2002年10月20日 【CD新譜】カリユステのマルタン
今のところ、日本の店頭では見ないが、早く輸入してしてもらいたい一枚。
○Kaljuste指揮Netherland Chamber Choir(Q DISC,Q97056)2000年
収録曲:Et la vie l'emporte; Five Ariel Songs; Messe
世界トップクラスの合唱指揮者の一人カリユステがオランダ室内合唱団の首席指揮者であったのは98年から2002年1月までということで、終わってしまったようだ。誠に残念なことで、その期間に、彼はどれくらい、このように記録に残る録音をしてくれたのだろうか。尤も、後任がこれまた世界トップクラスの合唱指揮者、イギリスのスティーヴン・レイトンだから、淋しいだけではないのだが。
それにしても、僕が敬愛してやまないマルタン「ミサ曲」に、カリユステ指揮オランダ室内合唱団というドリーミーなコンビの音源が登場したのは嬉しい。エリクソン盤に、生涯に数度しかないであろう衝撃を受けて、この曲にどっぷり漬かるようになったわけだが、それに匹敵するような名演を行う可能性があるコンビだ。
CDはまず、管弦楽付きのカンタータ「Et la vie l'emporte」から始まる。申し訳ないが、僕には興味がさっぱりわかない作品なのだが、作曲者晩年のこの作品は、マルタンの傑作の一つだという人もいる。100%無視してよいわけはない。
続いて「妖精エーリエルの歌」、こちらは日本でもそれなりに知られている無伴奏合唱曲で、この合唱団のために作曲されたもの。この演奏が実に素晴らしい。僕の手許には、当合唱団創立間もなくの頃の、同曲の演奏を収めたCDがあるが、もう技術的に、信じられないくらい進歩している。加えて表現の幅の広さ、音場の心地よさ。この作品が好きな人なら、是非聴いていただきたい演奏だ。
さて最後にお待ちかね、無伴奏二重合唱のための「ミサ曲」。確かに美しい。びっくりするくらい磨かれている。録音場所の教会の響きも豊かに捉えられている。しかし、これを聴く僕の心は、意外なほどに醒めたままで最後までいってしまった。オランダ室内合唱団の、最近のGLOBEレーベルから出ているCDに多くあてはまるのだが、恐るべき完成度の高さを誇り、技術的破綻の殆どの無い演奏をやりとげてくれるのだが、完璧に近いのが災いして、情感不足、早い話が冷たかったり、音楽的感興に乏しい演奏になってしまうという欠点がある。この「ミサ曲」でも、同様のことが言えるように思うのだ。しかしそれにしても、何て上手なのだろうか。何て美しい、合唱ならではの響きなのだろうか。こんなに美しい演奏を前にして、不満を垂れる僕も僕だが、でも、不満が残ったのは事実なのだから。
なお、細部でいちゃもんをつけるとすれば、アニュスデイで少し、破綻が見えるのが残念。
それから、テンポ設定において、エリクソンの影響下にあることを感じさせる。エリクソン盤を聴き慣れた聴き手には、極めてなじみやすい演奏でもある。
ところでこの演奏、総勢24人でやっており、ダブルコーラスに分かれると、各パート3人ということになる。よく言われるのだが、合唱において一パート3人は、やってはいけないという。パート内の声をそろえる上で、最も不適な人数だということだ。しかしこの統率のとれた演奏に接すれば、「なーんだ、3人だってなんだっていいんじゃん」ということになるだろう。
余り流通しなさそうなレーベルから出ているのが残念だ。不満も述べてしまったが、これまでマルタンの「ミサ曲」を聴いたことがないという人には、せっかくだから、このオランダ室内合唱団盤くらいの名演を聴いていただきたい。それと「エーリエル」の演奏を語る上では、はずせない盤だ。
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