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 振り向けばアレがいる:お試し版


 それは、敗北の徴だった。
「くっ」
 思わずうめき声が漏れる。
『弓のシエル』、『埋葬機関の第七位』、いまの彼女には空しい肩書きに過ぎない。勝手の違うこの敵に対しては、教会で得た知識も、長い鍛錬で手に入れた力も、そしてそうでないものでさえ何ら役立つものではなかったというのに。
「まさか……ありえません……」
 頭を振った。
 理性では理解している。だが、感情は認めてくれない。
 ぐらり、と体が揺らめいた。
 脚に力が入らない。壁に背中を預け、呻く。積み重ねられたダメージが、明らかな形となって現れていた。
「やっぱり、ちょっとムリをしすぎましたか……」
 助けを求めるか?
 弱い考えに襲われる。
 いや、ダメだ。奴に頭を下げるくらいならこのまま……
 しかし現実は残酷だった。そして、シエルが今相手をしているモノも、全く容赦のない存在だった。
「諦めましたか?」
 今まで居なかったはずの影が、シエルの背後に立っていた。
 いつの間に、と驚愕し、そしてそのことにすら気が付かぬほど弱っていたのかと自嘲する。
 影は微かに嘲笑った。
 私に従えば、あなたの望みは叶えますよ。と。
 風が吹いた。
 そしてその風がやんだとき、その場には誰もいなくなっていた。


 そう。
 シエルは、敗北したのだ。

 


 

   ・ななこ、再び


 乾有彦の朝は、遅い。
 特に今日の遅さときたらかなりのものだ。ちなみに、今日は平日である。もちろん、すでに遅刻のデッドラインなどぶっちぎっている……もっともそれくらいは普段でも珍しくもないことではあるが。
 遅刻をしない有彦の方が気持ち悪い、と友人である遠野志貴でさえ――いや、むしろ友人だからこそなのかもしれないが、ともかく――語っている。
「んむ……」
 ともあれ、まだ有彦に起きる様子はない。
 ひょっとするとこのままでは起きるのは夕方ということになるかもしれない。まあ、とりあえず出席は今のところ多少余裕があるので大丈夫、という判断が働いてはいるのだろうが。
 まあ、そんなわけで有彦はまだ夢のさなかにいた。
「有彦さーん」
 かわいらしい声が、そんな有彦の意識をほんの少しまどろみの方向へと押しやった。
「んー」
 返事ともただの寝言ともつかない声を上げて、有彦は小さく寝返りをうつ。
「有彦さんってばあ」
 ゆさゆさ。
 今度は肩まで揺らされた。
「んー、あー」
 しかし有彦もなかなか起きない。意味不明なうめき声らしきものを上げ、ごろごろと転がって何者かの肩揺らし攻撃をかわそうとする。
「んもう、有彦さん、あんまり寝過ぎているとただでさえ軽量な頭脳がより軽量化を果たすことになるのですよ」
 とんでもないことをいう女だ。起きてやるものか。
 いい加減こうなると有彦の方も意地である。
 しかし、ほとんど覚醒しかかった意識の片隅で、有彦は至極当然な疑問を覚えていた。
『ふーむ、聞き覚えのある声なのは当然だけどよ……この声、誰だっけ』
 そもそも、有彦には昨夜女を連れ込んだ覚えなどない。ということは、声の主は勝手に上がり込んでいる事になる。しかし……。
『最近は女っ気もなかった、よな』
 ここのところ有彦の女性関係はかなりの悪化傾向を見せており、彼自身やや欲求不満気味であることは自覚していた。
 と、いうことは。
『なんだ、要するにここんとこの睡眠不足と欲求不満で女の幻覚でもみてるのか』
 ゆさゆさと肩を揺する感覚までやたらとリアルだが、欲求不満であればそれくらいはあり得るだろう。
 なるほど、と有彦は、半ば夢の世界にありながらも見事な推論を導き出した自分の頭の冴えに、今更ながら感心してみる。
 ならば対策はひとつ。とにかくしっかり寝ることだ。起きたらきちんと欲求不満の方も解消する必要があるだろうが。妄想や幻覚の類に負けて睡眠を中断させられてしまうほど、乾有彦はヤワな精神をしていない筈だ。
 強い決意のもとに有彦はその声を無視し、断固起きまいという意思を表明するかのように布団を頭からかぶりなおした。
「あ、有彦さん?」
 戸惑った声は、もう有彦の耳には届かない。いや、実際には届いていたのだが、それを空耳と断じた有彦の意識は完璧にそれをシャットアウトしていた。
 それどころか、すでに軽い鼾すらその口からは漏れはじめている。
「……よおし、それならこっちにも考えがあるのですよ」
 にやり、と笑う気配。
 完全に眠りに戻ったはずだった有彦の本能が、瞬間赤信号をフル点灯した。
「どりゃあっ」
 ずばん! というはじけるような音。
「うわっ、ちょっとやりすぎてしまいましたよ」
「……ちょっと?」
 すっかり目が覚めてしまった有彦は、もはや原型すら残らぬ、かつて枕だったものを見つめながらそうつぶやいた。
「ええ。おはようございます、有彦さん」
 いったいどんな衝撃を与えたらそんな事になるのか。まるで内側から破裂したような枕の残骸に手を突っ込んだ姿勢のまま、少女は小さく首を曲げてふわっと笑った。
 その表情は、ロリコンではないと自分を信じている有彦の、その自覚を一撃で打ち破ってしまいそうなくらいには破壊力があった。要するに、とても可愛いのだ。だが、同時に有彦はその顔に見覚えがあることにも気付いていた。
「――な、な、ななななななな」
「有彦さん、まさかもう私の名前を忘れてしまったのですか?」
 少女(?)は首を振る。
「わたしの名前はななななじゃなくて、ななこですよ。人の名前を忘れるなんて、実に失礼なのですよ。まあ、物覚えがあまり良くないとは思っていましたが、ここまでとは」
 ななこと名乗った少女はやれやれと首を振った。
 一瞬完全に勢いをくじかれた有彦は、ぶんぶんと首を振って気合いを入れ直し、勢いよく立ち上がった。
「じゃねえ。なんでココにいるテメエーっ!」
 指さして怒鳴る有彦の顔をきょとん、とした表情でしばし見つめたあと、
「有彦さん……」
 やれやれ、と、さも困り果てたというような表情でななこは首を振ってみせる。
「ひとを指さすのは失礼だと思いますよ」
「そうじゃねえっ。そもそもテメエ、人間じゃないだろうが」
「はい、そうですね。しかしわたしはより高貴な精霊なので、つまりもっと失礼だ、という事になるのです」
 それからななこは、困ったような、あきれたような、そんな表情を浮かべながらあさっての方を向いてみせたりする。
「ああ、かわいそうな有彦さん。この罰あたりっぷりでは、いつ、どこでどんな呪いがふりかかることか……」
「て、テメエ……」
「今すぐわたしに供え物をしたら、呪いにはかからないかもしれませんよ?」
 そうですねー。できればたっぷりのにんじん、それも有機栽培の無農薬ものがいいんですけど。などという図々い台詞に、有彦は小さく笑いを漏らした。
「ふっ、ふっふっふっふっふっ」
「お、有彦さん、その笑い方はちょっといけませんよ……有彦さん……?」
「はっはっはっはっはっはっは」
「あ、あははははははは」
 乾いた笑いが部屋に満ちる。
 一瞬逃げる姿勢を見せようとしたななこを、有彦は素早く組み伏せた。
 悲鳴が上がる。それは猛獣に襲われる小動物のそれに似ていた。

「うるさいよ、有彦」

 快音を立てて襖が開いた。
 どうやら乾家の年長者は在宅中だったらしい。不機嫌そうな表情で、突然のことに思わず硬直してしまった有彦とななこをじーっと見下ろしている。
「あ……っ」
 声があがる。
「い、一子さん、助けてくださいっ。有彦さんに乱暴されちゃいますっ!」
 有彦に組み伏せられた姿勢のまま、ななこは必死に声を上げた。
 だが、一子は表情をぴくりとも動かさない。
「なんだ、また来たのか」
 なんでもない事のようにそう呟くと、やれやれ、とでも言うようにぽりぽりと頭を掻き、とりあえず静かにしろ、とだけ言い残して背中を向ける。
「い、一子さんっ?」
 ななこの声に反応したわけではなく、思い出したような仕草で一子は振り向いた。
「有彦、そいつのメシはちゃんと自分で世話みなよ」
「ううっ、一子さん。この状況で言うことがそれだけなのですか」
 哀願するななこの台詞をしっかりと無視して、襖は無情にもぴしゃりと閉められた。


 

「ふう……」
 有彦の肺腑から吐き出された青白い煙が、外の空気に拡散して消えていく。
 背後でしくしく泣く気配がする。しかし有彦は知らん顔をして窓枠に背中を預け、ただひたすらぼけっと空を見上げていた。
「ううっ、ひどいですよ有彦さん……わたしはイヤだっていったのに……」
 ななこは顔を伏せ、さめざめと泣いている。
 窓の外を見ていた有彦の額が、ぴくっと反応した。
 さめざめさめざめ
 ぴくぴく。
 さめざめさめざめさめざめ
「あーっ! うるせえっ」
 先に折れたのは有彦の方だった。
 まあ、もとより彼は我慢の効く性格ではない。
「だって、あんなに痛かったのに……ひどいです、有彦さん」
 しくしくと布団の上で泣き崩れるななこを見下ろして、有彦は眉間にしわを寄せた。
「なんか他に聞いてる奴がいたら誤解しそうだな、おい」
「しくしく……はい、誤解されるように言ってますから」
 はあ、と溜め息をついて、有彦はわきわきと両手を動かした。
「……もう一回やってやるか?」
「そっ、それはだめですっ。痛いです」
 ウメボシの形に握った拳をグリグリと宙で回してやると、ななこは頭を抱え込むようにしておびえた視線を向けてくる。まあ、仕方ないだろう。さっきまでその拳で思うがままにななこのちっさな頭を虐待していたのだから。
「くっくっく……余裕が無くなるまで思う存分絞ってやろう」
「いやー、だめですーっ、拒否権を行使しますっ」
 迫る有彦に対し、ななこはぶんぶんと手足を振り回した。
 がつっ。
 半ばパニック状態でむやみに振り回されたその腕が、有彦の顎を直撃した。それは本当にたまたまの一撃、だったのだが。
「ぐっ、ぐおおおおお……」
 有彦はたたらを踏んだ。
 一撃でのナックアウトはかろうじて耐えきったが、その視界はぐらぐらと揺れている。クリティカル・ヒットだ。揺れた脳が機能を十分に回復するまでには、おそらく相当な時間がかかるだろう。
「……おや、どうしました、有彦さん」
「とっ、とりあえずだ……」
 壁に背を預けて、ダメージを隠す。有彦としては、ななこにそういう部分で弱みを見せる訳にはいかない。息を整える。大丈夫だ、意識はまだはっきりしている。体もまだ言うことを聞いてくれる。
「なんでここに来たテメエ、契約とやらはアレで帳消しの筈だろ?」
 ななこと別れた際にななこの本体から拭き取った血痕。それがななこと有彦を繋いでいた絆。だから、それを拭き取った今有彦はななこの仮契約主でもなんでもない、筈だ。
「えへへ、実は有彦さんの体液を一部、あらかじめ確保させてもらっていたのですよ」
「たっ、体液っ?」
 有彦の顔が引きつる。
 おかしい。有彦は平静を装いながら必死に記憶をまさぐった。が、やはり全くそんな記憶はない。
「はい、有彦さんが寝てる間に、ちょちょっと。それで改めて契約を、ですね」
「な、なにいいいいいいっ?」
「有彦さんったらいっぱい出すんですから、ちょっと困ってしまいましたよ。ちょっと出し過ぎですよ、若いとはいえ」
 ちいさく頬を染めて、ななこはさりげなく視線を伏せてみたりなんかする。
「な、何を? いつ?」
 おそるおそる、聞く。有彦の予想通りならこれほど屈辱的なこともない。男としては断固認めるわけにはいかなかった。
「そんな事、言えませんよー」
「いいから言え。記憶にないことがあると気分わりい」
「えっと、怒らないって約束してくれます?」
 首を縦に振る有彦を、ななこはちらと上目遣いで見上げ、それからぼそりと呟いた。
「鼻血」
「……は?」
「こうですね、寝ている有彦さんの頭を殴って……いやー、鼻血って本当に噴水みたいに飛び散ることもあるんで――って、いたたたたたたたたっ!」
 なるほど。
 疑問が氷解した有彦は、実にさわやかな表情でななこの頭を絞り上げながら、笑った。
 記憶にないわけである。夢の世界から一撃で昏倒させられていたのだから。


 有彦が怒りを発散しきるまでは、まあ数分ほどあれば事足りた。
 彼が元々根に持たない性格なのは、被害者であるななこにとってはいくらか救いになっただろうか。
 少なくとも彼女の本体を原形も留めぬほどまでに改造したあの女性による扱いと比べれば、ななこにとっては半分じゃれているようなものなのかもしれないが。
「で、なんでまたオレの所に来た?」
「え?」
「何か理由があって来たんだろ? それとも、また脱走でもしてきやがったのか?」
「た、ただ単に遊びに来ただけですよ」
「やっぱりまた脱走か……」
 有彦はかぶりをふって、部屋を見回した。目の届く場所に目当てのモノはない。
 しかし、とりあえず押入れの中をのぞき込んでみると、それはすぐ見つかった。
「やっぱり……いつの間にこんな所に運び込みやがった」
 有彦の視線の先には、黒光りする巨大な鋼の塊がごろん、と無造作に転がっていた。
 あきれるほどに物騒なその形状は、まさしく戦闘兵器のそれだ。かつて有彦がそれを拾ったときも、その非日常性が彼の好奇心や収集欲を刺激したのだが。
「ええまあ、有彦さんが寝ている間に」
「寝てる間に?」
「有彦さんの身体を乗っ取ってちょいちょいと」
「なるほど、道理で今日はずいぶんと身体が重いわけだ」
 有彦は笑った。
 あっはっはっはっは。
 ななこも笑う、
 あはははは。
「んじゃ、突っ返しに行くか」
 笑顔を崩さず、有彦はななこの本体を担ぎ上げようとした。
「え?」
「こないだ来たの、あれ、テメエのご主人様だろ。あいつに直接突っ返してやる。たっぷり折檻してもらえ」
「それは、無理ではないかと思うのですが」
 有彦の予想に反し、ふふふ、とななこは陰気に笑った。
「有彦さんはどこに住んでいるかわからないマスターのところに私を返しに行けるんですか? もしそうならわたしは有彦さんのことを過小評価していたことになりますが」
「ぐっ……」
 あまりに基本的な事を突っ込まれて、有彦は小さく呻いた。
「それに、いまマスターは不在なのですよ。だからしばらくわたしを取りに来ることもないです。有彦さんの反応くらい考慮済みなのですよ」
 ひひひと笑うななこの表情には、優越感みたいなものまで潜んでいるように、有彦には感じられた。
「ふ、不在?」
「ええ。マスターは時々行方不明になるんです。そして行方不明になるとしばらく帰ってこないのですよ」
 有彦は呻き声を上げた。
 こんなつまらないことで嘘をつく意味など無いだろう。そもそも有彦の目の前で笑っているこの馬モドキは、嘘が壊滅的にうまくない。そしてその様子を見た限り、嘘をついてはいない。ということは、ほぼ間違いなくその言葉が真実だ、と言うことを意味している。
――つまり。
「てこた、要するにご主人様がいなくなって暇だったからオレの所に来た、って事か」
「おお」
 ななこは仰々しく手を打って見せた。勿論、彼女がそんな所作をしても人間のようにぽん、とかぱん、とかいうような効果音は鳴らない。かぽん、とでも表現するのが正しいだろうか――そういう間抜けな音がするだけだ。
「なかなか鋭いのですね。ちょっと意外でしたが、まあ、有彦さんにわかりやすいよう簡単に説明してしまえばそのような事なのですよ」
「そのような事なのですよ、じゃねえっての、全く……」
 有彦はぶつぶつと愚痴を漏らしつつ立ち上がった。
――こいつと話していると調子が狂いっぱなしだ。
「出かけてくる」
「はい、行ってらっしゃいませ。ああ、ついでにわたしのごはんも忘れないでくださいね? 有彦さんは忘れっぽいですから」
 本当に心配げにいうななこに、有彦は小さく舌を打って。
 それから振り向かずに部屋をあとにした。

 


 

  ・闘え!! 有彦君

 

 雑踏の中を歩いていると、すこしはささくれだった気分も収まってきたような感じがした。
 まあ、放っておけばあいつも飽きて帰るだろう。それまで少し我慢すればいいことだ。
 そこまで思い至って、有彦はようやく少しばかり気分が軽くなったのを感じた。顔を上げる。
「ん……?」
 小さな違和感が視界の片隅にあった。
 有彦は無意識に振り返る。
 雑踏に飲まれていく小さな背中。あれは、確かに遠野志貴の屋敷で働いているメイドに違いない。うらやましくも、あのおぼっちゃまは自分のお屋敷に二人もメイドを飼っているのだ。きっと毎日爛れた日々を――
 余計な考えだった。
 ぼうっとしているうちに、有彦の視界からその姿は消えている。
  ――ちがう、そうじゃねえ。
 有彦はきびすを返し、少女が去った方向へと歩む。幸いすぐに少女は見つかった。
 やはり違和感がある。その正体はわからない。だが、有彦の本能が告げていた。こいつは『違う』と。
 ただ、彼女を追ったことに大きな意味はなかった。強いて言えば、これは好奇心だ。退屈な日常の中にふと投げ入れられた小さな小石。その小石がどんな形をしているのか、ちょっと気になってしまっただけのこと。
 だが有彦は知らなかった。
『好奇心は猫も殺す』という言葉を。
 だから、少女がどんどん人通りの少ない路地裏の方に向かっていっても、変だな、とは思っても自分の身に危険が降りかかるなどとは考えていなかった。
 有彦の危機感知能力が甚だしく劣っているなどと言うことは、おそらく無いだろう。友人の、その家族同然の少女の後ろを悪意もなく、ただ好奇心で追跡しているだけなのだ。危険があると考える方がどうかしている。しかし、それでも有彦でさえ記憶にないほど入り組んだ路地の方へと入り込んでしまっていることに気が付いたとき、有彦は一瞬変だな、と感じていた。
 だが、それは遅すぎたのかもしれない。
 少女の足が、止まっていた。場所は路地裏のつきあたり。開発に次ぐ開発でぽっかりとできあがってしまった、意味のない空白地帯。
「ツイセキシャ カクニン」
 少女が平板な、出来損ないのロボットみたいに感情のこもらない声でそう呟いたとき、有彦は今更ながらに自分がとんでもないミスをしてしまったのだと、踏み込んではいけない領域に知らず踏み込んでしまったのだと、悟った。
「ハイジョ シマス」

本編へと続く……

 

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04/06/13再掲