワープエンジンが動いてくれると良いのだがと思いながら、ジョーディは速度をワープ8に変えた。鋼甲板がいつものように、ワープの振動で震えると、ジョーディは、ただあきれて首を振るだけだった。艦の推進システムはどうやら全面的に機能しているようだった。何分も経たないうちに、ジョーディのコンソールが警戒信号を鳴らした。センサーがエネルギーフィールドを3つ、検知している、『パンチ』が現れる直前に検知したのと同じだ。
ジョーディは20世紀の用語を使うように気をつけながら、パンチの方に振り返って言った。
「スレイトンを見つけたらしい。俺達の数マイル先に停まっているようだ」
「やったな、相棒!」
パンチが飛び上がって、ジョーディの背中を叩きながら叫んだ。
「さぁ、やつらの後ろにつけて、どうなっているのか見てやろう」ジョーディは宇宙船をエネルギーフィールドから200Kmはなれたところに止めた。近すぎて不安だったが、パンチはちょうど良い距離だと思っているようだった。艦が止まるなり、戦闘ブリッジのすべてのコンソールが暗くなり、照明が弱くなった。それが出発の合図であったかのように、ラ=フォージはパンチを追ってエレベーターへと戻る通路へと向かった。二人は、エレベーターに乗って黙ったまま、メインブリッジに向かった。
扉が開くと、ブリッジの乗組員達が二人のカリフォルニアハイウェイパトロール警官が出てくるのを見守った。パンチが大股でピカードの前に進み出る一方で、ラ=フォージは作戦位置にいるウォーフの横へ行った。パンチは作り笑いを浮かべてギトレアに話した。
「ハ!あいつらを追い詰めるって、俺、言ったでしょう。犯人はみんな、俺様からは逃れられないの、幸運から逃げ出すのさ」
ピカードは今、着ているユニフォームの役を演じながらも、この奇妙な生き物をどうやって艦から降ろすかを思案しながら、返事をした。
「ああ、もういい、パンチ、出て行って書類を書け」
「今やりますよ」
パンチは憤然として返事をした。
「ちょっとだけ待ってください」
ブリッジの乗組員達が見つめる中、パンチはズボンの右ポケットに手を突っ込むと、銀色のコインを2枚、ブリッジのリプリケーターのコンソールへと入れた。装置の上の"ENTER"キーを押すと、チョコレートケーキのパッケージが現れた。パンチはパッケージを開けると、かじりつきながらエレベーターの扉に向かって歩いていった。
扉が開くと、パンチは振り返ってピカードを見た。
「この件をしらせてくれてありがとう、部長」
ピカードが言えたのはこれだけだった。
「どういたしまして、パンチョレロ、またいつでも」
他に言葉も無く、パンチはエレベーターへと乗り込んだ。ドアが閉じた途端、艦全体のシステムが復帰し、メインスクリーンがパッとついた。乗組員達がスクリーンを見つめると、3つのエネルギーフィールドは互いに合わさって、ぴったりと一つになった。その状態は、初めに艦を追いかけてきた時と似ていた。それから、閃光が瞬いて、エネルギーフィールドは消滅した。ピカードがデータの方へ振り向いて言った。
― 完 ―
「データ、状況報告を」
「全システム正常です、艦長。損害の報告はありません。我々の現在地はエネルギーフィールドの襲撃を受ける前とまったく同じ位置です。どうやら損傷したシステムはオペレーションシステムのコンソールだけのようです。ワープエンジンは稼動しています。機能も正常です。第1ホロデッキもまだ稼動中です」
「よろしい、データ。ホロデッキを停止しろ。しばらくは白バイ野郎はもう充分だ。居住区に戻ってユニフォームを着替えて、航海日誌を書いて来るとしよう。きっと、愉快な日誌になるだろうな」
「了解しました」
データが答えた。
ピカードがエレベーターに向かおうとすると、ライカーがデータに尋ねているのが耳に入った。
「ところで、奴がリプリケーターから取り出したのはいったい何だい?」
ピカードは振り返って、データの答えをさえぎった。
「大丈夫だ、副長、なんだか判らないほうが君の胃袋には安全だよ」