2003年11月16日 【CD新譜】クライバーの「田園」

○Kleiber指揮Bayerisches Staatsorchester(ORFEO,C600031B)83年ライブ

 多くの音楽ファンが、この新譜が出るのを心待ちにしていたことだろう。そしてその中の多くの人にとっては、期待の裏返しの失望も大きかったであろう(そういえばこれまたつい最近の、テンシュテットの「第九」もそうだった)。

 僕にとっても神様であるカルロス・クライバーが、ただ一度だけ指揮したベートーヴェンの交響曲第6番「田園」の83年11月7日ライブ。そう、今からちょうど20年ほど前のこと(ボク、大学一年生だった)。この音源、これまでは持っているとは大きい声ではいえない海賊盤(音も悪い)しかなかったのだが、どういうわけか、指揮者自身が発売を許可したということで、かなり状態の良いステレオ録音で出てくるという、録音嫌いな彼にして、そんなことってあるのねーという物。

 しかし残念ながら最初に書いたように、かなり状態のよいステレオったって、とても素晴らしいとはお世辞にも言えない、音の具合のせいもあるのだろうが、最初の3つの楽章は、何だかせかせかしている感じだけで、他の人に推薦したくなるような音源には、成りえていない。これは、正直言って失望である。

 だが、クライバー・ファンなら、この音源は買わねばなるまい。第4楽章だ。この楽章がこのように演奏されたことは、他にあるのだろうか?もしかして空前絶後の演奏というのがあるとしたら、こういうものなのではないだろうか。カルロスならではのドライブ感に、酔うしかない。そして第5楽章の推進力も、なかなかのものだ。後半2つの楽章は、一聴以上の価値は十分にあるといえるだろう。
 最後のトラックの拍手がとても奇妙だが、これについては解説に書かれてある。客席で聴いていれば、僕がこのCDから受けた印象とは、全く違うものだったのだろう。席から動けないような感動を味わったのだろう。

 それにしても、カルロスは、もう二度と指揮台には上がらないのだろうか。確かに、もうかつてのような切れ味のある音楽を作ることは、年齢的に難しいのかもしれない。しかし、彼を神を崇める多くの音楽ファンは誰しも、もう一度、彼の音楽を聴いてみたい。そう願っている筈である。



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