千原英喜(ちはら ひでき、1957-)
今が旬、という言葉があるが、この文を綴る2001年現在、旬の作曲家といえばこの人に
なるのではないだろうか。となれば、いくら現在は一般発売音源が無い(注 その後、以
下に記すように、全集発売が始まっている)と言っても、注目しないわけにはいかない。
無伴奏混声の「おらしょ」(1998)を中心に、とにかく演奏会プログラムでやたらその名前
を見るのだ。東京芸大作曲家大学院修了。合唱界で注目を浴びたのは、イタリアのアレッ
ツォ国際合唱コンコルソで女声合唱のための「志都歌(枯野という船)」が課題曲に選ば
れたことがきっかけかもしれない。何しろ昨今の合唱界では、時にヒステリックなほどに
無伴奏が重要視される傾向にあるが、千原作品の多くは無伴奏であり、日本の伝統芸能、
民俗的要素を盛り込んでいるし、「おらしょ」などはアマチュアでも手が十分届く範囲で
書かれているから、ようやく日本の合唱団としての個性の表現に目覚め始めた合唱界で注
目されない筈がない。手許には「おらしょ」の他、もう一つの出版楽譜で「唱歌」(しょ
うが)があるが、譜面を見ただけで演奏したくなる。
ではCDではないが、大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団の演奏会記録のカセットテー
プで、代表作となる「おらしょ」を聴く。カクレキリシタンの伝承歌と中世のキリスト教
聖歌を素材とする自由な演奏会用バラード。これは流行るわけだ。規模も手頃だし、内容
は素晴らしい。
○当間修一指揮大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団(2000年6月25日)
いずみホールでのライブ録音。いかにもこの合唱団に合いそうな作品だが、期待通り。
楽譜に書かれた音をここまで美しく再現できる合唱団は、日本には殆ど無い。なおこの
演奏会では、柴田南雄「宇宙について」が演奏されたのだが、同じ素材が「おらしょ」
に登場するのが嬉しい。「しばたやま」のファンなら千原「おらしょ」は絶対おさえて
おくべし。
その後、この演奏家たちは、別のライブ音源をCD発売したので、当然聴いておこう。
○当間修一指揮大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団(OCM,OCM-014)2001年ライブ
作曲者がこの演奏家たちのために書いたアンコールピース「淀川三十石舟唄」も収録。
鈴木憲夫「永訣の朝」「地蔵礼讃」等とカップリング。
同じ演奏家たちで、女声合唱のための「志都歌」もカセットテープで聴ける。
○当間修一指揮大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団(2000年7月23日)
京都アルティでのライブ録音。
さらに演奏家たちの仕事は発展し、「作品全集」の録音が進行中である。「全集」をう
たっての発売は、慶賀すべきことだろう。
○千原英喜作品全集第1巻(OCM,OCM-017C1)2005年
収録曲:銀河の序;弦楽のためのシンフォニア第3番;ラプソディー・イン・チカマツ
○千原英喜作品全集第2巻(OCM,OCM-018C2)2002,5年
収録曲:那須与一;猿楽談義<翁>;阿知女作法;弦楽のためのシンフォニア第1番
○千原英喜作品全集第3巻(OCM,OCM-019C3)2003,5,7年
収録曲:マリア・オリエンタリス;弦楽のためのシンフォニア第2番;どちりなきりしたん
○千原英喜作品全集第4巻(OCM,OCM-020C4)2000,6,7年
収録曲:お伽草子;唱歌;南京玉簾;志都歌;良寛相聞
○千原英喜作品全集第5巻(OCM,OCM-021C5)2007年
収録曲:雨ニモマケズ;文語詩稿<祭日>;種山ケ原の夜の歌−異伝・原体剣舞連
東混の委嘱初演作品、二群の混声合唱のための「阿知女作法 −あちめのわざ−」は、
演奏技術的に非常に難しい。他の作品は、まだついていけそうだ。合唱をやらないという
リスナーにも、日本の伝統を踏まえたこれらの作品を聴いていただきたいと思う。
他の合唱団の録音も少しあげておく。
○近藤惠子指揮岡崎混声合唱団、岡崎高校コーラス部(GIOVANNI,GVCS30903/4)09年ライヴ
合唱団の第30回定期演奏会のライヴ。本プロで「ラプソディー・イン・チカマツ」、ア
ンコールで「南京玉簾」をとりあげている。共に熱演。
今後暫く、千原作品をおっかけて損は無いだろう。
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