ハーバ(HABA,Alois、1893-1973、チェコスロヴァキア)
微分音を駆使した作曲家ということで、ハーバは避けられているのかもしれない(僕は
昔、アメリカのバーバーと名前を混同していた)。しかし、以下に掲げるディスクは、意
外なほどに楽しめる。初期にはスクリャービン風のピースを書いていたこともわかるし、
ジャズの影響を受けたものもある。ディスクの最後に収録された「トッカータ、幻想曲風
に」と「6つのムード」は調性が曖昧だが、これらは現代のピアノ曲のレパとして、もう
少しとりあげられてもいいのではと思う。喰わず嫌いをせず、聴いてみるものだ。
○Visek(SUPRAPHON,SU3146-2 131)96年
収録曲:Scherzo,Intermezzo op.2-1/2; Six Piano Pieces op.6; Four Dances
op.39;
Shimmy-Fox; Romance; Waltz; Toccata,Quasi una Fantasia op.38; Six Moods
op.102
八村義夫(HACHIMURA,Yoshio、1938-1985、日本)
八村義夫氏の残した数少ない作品は、いずれも密度が高いと言われる。それは合唱曲の
「愛の園」もそうだが、ピアノ関係でもあてはまる。
まずは管弦楽曲「錯乱の論理」を聴いておかなければならない。手許には2種類。
○ピアノ:渡辺康雄、尾高忠明指揮東京都響(CAMERATA,30CM79/82国内盤)80年
○ピアノ:高橋アキ、尾高忠明指揮大阪フィル(CAMERATA,30CM83/6国内盤)86年
ピアノ独奏曲では「彼岸花の幻想」。桐朋音大の子供のための音楽教室用の出版楽譜の
中で、ひときわ異彩を放つ、演奏至難な小品。もちろん、わかりやすい作品では全くない
が、これは注目すべき現代ピアノ曲だと思う。
○松谷(CAMERATA,32CM-318国内盤)93年
アーン(HAHN,Reynaldo、1875-1947、フランス)
歌曲に少し興味を持つと、アーンは当然に視野に入ってくるし、この人にピアノ独奏曲
があると聞けば、歌曲のような素敵なピースがあるに違いないと探索するのも当然だ。
○Favre-Kahn(PROPIANO,PPR224538)2003年
収録曲:Premieres valses; Portraits de Peintres;
Orient,extrait de l'Album d'un Voyageur; Sonatine en ut majeur
超美人ピアニストとして売り出し中のファーヴル=カーンによるアーン・アルバム。よ
く言われる通り、サロン的小品の集合体である。この中では、「ソナチネ」に最も好感
を持った。ピアノ初学者のソナチネがクーラウやクレメンティばかりでなく、こういう
のも混ざるといいと思う。集中して聴き通せるものでもないが「Premieres Valses」に
佳品が多い。特に第3番「Ninette」など。使用ピアノはハンブルク・スタインウェイ。
○Wild(IVORY CLASSICS,72006)2001年
巨匠アール・ワイルドによる「Le Rossignol eperdu道に迷ったナイチンゲール」全53
曲を収録した2枚組。ペダルの踏み替え音もばっちり拾われた、ピアノにマイクが近す
ぎる録音もあり、親密な雰囲気。平和な曲が多いために、連続して聴くと正直言って退
屈するが、たまに目覚しく美しいトラックがある。例えば気に入ったピースをあげると
第2,3,34,40,48番など。
落穂拾い。
○Hough(DANACORD,DACOCD419)93年
歌曲「La Barcheta」をSteeleがピアノ独奏に編曲したもの。さすがはハフ、旋律の歌
いまわし、中間部の盛り上がり、実に上手い。
○Nettle & Markham(CARLTON,30366 00142)93年
2台ピアノのための「Pour berer un convalescent no.2」。名ピアノデュオのアルバ
ム「In France」に選ばれた小曲。
この他、ハイペリオン・レーベルからピアノ協奏曲が出ているし、セルメットとクン・
ウー・パイクが組んだ2台ピアノ作品集など、興味をそそるアイテムがあるが、未聴。
アムラン(HAMELIN,Marc-Andre、b1961-、カナダ)
これが弾ければ昇天:前奏曲とフーガ
アムランは、史上最高のピアニストの一人である。僕はヨーゼフ・ホフマンを生で聴け
た世代ではないし、シフラやホロヴィッツの全盛時代のライヴに触れることもできなかっ
た。でも、僕らより上の世代で、アムランを聴くことができなかった人たちも大勢いるわ
けである。どうだ、と胸を張りたくなるほどのピアニストが同世代にいる喜びを感じる。
彼もまた、コンポーザー・ピアニストである。その作品は基本的に、彼自身の超絶技巧
を生かすためのもので、ショパンによる「トリプル・エチュード」など、その最たるもの
だ。僕は特に、「前奏曲とフーガ」に畏敬の念を覚える。自分がアムランであるという証
が、この曲に凝縮されている(変な日本語)。
ただし彼の作品はソラブジにも似て、正直言って聴いて気持ちよくなれるとは限らず、
基本的には大衆ウケの要素は薄い。音楽之友社から「Con Intimissimo Sentimento」が出
版されており、何と本人の演奏によるディスクまで付いている(日本って本当にいい国)
が、この技巧的には困難度が低い小品集も、演奏会のアンコールで弾かれても、困る人の
方が多いだろう。従って、万人に薦めたいとは全く思わない。
以下のアルバムでは、最初の2枚が特にお薦め
○Hamelin(DANACORD,DACOCD399)92年
収録曲:Triple Etude(Chopin)
○Hamelin(HYPERION,CDA67050)98年
収録曲:Etude No.9,10; Prelude and Fugue
○Hamelin(DANACORD,DACOCD559)2000年
収録曲:Music box;Se tu m'ami(Tribute to Pergolesi)
いずれも「Con Intimissimo Sentimento」に含まれる2曲。
○Hamelin(HYPERION,CDA67275)2001年
収録曲:Etude No.3,6
今後においても、魅力的な作品が生まれることを望みたい。
ヘンデル(HANDEL,Georg、1685-1759、ドイツ)
ヘンデルの鍵盤のための組曲は、ピアノで弾かれないこともないレパートリー。第1集
は8曲、第2集は7曲から成る(HWV番号で426〜441)。言うまでもないが、ことに組曲
第5番に含まれる変奏曲「調子のよい鍛冶屋」は人気曲。僕としては、是非自分でも弾き
たくなるという曲でもないが、やはり一度はチェックしておきたい。組曲を集めた有名な
CDでは、リヒテルとガブリーロフが弾き分けたアルバム(EMI)があり超廉価盤で求める
ことができるが、手許には無い。まずは組曲の抜粋から。
○Larrocha(PHILIPS,456886-2)86年
組曲第5番。何を弾いても自然な音楽美を表現するのに長けたピアニスト。「調子のよ
い鍛冶屋」の最初の音で、一オクターヴ低い音を追加している。
○Gekic(PALEXA,CD-0512)98年ライヴ
組曲第2、5番。柔らかさと鋭さを同居。使用ピアノはFAZIOLI。録音全体に残響が乏
しい印象で、もっと音が良ければ感銘深いのに、と残念に思う。
○Heidsieck(TEICHIKU RECORDS,TECC-28036国内盤)89年ライヴ
第2番よりアダージョ、第9番よりクーラントを抜粋。コンサートのアンコールとして
演奏。なるほど、演奏会で、このようにヘンデルを、しかも2曲を並べて、使うことも
できるのか。
○Gavrilov(PHILIPS,456787-2)79年
上記の組曲集とは別の「組曲ニ短調HWV447」。第3曲のサラバンドが曲・演奏とも印象
的だ。これも上記のゲキチ盤と同じで、音に潤いが無いのが残念。
次に編曲物。
○Wild(SONY,SK62036)95年
ワイルドが手を加えた「調子のよい鍛冶屋」。確かに、このように音を加えたくなる気
持ちはわかる。
○Himy(BNL,112822)92年
○Kempff(DG,439108-2)75年
組曲第9番HWV434からの「メヌエット ト短調」にケンプが手を入れたもの。これは実
に美しい。オペラ・ファンにもウケそうなメロディーがいい。自作自演盤あり。
○Piano4te(ARS PRODUKTION,FCD368428)2001年
オラトリオ「メサイア」の中で、ハレルヤコーラスに次ぐ合唱の名曲「For unto
us a
child is born」を、ツェルニーがピアノ1台6手に編曲したバージョン。僕はこのク
リスマスアルバムが大好きで、その中でも代表的なトラック。推薦。
○Howard(HYPERION,CDA66371/2)89年
歌劇「アルミラ」のサラバンドとシャコンヌによるリストのトランスクリプション。演
奏時間は10分を超える。低音ブチ鳴らし系としては、楽しい作品。これはそもそも、原
曲のオペラの音源が極めて少なく、僕が持っているcpoレーベルの全曲盤は貴重。
○Bartoli(TIMBRE RECORDS,DMHCD6)97年
○Jones(NIMBUS,NI5255)90年
有名な「水上の音楽」を素材とする、グレインジャーのトランスクリプション。演奏の
楽しさという点ではジョーンズ盤の方が優れている。
ハンニカイネン(HANNIKAINEN,Ilmari、1892-1955、フィンランド)
舘野泉氏によるフィンランドのピアノ音楽は贔屓にしているため、ハンニカイネンも当
然にチェックすることになる。同氏による複数音源があるが、まずはハンニカイネンのピ
アノ独奏曲だけのアルバムを聴いておくとよい。
○舘野(FINLANDIA,577082)83年
収録曲:幻想変奏曲;5つの小品 op.20;子守歌 op.4-2;会話 op.11b-3;ワルツop.17-1;
夕べに;鬼火 op.4-4
最初に収録された「幻想変奏曲」は演奏時間25分超で、舘野氏はラフマニノフの変奏曲
に匹敵する作品として評価している。主題と最初の幾つかの変奏は、どうも野暮ったい
感じだが、徐々に音楽が高まってくる。他の小曲はわかりやすい。不器用なほどに和音
を厚くするのが良くも悪くも特徴と感じられるが、いずれにせよ抒情は捨てがたい魅力
がある。大作の「幻想変奏曲」を除き、収録曲は全て全音刊の国内版楽譜に収録されて
いる。
ハンソン(HANSON,Howard、1896-1981、アメリカ)
その保守的な作風で交響曲などの隠れた人気があるハンソン。ならばピアノ曲も、きっ
とわかりやすい叙情的ピースがあるだろうという予想は、このアルバムで当たりであるこ
とを確認することができる。
○Labe(NAXOS,8.559047)99年
収録曲:Two yuletide pieces op.19;Poemes erotiques op.9;Sonata in a minor
op.11;
Three miniatures op.12;Three etudes op.18;Enchantment;For the first time;
Slumber song;
僕は、こういうの、嫌いじゃない。雰囲気が、邦人合唱曲のピアノ伴奏によく似ている
のだ。右手に美しい旋律を持たせ、左手は分散和音で、全体的にロマンティック。これ
を見逃しておくわけにはいかない。特に良い作品を指摘すると、「3つのエロティック
な詩op.9」の第3曲。ピアノソナタの終楽章は力がこもり過ぎな感もあるが、これはこ
れで見逃せない。「3つの練習曲」の第2・3曲がまた、先ほど述べたように合唱伴奏
的。「For the first time」という小曲集は、ここまでの収録曲からは想像できない無
調の作品だが、テンポの速い曲は、耳を引く。
もう少し、好まれても良いのではないだろうか。
ハリス(HARRIS,Roy、1898-1979、アメリカ)
20世紀アメリカの交響曲を語る場合などに、ロイ・ハリスの名前が登場してくることが
多い。ピアノ関係も協奏的作品が複数あるし、独奏曲もある。「ピアノソナタ」ぐらいは
チェックしておく。
○Shields(VOX,CD3X3027)75年
ピアノソナタは15分未満の規模で、作品番号が1番。3つの部分が切れ目なく演奏され
る。正直言って僕はピンと来なかったが、ナディア・ブーランジェに師事した頃に書か
れたものとされていることも、人によっては興味をそそられるかもしれない。力感のこ
もった作品であることは疑いない。
なおこの3枚組のアメリカピアノ音楽特集アルバムで、Hで始まる作曲家のラグタイム
が2つ聴ける。Charles Hunterの「Possum and Taters」とRobert Hamptonの「Cataract
Rag」で、特段に指摘するほどの特色があるわけではないが、気楽に楽しめる。
橋本国彦(HASHIMOTO,Kunihiko、1904-1949、日本)
橋本国彦の歌曲を聴くと、この人には、とんでもない曲がたくさんあるのではないか、
と想像してしまう。そうなると、ピアノ独奏曲も聴いてみたくなるが、小川典子氏による
日本のピアノ独奏曲集「Just For Me」に、全音ピアノピースで出版されていた1934年の
3曲を聴くことができる。いずれも、それなりの良さがある。
○小川典子(BIS,BIS-CD-854)96年
収録曲:雨の道;踊り子の稽古帰り;夜曲
このアルバムに、「は」行の作曲家では早坂文雄氏の「秋」も収録されており、これも
独自の味わいがある。
林光(HAYASHI,Hikaru、b1931-、日本)
林光氏の作品数は多く、僕もピアノ曲について全貌を把握しているわけではない。音源
の形で手許にあるのは少ない。
○志村泉(COLUMBIA,COCO78457国内盤)83年
収録曲はいずれも80年前後に書かれた「第2ピアノソナタ《木々について》」と、「島
こども歌2」からの抜粋。僕自身の好みで言うと、この時期の沖縄音素材を使用した作
品には、それほど惹かれない。
○舘野泉(AVEX CLASSICS,AVCL-25119)2006年
左手のためのピアニストとして活動を始めた舘野氏による、3枚目の左手のための独奏
曲だけのアルバム。林作品は新作「花の図鑑・前奏曲集」で、終曲に親しみやすさが覗
く。他の収録曲は末吉保雄、谷川賢作両氏の新作を収録し、アンコール的にシュールホ
フの小曲「アリア」が弾かれている。
これまでに聴いたことがある林氏のピアノ作品で、最も気に入ったのは、技術的にはご
くごく簡単な小曲集「もどってきた日付」の収録曲のうちの幾つかであるように思う。志
村泉氏によるCDもある。これってソング。合唱愛好家の好みだから、こうなるのかも。
ハイドン(HAYDN,Joseph、1732-1809、オーストリア)
ハイドンのピアノ曲と言えば、やはりピアノ学習者にとっての原点は、ピアノソナタの
中でも有名な作品ということになるのではないだろうか。僕の場合、自宅に、父が買って
くれた、ごくごく少ないクラシック音楽のLPの中に、アントルモンが弾くソナチネ、ソ
ナタアルバムというのがあって、それでハイドンのソナタを少し聴いた。それで初めて接
した「ピアノソナタ第50番ニ長調」の第2楽章のニ短調のラルゴに、子供心に衝撃を受け
た。何て荘厳なんだろう。それ以来、ハイドンの音楽に接する度、あの楽章を越える音楽
が無いという感想を持ち続けて、今日に至っている。いやほんとに、短いながら、凄い楽
章なんだから。
そのピアノソナタだが、番号の数え方が2通りあり、ホーボーケン番号によるものと、
ランドン版による62曲の数え方にのっとったものがあり、コンサートやCDでの表記でも
混在している状況である。ホロヴィッツも弾いた、最も有名なソナタである変ホ長調も、
「第52番」と「第62番」という二つの呼称が並存しているので、注意が必要だ。
さて、僕はハイドンのピアノ曲をCDで聴いて全体像を掴むのに、どの盤がいいのか、
ずっと思案していた。そこで目に留まったのが「GRAMOPHONE GOOD CD GUIDE」に掲載され
ているジョン・マッケイブ盤(DECCA)である。12枚組で、ピアノソナタはもちろん、変奏
曲や小曲、そして「十字架上の七つの言葉」のピアノソロ版まで網羅している。価格は超
廉価で、日本の店頭では1万円を少し超える程度で売られている。僕もまず、これを全て
聴くところから初めよう。なおピアノソナタのうち第21〜27番は断片のみで、録音では省
略される。
○McCabe(DECCA,443785-2)74〜77年
ピアノソナタ第1〜20、28〜62番
ピアノソナタ変ホ長調Hob.XVI:16
ピアノソナタ変ロ長調Hob.XVI:17
5つの変奏曲ニ長調
7つのメヌエットHob.IX:8
変奏曲ヘ短調Hob.XVII:6
幻想曲ハ長調Hob.XVII:4
12の変奏曲変ホ長調Hob.XVII:3
アダージョ ヘ長調Hob.XVII:9
6つの変奏曲ハ長調Hob.XVII:5
20の変奏曲イ長調Hob.XVII:2
カプリッチオ ト長調Hob.XVII:1
十字架上の七つの言葉
ハイドンは交響曲でも、104曲もあるのに、今日でも演奏されるのは、いわゆる「ザロ
モンセット」ばかりである。ピアノソナタについても、番号が大きくなるにつれて面白
くなってくるのが、この12枚組を聴いているとわかる。CD8以降(第47番〜)になる
と、俄然感銘が増してくる。それから小品については、有名なヘ短調の変奏曲だけが有
名な理由がよくわからないほど、他の作品もそれなりに充実している。また注目は、50
分以上におよぶ、弦楽四重奏曲「十字架上の七つの言葉」のピアノソロ版だが、ここま
でゆったりした音楽が続くと、さすがに聴くのは辛い。最終曲の後半、プレストの部分
に救われる。マッケイブの演奏は、ごく普通の、安定したものである。演奏の出来だけ
について僕の正直な感想を言えば、「GRAMOPHONE GOOD CD GUIDE」は褒めすぎではない
かと感じるが、お買い得であることは間違いない。ピアノ学習者に有名な第50番の第1
楽章で細かい即興をやっているあたり、参考になるかもしれない。
ピアノソナタの全集盤としては、ブッフビンダー盤10枚組も安く買える物では代表盤と
されている。ソナタの使用楽譜はウィーン原典版と明記。こちらも変奏曲を網羅。ピアノ
の音は、美しさという点では悪い部類なのだが、表現意欲が乗り移った打鍵の強烈さで、
ソナタだけをとれば、マッケイブの上に更に持っておく価値があるものだと思う。最初に
述べた第50番第2楽章も個性的。
○Buchbinder(TELDEC,0630-17385-2)73〜75年
ピアノソナタ第1〜20、28〜62番
12の変奏曲Hob.XVII:3
20の変奏曲Hob.XVII:2(alternative variation付)
5の変奏曲Hob.XVII:7
6の変奏曲Hob.XVII:5
Sonata Hob.XVII:6
Sonata in C,Es Hob.XVI:15,16
また、僕は全てを持っているわけではないが、ナクソス・レーベルでヤンドーがソナタ
全集録音を行っており、その第9巻にはマッケイブ盤に含まれていない小品を収録してい
る。デジタル録音であることが強み。ヤンドーのグールドばりの唸り声も(楽しめる人に
は)楽しめる。
○Jando(NAXOS,8.553826)96年
ピアノソナタ第17,19,28番
アダージョ ヘ長調Hob.XVII:9
アダージョ ト長調(ピアノトリオ第22番の第2楽章の編曲)
アレグレット ト長調Hob.XVII:10
アレグレット ト長調(弦楽四重奏曲op.33-5フィナーレの編曲)
20の変奏曲イ長調Hob.XVII:2
幻想曲ハ長調Hob.XVII:4
ピアノソナタの、そのほかのピアニストたちによる音源は夥しく、僕の手許にも、結構
ある。前述の第62番が飛びぬけた傑作とされているが、最近の傾向を見ると、第60番ハ長
調も人気が高いように思われる。アムランも来日公演のプログラムの冒頭に置いていた。
この2曲、第60・62番を収録したディスクとして、目下のところ僕が一番気に入っている
のは、Lazic盤である。以下のCD選択はピアニストのアルファベット順に。ランドンの
番号の後に、ホーボーケンも付す。
○Boshnyakovich(DENON,COCO-80798国内盤)79年
第32番ト短調(Hob.44)。
○Boshnyakovich(DENON,COCO-80765国内盤)68年
第59番変ホ長調(Hob.49)。
○Ciani(DYNAMIC,CDS413/1-6)66年ライヴ
第62番変ホ長調(Hob.52)。ライヴらしい熱気はあるが、少し上滑り気味。
○Eschenbach(PHILIPS,456763-2)74年
第50番ニ長調(Hob.37)と第53番ホ短調(Hob.34)。ともにピアノ初学者向けのレパとして
有名。
○Gould(PHILIPS,456808-2)58年
第59番変ホ長調(Hob.49)。グールドとしては旧録音にあたる。グールド得意の唸り節全
開。第3楽章のメヌエットが個性的。
○Hamelin(HYPERION,CDA67554)2005年
全10曲の2枚組で、Hob.XVI/23,24,32,37,40,41,43,46,50,52(旧番号に変換すると、
第38,39,47,50,54,55,35,31,60,62番)。アムランの指さばきの軽やかさは終楽章にお
いて最高に発揮されるが、全体としては、もっと音色なり音楽の色彩感の変化があって
いい。注目盤の一つ。
○Horowitz(SONY,S3K53461)66年ライヴ
第38番ヘ長調(Hob.23)。有名なカーネギー・ライヴ。
○Horowitz(SONY,SK53466)68年ライヴ
第58番ハ長調(Hob.48)。
○Horowitz(SONY,SK45818)89年
第59番変ホ長調(Hob.49)。ラスト・レコーディングでホロヴィッツが選曲した。
○Horowitz(EMI,CHS7 63538 2)32年
○同音源(APR,APR5517)
○同音源(NAXOS,8.110606)
○Horowitz(RCA,60461-2-RG)51年
第62番(Hob.52)。ホロヴィッツのハイドンと言えば、まずこの曲に指を折る。作品とし
ても、全62曲のうち別格の出来と言われており、確かに楽譜を見ながら自分で弾いてみ
ると、ピアノソナタの枠をはみださんという勢いに満ちている。変ホ長調なのに中間楽
章がホ長調というのも当時としては型破り。しかし、僕としては、この曲よりもモーツ
ァルトを弾いていたい、何故だろう?この曲を含め、ハイドンのピアノソナタの人気が
いまひとつ高まらないのも、わかる気がする。なおホロヴィッツの演奏は、第3楽章で
さすがの切れ味を見せる。僕は51年盤の方が良いと思う。
○Horszowski(PEARL,GEMMCDS9108)57年ライヴ
第35番変イ長調(Hob.43)彼が弾くと、なぜか大いなる名曲に聞こえる。
○Judd(CHANDOS,CHAN H10150)76年
第33番ハ短調(Hob.20)。終楽章が魅力的な作品。
○Lazic(CHANNEL CLASSICS,CCS SA 19703)2002年
第60番(Hob.50)と第62番(Hob.62)。どこまでも自発的な音楽を聴かせるラツィック。彼
の録音は、いずれも聴き逃せない。カップリングはベートーヴェンのピアノ協奏曲第2
番。SACD盤。
○Lang(TELARC,UCCT-2007)2000年ライヴ
第46番ホ長調(Hob.31)。コンサートにハイドンを入れるのはラン・ランの好みなのだろ
う。ニュアンスに富む演奏。
○Lang(DG,474820-2)2003年ライヴ
◎Lang(DG,DVD)
第60番ハ長調(Hob.50)。カーネギー・ライヴで、DVDもある。
○Levy(MARSTON,52021-2)56年
第31,47,60,61番(Hob.46,32,50,51)。幻の巨匠エルンスト・レヴィの、貫禄の名演奏。
○Lifchitz(PALEXA,CD-0507/8)97年ライヴ
ピアノソナタ第30番ニ長調(Hob.19)。繰り返しを弾いており演奏時間が30分に達する。
使用ピアノはスタインウェイ。急速な第3楽章は切れ味鋭い。終演後の拍手が盛大。
○Pletnev(VIRGIN,VBD5 61881 2)88年
ピアノソナタ第33,60,62番。ピアノ協奏曲3曲とカップリングで超廉価の2枚組。
○Richter(BBC,BBCL4090-2)67年ライヴ
ピアノソナタ第37番ホ長調(Hob.22)。ホ短調の第2楽章を中心として、リヒテルの美音
が映える。
○Richter(CHANT DU MONDE,CMX356020.34)85年
ピアノソナタ第39番ニ長調(Hob.24)。晴朗な演奏。
ピアノソナタ以外の小品では、上記に掲げた全集盤に含まれている曲の中でも、「アン
ダンテと変奏曲ヘ短調」が有名で、著名なピアニストがレパに入れている。僕との相性は
悪く、誰の演奏を聴いても眠くなる類いなのだが、これは是非とも一度はチェックしてい
ただきたい。全集盤を除く手許の演奏では、デミジェンコが16分以上かけて、ゆったりと
弾いているのが特徴的。
○Demidenko(HYPERION,CDD22024)93年ライヴ
○Korstick(OEHMS CLASSICS,OC532)2004年
○Larrocha(PHILIPS,456886-2)76年
○Pletnev(VIRGIN,VBD5 61881 2)88年
ピアノ協奏曲もあるが、飛びぬけて有名なのが「第11番ニ長調」で、早熟な子供のピア
ニストにも格好のレパである。アルゲリッチが好んで演奏することでも知られており、彼
女の音源は複数ある。それも含め、手許の音源。
○ピアノ&指揮:Argerich、London Sinfonietta(DENON,COCO-6117国内盤)80年
やはりこれは、ベーシックアイテムと呼ぶに相応しい名演だ。ベートーヴェンの第2番
とのカップリング。
○ピアノ&指揮:Andsnes、Norwegian Chamber Orch(EMI,CZS5 74789 2)98年
この番号のアルバムは、アンスネスの「A PORTRAIT」という特集盤2枚組で、これまで
の彼のアルバムのハイライトを収録。グリーグのピアノ協奏曲、ショスタコの第1番も
全部聴けるのでお買い得。またハイドンではピアノソナタ第47番ロ短調から第2・3楽
章を抜粋して収録しており、第3楽章は急速な楽区が冴えている。
○ピアノ&指揮:Pletnev、Deutsche Kammerphil(VIRGIN,VBD5 61881 2)95年
第4・7番も収録。ピアノソナタとの超廉価2枚組。
編曲物で、有名な交響曲第94番「驚愕」の第2楽章をネタにした2題。
○Ganz(NAXOS,8.110677)
サン・サーンス編曲版。曲としてはアルカン版よりも面白いかも。ピアノロールによる
再現なので、例の聴衆ビックリの和音の衝撃が小さい。
○Hamelin(HYPERION,CDA67050)98年
アルカンによるトランスクリプション。アルカンだからといって特筆すべきことは無い
ように思える。演奏は見事の一語に尽きる。
ヘラー(HELLER,Stephen、1813-1888、ハンガリー/フランス)
19世紀のピアノの大家の一人ヘラー。今日ではピアノ学習者のための練習曲で知られて
おり、日本の国内版楽譜も複数出ているが、僕は弾いたことがない。同時代の大作曲家た
ちと交際があり、伝記に名前だけは引用されることがある。忘れられた19世紀ロマン派の
一人ではあるが、この類いの作曲家のマニアには見逃せない作品があり、割と有名なアル
バムをあげておく。
○Joly(ACCORD,201592)91年
収録曲:Caprice brillant sur La Truite op.33;
33Variations sur un theme de Beethoven; La chasse op.29; Dans les bois op.86;
Preludes op.81-2,150-16/17; 4 Etudes sur Freischutz de Weber op.127;
Tarentelle en La b Major op.85-2
売り物はベートーヴェンのハ短調の変奏曲と同じ主題を使った「ベートーヴェンの主題
による変奏曲」で、交響曲第5、9番のフレーズを引用したりすることで有名。しかし
このアルバムでは、それよりも、ウェーバーの「魔弾の射手」を編曲した練習曲や、シ
ューベルトの「ます」の主題による奇想曲の方が、遥かに面白いと思う。アルバムを締
め括る「タランテラ」も、聴いておいて損はない。スタインウェイ・ピアノ使用。
ヘルプス(HELPS,Robert、1928-2001、アメリカ)
ヘルプスはコンサート・ピアニストとして大指揮者モントゥーと共演するなど活動した
他、作曲家としても「交響曲第1番」がストコフスキーによって初演されるなど、顕著な
活躍を見せた人物。20世紀音楽としては基本的にロマン的で、わかりやすい音楽を書いて
いたことが、ピアノ曲を聴くとわかる。
○Helps(NAXOS,8.559199)2000年
11分ほどのピアノ曲「Shall We Dance」の自作自演盤。タイトルは素敵だが、内容は特
に言及すべきほどでもないと感じた。2000年にベルリンで行ったリサイタルのライヴ。
なおヘルプスはイギリスのアイアランドを信奉していたということで、このアルバムの
最後にアンコールで弾いたアイアランドの「The Darkned Valley」が収録されており、
この演奏が心に染みる出来栄え。
○Feinberg(DECCA,430330-2)90年
収録曲:Schilfied(Mendelssohn);三つの賛歌;夜想曲
こちらも、ロマン的な音楽が並ぶ(尤も、わかりやすいかと言われると、そうでもない
のだが)。ここではフェインベルグの演奏の見事さを、讃えるべきであろう。音の美し
さに惹きつけられる。
ヘルヴェグ(HELWEG,Kim、b1956-)
以下に掲げるディスクは、ある時CD店内でかかっていて、即、レジに持って行った記
憶がある。キム・ヘルヴェグは当初、ペンデレツキやケージの影響下にある音楽を書いて
いたというが、ある時からジャズにも傾倒し、チック・コリアらを信奉しているというこ
とだ。
2台ピアノと管弦楽のための作品集がこれ。
○Thorson & Thurber(OLYMPIA,OCD462)96年
収録曲:Variations on Chick Corea;Blue edge;Dvojnik
最初の2曲、「チックコリアによる変奏曲」と「ブルー・エッジ」は、終止に向けての
高揚感が凄い。こういうのはポップス系の音楽の手法である。「Dvojnik」というタイ
トルの、2台のピアノ、拡声された弦楽五重奏、ブラス、打楽器のための協奏曲は30分
を越える大作で、部分的に、やたらとかっこいい場面がある。久しぶりに改めて聴いた
が、わかりやすいというよりも、調性は曖昧だし、現代音楽がジャズの影響を受けてこ
うなりました、という方が曲の性格に近いと感じられた。2台ピアノの、目新しい音楽
を探している人にはお薦め。
ヘンゼルト(HENSELT,Adolf von、1814-1889、ドイツ)
19世紀ロマン派の忘れられた作曲家の一人。しかし20世紀末になり、アムランのような
超人ピアニストが現れるに至り、抜群のアルバムが生み出された。
○ピアノ:Hamelin、Brabbins指揮BBC Scottish SO(HYPERION,CDA66717)93年
演奏の想像を絶する素晴らしさに魅了される一方、曲のつまらなさ(華麗極まりないパ
ッセージが連続するのに、である)との落差の大きさを味わうという、摩訶不思議なC
D。「ピアノ協奏曲」も「演奏会用変奏曲op.11」も、両方である。クラシック音楽っ
て、基本的にこう(つまらない)で、ショパンやシューマンらは、奇跡的な例外なのか
もしれない。
小曲の中では練習曲「もし私が鳥だったらop.2-6」が最も有名。それも含め、ヘンゼル
トの小品を3曲弾いているのがこれ。
○Godowsky(MARSTON,52046-2)16年
「もし私が鳥だったら」以外に、「ゴンドレイラop.13-2」と「子守歌op.45」。
他、「もし私が〜」で手許にある音源はラフマニノフとモイセイヴィッチである。この
作曲家が好まれた時代もあったのだろう。もちろん世の中には、ヘンゼルトが何故忘れら
れているのか、その現状に抗議する人たちもいる。しかし、現在の扱われ方は、必ずしも
不当とは言えないのではないかと思う。ごく一握りの曲しか残らないという、クラシック
音楽の宿命だ。
ヘンツェ(HENZE,Hans Werner、b1926-、ドイツ)
現代音楽の世界では大家であり、ピアノ独奏曲だけのディスクがあるとなれば、それは
無視できない。
○Francesch(WERGO,WER6239-2)90,92年
収録曲:Cherubino; Lucy Escott Variations; Sechs stucke; Sonata per pianoforte;
Une petite phrase; Variation op.13
オペラの多作家ヘンツェらしく、オペラに題材を得た作品もあり興味深いのだが、残念
ながら、演奏会用レパとしてお薦めするまでには及ばない作品が並んでいるという感想
を持った。強いてあげるなら「ピアノソナタ」が力作。
この他に、ピアノが独奏楽器として活躍する協奏的作品の録音もあり、何より僕は、ヘ
ンツェの代表作である「トリスタン」が未聴の状態で、この作曲家を正しく理解している
とは言い難い。ただ少なくとも、ピアノ独奏曲よりは声楽曲に惹かれる。
ヒンデミット(HINDEMITH,Paul、1895-1963、ドイツ)
一般に「大作曲家」と分類されている人物の中で、僕がその音楽を最も苦手としている
一人がヒンデミットである。ヒンデミットを聴くと、退屈してしまうのが常である。そん
な僕の評価など全くどうでもよいわけだが、とりあえず、ピアノ曲で代表作とされている
ものは、喰わず嫌いをしておこうかとチェックする。
まずは「ルードゥス・トナーリス」。前奏曲に始まり、12曲のフーガとインターリュー
ド(最後の曲だけはポストリュードになる)で構成。これは以下で掲げるアルバムの奏者
ムストネンも絶賛の、世間では名曲とされている曲集である。以下の2枚とも、演奏は極
めて良いのだと思う。でもどうも、僕は退屈してしまう。敢えて良いピースを指摘するな
ら、インターリュードの第4、8番ぐらいか。
○Mustonen(DECCA,444803-2)94年
演奏の切れ味の凄さは明らか。プロコフィエフ「束の間の幻影」とのカップリング。
○Sermet(VALOIS,V4785)95年ライヴ
ライヴ録音で、同じヒンデミットの組曲「1922年」とカップリング。この組曲もヒンデ
ミットのピアノ曲としては代表作とされており、ジャズの影響を受けて云々と言われる
のだが、親しみやすいとは全く言えない。第3曲「夜曲」の静謐さが有名。演奏にはラ
イブならではの高揚があり、終演後の拍手が盛大。
○Berezovsky(WARNER,2564 63412-2)2006年
やはり組曲「1922年」とカップリング。ベレゾフスキーは相変わらず細部まで冴えた演
奏を聴かせてくれる。
ピアノソナタは3曲あって、以前に全てを収めたアルバムを持っていたが、やはり退屈
してしまった。手許には、中でも代表作とされる第3番。聴いてみると、それなりに良さ
があることはわかるのだけれど、それでも、集中して聴くことができないのは、よほど僕
とは相性が悪い作曲家なのだろう。
○Wild(PEARL,GEM0091)48年
○Wild(IVORY CLASSICS,71005)2000年
○Pace(DANACORD,DACOCD589)2001年ライヴ
この3種では、録音状態が今ひとつながら、Pace盤に最も惹かれる。ワイルド盤は48年
の方が好ましい。
HIROSHI(HIROSHI、日本)
ピアニスターHIROSHIとして活躍する人物。彼は各メディアでもとりあげられているの
で、ご存知の方が殆どだろう。単なるピアノをネタにする芸人と思われているかもしれな
いが、彼の演奏に耳を傾けると、実は音楽性に富んでいることに気づく。日本人のプロの
ピアニストで、HIROSHIに比べて音楽の中味が無い人がヤマほどいる。その点、HIROSHIの
長所でもあるし、また、日本のピアノ界の危機でもある。
僕は熱心に追いかけているわけでは全くなくて、手許には2枚のアルバムがある。いず
れも、様々なクラシック音楽のパロディであるが、こうして録音になってしまうと、腹を
抱えて笑う、ということにはならない。ネタの幅広さと確かな音楽性に感心させられる。
どちらかといえば「展覧会のエッ!?」の方が楽しめる。
○新動物の謝肉祭(KING,KICC270国内盤)
○展覧会のエッ!?(KING,ICC239国内盤)97年
ホフマン(HOFMANN,Josef、1876-1957、ポーランド/アメリカ)
紛れも無く史上最高のピアニストの一人、ヨーゼフ・ホフマン。彼もまた、コンポーザ
ー・ピアニストであった。まずは本人の演奏をチェックするのが必須。
○Hofmann(VAI,VAIA/IPA1036)15年
○同音源(PHILIPS,456835-2)
○Hofmann(NIMBUS,NI8802)20年、2種の音源
分散和音が美しい小品「Sanctuary」。
○Hofmann(VAI,VAIA/IPA1047)23年
○同音源(PHILIPS,456835-2)
ワルツ風の小品「ノクチュルヌ」。
○Hofmann(MARSTON,52004-2)35年
これもワルツ風の「子守歌op.20-5」。このアルバムには、ピアノソロとバイオリン付
きの2種音源が収録されている。
○Hofmann(MARSTON,52014-2)38年ライヴ
せわしない動きの中に歌謡的な旋律を織り込む「カレイドスコープop.40-4」と、「ペ
ンギン」の2曲。前者は、オリジナル曲の中では僕が最も気に入っているもの。
○Hofmann(MARSTON,52004-2)43年
2分に満たない小品「Elegie」。
協奏的作品に「Chromaticon」があるが、冗長感あり。同じアルバムに2種の音源が含
まれており、一方はホフマン得意の、本題前の分散和音入り。
○ピアノ:Hofmann、Reiner指揮Curtis Institute SO(VAI,VAIA/IPA1020)37年
○ピアノ:Hofmann、Hilsberg指揮Curtis Institute SO(VAI,VAIA/IPA1020)37年
本家以外のピアニストの挑戦。
まず「カレイドスコープ」。チェルカスキー、アムランとも、奏者として好適。
○Cherkassky(DECCA,433654-2)91年ライヴ
80歳にして、この元気は大いに讃えられるべし。盛大な拍手も当然。
○Cherkassky(IVORY CLASSICS,70904)82年ライヴ
○Cherkassky(NIMBUS,NI1748)
○Hamelin(HYPERION,CDA67275)2001年
続いて「ノクチュルヌ」。
○Hamelin(HYPERION,CDA67275)2001年
○Manildi(ELAN,CD82416)97年
○江口(NYS-80619国内盤)2002年
次に「サンクチュアリー」。
○Jones(NIMBUS,NI5326)91年
結論としては、「カレイドスコープ」が一番の注目作ということになろう。演奏家とし
ての偉大さに、作曲家としての業績は及ばなかったというのが正直なところ。
ホロウェイ(HOLLOWAY,Robin、b1943-、イギリス)
現代英国を代表する作曲家の一人ホロウェイによる、2台ピアノのための込み入ったこ
の作品のアルバムは、「GRAMOPHONE GOOD CD GUIDE」で取り上げられるなど、発売される
や評判となった。曲は「Glided Goldbergs黄金のゴールドベルク」で、お馴染みバッハの
名変奏曲の曲順をそのままに、ホロウェイなりに自由に音楽を変奏するというもの。中で
も、様々な作曲家へのオマージュとして書かれた変奏は興味深く、特に第19変奏「オース
トリア=ドイツの短い音楽史」は、4分半の間に大作曲家たちの音楽を次々と引用する。
これは確かに、原曲の隅々まで知っている人は、最初から最後まで、ニヤリとし続けるだ
ろう。一方で、顔をしかめる人もいるだろう。そしてもし両者で多数決をとったら・・・
恐らく、後者が勝つであろう。やはり原曲の偉大さは、音楽史上にそそり立つものだ。僕
個人としても、ホロウェイを何度も聴きたいとは感じない。
○The Micallef-Inanga Piano duo(HYPERION,CDA67360)2002年
演奏自体は非常に優れている。2枚組で演奏時間は100分弱に及ぶ。
ホルスト(HOLST,Gustav、1874-1934、イギリス)
いわゆる通俗名曲の中で、僕が最も好むのはホルストの「惑星」。この中の「木星」の
メロディーをJ-POPの歌手がとりあげて一般大衆にも有名になったが、「木星」が名曲な
んてこと、わかっていたのである。流行のきっかけを作る人というのは、大したものだと
敬服する。
さて嬉しいことに「惑星」は管弦楽のためだけのものではない。ピアノ2台版がオリジ
ナルである。好きな曲だから、CDも複数に手を出してしまう。
○Nettle & Markham(EMERGO CLASSICS,EC3346-2)84年
○Goldstone & Clemmow(ALBANY,TROY198)96年
○Volster & Chamberlain(NAXOS,8.554369)97年
○YORK2(BLACKBOX,BBM1041)2000年
このうち、僕としてはゴールドストーン&クレモウがイチオシ。音楽的にも練れている
し、使用ピアノであるグロトリアンの響きが素晴らしい。またカップリングの点でも、
同じホルストの2台ピアノ用の「エレジー(from The Cotswolds Symphony)」だけでな
く、エルガーの「弦楽セレナード」の連弾版や、珍しいバリー、ベイントンの佳曲が含
まれているからだ。ネットル&マーカムも悪くないが、「惑星」しか含まれていないの
は残念。ナクソス盤はカップリングにホルスト「パーフェクト・フール」からのバレエ
音楽が含まれているのがポイント。最後のYORK2版は2台ピアノではなく、連弾で演奏
している。連弾とは思えないほどシンフォニックな響きがするのが良い。
ではピアノ独奏曲も聴いておきたいところ。上記「惑星」のYORK2盤にも主な独奏曲は
含まれているが、世界初録音などを含む、このアルバムで網羅範囲が広がる。
○Goldstone(CHANDOS,CHAN9382)90年
収録曲:Arpeggio Study; A Piece for Yvonne; Christmas Day in the Morning;
Deux pieces; Jig; Nocturne; O! I hae seen the roses blawl; The Shoemaker;
Toccata; Two dances for piano duet(with Clemmow)
ホルストだけでは一枚が埋まらないので、ランバートのピアノ独奏曲とカップリング。
曲としては、「トッカータ」がそれなりの演奏効果を発揮する。
オムス(HOMS,Joaquin、1906-2003、スペイン)
カタロニアの作曲家オムスは、国際的な知名度が高いとは言いがたい。マルコポーロ・
レーベルは、彼のピアノ曲集として3枚のCDを出しており、手許にその第1・2集があ
る。大衆ウケの要素が非常に少ない作品が並ぶが、シェーンベルク的な感触もあり、現代
のスペインピアノ音楽の系譜を探りたいと考えている人なら、これは聴いてみる価値があ
るかもしれない。せっかくこれだけのアルバムがあるのだから、紹介のみしておく。
○Maso(MARCOPOLO,8.225099)98年
収録曲:Seven Impromptus; Seven pieces; Two Soliloquis;
Variations on a popular Catalan theme
○Maso(MARCOPOLO,8.225236)2000年
収録曲:Between two lines; Carousel waltz; Piano Sonata No.1; Remebrances;
Three evocations; Three inventions on one chord
ホロヴィッツ(HOROWITZ,Vladimir、1906-2003、スペイン)
これが弾ければ昇天:カルメン変奏曲
ホロヴィッツのピアノ独奏曲と言えば、編曲物とも言えるが「カルメン変奏曲」だ。ビ
ゼーの項でとりあげてもいいのだが、オペラからの名曲を素材に、自由なトランスクリプ
ションを繰り広げているから、オリジナル曲扱いしておきたい。まあこういうのは、好き
嫌いは別として、全てのピアノ愛好家に一度は触れていただく必要がある。その上で、こ
ういう芸術にどっぷりハマるか、あるいは無視するか、自分の態度を決めればいいのであ
る。僕はもちろん、ノックアウトされたクチである。
まずは本家の音源をできる限りたくさんチェックする。
○Horowitz(NAXOS,8.110677)ピアノロール
○Horowitz(NAXOS,8.110696)28年
○Horowitz(APR,APR2000)42年
○Horowitz(RCA,BVCC-5106国内盤)47年
○Horowitz(SONY,SK53465)68年
録音するたびに少しずつ変化していることがわかる。この他にも正規発売ではない海賊
音源もあるが、それらも含め、改めて聴き比べてみると、最も入手しやすい、一般的な
68年盤テレビコンサート・ライヴが、やはり総合的には一番と感じられた。
本家以外の「カルメン」チャレンジも、どんどん増えている状態。
○Himy(BNL,112822)92年
○Kuleshov(BIS,BIS-CD-1188)2001年
○Matsuev(RCA,82876 61273 2)2003年
○Raekallio(ONDINE,ODE834-2)93年
○Sultanov(PRIVATE)2000年ライヴ
○Volodos(SONY,SK62691)96年
いずれも腕自慢のピアニストがとりあげており、演奏の出来に不足はない。僕としては
快速テンポで飛ばすマツーエフ盤に最も惹かれる。スルタノフ盤は、恐らくこのピアニ
ストの芸術のピークを示すライヴ音源で、とりあえず「カルメン変奏曲」を素材に、自
由に飛翔する(自由過ぎて散漫な感もあるほど)。
上記のクレショフ盤は、「カルメン」以外でホロヴィッツの珍しいオリジナル曲を集め
ておりマニアなら見逃せない。
○Kuleshov(BIS,BIS-CD-1188)2001年
収録曲:エチュード=ファンタジー 変ホ長調;ワルツ ヘ短調;変わり者の踊り
本家が音源を残してくれたのは、「変わり者の踊り」。
○Horowitz(NAXOS,8.110696)30年
ハフ(HOUGH,Stephen、b1961-、イギリス)
写真だけから判断すると、どうみてもピアノが上手いとは思えない容貌。しかしてその
実態は、恐るべき超絶技巧を持ち、また、独特のカンタービレを兼ね備えた、最上のピア
ニストの一人だった。人を見かけで決めつけてはいけない。弾けるだけでなく、数々のト
ランスクリプションを書き(その代表作は、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージッ
ク」からの「私のお気に入り)、オリジナル作品も書く、優れたコンポーザー・ピアニス
ト。そのオリジナルも、今のところ僕が特に気に入った作品は無いとはいえ、チェックし
続けていきたい。
○Hough(HYPERION,CDA67043)97年
収録曲:Etude de concert; Musical Jewellery box
○Hough(HYPERION,CDA67267)2001年
収録曲:Valse Enigmatique No.1,2
○Hough(HYPERION,HOUGH1)2003年
収録曲:Pining for the Spring Breeze; Suite Osmanthus
この中では、「Etude de concert演奏会用練習曲」の終結部分の凄まじいラッシュが
聴きもの。また、6曲から成る小組曲「Suite Osmanthus」の第5曲「Etude
da capo」
の鮮やかな指さばきも目覚しい効果をあげる。
○Hough(HYPERION,CDA67565)2005年
収録曲:On Falla
スペインに関係する音楽だけのアルバム。ハフ作品は、ファリャの「アンダルシア幻想
曲」あるいは「恋は魔術師」の影響下にあるもの。情熱的な終止が聴きもの。なおこの
アルバムでは、ホロヴィッツに捧げられたロンガスの小品「アラゴン」が輝かしく、演
奏も素晴らしい。
ハウエルズ(HOWELLS,Herbert、1892-1983、イギリス)
イギリス20世紀の作曲家の中でも、合唱をやっているとハウエルズの名前に反応しない
わけにはいかない。ピアノ曲の量は非常に少ないが、チェックしたくなるのが人情という
ものだ。
○McCabe(HYPERION,CDA66689)93年
3つのピアノ小曲集、「ランバートのクラヴィコード」、「ハウエルズのクラヴィコー
ド第1巻」および「同 第2巻」を収録。全32トラックは、誰それのパヴァンとか、誰
それのガリアードとか、ルネッサンス時代のリュート音楽をピアノソロでやるとこうな
ります、というもので、「誰それ」の部分は作曲家の交友関係などを反映して、イギリ
スの音楽家たちが登場する。音楽の中味は、もちろん20世紀らしい響きはするが、リュ
ート音楽に非常に近い。かといってピアノとリュートでは音色の差が大きく、コンサー
トでこれを延々とやられると退屈して困るだろうが、2、3曲の抜粋だったり、アンコ
ールならばいいかもしれない。何よりこういう小品集は、CDでの鑑賞に向いている。
作曲年は上記の順に27、41、61年と30年以上にわたっているが、最初の「ランバートの
〜」が、親しみという点では一番。冒頭の「ランバートの炉辺」は何となく、あの合唱
名曲「レクィエム」がこだまする。第9曲のパヴァンや、第10曲のガリヤードなども悪
くない。
ピアノ協奏曲が2曲あり、これはなかなか良いものなのだそうだ。第1番は初期の作品
で、ジョン・ラターが補筆・完成したということである。
フンメル(HUMMEL,Johann Nepomuk、1778-1837、オーストリア)
20世紀末から、イギリスにおけるフンメルの合唱曲の復権は目覚しい。それまで、フン
メルと言えばピアノ独奏曲が愛好の対象であったのに。その中でも特に「ロンド変ホ長調
op.11」は名曲ということになっている。しかし僕には、この人気が不思議に思える。下
に掲げるような名ピアニストたちの録音、いずれを聴いても、どうしてこれが代表作と言
われるのかな?としか感じられないからである。そう言っても仕方ないので、とりあえず
情報として手許のディスクは挙げておく。
○Friedman(NAXOS,8.110684)25年
○Moiseiwitsch(NAXOS,8.110669)30年
○Cziffra(HUNGAROTON,HCD32056)54年
○Cziffra(EMI,CZS7 67366 2)57年
○Wild(VANGUARD CLASSICS,OVC4033)64年
○Ciani(AGORA,AG233.3)68年
同曲をDVD映像で見るならこれ。
◎Libetta(IDEAL AUDIENCE,DEBC-14809国内盤)2002年
ピアノソナタのディスクもあるが、どうも頭に入ってこない。
○Hough(HYPERION,CDA67390)2003年
op.20,81,106の3曲。ハフの個性とフンメルとの相性は最高ではないかと思うが、それ
でも、曲の全てが僕の身体に馴染まない。「ヘ短調op.20」や「嬰ヘ短調op.81」の各第
3楽章は、ハフの冴えた技巧のおかげで音楽の切れ味も鋭いと感じられるのだが。
○Chang(NAXOS,8.553296)95年
op.13,20,81の3曲。ハフが弾いていない「変ホ長調op.13」が含まれており、これが、
それなりに有名かもしれない。
○Ciani(AGORA,AG233.3)68年
上記の「ロンド」に加え、ソナタは「変ホ長調」op.13のみ。
その他の小曲。
○Malan(HANSSLER,CD98.231)2005年
モーツァルトによる、「フィガロの主題によるファンタジーナop.124」。有名なアリア
「もうとぶまいぞ、この蝶々」を主に、練習曲的な指回りで繰り広げる幻想曲。編曲マ
ニア向け。
この他、本来であれば数曲あるピアノ協奏曲を聴かねばならないのだろうが、未聴。
編曲物では、リストがピアノソロに編曲した「七重奏曲」がある。
○Howard(HYPERION,CDA66761/2)92年
このように僕としては冷たい態度をとっているが、何しろ存命時には、モーツァルト、
ベートーヴェンに次ぐピアノの巨匠と位置づけられた人物である。研究してみる価値はあ
るのではないか。
フルム(HURUM,Alf、1882-1972、ノルウェー)
こういう北欧のマイナーな作曲家に興味が向かうのは、僕が合唱をやっているからかも
しれない。フルムはオスロ生まれ、50歳あたりまでは作曲家として活動した後、ハワイの
ホノルルに移住、今度は画家として活躍し、その地で亡くなったという。
作曲家としてのフルムは、ノルウェーでは初めてフランス印象派の影響を受けた人、と
位置づけられているということが、以下のディスクの解説に書かれている。
○Aase(THEMA,TH201-2)1999,2000年
収録曲:Impressions op.4; Romance(from op.1); Watercolours op.5; Pastels
op.10;
For Piano op.3; Fairyland op.16; Nordic suite op.18;
Rose and butterfly,Silhouette(from op.7); Rococo; Gothic pictures op.17
フルムのピアノ曲だけを集めた2枚組で、「A MUSICAL PAINTER」という副題付きのア
ルバム。なるほど、確かに初期の作品はドビュッシーの強すぎる影響を受けていること
がわかる。冒頭に収録の3曲から成る組曲「Impressions op.4」は各曲のタイトルもフ
ランス語であり、第2曲「La Fontaine泉」における、あまりにも明確なドビュッシー
の影響は、微笑ましいほどである。これも3曲から成る「Watercolours op.5」もフラ
ンス近代風。しかし全体的には、音の量が少なく技巧的にも平易で、ごく普通の叙情的
な曲が並んでいるために、少々退屈する。僕がノルウェーのピアノ教師ならば、初学者
のピアノ発表会向けのレパとして選んでも良い、そういう類いである。作品番号が大き
い作品16、17、18になると、もう少し音の量が増えてくるが、特に大きな効果をあげて
いるというわけでもない。むしろ「3つの小品op.1」から選ばれた「ロマンス」のよう
に、あまりに単純すぎる叙情的小品に本領が発揮されているように思う。
彼の作品では、バイオリンソナタが特に美しいと聞いたことがある。北欧の音楽を追い
かける人に薦められる、ということだろう。
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