八村義夫(はちむら よしお、1938-1985)

 もともと極端な寡作家だった上に生涯も短く、残された作品は極めて少ないのに、それ
らが余りにも強烈な個性で際立つため、日本の現代音楽を語る上で必ず言及される異才。
その八村氏にも2曲の合唱曲がある。71年の「アウトサイダー1(愛の園)」、及び74年
の「アウトサイダー2」。合唱を聴いて気持ち悪くなりたくない人には絶対に薦めないけ
れど、前衛的な音楽に少しでも興味があるなら、何を措いても触れておきたい。前者はウ
ィリアム・ブレイクの詩による無伴奏混声合唱曲で24声部まで広がることがある。多分、
聴き手に恐怖心を抱かせる合唱曲の最右翼だと思う。僕はこの曲の終止が怖い、とにかく
怖い。後者は登山家の遺書、ブレイクの詩、太宰の手紙をテキストにする。こちらの方が
更に前衛度が高く、理解することが難しい。幸い2曲の録音が出ている。
○宮本昭嘉指揮東混(VICTOR,VICG-60156)75年
 アルバムのタイトルは「現代合唱曲選集2」。これはこれで十分な演奏だが、録音状態
 が75年の割には良好とは言えず、ノイズなどが気にならないではない。
○宮本昭嘉指揮東混(VICTOR,VZCC-74〜80)75年
 同音源。こちらは「合唱音楽の領域」7枚組の一部。

 いつかこういう時が来るだろうとは思っていたが、この超難曲にアマチュア合唱団が挑
戦するようになった。「愛の園」のコンクール音源。
○栗山文昭指揮合唱団OMP(BRAIN,BOCD-9508)94年
 上記の東混盤よりは、ずっとサウンド状態がいい。怖い曲というよりはやりたい放題、
 生命力いっぱい、という趣き。この日本をリードする合唱団と指揮者の、永年の努力の
 集大成と位置付けてよい演奏で、驚愕するよりない。これならコンクール大賞も当然。
 これほどまでの集中力が発揮されるならば、コンクールも捨てたものではない。94年の
 合唱コンクール全国大会での栗友会傘下の合唱団の演奏を集めたプライヴェート盤。

 八村氏は「アウトサイダー」を5曲の合唱曲シリーズにする計画だった。完結しなかっ
たのが残念でならない。第1番「愛の園」は21世紀にも残ってほしいと、個人的には願っ
ている。



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