鈴木輝昭(すずき てるあき、1958-)
この拙稿を綴る2000年前後現在、日本合唱界は鈴木輝昭氏のためにある、といっていい
くらいにもてはやされており、またそれだけの内容がある作品を世に送り続ける逸材。何
しろ小学校から一般まで、特にコンクールともなると右を向いても左を向いても鈴木輝昭
作品が並ぶ。もとは器楽作品が多かった筈だが、ここ数年は合唱曲が多過ぎるため他の活
動がよくわからない。後述するが、僕としてはもっと彼の器楽曲が聴きたいのだが。
氏の合唱曲はまず、題材(テキスト)の選択が考え抜かれ、とびきり知性的だ。作曲態
度は純音楽的というか器楽的で、常に新しい音響を指向しているように見える。もう邦人
合唱曲もやるべきことをやり尽くしたようにも思える中で、鈴木氏の挑戦意欲は高く評価
できる。楽譜を見ると音符の量がとても多く、いかにも難しそうに書いているところが、
熱心な合唱人の征服欲を刺激する(これは中高生あたりの若い人にも好かれる大きな要因
だろう)。コンクールで勝てる選曲をするなら確かに鈴木作品がいい。こう言うとよく、
「勝つ選曲なんてけしからん」というお叱りを受けるが、コンクールというのは普通は勝
つために出るのだ(勝っても出続ける団体が多いから問題点が浮上する)から、その目的
を果たすための選曲をするのは当たり前だ。勝つ負けるに興味が無い人はコンクールなど
無視すればよい(それでも楽しい合唱生活は送れる)。
さてここをご覧の皆さんは、恐らくは殆どの方が「鈴木輝昭って素晴らしい」と思って
おられるだろうと想像するし、賛辞は聞き飽きていることだろう。そこで、ここでは敢え
て、鈴木氏を巡る問題点、のようなものを思いつくままに記すことにしたい。
Nコンや全国合唱コンクールなどで、自由曲に鈴木作品が氾濫する現状だが、とにかく
良くない演奏が多いと、最近よく感じる。Nコンの全国大会をテレビで見ていて鈴木作品
が出ると、面白くないから見る気をなくすほどだ。皆、似ているのだ。同じように、「だ
いたい正しい」音で(ということはとても正確というわけではない)歌えていて、声域的
に無理がある演奏。楽譜を見ながら聴くと、もうちょっと正確に歌って欲しいと思うし、
発声の無理を感じさせない声を出して欲しくなる。しかし、この程度の演奏でも、全国大
会に出てきたわけだ。学生だけでなく、一般の合唱団の鈴木演奏も、同様にたいした演奏
でもないのに高く評価される例を見る。勝つために難しい選曲をするのは結構だ。しかし
審査する側は、難曲を楽譜が要求するように歌えていなければ、容赦なく悪い点数を与え
るべきではないのか、ただやればいいのか。審査員の多くは楽譜が読めないのではないか
と勘ぐりたくなってしまう。
演奏の出来、それに伴う審査への疑問は、ちょっと前に同様にコンクールで三善作品が
爆発的に流行した時もあったが、現在の鈴木ブームでは、僕は作品への疑問も感じるよう
になってきている。同声合唱のための「森へ」が初めてコンクールに出てきた頃、僕は、
これで邦人合唱曲も新しい時代に入ったと、大いに感動したものだ。でもなぜ今や、次々
と鈴木作品が歌われると退屈するんだろう?知り合いの合唱人たちの意見も総合して、一
つ思い当たったことがある。メロディーがつまんないんだ、きっと。一聴して印象に残る
メロディーが全く無いのだ。それ以外の音楽を構成する要素はよくできている(と思う)
のに。それから、これはどの作曲家も多かれ少なかれそうなのだが、合唱作品の量が増え
るに連れ、やっぱりワンパターンだと分かってきた。特に、中高生あたりが取り上げるピ
アノ伴奏付き作品。まず無調でガチャガチャした部分で始まり、中間部は3拍子で調性を
とり戻し、ピアノは分散和音を弾いて、ポップス風和声を用いて感傷的にし、また開始部
の雰囲気に戻っていくという、お決まりのパターン。
流行作家だから委嘱初演も非常に多いようだが、完成が遅いという声を知り合い達から
聞く。先日僕が聴きに行った「レクィエム」初演も、事実は不明だが明らかに練習不足を
感じさせた。でも、完成が締め切りギリギリになるのは、何も鈴木氏に限ったことではな
いのだから、氏だけを批判するには当たらない。委嘱初演という行為自体が、賭けだ。
それから僕は、どうも本質的に器楽曲作家ではないかという気がしてならない。もっと
彼の器楽曲が聴きたいのだ、同じ合唱人の皆さんには申し訳ないけれど。鈴木氏の長所は
器楽曲ならもっと発揮されるのではないか。もっと音楽を自在に飛翔させることができる
のではないか。合唱のように、楽譜に書いた音を譜面通りに鳴らすのは基本的に無理(だ
いたいそれっぽい、というのが限界だ)という表現媒体では、作曲者の意図を再現できな
いのではないか。
というわけで、思いつくまま悪いことばかりを書いてしまったが、幾つかの作品で鈴木
氏が成し遂げた業績は、過去の作曲家達が逆立ちしても出来ないような偉大なものだ。だ
から本当は、僕みたいな凡人がこんな発言をしてはいけないのだが、とにかく、つまらな
い演奏が氾濫する現状だけは、何とかしてもらいたいのだ。そのためには、演奏家がもっ
と勉強しなくてはなるまい。合唱連盟の機関紙「HARMONY」2000年春号で鈴木輝昭氏の特
集記事が掲載されている(非常に有益!)が、ここでは大谷研二、藤井宏樹、清水敬一と
という、特に鈴木作品の演奏で重要な役割を果たす3人が作曲者と対談しているのだが、
作曲者だけが一段高いところにいる感じ。最も音楽の才能がある人は作曲家になっている
というのが僕の持論だから、まあ自然にそういう雰囲気の対談になるのだろうが、これが
演奏界の現状なら淋しい。20世紀後半になって、演奏家と作曲家との分業体制が確立され
てしまったが、音楽する能力に格差があまりに大きいようでは困る。
前置きが長くなりすぎたが、音源の話にいく。さすがに複数の一般発売音源がある。コ
ンクールマニアでもない僕はとてもそこまで手が回らないが、作品の網羅を企てるなら、
ブレーン社のコンクール全国大会ライブ音源を買い求めるのも一つの方法だ。では作曲年
代を追って、主な作品とその音源や僕の実演体験などを。例によってセットでしか聴けな
い音源が多数あるから、その存在情報も含め。
■みち(童声合唱、ピアノ)86年
鈴木氏としてはオペラを除いて初の合唱曲らしい。谷川俊太郎のひらがな詩「みち」12
編から8編を選ぶ。セット物音源あり。
○田中信昭指揮多治見少年少女合唱団、ピアノ:浅井道子
「セット講座」第7巻。
■星めぐりのうた(童声、ピアノ)87年
全日本合唱コンクールの選択曲になって広く愛唱される。この曲は確かにめちゃくちゃ
きれいだ、ピアノパートも含め。オペラ「双子の星」からの抜粋だそうだが、同じくオペ
ラ「オリザのねがい」なども、いつかは聴いてみたいものだ。
○菅野正美指揮安積女子高等学校95年ライブ
定演記録CD。後述する「森へ」全曲が聴けるのがポイント。
○菅野正美指揮安積女子高等学校、ピアノ:東みのり
「セット講座」第7巻。95年録音。
■四つの優しき歌(混声、ピアノ)89年
出版されたばかりの頃、「これは三善そっくりの作曲家が現れたものだ」と感じたこと
を覚えている。実際にピアノパートを弾いてみると、正直言って三善作品ほどの輝きは感
じられないが。今でもそれなりに演奏されているようだ。
■ヒュムノス(2群の混声合唱とオーケストラのための)90年
声を管弦楽の一部と位置付け、渾然とした集合体の中での声の融合性、特異性を追求。
これこそ聴いていかねばならない曲(ひぐらしのモティーフの萌芽がみられるということ
だし)だと長らく思い続けていたが、本稿のためにようやく入手した。合唱が奥に引っ込
み過ぎの印象を受けるのが残念。実演の方が、「ひぐらし」が遥かに印象的に響くだろう
と想像される。演奏時間は約20分。
○尾高忠明指揮東京フィル、東混(CAMERATA,32CM-190)90年
90年民音現代作曲音楽祭の記録。カップリングは近藤譲「林にて」と吉松隆「カムイチ
カプ交響曲」。
■三つのオード(女声、ピアノ)90年
■四つの浪漫(女声、ピアノ)91年
この2曲は音源が無いが、余り難しくない女声合唱曲として重要な物になるのだろう。
■はる(混声、ピアノ)90年
僕はよく知らないが、以下のセットに入っている、若い人向け小曲。
○山田靖了指揮一関第一高等学校音楽部、ピアノ:黒川祥子
「セット講座」第17巻、クラス合唱曲集に収録。
■モーツァルトの百面相(童声、ピアノ)91年
僕自身は実演を聴いたことがないのだが、プログラムにのぼっているのをしばしば目に
する。モーツァルトの没後二百年に編曲されたもので、あらゆる分野のモーツァルト作品
を素材にしている。凝りに凝っているところは、編曲者の面目躍如。なお、初演当初は歌
詞が無いヴォカリーズだったということだが、その後、山川啓介氏が歌詞をはめこんだ。
以下の音源も、その版によっている。
○古橋富士雄指揮東京放送児童合唱団、ピアノ:斉木ユリ
「セット講座」第19巻に収録。
その後、この音源は、「TOWER RECORDS RCA PRECIOUS SELECTION 1000」というタワー
レコードが企画した超廉価盤に含まれることになり、広く鑑賞可能になった。まずは、
鈴木作品の代表作の一つが一般発売音源として登場したのだから喜ぶべきことだ。
■ありがとう(Nコン高校の部課題曲)92年
Nコン課題曲としては、まずまず親しまれた方だった気がする。詩は、田三郎作品で
お馴染みの高野喜久雄氏。
○大谷研二指揮東混、ピアノ:鈴木あずさ
「セット講座」第7巻に収録。95年録音
■森へ(2群の童声、ピアノ)92年
作曲者の才能に誰もが驚いた、代表作。鈴木輝昭って?愛用する"ひぐらしのモティー
フ"って何だ?という人は、この曲は聴かねばなるまい。全曲は4つの部分から成り、20
分以上かかる。
○浜崎香子指揮出雲市立第一中学校合唱部&OG(FONTEC,EFCD4092)2003,4年
コンクールで数え切れないほど取り上げられてきたが、それ以外の音源が無かったとこ
ろ、作曲後10年以上を経てようやく登場した一般発売盤。まずはスタンダードと呼べる
高水準の演奏。ピアノは鈴木あずさ氏で、冴えたピアノを聴かせるが、録音の録り方で
少し損をしているかもしれない。他に鈴木氏の無伴奏同声合唱曲3つも聴けるが、やは
りこの曲の存在感は圧倒的なものに感じられる。
○菅野正美指揮安積女子高等学校95年ライブ
定演記録CD。この演奏者たちだから悪いわけはないが、コンクールほどの集中力は無
く、特に、ピアノと合唱のピッチのずれは気持ち悪い。無敵の合唱団のこういう事例に
触れると、コンクールも捨てたものじゃないなと思う。特に印象的な2nd又は4th
scene
が聴きたい人は、コンクール記録CDを求める方がいいだろう。
○古橋富士雄指揮東京放送児童合唱団、ピアノ:斉木ユリ
「セットジュニア」第10巻に収録。97年録音。未聴音源で、この合唱団のことだから、
少なくとも音程だけは正しいのだろう、きっと。
■肖像画・絵師よ(女声、ピアノ)93年
これも難曲で、取り組みがいがある。「肖像画」は桐朋音大の学生、「絵師よ」は安積
女子高校のNコンでの演奏を聴いたことがあるが、いずれもなかなか素晴らしい演奏だっ
たことを覚えている。
○松下耕指揮Brilliant Harmony(Brilliant Harmony,BRIL-2001)2001年ライブ
ライブ録音としては水準がとても高く、評価して良いと思う。
■アルス アンティカ(2群の女声合唱、無伴奏)93年
■ピエリアの薔薇(アルス アンティカ第二番) (無伴奏女声)95年
翌年の混声のための「道成寺縁起」「詞華抄」もあわせ、無伴奏でも新しい世界を開拓
しようとする意欲作。
○松下耕指揮Brilliant Harmony(Brilliant Harmony,BRIL-2001)2001年ライブ
艶やかな女声合唱に耳を奪われる瞬間が多い。
○(PLATZ,PLCC-761国内盤)2002年
アルスアンティカ/菅野正美指揮福島県立橘高等学校合唱団(録音場所:福島テルサ)
ピエリアの薔薇/星英一指揮福島県立安積黎明高等学校合唱団(矢吹町文化センター)
演奏の質の高さ、録音の良さ、解説の充実、価格の安さで高く評価できるアルバム。
■うれしいなクリスマス(童声、ピアノ)93年
編曲物。以下のセット物音源あり。
○東京放送児童合唱団、ピアノ:斉木ユリ
「セットジュニア」第10巻に収録。97年録音。
■はだか(混声、ピアノ)94年
高校生あたりに熱烈に支持される合唱組曲。先ほど僕が書いた、コンクールで皆が揃っ
てつまらない演奏をしているように思えてしまう曲の一つ。それにしても、自由曲として
随分と流行っている。そんなに面白いのだろうか、若い人たちには?詩は谷川俊太郎氏。
子供の眼からみた世界を易しい言葉で描く。
○田中信昭指揮東混、ピアノ:中嶋香
「セット講座」第7巻に収録。95年録音。意外な演奏メンバーだ。
■道成寺縁起(無伴奏混声)94年
この演奏形態の鈴木作品の代表株。というよりも、初演の栗山文昭指揮コーロカロスの
演奏が余りにも素晴らしかった、ということかもしれない。
○栗山文昭指揮コーロカロス
定演記録CD。
■詞華抄(無伴奏混声)94年
岐阜県の合唱団MIWOが初演した、こちらも超難曲。古代ギリシアのサッフォーをテキス
トに使用。しかし、高校生がコンクールの自由曲にするほどになってきた。
■愛唱歌抄1、2(女声)95、96年
編曲物。1は日本、2はヨーロッパの愛唱歌がネタ。決して易しくない。
■赤とんぼ(童声)95年
これも編曲物。セット物音源があるようだ。
○古橋富士雄指揮東京放送児童合唱団
「セットジュニア」第10巻に収録。97年録音
■海をうしろへ(女声、ピアノ)95年
それほど難しくない女声合唱曲の一つ。抒情的なピアノパートだけを弾くのも楽しい。
■もうひとつのかお(混声、ピアノ)95年
同じ谷川俊太郎の詩を使用する「はだか」「ひみつ」同様、若い人に好かれる一連の組
曲の一つ。都会的な愛を描く。
○藤井宏樹指揮うたあい+クーネル・コエンデン、ピアノ:鈴木あずさ
(VICTOR,VICG-60139)99年
決して悪い演奏ではないのだが、中高生のコンクールで感じる、どこもやってしまう同
じような演奏、と当盤のこれは共通点があるように思う。
■朱鷺(女声、ピアノ)95年
これもそれほど難しくない女声合唱曲の一つで、やはり、抒情的なピアノパートだけを
弾くのにも好適。これくらい素直だと、却っていいと思う。旋律も悪くない。
○藤井宏樹指揮女声アンサンブルJuri、ピアノ:花田美佐子(VICTOR,VICG-60139)98年
今や日本を代表する女声アンサンブルに成長したJuriだが、この録音は冴えない。まず
単純な話、高音が苦しそうで、音楽表現にマイナスに作用している。しかし同じ盤に収
録の「クラーンリル」におけるJuriは、この点は悪くない。録音条件によるのかもしれ
ない。ピアニストがとても良いが、田中瑤子氏に褒められた人ということだ。
■この夢を(Nコン中学の部課題曲)95年
僕自身は余り印象に残らなかったが、中学生には好かれたのだろうか?
■大地はまだ(混声、ピアノ)96年
「もうひとつのかお」などと同様、余り難しくない混声の組曲の一つ。
○大谷研二指揮東混、ピアノ:鈴木あずさ
「セット講座」第7巻に収録。95年録音。全曲ではなく、「5月の風は…」と「日々あ
たらしく」の2曲を抜粋。
■オーダエ カルミヌム(無伴奏混声)96年
東混委嘱初演作品で、僕は当然その初演を聴きに行った。その模様はCDにもなってい
る。「道成寺〜」などと並んで、無伴奏混声のための力作。古代ローマの詩人ホラーティ
ウスによるテキスト。
○大谷研二指揮東混(FONTEC,FOCD3419)96年ライブ
○藤井宏樹指揮合唱団ゆうか(VICTOR,VICG-60139)
もし皆さんがこの曲のCDを手許に置きたいなら、後者を推薦したい。こういう演奏が
可能なのだから、日本のアマチュア合唱は、そら恐ろしい。藤井氏という指揮者は、そ
の音楽作りが時に濃厚過ぎて胸焼けがするだけ、ということもあるが、鈴木輝昭作品ほ
どに複雑な音楽の方が向いているように思う。
■合唱オペラ「森」(混声、打楽器、ピアノ)97年
宇都宮大学委嘱初演。これは一度見てみたいと思っている、今後の課題。出版譜あり。
■5 Songs of Nonsense(童声)97年
無伴奏の同声合唱曲で、しばしば演奏されている。
○浜崎香子指揮出雲市立第一中学校合唱部&OG(東芝,VICS-61096国内盤)2001年
録音時、中学合唱で全国の最高峰クラスにある学校による、待望の一般発売盤。
○藤井宏樹指揮女声アンサンブルJuri(NAR,NAR2005)2001年ライブ
大人の女声が歌うとどうなるか、という例。それにしても素晴らしいアンサンブルだ。
○桑原妙子指揮小田原少年少女合唱団
「セットジュニア」第10巻に収録。97年録音。
■女に第一集、第二集(女声、ピアノ)97、99年
久しぶりの、難曲志向の、ピアノ伴奏付き女声合唱組曲。コンクールで流行中。安積女
子高校がコンクールで毎年少しずつとりあげている。
○菅野正美指揮安積女子高等学校(VICTOR,VICG-60158)99年
素晴らしい演奏だ。でもその割に、僕自身は余り感動しないのは、この項の頭に書いた
鈴木作品への疑問が特にあてはまる曲、ということなのかもしれない。
■ハレー彗星独白(男声、ピアノ)97年
遂に男声合唱に進出。当然のことながら、男声合唱団が喜んでとりあげている。相当の
難曲で演奏する方は大変だが。以下のセット音源以外では、栗山文昭指揮KuuKaiの定演記
録を聴いたことがある。
○大谷研二指揮東混、早稲田大学グリークラブ、ピアノ:鈴木あずさ
「セット21世紀」第12巻。こういうの、一般発売されるとよいのに。
■獅子の子幻想(女声または同声、ピアノ)98年
新潟県の吉田フラウエンコールの委嘱作品。「朱鷺」に続き、鈴木作品としてはわかり
やすい方だが、やはりこれとて、平易とはいえない。蓬莱泰三氏のテキストによる。
○浜崎香子指揮出雲市立第一中学校合唱部、ピアノ:鈴木あずさ(PLATZ,PLCC-761)2002年
中学生にここまでやられると脱帽するよりない。ちょっと無理もあるかなあとは思うけ
れど、内容を懸命に表現しようとする意欲にうたれる。
■宇宙の果物(混声、ピアノ、女声版あり)98年
宗左近氏の、他の作曲者も扱うテキストが鈴木氏によって音化されている。
○松下耕指揮Brilliant Harmony(Brilliant Harmony,BRIL-2001)2001年ライブ
女声版。ライブとしてはなかなかの高水準。
○大谷研二指東混、ピアノ:鈴木あずさ
「セット21世紀」第12巻に収録。混声版全曲と、女声版の第1、4曲を演奏。
■ひみつ(混声、ピアノ)98年
「はだか」の続編といえる組曲。これがまた、コンクールで流行っている。
○藤井宏樹指揮合唱団ゆうか、ピアノ:鈴木あずさ
「セット21世紀」第12巻に収録。
■クラーン リル(無伴奏女声)99年
古代ケルトの伝説を素材とする(作曲者の興味関心の広汎さに脱帽)。
○藤井宏樹指揮女声アンサンブルJuri(VICTOR,VICG-60139)99年
この演奏は素晴らしいと思う、評価。Juriだからこそ、曲も映える。聴き手に不快感を
与えない、十分に美しい声と、音楽作りにおける器楽的アプローチの確かさが組み合わ
せられ、高度な音楽表現をもたらしている。
■星翠譜(無伴奏女声)99年
宮沢賢治の星にまつわる短歌をテキストにする、5曲から成る組曲で、幻想的な音世界
を現出。Juriの定演における初演の記録を聴いたが、その演奏には賛辞しか出てこない。
○松下耕指揮Brilliant Harmony(Brilliant Harmony,BRIL-2001)2001年ライブ
鈴木作品だけのアルバムで貴重な音源。
○藤井宏樹指揮女声アンサンブルJuri
「セット21世紀」第12巻に収録。
■みみをすます(童声、管弦楽又はピアノ)99年
谷川俊太郎の有名なひらがなによるテキストを使用。15分弱程度の長さ。
○浜崎香子指揮出雲市立第一中学校合唱部、ピアノ:鈴木あずさ(東芝,VICS-61096
国内盤)2001年
ピアノ伴奏による。クライマックスで傷があるのは惜しい。
■ 7 Songs of Nonsense(童声)2001年
こういうのが21世紀の無伴奏邦人合唱曲のスタンダードになっていくのだろうか。
○浜崎香子指揮出雲市立第一中学校合唱部&OG(東芝,VICS-61096国内盤)2001年
録音時、中学合唱で全国の最高峰クラスにある学校による、待望の一般発売盤。
■イーハトーヴ組曲(童声、ピアノ)2001年
87年の「星めぐりの歌」を第1曲とする全6曲の組曲。合唱とピアノの絡みが、なかな
かに心地よい。
○浜崎香子指揮出雲市立第一中学校合唱部、ピアノ:鈴木あずさ(東芝,VICS-61096
国内盤)2001年
アルバム中でも、良い出来栄えになっているのではと感じる。
■古謡三章(無伴奏女声)2001年
能の謡い本に題材を求め、巴、羽衣、殺生石の三曲から成る。しかし能の舞台を濃厚に
感じさせるのではなく、純粋な無伴奏女声合唱曲として作曲されている。
○大竹隆指揮福島県立葵高等学校合唱団(PLATZ,PLCC-761国内盤)2002年 税込2,300円
葵高校は旧会津女子高校。さすが、優れた演奏だ。
■朗詠譜(二群の童声(女声)合唱)2001年
雅楽に題材を求め、朗詠、越殿楽今様、催馬楽の三部からなる。
○浜崎香子指揮出雲市立第一中学校合唱部(FONTEC,EFCD4092)2003,4年
「森へ」など、鈴木輝昭作品だけのアルバムで、演奏水準は非常に高い。
■遠野幻燈(二群の童声合唱とパーカッションのための詩曲)2002年
題材を「遠野物語」に求め、構成・作詩は大橋容一郎氏。演奏時間は20分強。パーカッ
ションが入るのは、器楽音楽作家鈴木輝昭をもっと聴きたい僕としては嬉しい。
○古橋富士雄指揮東京放送児童合唱団(VICTOR,VICS-61117)2002年ライブ
この合唱団の創立50周年委嘱初演時のライブ。なかなかいい具合に音がとれている。
■情憐戯画(混声合唱、パーカッション)2004年
パーカッションが目覚しく活躍する。上記の「遠野幻燈」と似た快感がある。
○向井正雄指揮Vocal Ensemble 《EST》(GIOVANNI,GVCS30401国内盤)2003年ライブ
第2曲のみで、さらに間奏部分省略で演奏されたもの。
■梟月図(無伴奏同声合唱)2004年
宗左近の童謡集「梟の駅長さん」から5編のテキストを採る。
■ティル ナ ノグ(無伴奏同声合唱)2004年
古代ケルトの伝説に題材を求めた点は「クラーンリル」と同様だが、作曲者としては、
童声だけに表現可能な音楽を志向して、この作品を書いたということだ。
以上2曲を同じアルバムで。
○浜崎香子指揮出雲市立第一中学校合唱部&OG(FONTEC,EFCD4092)2003,4年
2001年の「朗詠譜」も含む、鈴木輝昭作品だけのアルバムで、OGが加わった「梟月図」
は特に優れている。
■詩篇(女声合唱とピアノのための組曲)2003〜5年
与謝野晶子の詩による、全5曲から成る組曲。相当に難度が高く、詩の激しさに作曲者
が呼応しているのが伝わってくる。
■火へのオード(女声合唱とピアノのための組曲)2003〜6年
新川和江の詩による、全6曲から成る組曲。ピアノが入ると音楽に精彩が富んでくる。
以上2曲を同じアルバムで。
○星英一指揮安積黎明高、菅野正美指揮橘高、ピアノ:鈴木あずさ(VICTOR,VZCC83)2006年
その後も、委嘱作品、またその出版譜が続々なのは周知の通り。今後もフォローしてい
きたいと思う。
それにしても以上の記述をご覧になれば、僕がそれほど夢中になっていないことがおわ
かりいただけただろう。これから合唱を志す若い人たちには、かつて僕が若い頃、三善晃
の音楽の虜になっていたように、鈴木輝昭作品を十分に研究して、少しでも作曲家の知性
に追いつけるようになっていただきたいと願う。
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