寺島尚彦(てらしま なおひこ、1930-2004)

 なぜだか最近ブレイクしている日本の歌に「さとうきび畑」があるが、その作詩および
作曲がこの人、寺島尚彦氏。曲自体は多くの人が知っているだろうから、まずは何も言わ
ずに同曲の混声合唱版を、寺島作品の多くを初演している平松混声合唱団のCDで、つい
でに参考までに同団体の他CDに収録の小曲を聴いてみる。寺島+平混で初演された作品
は非常に多いようだが、一般に広く演奏されるに至った作品は多くはない。
○平松剛一指揮平松混声合唱団、ピアノ:渕上千里他(FONTEC,EFCD4091)2004,5年
収録曲:小さな協奏曲; ことりがそらを; さあ!!; ぼうし; 海の比喩;
 街は大きくなりすぎた; 風のマーチ; 百日紅; 海を見たくない今は; 鎌倉は子守歌;
 風のたんぽぽ; 野菜サラダ物語; この日; 雨よふれ; レクイエムのように子守歌;
 さとうきび畑; 音楽界の菫
 寺島作品だけのアルバム。歌謡曲歌手が一人で歌う「さとうきび畑」もいいけれど、平
 混くらいに日本語歌唱が上手いと、これはこれで大いに楽しめる9分間だ。「さとうき
 び畑」以外にも、愛すべき小品が多数収録されている。曲としては「海を見たくない今
 は」や「鎌倉は子守歌」に音楽の力を感じる。最後の「音楽界の菫」のみ2001年ライヴ
 で、作曲者のピアノと電子オルガン(本橋麻衣子)が加わり、会場の手拍子で楽しい雰
 囲気。
○平松剛一指揮平松混声合唱団(FONTEC,FPCD2266)
 ここから4枚はプライヴェート盤。寺島氏の合唱曲として最も有名な一つである「夕な
 ぎの海」の混声版と、それに比べると知名度は高くないが「海を見たくない、今は」も
 収録。
○同(平松混声合唱団,KHC004)
収録曲:果物の時間、鎌倉は子守歌、さとうきび畑
 プライヴェート盤。こちらでも「さとうきび畑」が聴ける。「瑠璃色の地球」というタ
 イトルのオリジナルCD。
○同(FONTEC,FPCD1821)
収録曲:果物の時間、風のマーチ、野菜サラダ物語、夢みる大三郎
○同(FONTEC,FPCD2735)
収録曲:レクィエムのように子守歌、暮れかた〜バリ島の浜辺で
 「暮れかた」にはトランペットソロが入る。

 僕が初めて聴いた寺島氏の合唱作品は、Nコン中学の部課題曲「景色がわたしを見た」
だった。これが、殆ど歌謡曲的な美しいメロディーラインと和声で作られていて、Nコン
の課題曲としては異色の存在。でも僕は、こういう路線が実は嫌いじゃないこともあり、
とても気に入ったし、今でも恥ずかしながら好きな小曲だ。結局、寺島作品の魅力の第一
は、一聴すればすぐに耳を捉えるメロディーの美しさ。この「景色〜」を含む同声合唱の
ための組曲「青い麦」(前述の「夕なぎの海」もこの組曲に収録)については、平混の出
身母体である都立八潮高校合唱団のLPを大切に持っている。合唱団の人数はごく少ない
が、この団体らしい、実に美しい歌唱で気に入っているが、残念ながらCD化されていな
い。同じLPにカップリングされた混声合唱曲が、別の作品とともにCDになり、一般発
売されている。
○火龍/平松剛一指揮平松混声合唱団、コントラバス:中博昭、ピアノ:菊池大成
花のながれのなかに/同指揮都立八潮高校合唱団、ピアノ:同(FONTEC,EFCD3077)87,91年
 いずれも関根榮一氏の詩による組曲。「火龍」(さらまんどら)は混声合唱とコントラ
 バスとピアノのためのロマン、という副題付きで、コントラバスが必要とは実に珍しい
 編成。これは91年のライブ録音で、会場ではさほど気にならなかったかもしれないが、
 録音になると、コントラバスとピアノのピッチの差が気になる。曲としては、僕は冗長
 気味に感じるが、いかがだろうか。「花の〜」の方も美しい旋律に彩られてはいるが、
 僕個人の感想としては、LPで併録の「青い麦」に比べると一歩劣るように感じる。

 外国の合唱団が素晴らしく歌った例。
○Banchieri Singers(BANCHIERI SINGERS,BS-007)
 谷川俊太郎のテキストによる「日本語のお稽古」という4分に満たない無伴奏混声合唱
 曲。アンサンブルが極上なのに加え、日本語が実に上手い、拍手喝采!

 では以下に、セット物音源の存在を指摘しておく。
○青い麦(全曲)/宍戸悟郎指揮札幌大谷フラウエンコール、ピアノ:海江田尚子
 「セット講座」第11巻に収録。
○五つのスケッチ、ぼくらは歌う、ことば(「友だち」より)/
 長谷川冴子指揮東京少年少女合唱隊、ピアノ:デイヴィド・スタイン
 Sing Together、欅、ことりがそらを/志水隆指揮杉並児童合唱団、ピアノ:津嶋麻子
 さとうきび畑/鶴渕信子指揮浦添少年少女合唱団、ピアノ:平良久美
 線路/三輪裕子指揮練馬児童合唱団、ピアノ:植田冨美子
 「セットジュニア」第1巻。こういうの、一般発売になればよいのに。

 非常に残念なことに2004年にお亡くなりになった。彼の合唱曲は最後まで、歌ごころを
そそる旋律いっぱい、若々しい音楽に溢れていた。世の合唱曲が徒に高難度に向かう中、
寺島作品のように歌いやすくて、かつ感触は軽くない音楽の存在は貴重と思うのだ。これ
からも歌い継がれて欲しいと、強く願う。



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