ガブリエリ(GABRIELI,Giovanni、c1553-1612、イタリア)

 ガブリエリと言えば多重合唱。四重合唱などというだけでマニアゴコロを刺激される。
是非自分で演奏に参加してみたいし、鑑賞するなら実演向きだろう。どうしても録音では
捉えられない物がありそうだ。もちろん、録音もかなり多数出ているので、手許のCDの
中で新しい物を録音順に聴いてみよう。デジタル時代になって、どんどん増えている。
 なお、ここでは、叔父のアンドレア・ガブリエリ(c1510-1586)も共に扱う。

○McCreesh指揮Gabrieli Consort(VIRGIN,0777 7590062 0)89年
 「A Venetian Coronation 1595」というタイトル。これも、先ほどフックスの項で触れ
 たのと同じCD店でしょっちゅうかかっているのだが、確かにぼーっと聴くと、意外な
 ヒーリング効果がある気がする。アンドレアのミサ曲にジョヴァンニをミックス。
○Innocenti指揮Coro della R& TV Svizzera Italiana(VICTORIE MUSIC,291182)91年
 珍しいアンドレアの作品集。マドリガーレやモテットを聴くことができ、興味深い。8
 声のマドリガーレ「Sento un rumor」などを聴けば、誰しもアンドレアに対する認識を
 改めるだろう。ジョヴァンニの元になった多声部音楽では、12声が最大。この合唱団は
 は、最近はナクソスやアーツなど超廉価盤レーベルで活躍している。当盤では出来良。
○Nevel指揮Currende, Concerto Palatino(ACCENT,ACC93101D)93年
収録曲:Angelus Domini; Beata es virgo;Benedictus es Dominus;Exultavit cor meum;
 Hodie completi sunt; In te Domine speravi; O Jesu mi dulcissime;O Quam suavis;
 Sancta et immaculata Virginitas;
 ジョヴァンニ作品に、あまり種類は多くないヴィラールトの声楽作品を組み合わせた。
 曲の最大声部は8声だし、合唱の人数も多くなく、豪快な迫力には乏しいが、極めて美
 しい演奏で、楽しめる。
○McCreesh指揮Gabrieli Consort(ARCHIV,449180-2)95年
収録曲:Buccinate in neomenia tuba a 19; Domine Deus meus a 6; In ecclesis a 14;
 Intonazione del duodecimo tono; Intonazione del nono tono;
 Jubilate Deo a 10; Magnificat a 33; Misericordia tua,Domine a 12;
 Suscipe,clementissime Deus a 12; Timor et tremor a 6;
 上記の他、器楽だけで演奏する曲もある。声楽陣が全て男声であるせいもあるのかもし
 れないが、意外と単調な印象を与える。もっとストレートに豪放でもいいのではないか
 と思う。最大声部は33声。ジョヴァンニのみの作品集。
○Eichhorn指揮Musicalische Compagney(CPO,cpo999454-2)96年
収録曲:Ascendit Christus a 12,17; Audite Coeli a 12; Audite principes a 16;
 Deus in nomine tuo a 8; Domine Deus meus a 6; Exultet jam angelica turba a 14;
 Hic est Filius Dei a 18; Hodie Christus a mortuis a 12; Timor et Tremor;
 歌手も器楽も最低限、渋い感触。後期の作品をドイツに残されたソースによって演奏。
 これもジョヴァンニのみ。


ガルス(GALLUS,Jacobus、1550-1591、スロヴェニア)

 スロヴェニア生まれでウィーンやプラハで活躍した人物で、別名も多種あり、有名なの
がハンドルという呼び名(意味は「にわとり」)。余り知られていないが、複合唱の技法
を使用した、結構面白そうな人だ。その作品をまとめて聴く録音に恵まれてこなかったの
だが、ネーヴェル盤が渇きを癒した。
○Nevel指揮Huelgas Ens.(SONY,SRCR9794国内盤)94年
 重要なモテット集「オプス・ムジクム」からの抜粋と、6声のミサ曲を収録。これを機
 会に、もっと演奏されるようになれば良いと思う。声部の多い曲では、8声が5曲、12
 声・16声がそれぞれ1曲ずつ入っている。指揮のネーヴェルによる充実解説付き。

 なお、他にも単発でモテットが収録された盤を見かけるが、クリスマス用の「Resonet
in laudibus」など、佳曲がある。

 さらに21世紀に入り、世俗曲の分野で驚くべきアルバムが出た。これは推薦したい。
○Singer Pur(ARS MUSICI,AM1291/3)99年
 ラテン語の世俗歌曲集を2つ。「Moralia倫理」は作曲者の最後の曲集で、死後の1596
 年に出版された5声から8声の作品(全47曲)。「Harmoniae morales倫理的な調べ」
 は1589〜90年に出版、全て4声のマドリガーレ(全53曲)。CD3枚組でミッドプライ
 ス、超豪華解説書も嬉しいが、何より演奏が素晴らしいのと、その恩恵も大きいが曲の
 良さに驚く。特に「Moralia」はお薦めだ。曲によっては8声になり、ジンガー・ピュ
 アだけでは足りないが、この分野では有名な、ソプラノのミールズと、バリトンのゴー
 ドン・ジョーンズが加わっている。


ガーディナー(GARDINER,Henry Balfour、1877-1950、イギリス)

 ビッグネームでも何でもないのだが、彼の合唱作品で1曲だけ、オルガンと混声合唱で
演奏される「Evening Hymn」という作品だけはCDでよく目にする。イギリスの礼拝では
定番音楽になっているのだろう。5、6分のごく小さい作品だが、これは題名通り、夕方
の礼拝で教会で聴いてみたい!オルガンの静かな前奏に続いての冒頭合唱が、いかにも黄
昏っぽい情感を醸し出す。一度静まって、アカペラ合唱から再び音楽が動きだす部分も良
い。オルガンを付ける演奏会ができるなら、検討されてよりレパだと思う。
 手許に何種類かCDがあるのだが、その中で特に印象的な2種を挙げる。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,74321 16851 2)93年
 アレグリのミゼレーレをタイトルにとった一枚。当盤を聴いていると、僕も実際にこの
 チャペルで触れたオルガンや合唱団のサウンドを思い出す。なお当演は、既に何度か触
 れたこの合唱団のハイライトCD「Choral Moods」(CONIFER,75605 51308 2)でも聴け
 る。そちらの2枚組の方がお得だろう。コニファーはRCA傘下なので流通状況も良い。
○Sjokvist指揮Swedish Radio Choir(SKIV BOLAGET,SBCD507)90年
 クリスマスの音楽を集めた一枚の最後に収録されている。分厚い合唱の響きが最高、さ
 すがである。こんないい音源が珍盤として埋もれているのは残念だ。


ガードナー(GARDNER,John、1917-1982、イギリス)

 この人も特に有名というわけではないが、1曲だけ定番のクリスマスキャロルがある。
「Tomorrow shall be my dancing day」で、2分程で終わる、リズミカルでノリが良い。
20世紀のキャロルをまとめて練習したいなら、検討に値するレパとなるだろう。手許には
数種の音源があるが、代表的なものを挙げる。
○Christophers指揮The Sixteen(COLLINS,12702)90年
 定評のあるアルバム。最後にこの曲が入っている。


ジェネ(GENEE,Richard、1823-1895、ドイツ)

 スッペやシュトラウスのオペラ台本を手がけた業績が有名な人だが、指揮者、作曲家と
しても活動した。特にとりあげるべき人ではないのだろうが、「Insalata Italiana」と
いう無伴奏合唱曲は、意外な知名度があるようだ。かなり古い国内版の愛唱曲集のような
出版楽譜にこの曲が含まれているのを発見した時には、ちょっと驚いた。しかし、今日で
は実演を目にしないのだが・・・。イタリア語の音楽発想記号を並べて音楽にした、ナン
センス的作品で、まあそれなりに面白いかもしれない。男声合唱版、混声合唱版それぞれ
の録音を挙げておく。
○Seelig指揮Turtle Creek Chorale(REFERENCE,RR-61CD)94年録音
 男声合唱+ソプラノソロ版。アルバムのタイトルは「POSTCARDS」で、世界各国の音楽
 を集めるというコンセプト。当盤の収録曲でもう1曲奇妙な作品に言及しておく。オー
 ストリア出身のトッホの作曲による「地理的フーガ」で、世界の地名のシュプレヒコー
 ルだけで構成されており、日本のナガサキ、ヨコハマも登場する。なお当盤の日本モノ
 は「さくら」で、このアメリカの合唱団のメンバーが、尺八とハープ伴奏という形態に
 編曲している。
○Bock指揮Concentus Vocalis(ORF,CD106)93,94年
 CDのタイトルは「In der Bar zum Krokodil〜Heiter Chormusik」で、冗談音楽的な
 作品を13曲集めたアルバムで、このジェネ作品の混声版で代表させておきたい。他の収
 録曲ではバンキエリの「動物たちの対位法」は定番として、殆ど知られていない作品揃
 い。
ドイツ語という言葉の壁と、演奏者たちが実直過ぎるのか、笑えそうで笑えない。
 冗談音楽作家として有名なP.D.Q.バッハの「By the leeks of Babylon」と「My bonney
 lass she smelleth」あたりはニヤリとさせられるが。
演奏するオーストリアの合唱団
 の実力はまずまずなので、普通に鑑賞するには悪くない一枚。


グルジア(GEORGIE)

 今回は作曲家名ではなく、旧ソ連のグルジアの男声合唱について。

 もう何年も前のことになるが、パリ旅行中のこと。街のポスターで、とある演奏会を見
つけた。僕はそれを、教会でのグレゴリオ聖歌の演奏会だと勘違いした。恥ずかしながら
当時は、グルジアのことを英語でGEORGIAというというのを知らなかったせいもあり、綴
りをパッとみてグレゴリアンだと思ってしまったのだった。教会に出かけて、当日券を売
る女性に、これはグレゴリオ聖歌の演奏会か?と尋ねたら「ノー、ジョージエンヌ」とい
う答えが返ってきた。ジョージエンヌ???何のことかさっぱりわからなかったのだが、
せっかくだから聴こうと思い、会場に入った。登場したのは、軍服を着た、実に体格の立
派な10数人の男たち。こりゃさすがに聖歌じゃないなとは思ったが、何が始まるのか?

 これが、世界最古といわれる「グルジアの男声合唱」との出会いだった。この演奏会の
圧倒的な印象、興奮は、一生忘れられない。こんなに音圧のすさまじい合唱音楽を聴いた
のは後にも先にもこれだけ。狭い教会に轟いた男たちの声の凄かったこと。聴衆はせいぜ
い30人ほどだったが、終演後の拍手の盛大だったこと、アンコールを求める声は、いつ果
てるとも知れなかった。
 グルジアの男声合唱曲には、大きく分けて、労働歌と宗教歌がある。労働歌は、農作業
などの掛け声を取り入れ、テンポも早めで徐々に盛り上がっていく曲が多い。宗教歌は、
テンポ、音量をぐっと落とし、音を長く保って瞑想的に歌う。その様は陶酔的でもある。

 僕は帰国後、慌ててCDを探した。そして数種類のCDを入手したのだが、予想はして
いたが、これは録音には入りきらない音楽だ。マイクは、この合唱の欠点である、洗練か
らは遠い声のザラ付きを目立たせるし、何より圧倒的な音圧を拾っていない。
 というわけで以下にCDをあげておくが、いずれも満足はしていない。
○Chants de travail,religieux(HarmoniaMundi,HM83)
○Georgian folk music(SONY,SMK66588)
○Les Voix de Georgie(AS,92547-2)
○カヘチア奇跡のポリフォニー(Victor,VICG-5225国内盤)
○太陽賛歌(Art & Erectronics,TECX-30304国内盤)

 もう一度、実演に接する機会はあるだろうか。現在のグルジアの状況と言えば、たまに
接する報道では、紛争ネタばかり。戦火の絶えない国では、芸術活動も難しかろう。


ガーシュウィン(GERSHWIN,George、1898-1937、アメリカ)

 ジャズの音楽家でクラシックの世界にこれほどの影響を与えた人はいない。合唱という
分野となれば、そもそもいわゆる普通の合唱曲は無いが、声楽ファンであれば、やはりあ
のオペ他には触れておくべきだろう。「ポーギーとベス」のことだ。
 これも僕は舞台で見たことがないので大したことは言えないのだけど、とにかくこれは
名旋律の宝庫。だから抜粋盤でも間がもつし、例えばジャズ畑でもエラ・フィッツジェラ
ルドの録音が今でも名盤として残っているわけで。余りに魅力的なものだから、ピアノ独
奏に編曲されたり、とにかく色々な形態の器楽編曲もたくさんある。合唱ファンから見て
も、合唱が効果的に使用されているので楽しめる。イントロ後にすぐやってくる、有名な
「サマータイム」だって、合唱団付きの方がいい(プッチーニ「誰も寝てはならぬ」など
と一緒)。まずは全曲盤を一組。
○Rattle指揮London PO, Glyndebourne Festival Choir他(EMICDS5 56220 2)88年
 LDも出ているので、映像派はそちらを。イギリスではとにかく評判の録音のようだ。
 ソロ歌手を全て黒人で固めている。確かにこれで十分楽しめる高水準の演奏だと思う。
 上記の番号は97年に出たEMI百周年記念盤のもの。

 なお、てもとにはスラットキン指揮の抜粋盤(フィリップスから国内盤が発売されたこ
ともある)がある。合唱団がクノーテ指揮のベルリン放送合唱団であることが期待なのだ
が、この団体にしてはいまいちだった。

 さて、僕は一枚も持っていないのだけど、ガーシュウィンのミュージカルの録音も結構
ある。「オー・ケイ」「ガール・クレイジー」「クレイジー・フォー・ユー」「ストライ
ク・アップ・ザ・バンド」「レイディ・ビー・グッド」などの全曲盤が割りと容易に入手
できるようだ。ガーシュウィンの歌を編曲物などで演奏する機会がある人は、これらミュ
ージカルでモトネタと聴いておく方がいいかもしれない。

 ガーシュウィンの旋律は、合唱に編曲されて演奏されることも多い。単発だとそれこそ
挙げきれないほど録音があるので、ガーシュウィンの曲数が多いCDを一枚。
○Get Happy!/The King's Singers(EMI,CDC7 54190 2)
 イギリス出身のジャズピアニスト、ジョージ・シアリングを迎え、ガーシュウィン、ア
 ーレン、そしてシアリングの「バードランドの子守歌」をキングズが歌うアルバム。キ
 ングズの録音の中でもストレートに楽しめる。ガーシュウィンの収録曲は以下。
 The half-of-it-dearie blues; Sweet and low-down; The Real American folk song;
 I got rhythm; Oh, I can't sit down; It ain't necessarily so

 その他で僕の印象に強く残っているのは、フランスの古楽演奏者によるジャズヴォーカ
ルグループ、INDIGOの「INDIGO」と題するアルバム。これはハマれる。ガーシュウィンで
は「The Man I Love」が聴けて、素敵なピアノ伴奏付き。

 さて、ガーシュウィンといえば代表作は「ラプソディーインブルー」。もちろんこれは
ピアノとオケ(またはジャズバンド)の演奏だが、委嘱者ホワイトマンは、合唱を付けて
演奏するアイデアを持っていた。ピアノの歴史的録音に興味がある向きには有名な録音が
あって、昨年末CD化されてようやく入手することができた。指揮はホワイトマン自身、
ピアノは同曲のスペシャリスト、アール・ワイルド(IVORY CLASSICS,64405-70702)。録音
は1945年で音はそれほどよくないが、今のところ合唱付き音源は僕はこれしか知らないの
で貴重。ここぞというところで入るヴォカリーズの合唱がたまらない魅力を放つ。ワイル
ドは、「40年代以降、この曲の演奏はオリジナルよりもずっと遅く、またひどくセンチメ
ンタルにされて、アメリカンな風味を失った」と述べている。この委嘱者の演奏はより注
目されるべきだと思う。全体の雰囲気が、たまらなくいいなあ。


ジェズアルド(GESUALDO,Carlo、c1557-1613、イタリア)

 CDを集めていると、この作曲家をもっと体系的に聴きたいのに、録音が無い!と思う
ことがある。特に名高い、特異な作曲家ジェズアルドも、そんな体系的録音が無い一人。
みんな、ジェズアルドは凄い凄いというのなら、もっときちんと録音してほしい、と思う
のだが、なぜこう恵まれないのだろう。もちろん、カタログを見ると量はそれなりにある
のだけれど、宗教曲全集や、マドリガーレ全集と銘打った新しい録音がもっと出てきて欲
しい。マドリガーレについては全集を目にしているが、店頭で手にとって良い演奏の雰囲
が漂ってこず(そういうこと、ありませんか?)、手を出していない。
 彼の作品の位置付けについては、もうさんざん語られている。作曲時代を考えると信じ
られないくらいの不協和音を使った、大胆な音楽を残した。
 どうしても体系的に録音を集めないと気が済まない僕としては、中途半端に手を出せな
いため、ジェズアルドの録音は殆ど持っていない。が、以下に挙げるものは高水準だ。

○Hilliard Ensemble(ECM,843867-2)
 うますぎて平坦。極端にいうと、楽譜を見ながらでないと、音楽の特異性に気付かない
 ほど滑らか。感触は幽玄ですらある。贅沢な悩みだが、これがジェズアルドだろうかと
 いう疑問が残る。レスポンソリウム全曲の2枚組で、貴重な音源だ。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,75605 51232 2)94年
 「聖土曜日のレスポンソリウム」のみ。やはりショッキングな演奏からは遠いが、磨き
 抜かれた演奏の美しさに感じ入る。このCDはストラヴィンキーのミサ曲や無伴奏合唱
 曲、そしてストラヴィンスキーがジェズアルド作品を補完した「3つのカンツィオーネ
 サクレ」を収録したアイデア・カップリング。
○Grossmith指揮Claritas(ETCETERA,KTC1215)97年
 マドリガーレを18曲収録。この新しい合唱団は、ケンブリッジ・クレア・カレッジの出
 身者から成るため、ある程度の実力は保証済み。ソプラノに少しビブラートがかかって
 いるのが珍しく、傾向としては日本人好みではないだろうか。指揮者はとても若い。今
 後が楽しみな団体だ。これも美しく聴かせる傾向のジェズアルド。

 さて、21世紀の課題かと思っていたマドリガーレ、20世紀末に好録音が出てきた。
○La Venexiana(GLOSSA,GCD920907)2000年
 第4巻の全曲に、第2巻から数曲の抜粋。やはりこういうイタリア人グループに頼りた
 い。演奏の質は保証済み。だが、何だか美しく調和し過ぎて、ジェズアルドってそんな
 に衝撃的でもないなという感触を与えるのが皮肉というか・・・。いずれにせよこの水
 準の全集ができれば言うことなし。


ギボンズ(GIBBONS,Orlando、1583-1625、イギリス)

 彼のマドリガル「銀色の白鳥」は名曲として有名だが、僕は、なぜこの曲が特に有名な
のか、さっぱり理解できない。それは確かにそれなりの良さはあるが、ギボンズをこの曲
で代表させることは無い。教会音楽の方がよほど重要だと思っている。昔から、ウルスタ
ンが指揮した演奏を聴いて、それなりに良さはわかっているつもりだったが、特に注目す
るきっかけになったのが、以下のラター指揮盤。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD107)
 8声のアンセム「O clap your hands」を聴いて、その立体的な音楽に驚嘆した。イギ
リスのチューダー王朝期のアンセムを集めた楽譜集がOUPから出版されているが、そ
こにこの曲が収録されている。たった4分半で終わるのに楽譜では48ページを占める!
 当演奏は意地悪く言えば行進曲然としているが、推進力は素晴しい。同盤にはギボンズ
 のアンセムをもう1曲「ダビデの子にオザンナ」収録されているが、上昇音型が実に印
 象的な佳曲である。楽譜も同じ本に収録。当盤「Faire is the heaven」は、選曲も良
 く、このコンビによる録音の中でも、一般的に薦められるものだ。

 以下、ギボンズをまとめて聴ける盤を挙げておく。
○Summerly指揮Oxford Camerata(NAXOS,8.553130)94年
 ギボンズだけ合唱及びオルガンの作品集。心地よい仕上がりになっている。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,75605 51231 2)94年
 アンセム集全18曲。この合唱団のファンなら是非聴いておきたい。
○Rooley指揮Consort of Musicke(DECCA,458093-2)75年
 旧録音の廉価盤でも注目のシリーズ、ダブルデッカのニ枚組。この名演奏家たちによる
 ウィルビー、モーリーの録音と共に、ギボンズの1612年のマドリガルとモテット集を収
 録。冒頭、「銀色の白鳥」で始まるが、残念ながらこれが合唱による演奏ではない(カ
 ークビーの独唱とヴィオール合奏)。なお、この手の廉価盤は解説が超貧弱なことが多
 いが、ここでは全曲の歌詞が付いているだけ良心的。この価格でこの内容なら納得。


ジル(GILLES,Jean、1668-1705、フランス)

 どうでもいいことだが、この綴りで「ジル」と読むのだからフランス語は慣れるまでは
難しい。ジルの代表的声楽曲は何といっても「レクィエム」。何でも18世紀フランスの葬
式でむちゃくちゃに流行したらしい。ルイ15世や作曲家ラモーの葬儀でも使われた。
 CDも結構種類があるが、僕はあまり聴き比べしていない。CDで聴くポイントの一つ
に、冒頭のティンパニ連打をどうやっているか、という点があるようだ。
 自分の葬式に流す音楽を探している方は是非一度お聴きになると良いと思う。冒頭のテ
ィンパニの後が若干平凡だが、続くテノールのソロが素晴しい。全体に、レクィエムとい
う割りには全然暗くない。

○Cohen指揮Boston Camerata他(ERATO,2292-45989-2)
 南フランスの葬式を再現すべく、太鼓群を各所に挿入し、必要な聖歌も補った注目盤。
 太鼓がうちならされる中、遺体が運ばれる光景が想像される。聖歌も効果的だが、音が
 高くなると声を張りあげて荒く感じられるのが残念。まずは安心の演奏レヴェルだ。


ヒナステラ(GINASTERA,Alberto、1916-1983、アルゼンチン)

 この人の音楽を初めて聴いたのは高校生の頃、ラジオでバレエ音楽「エスタンシア」が
流れた時だった。その強烈なリズムと音の多いうるさい音楽に刺激を受けた。大学で「ピ
アノソナタ第1番」を生で聴いて、特に終楽章の、はちゃめちゃ打楽器的音楽に驚いて、
ヒナステラの存在を更に強く意識するようになった。以降、様々な器楽曲を聴いたが、い
ずれも南米のイメージぴったりの、原初的エネルギーの充満した力強い音楽ばかりで、頭
を使わずに単純に楽しむことができる。
 彼に合唱曲があるのを知ったのはずっと後のこと。無伴奏混声の「エレミアの哀歌」が
それである。音源を聞くより楽譜の入手の方が先だったのだが、さすがヒナステラ、この
お馴染みの宗教的素材を、彼らしい情熱的な音楽に仕立てている。3曲から成り、演奏時
間は12分程しかかからない。こういう曲は日本のコンクールの自由曲にも使えるが、単な
る絶叫に終わらないように注意する必要がある。では手許の録音を。
○Patterson指揮Gloria Dei Cantores(GloriaDeiCantores,GDCD008)90年
 CDのタイトルは「BE GLAD THEN AMERICA」。アメリカ現代の合唱曲を集めた貴重な音
 源。演奏も特に悪いわけではないのだが、更に一層の冴えが反復鑑賞には必要。
○Dahl指揮Jutland Chamber Choir(PAULA,PACD115)98年
 デンマークの名合唱団のオムニバス盤に、「エレミア」のうち2つの曲を収録。全曲で
 はないのが残念。演奏は非常にうまいのだが、柔らか過ぎて迫力不足ととられるかもし
 れない。CDのタイトルは「LIVE」。
○Clausen指揮Concordia Choir(CONCORDIA RECORDINGS,E-2051)
 「Recordare Domine」のみ。アルバムのタイトルは「Salvation Is Created」。

 なお、手許には、合唱と管弦楽のための「詩篇第150番」のヴォーカルスコアがあるの
だが、この曲を聴いたことはない。声楽曲のCDも、もう少し増えて欲しい人だ。


グラス(GLASS,Philip、b1937-、アメリカ)

 現代音楽のトレンドに敏感な人は、彼の音楽を聴き漁っている筈である。となれば、合
唱ないしヴォーカルアンサンブルを伴う音楽も注目されてよく、量もそれなりにあるよう
だ。僕は不勉強で、そもそもCDを殆ど持っていないが、この一枚を。
○Riesman指揮Members of the Philip Glass Ensemble他(NONSUCH,7559-79519-2)
 指揮者ストコフスキーが参加したあの有名な映画「ファンタジア」後、映画と音楽との
 最も影響力のあった出会い、という評もある「コヤーニスカッツィ」の音楽。不勉強で
 映像付き形態で鑑賞していないので、僕はCDだけで判断するわけだが、エモーショナ
 ルな音楽だ。ここで取り上げる理由は、来日して少しは日本での知名度も上がった(の
 かな?)ウエスタン・ウインド・ヴォーカル・アンサンブルが参加しているから。当盤
 のトラック5「Vessels」ではアカペラコーラスになるのて聴き物。なお当盤はお買い
 得で、このレーベルから多数出ているグラスの音楽のハイライト盤が付属している。一
 一体グラスってどんな人?という向きには、まずこの1枚をと言えるものではないか。
 そのハイライト盤でほんの一部(合唱曲を2つ)が聴けるオペラ「浜辺のアインシュタ
 イン」の全曲盤は、そのうち入手したいと思っている(現代音楽聴きなら常識!)。

 なお、つい最近の実演情報としては、2000年1月に、合唱も入る交響曲第5番が本邦初
演されたようだ。そのうち録音も発売されるのかもしれない。


グラズノフ(GLAZUNOV,Alexander、1865-1936、ロシア)

 音楽ファンに最も馴染みがあるのは「バイオリン協奏曲イ短調」だと思われる。が、こ
曲も含めて、僕は彼の音楽を聴いて特別に感動を覚えたことはない。悪循環でどんどん耳
が遠のいてしまい、相変わらず僕は彼の音楽をよくわかっていない。最近、ピアノ曲や管
弦楽曲など、録音が徐々に増えているのは確か。
 CDになっている合唱付き作品は殆ど無い。ナクソスとマルコポーロが管弦楽曲をまと
めて録音しているが、その中の一枚に、合唱付きの劇付随音楽があった。
○Golovschin指揮Moscow SO, Moscow Cappella(NAXOS,8.553575)95年
 演奏時間1時間ほどの大作「ユダヤの王op.95」。正直言って長くて全曲聴き通すのは
 辛いが、合唱が入る第1、2曲と終曲だけは、景気が良くて聴きやすい。特に終曲の神
 を称える音楽の脳天気な単純盛り上がりは、いかにもロシア作品っぽくて楽しめる。演
 奏もまずまず良好。この合唱団は、ロシアらしく声の豊かさもあるし、和声感覚もまと
 もな方だと思われる。


グルック(GLUCK,Christoph、1714-1787、ボヘミア)

 合唱曲作家としては挙げられないが、オペラが有名。例えばフルトヴェングラーがその
序曲を録音していることからもわかるように、現代人にも感銘を与え得る音楽を残した。
オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」からの「精霊の踊り」は通俗名曲になった。
 僕は不勉強で、代表作「オルフェオ〜」は未聴。手許に、これまた重要なオペラ「アル
チェステ」の新しい全曲盤がある。
○Ostman指揮Drottingholm Theatre(NAXOS,8.660066/8)98年
 このオペラは、フランス語歌唱によるパリ版が知られてきた(マリア・カラスもレパに
 した)が、当盤はイタリア語歌唱によるウィーン版を採用、より作曲者の原アイデアに
 近いものになっている。合唱もずっと登場している。大したことないストーリーにCD
 3枚を費やすが、これぞグルックの主張。このスウェーデンの劇場は、グルック演奏の
 伝統がある。ナクソスは安いからありがたい。


ゴンベール(GOMBERT,Nicolas、c1495-1560、フランドル)

 カタカナで表記するとよく似た名前の作曲家に15世紀フランスのコンペールがいるが、
こちらのゴンベールの方が現代では録音も多い(最近増えている)。フランドルのモテッ
ト作家として、この分野が好きになれそうなら押さえておきたい一人。宗教的作品も世俗
的シャンソンも、しばしば演奏されている。

○Brown指揮Henry's Eight(HYPERION,CDA66943)96年
 「Missa Tempore paschali」と「マニフィカート」など。ケンブリッジ・トリニティ・
 カレッジの卒業生で構成された、注目の男声アンサンブルだ。同じレーベルから、もう
 一枚ゴンベール集を出している(未聴)。
○Kokars指揮AVE SOL(MAZUR MEDIA,GOV002)98年
 アヴェマリアばかりを集めたアルバムだが、目下のところ、ゴンベール作品で僕が最も
 気に入っているのは、この短いホモフォニックなモテット「アヴェマリア」である。


グッドール(GOODALL,Howard、b1958-、イギリス)

 作曲家名を聞いても誰も反応できないが、何せ日本でも人気爆発したテレビ番組「ミス
ター・ビーン」のテーマ(宗教曲テイストだと、合唱人なら当然感じていただろう)を書
いた人だ。これがCDで出てしまっては、コレクターとしては手を出さざるを得ない。
○Darlington指揮Christ Church Cathedral,Oxford(ASV,CDDCA1028)96年
 グッドールの合唱曲だけの作品集。上記のテーマ音楽「Ecce homo」は、すぐ終わって
 しまう。CDで聴くと、別に何ていうことはない。収録曲の中では、別のテレビ番組の
 テーマ曲として使用された「詩篇第23番」が旋律がきれいだ。また、「アンネ・フラン
 クの思い出に」というシリアス系も聴ける(特に言及すべき出来でもないと思うが)。
 有名な合唱団だが、僕自身は、こことは相性が悪く、当盤の演奏も余り評価しない。


グレツキ(GORECKI,Henryk、b1933-、ポーランド)

 ソプラノと管弦楽のための「交響曲第3番」で、一躍時代の寵児となった。人の心を癒
すヒーリング音楽とも捉えられている。単純な音の動きの反復を多用し、わかりやすい音
楽で攻めてくる。20世紀末の現代音楽のトレンドを掴むなら聴いておかねばならない。
 流行に伴って、合唱曲も頻繁に演奏、録音されるようになった。ただ、一時期のどこを
向いてもペルトやグレツキばかりという流行は、既に終わっているかもしれない。

 まず、グレツキの代表的無伴奏混声合唱曲がまとめて聞けるCDを一枚。
○Smedley指揮OXFORD PRO MUSICA SINGERS(PROUDSOUND,PROU CD 136)93年
 タヴナー、ペルト、グレツキという現代の三大流行合唱作曲家の作品を集め、タヴナー
 の初録音曲(録音時)を多く含むのがポイント。この合唱団は特にうまいわけでもない
 (特に女声の声質が明るく浅めに聞こえるので日本人の好みには合わないだろう)が、
 好演といえる。お題のグレツキは、「Euntes Ibant」「Totus tuus」「Amen」の3曲。
 例えば「Amen」もそうだが、グレツキは「ラシドシ」という音の動きを好んでいるよ
 うで、この動きをもとに徐々に音楽を盛り上げていく。

 この"ラシドシ動機"をもとにした無伴奏混声合唱曲で最も規模が大きいのが「ミゼレー
レ」で、演奏時間が約30分もかかってしまう。もし実演で聴いたら居眠り間違いなしでは
なかろうか。でも自宅でCDの気に入った部分だけを聴くなら、それなりに満足できる。
手許にCDが2枚。
○Jorgensen指揮Denmark National Radio Choir(CHANDOS,CHAN9523)96年
 グバイドゥリーナの「アレルヤ」が注目の一枚。グレツキの方は下記のスウェーデン放
 送合唱団の方が演奏は良いが、こちらは、この30分以上かわりばえのしない音楽を11の
 トラックに分けている編集が評価できる。
○Kaljuste指揮Swedish Radio Choir, E.Ericson.Chamber Choir(CAPRICE,CAP21515)95年
 グレツキよりもカップリングのシュニトケ「レクィエム」に注目。

 この他に、ノンサッチ・レーベルに選曲の良い一枚があるが未聴。
 合唱が入る交響曲第2番は、安いナクソス盤で、いい演奏で聴ける。
○Wit指揮POland national Radio orch,Polish Radio Choir他(NAXOS,8.555375)2000年
 コペルニクス生誕五百周年のために書かれた「交響曲第2番」は、ソプラノ、バリトン
 と混声合唱を伴う。音楽が一度おさまってから再び盛り上がっていく様が聴きどころ。
 もう1曲は「Beatus vir」で30分以上、単純な旋律を和声を繰り返す。この価格でこの
 曲・演奏の内容ならお買い得。

 さて、特に好きではないので音源を集めているわけでもないのに、他の曲を聴くために
買うCDにカップリングされてたりして、代表作「Totus tuus」(1987)の音源は手許に多
種揃ってしまった。冒頭から最後まで気持ちの良い和音を鳴らす静的な音楽。何は無くと
もこの曲だけは、一度は聴いておきたい。
○Summerly指揮Schola Cantorum Oxford(PROUDSOUND,PROU CD 129)91年
 マルタンのミサなどの20世紀の宗教曲のCDで、イマイチ冴えない。
○Cleobury指揮King's College,Cambridge(EMI,CDC5 55096 2)94年
 CDのタイトルは「ikos」で、グレツキ、ペルト、タヴナーの曲を聖歌を交えて演奏し
 たもの。「Amen」もカップリング。
○Shaw指揮R.Shaw Festival Singers(TELARC,CD-80406)94年
 マルタンのミサがメイン。音が分厚いのが心地良い。
○Backhouse指揮Vasari Singers(EMI,5 65903 2)95年
 ペルト、タヴナー、グレツキ、それにアラン・リドの合唱曲を収録。
○King's Singers(RCA,09026 68255 2)95年
 人数が多い方が演奏しやすいグレツキを、小人数でやってみた興味深いサンプル。
○Higginbottom指揮New College,Oxford(ERATO,0630-14634-2)96年
 例の、何度か引き合いに出している、異例のバカ売れ合唱CDに収録。
○Layton指揮Holst Singers(HYPERION,CDA66928)96年
 CDのタイトルは「ICON」で、ロシアの合唱の名曲を中心に集めたもの。演奏レヴェル
 もなかなか良いし、スヴィリドフの痛切な曲、このテの曲では見逃せない佳曲であるカ
 リンニコフ作品や、チャイコフスキー、グレチャニノフ、加えてペルトの「マニフィカ
 ート」とニステッドの「IMMORTAL BACH」などのカップリングが魅力。
○Vaivods指揮Chamber choir Versija(JADE,74321 48798-2)97年
 バルト三国の一つラトヴィアの室内合唱団。なかなか質の高い団体である上、録音場所
 の教会の豊かな残響をうまい具合に捉えた録音が魅力。そのサウンドだけで酔わせると
 ころがある。この曲大好きという人には、一聴を薦めたい。
○Clausen指揮Concordia Choir(CONCORDIA RECORDINGS,E-2204)98年?
 指揮者の自作も含め、20世紀の無伴奏宗教的混声合唱曲を集めたもの。ディストラー作
 品が貴重な音源。グレツキに関しては、まあまあ。

 もしどれか一枚選択するとなると難しくて迷うが、ホルストシンガーズ盤が演奏に加え
てカップリングも良いので薦められる。
 なお、グレツキの無伴奏合唱曲の楽譜は割と容易に輸入版で入手できるので、演奏機会
を得やすいのが嬉しい。


ゴセック(GOSSEC,Francois-Joseph、1734-1829、フランス)

 「ガヴォット」なら誰でも知っている(ニ長調でソラソミファソファレ…ってやつ)。
それしか残っていないのが可哀相なくらい、当時は結構な作曲家だったようで、コンセー
ルスピリテュエルの指揮をしたり、パリ音楽院の創立にも関わったりしている。何より重
要なのは、彼がフランス革命(1789)の時代を生きたということで、愛国歌なども随分残し
たらしい。国民の士気の高揚に影響されてか、当時のフランスの合唱作品は大袈裟な編成
が目立ったようだ。僕はCDを買っていないが、「テデウム」は革命当時流行し、古楽器
のセルパンという管楽器を50個!必要としたということだ。
 手許には、演奏時間70分を超える大曲、管弦楽付き「Requiem」(1760)がある。
○Devos指揮Musica polyphonica(ERATO,WE837)86年
 合唱のレヴェルはまずまずなので、ゴセックに興味がある人には薦められる。冒頭のテ
 ィンパニはジルの同名作を連想させる。Tuba Mirum〜の部分が、教会の外に隠れた管楽
 器アンサンブルを演奏に要したことで有名らしいが、確かにこの曲は金管吹きまくりの
 面白さはある。Quantus tremor est〜の部分は、ユーモラスに聞こえてしまう。演奏団
 体の特質もあって、全体に柔らかい感触になっている。
○Fasolis指揮Orch. della Svizzera Italiana,Coro della Radio Svizzera
 (NAXOS,8.554750/1)98年
 新しい録音でもう一枚。ナクソスで価格が安いだけでなく、演奏も美しい。


グールド(GOULD,Morton、1913-1996、アメリカ)

 器楽曲では例えば「ラテン・アメリカ小交響曲」が代表作で、気楽に聴ける音楽を残し
た人。僕は、ピアノ曲で巨匠ピアニストのチェルカスキーが好んだ「ブギウギ・エチュー
ド」が底抜けに明るくて好きだ。そういうイメージがあるので、合唱曲があると聞けば注
目してしまうが、有名器楽曲とはちょっと違う。
○Smith指揮Gregg Smith Singers他(KOCH,3-7026-2)
収録曲:Of time and the river; Quotations; Solfegging; Tolling
 僕は基本的にアメリカ現代の合唱曲とあまり相性がよくなく、これらの曲についても、
 モートン・グールドにしては地味で余り面白くない。収録曲の中では無伴奏の2曲、
 「Solfegging」「Tolling」が、4つの混声合唱団の委嘱で作曲されたもので、確かに
 4つの合唱団の掛け合いが聴ける。特に前者は、例えば4つの混声合唱団のジョイント
 コンサートなどにも使えるかもしれない。

 そういえば、グールドと言えば、カナダの名ピアニスト、グレン・グールドを思い出し
た。彼の作品「フーガを書いてみたいな」は、合唱団による演奏の可能性もある。


グノー(GOUNOD,Charles、1818-1893、フランス)

 人口に膾炙したご存知の名曲「アヴェマリア」がある。まずはこの曲を合唱で演奏して
みたCDを挙げよう。
○O'Donnell指揮Westminster Cathedral(HYPERION,CDA66669)93年
 この教会の音楽長をしていたMawbyの編曲で、テノールソロと混声合唱による。雰囲気
 は良いのだが、テノールソロが役不足。
○Kokars指揮AVE SOL(MAZUR MEDIA,GOV002)98年
 アヴェマリアだけを集めた好アルバム。これもテノールソロ+混声合唱でやっている。
○安積女子高校(BRAIN,HCD-95002)95年
 この高校の第25回定演の記録CD。第一ステージで、様々なアヴェマリアをとりあげて
 いる、不勉強で編曲者不明。当盤は鈴木輝昭「森へ」全曲が入っていて手放せない。

 グノーはオペラが重要ということになるのだろう。が、僕は彼のオペラの全曲盤を持っ
ていない。せめて「ファウスト」と「ロメオとジュリエット」くらいは持っておくべきだ
ろう。では、オペラ名曲集のようなCDで抜粋される場面はどうか、聴いてみよう。
○Plasson指揮Capitol de Toulouse Orch,Ch他(EMI,CZS5 72299 2)
 フランスオペラの合唱曲だけを集めた珍しい2枚組。価格は超廉価で解説は貧しいが、
 手薄になりがちなこの分野を多く開拓したい人には推薦盤。グノーではファウスト、ミ
 レイユ、ロメオとジュリエットの3つのオペラから抜粋。やはり有名な「ファウスト」
 のワルツと「兵士の合唱」が圧倒的に印象に残る。当盤の他の作曲家はオッフェンバッ
 ク、ビゼー、ベルリオーズ、マスネ、サンサーンス、プーランク、そして珍しいところ
 ではルーセルとトマ。
○Lenard指揮Radio Bratislava SO, Slovak Phil Choir(DCD Bestell Nr.5372)
 「ファウスト」のワルツの場面。正体不明の超廉価盤だが、演奏内容はマトモだ。
○Bonynge指揮LSO, Ambrosian Opera Chorus(DECCA,452913-2)66年
○Davis指揮BRSO,Ch.(PHILIPS,462796-2)86年
○Ehrling指揮Royal Swedish Opera(CAPRICE,CAP21520)95年
 上記3枚は、いずれも「ファウスト」の「兵士の合唱」の場面で、男声合唱の名曲とし
 て有名なもの。この中ではボニングの演奏を入れた2枚組が、最も長く抜粋している。
 フィリップスのこの番号の盤は、解説も何もないがとにかく3枚組でたくさんのオペラ
 合唱名場面を聴きまくりたいという人を狙ったもの。

 宗教的合唱曲の中で特に人気があるのは、「聖セシリア・ミサ曲」。この曲は「アヴェ
マリア」のグノーらしさが、そのまんま出ている。一小節同じ音を保ったりで、音の数が
少ない。こういう曲は発声の練習にも良かろうし、オーケストラと音を合わせて歌う練習
にもなりそうだ。ただし音楽としては、僕自身はこういう緊張感の弱い音楽は好まない。
しかしまた、一定の支持者がいることも理解できる。「サンクトゥス」は気持ちよいソロ
があるので、オペラ歌手のレパに入っている。手許に全曲盤が一枚。
○Zobeley指揮Munich SO, Munich Motet Chor(CALIG,CAL50956)96年ライブ
 ミュンヘン、ヘラクレスザールでのライブ録音。この合唱団は、特にうまいわけではな
 いが、暖かみがある。カップリングのビゼー「テデウム」が稀少音源。

 グノーの宗教曲は他にもいくつかあって、特に「レクィエム」が最近好んで演奏される
ようだが、僕は抜粋のCDしか持っていない。
 もう一枚、珍曲のCDを挙げる。
○Grimbert指揮Paris-Sorbonne Orch,Ch.(MARCO POLO,8.223892)95年
収録曲:Gallia(Lamentation); Tobie(Oratorio)
 珍曲の旅を続けるレーベル、マルコ・ポーロにグノーの合唱曲がある。演奏レヴェルは
 まともなので、グノー好みの方には薦められる。僕自身は余り馴染めなかった。


グーヴィ(GOUVY,Louis、1819-1898、フランス)

 現在では殆ど忘れさられた作曲家ということになるが、忘れられたロマン派の一人とし
て、一部で熱く支持されていると聞いた。古楽方面で興味深い録音を出し続けるレーベル
が合唱曲を録音しているという事実だけで、コレクターとしては、そそられる。2枚のア
ルバムを入手してみた。
○Houtmann指揮La Philharmonie de Lorraine Orch.,Choeurs他(K617,K617046)94年
収録曲:Cantate Le Printemps;Requiem
○Holt指揮La Philharmonie de Lorraine Orch.,Choeurs他(K617,K617067)97年
収録曲:Cantate Egill;Stabat Mater
 なるほど、確かに、一部に支持される理由はわかる気がする。特に「レクィエム」は、
 いい瞬間もある。しかし、全体としては、僕にとっては、その他大勢の平凡なロマン派
 と同じだった。是非聴いてごらんよ、と友人に薦めたくなるほどではない。ただ、ベル
 リオーズの「レクィエム」でさえ、平凡だと貶す僕の言うことだ。興味あり、という方
 は、まず前者から聴いてみられると良いと思う。演奏の質は、前者はまずまず、後者は
 余り上手くない。


グレインジャー(GRAINGER,Percy、1882-1961、オーストリア)

 オーストラリア出身で 英国などで活躍、アメリカ市民権を得た作曲家兼ピアニスト。
編曲魔で、彼自身の楽器ピアノのための編曲がたくさんあって、題材がなかなか興味深い
ので、一度ハマるとやめられなくなる。例えば、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番
のかの有名な冒頭をピアノソロだけでやろうとしたり、突然終わってしまうピアノソロの
ためのグリーグのピアノ協奏曲第1楽章、シューマンやラフマニノフのピアノ協奏曲、フ
ォーレの歌曲「夢のあとに」「ネル」等々、僕も楽譜をできるだけ収集した。オリジナル
のピアノ曲も多数あり、例えばピアノソロのためのラグタイム的小品「In Dahomey」など
は底抜けに明るいショウピースで気に入っている。
 そんな彼に合唱曲が多数あるのに気づいたのはずっと後、CDで聴き始めたのは、つい
ここ数年のことである。彼の最良の美質は、彼自身はそういうレッテルが嫌いだったよう
だが、民謡の収集とその良質な編曲にあらわれたと評されている。
 作品数が多すぎて、全貌がよくわからない。同じ曲でも編成で様々な版があり、CDを
見ていると「世界初録音」がまだまだ頻発しているのが現状だ。

 さて、まずこの一枚と言いたいCDを挙げる。
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA66793)94年
収録曲:A song of Varmeland; At twilight; Australian Up-country Song;
 Brigg fair; Dalvisa; Dollar and a half a day; Irish tune from County Derry;
 Mary Thomson; Mo Nighean Dubh; Near Woodstock town; O mistress mine;
 Shenandoah; Soldier,soldier; Stormy; The Gypsy's wedding day;
 The Sussex Mummers' carol; Ye banks and braes
 まず曲のことから述べると、グレンインジャーの編曲物の代表作は「Irish tune」とい
 うことになるだろう。日本では「ロンドンデリーエア」として知られる、あの名旋律を
 混声合唱のために編曲したもの。僕はこの曲をラター指揮盤で聴いて、感銘を受けた。
 実際演奏してみると、結構難しくて大変だ(特にテノールの音域が広くて)。この曲だ
 けは結構CDがある。また、「Brigg Fair」もよく演奏される。
 そしてオリジナル曲にも魅力作があることが当盤でわかった。特に盤のタイトルになっ
 ている、最後に収められた「At twilight」の美しさはどうだろう!正に黄昏の情景が
 眼前に広がる。その他にも「The Sussex Mummers' carol」など、叙情美を誇る。
 演奏団体「ポリフォニー」について、当盤が初体験だったが、一目(一聴)惚れした。
 今ではこの合唱指揮者とこの団体が、僕の特に贔屓とするところである。
 グリーグの「四つの詩篇」と「アヴェマリスステラ」を併録。グレインジャーは晩年の
 グリーグと親交があり、そのピアノ協奏曲を得意にしていた(録音も残っている)。合
 唱の分野でも、グレインジャーはグリーグの「四つの詩篇」の歌詞を英訳して、演奏の
 可能性を広げたのである。出版楽譜には、グレインジャーのこの曲に対する、褒めすぎ
 という位の賛辞が寄せられている。当盤の演奏ももちろん英語版。

 さて、合唱CDもここ数年どんどん増えている。その一部を以下に挙げる。
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA66863)96年
収録曲:Jungle book; Died for Love; Early One Morning; Good-bye to Love;
 Lord Maxwell's Goodnight; My Love's in Germanie; Recessional; Shallow Brown;
 Six Dukes went a'fishin'; The Love Song of Har Dyal; The Power of Love;
 The Rival Brothers; The Running of Shindand; The Sprig of Thyme;
 The Three Ravens; Willow,willow
 上記盤と同じコンビの演奏。キップリングの有名な「ジャングルブック」を素材にした
 曲集が目玉。その他はまた民謡の編曲やオリジナル曲。「ジャングルブック」を読んだ
 ことがある人なら是非聴いておかれるとよいと思う。僕は読んだことが無いし、曲とし
 ても、上記盤の収録曲と比べると、少し落ちると思うけれども。ソプラノソロに、僕が
 追っかける合唱歌手クラブトゥリーの名前が見えるのが嬉しい。
○Gardiner指揮Monteverdi Choir(PHILIPS,446657-2)95年
収録曲:Brigg Fair; Danny Deever; Father and Daughter;I'm seventeen come Sunday;
 Irish tune from County Derry; Love Verses from The Song of Solomon;
 Mo Nighean Dubh ;Scotch Strathspey and Reel;Shallow Brown;The Bride's Tragedy;
 The Lost Lady Found; The Merry Wedding; The Three Ravens; Tribute to Foster
 大物ガーディナーがこういう企画をやってくれると嬉しい。並々ならぬ思い入れがある
 ようだ。もちろん演奏が悪いわけではないのだが、この合唱団としても特に粗い。曲に
 よっては荒々しく歌うべきものもあるが、例えばロンドンデリーなどテノールが声を張
 り上げ過ぎて耳に障る。最後のフォスターの「草競馬」による作品が目玉だが、曲の出
 来はいまいちというところだろう。日本でもグリークラブがよく歌うシーシャンティー
 「What shall we do with a drunken sailor」を編曲した「Scotch Strathspey and
 Reel」 が嬉しい。レイトン盤にこれが入っていないのが甚だ残念。
○Halsey指揮バーミンガム市響合唱団(CONIFER,75605 51752 2)87年
収録曲:Australian Up-country Song; Brigg Fair; Danny Deever;
 Irish tune from County Derry; Morning song in the jungle; Shallow Brown;
 Six Dukes went a'fishin'; Skye Boat Song; The Lost Lady Found; The Peora Hunt;
 There was a pig
 この合唱団はあまりうまくないので、無理して買う必要はないが、価格の割りにカップ
 リングがいいのが売りで、2枚組みに他にエルガー、ディーリアス、ホルストを収録し
 て、価格が一枚分で買えるのが魅力。

 機会があれば一度触れていただきたい作曲家だと思っている。


グレチャニノフ(GRECHANINOV,Alexander、1864-1956、ロシア)

 まさか、というところから良い合唱作家を発見すると、無性に嬉しい。21世紀にもっと
流行しそうな作曲家として、この人を大いに推薦したい。ラフマニノフ「晩祷」が20世紀
末に流行したが、グレチャニノフの教会合唱曲もそれと似た雰囲気で、かつ、親しみやす
いと感じるからだ。
 ロシア出身で最後はアメリカで死んだグレチャニノフ。僕は長いこと、子供用音楽ばか
り書いているのかと思い込んでいたが、長寿に恵まれて晩年まで創作意欲が衰えず、結構
な多作家だったようだ。のみならず、最近ようやく気付いたのだが、合唱作家として重要
な存在だ。ロシア合唱曲鑑賞ブームにのって、少しずつCDが増えている。特にイギリス
のシャンドス・レーベルは力を入れている。
○Polyansky指揮Russian State Symphonic Cappella(CHANDOS,CHAN9303)94年
 無伴奏混声の「The Seven Days of Passion op.58」全13曲を収録、約60分。冒頭から
 響きがもうかっこよくてかっこよくて、参った!当盤がこの曲の初録音だそうだ。
○Layton指揮Holst Singers(HYPERION,CDA67080)98年
収録曲:All-Night Vigil op.59; In Thy Kingdom op.58-3;
 Lord,now lettest thou thy servant op.34-1;Now the powers of heaven op.58-6
 グレチャニノフの「晩祷」全曲と小曲を3つ。それにしても上記ポリャンスキー盤でも
 勿論聴けるが、op.58-6の何と美しいこと!ほれぼれする。この合唱団、意外とロシア
 物にも適合することを発見できた。

 まずは上記2枚が基本アイテム。以下は抜粋盤。
○Korniev指揮St Petersburg Chamber Choir(PHILIPS,446662-2)95年
 この合唱団はここ数年でフィリップスが続々新譜を出してくるのでフォローし切れてい
 ない。確かにそれなりの実力があって、重低音に支えられた響き豊かな合唱で、和音感
 覚も悪くない。グレチャニノフの2曲op.26と58-7は、いずれも重低音がかっこよく、
 特に作品26のバスの動きにはゾクゾクさせられる。
○Layton指揮Holst singers(HYPERION,CDA66928)96年
 グレツキの項で紹介したCD。「聖ヨハネス・クリソストムスの典礼op.29」から抜粋
 3曲(第6、8、11曲)を収録、なかなか楽しめる。
○Clausen指揮Concordia Choir(CONCORDIA RECORDINGS,E-2051)
 op.29-11と34-1を英語で演奏しているのが特徴。良い演奏だ。
○Brown指揮Clare College,Cambridge(COLLEGIUM,COLCD125)99年
 op.58-4のみ。20世紀末にこういう優れた録音が登場してきて、21世紀につながりそう
 な予感がする。これは素晴らしいアルバムだ。

 もちろん僕は、慌てて楽譜の入手に走った。Musica Russicaから出版されていて、アメ
リカから通販で買える。
 他にも伴奏付きの宗教的合唱曲の録音が出ているので、気長に集めるつもりだが、聴い
た一枚はハズレだった。
○Polyansky指揮Russian State Symphonic Cappella,Orch.(CHANDOS,CHAN9845)99年
 初録音となる混声合唱とオルガン、管弦楽のための「Missa oecumenica op.142」を収
 録。楽想の平凡さに呆れてしまった。もし僕が、グレチャニノフという人をこの曲から
 知ったとしたら、二度と振り返らなかったかもしれない。出会いは大切なのだ。併録の
 交響曲第5番(合唱は関係無し)も平凡。


グレゴリオ聖歌(GREGORIAN)

 流行ったねえ、グレゴリオ聖歌。90年代にこういうのが流行るとは、トレンドとは読め
ないものだ。聖歌がいい、ってことは、合唱ファン、音楽史ファンなら、誰でも知ってい
たことだ。それが、ポップス・ファンの耳まで捉えるとは!
 さて、CDで聴くたって、アルバムは山ほどあって、もうどうしようもない。勿論、流
行したアルバムを聴きたいなら、シロス修道院のベストセラー盤(EMI)にすればよい。
 僕も、何だかんだと沢山の録音を持っているが、合唱ファンなら聴いておく方が役に立
たちそうなアイテムとしては、後世の作曲家がこれでもかと引用した、「死者のためのミ
サ曲」の中の「Dies irae怒りの日」がいいのではないだろうか。しかしこの曲は、今日
の典礼では演奏されなくなっている。その関係もあって、録音は余り無い。例えば僕の手
許にある、グレゴリオ聖歌の「レクィエム」のソレム修道院盤(キング発売の国内盤)に
も、「怒りの日」の部分は収録されていない。手許にある、中世音楽を6枚にまとめた組
物に含まれていた。
○Deller指揮Deller Consort(HARMONIA MUNDI,HMX290650)76年
 これは6枚セットの2枚目。1枚目には、もっと古い音楽(ビザンチン聖歌やアンブロ
 ジアン聖歌など)が収録されている。


グリーグ(GRIEG,Edward、1843-1907、ノルウェー)

 一応、大作曲家の一人に数えられているが、芸術評論家たちによる評価は必ずしも高く
ない。先ほどグレインジャーで触れたが、民謡と芸術音楽との融合に功績あり、というと
ころ。僕は彼の音楽に一貫する叙情は嫌いではない。
 最も知名度の高い作品は劇音楽「ペールギュント」、学校の鑑賞の時間に聴いた。管弦
楽組曲として演奏されるのが普通だが、原曲は合唱も入っている。まずはこれから。
○Jarvi指揮Gothenburg SO, Pro Musica Chbr Ch他(DG,423079-2)
 2枚組CDに、「ペールギュント」全曲と、有名ではない「十字軍シーグル」全曲を収
 録。「ペールギュント」の方は、合唱の露出がそれほどでもないし、登場しても単純で
 つまらない。しかし、管弦楽組曲にも入っている「山の魔王の宮殿にて」は、合唱付き
 版を聴いてしまうと、もう合唱無しでは物足りなくなる。「シーグル」の方は、それな
 りに合唱の出番がある。

 僕が最も好きなグリーグは、弦楽合奏のための「2つの悲しい旋律」。胸がつまる旋律
がたまらない。別に芸術性が低いなどと批判されたって全然気にしない。いずれも歌曲か
らの編曲で、2曲めの「春」の方は多種の合唱編曲楽譜を目にするし、CDもある。
○Parkman指揮Danish National Radio Choir(CHANDOS,CHAN9464)95年
 Thomas Beckによる混声合唱編曲。詩はノルウェー語。もっといい演奏ができる筈だ。
 当盤「Nordic Light」は北欧の合唱曲を集めて大変良いアルバムだ。
○Etzold指揮Junges vokalensemble Hannover(CARUS,Carus83.147)
 こちらも混声合唱編曲でノルウェー語による歌唱。ヘ長調。このドイツの合唱団は特別
 上手いわけでもないが、健闘は買える。グリーグでは、宗教曲から有名な「Ave maris
 stella」と「Blegnet,segnet op.39-5」の2曲も収録。北欧合唱曲のアルバム。

 続いて、数少ないグリーグの合唱曲だけを集めたアルバムを四枚。
○Stenlund指揮Malmo Chamber Choir(SIMAX,PSC1027)84年
 3つの曲が収録されていて、まずグレインジャーの項で触れた「四つの詩篇op.74」の
 ノルウェー語版。このバリトンソロと混声合唱のための宗教的合唱曲は、グレインジャ
 ーの賛辞は褒めすぎとしても、確かに鑑賞・演奏のレパに入れたい作品ではある。続い
 て「2つの宗教的合唱曲EG.156」。2曲目のAve Maris Stellaは、日本でもコンクール
 の課題曲になって知名度が上がったしCDも一際多く出ているが、1曲目の方は殆ど見
 ない。しかしこの録音を聞けば、こちらに惚れる人の方が多いのではなかろうか。最後
 に「男声合唱のためのアルバムop.30」全12曲。民謡の編曲のようだが、これは男声合
 唱の魅力あるレパ。現に日本でも意外と演奏されているようだ。演奏効果もありそう。
 ということで、これは大変貴重なアルバム。演奏も悪くないが、録音が響きに乏しく、
 それでかなり損をしていると思われる。実際はもっと上手に聞こえるべき団体だ。
○Skold指揮Oslo Phil Choir, Gli Scapoli(SIMAX,PSC1187)93年
収録曲:2 Religious Choirs; Dona nobis pacem; 4 Psalms op.74(以上混声)
 At the Halvdan Kjerulfs monument;Greetomgs from Kristianias Singers;
 Election Song;Holberg cantata;Impromptu;Inga Litamor;The Late Rose;
 Westerly Wind(以上男声)
 混声はオスロ・フィルハーモニー合唱団、男声はリ・スカポリが担当。前者は、時に発
 声の幼さが気になったり、粗いハーモニーが聞こえることがあるが、それでもほんわか
 した響きの作り方は流石である。後者はとても上手い合唱団だ。男声の選曲は、上述盤
 と重複がないことが嬉しい。
○Die Singphoniker(CPO,999835-2)2001年
収録曲:Westerly Wind; My sweetest thought; Evening mood; The Bear hunt;
 In Heaven; Impromptu; Album fur mannerchor op.30; The lonely rose;
 Inga Litamor; The Ole Bull; Voting song
 5人の男声から成るドイツのアンサンブルグループ、ジングフォニカーによる男声合唱
 曲集。日本でもそれなりに親しまれている、歌詞がドイツ語でも歌える「男声合唱のた
 めのアルバム op.30」全12曲が聴けるのが目玉で、それ以外に小曲を収録。各パート
 が複数人いる、通常の男声合唱団による演奏が普通の作品を、このように各パート1名
 で、名手の手ですっきりくっきり演奏されると、曲の本来の美しさがよくわかる。男声
 合唱のレパ探しをする人には、大いに薦められる。
○Valen指揮Valens solistensemble(Bergen Digital Studio,BD7022CD)93年
 これはかなり珍しいが、Aasという人によるグリーグの歌曲の同声合唱編曲版ばかりを
 収録したアルバム。有名な「春に」は無伴奏同声合唱。合間にピアノ独奏のための「抒
 情小曲集」抜粋や、「ソルヴェーグの歌」(この演奏、透明な声質がなかなか注目)な
 ど独唱歌曲を挟む。熱烈ファン用。

 北欧を贔屓して、グリーグのその他のCDを拾っていく。

 まず「四つの詩篇op.74」について。第1曲が特に有名で(これも日本のコンクールの
課題曲になって知名度アップ)、演奏機会も多い。世界中の若人が集う合唱団WYCのハ
イライト盤にも入っている。手許にある、その他の全曲盤を。
○Jorgensen指揮Danish National Radio Choir(CHANDOS,CHAN9767)99年
 この合唱団ならではの分厚い響きを生かした好演。ちょっと立派過ぎるのか、僕の琴線
 に触れない、といったところなのだが。「2つの宗教的合唱曲」と「我に平和を与えた
 まえ」、それに男声合唱曲op.30-10。さらに、グリーグが若い頃に影響を受けた作曲家
 ガーデの合唱作品をカップリング。
○Hogset指揮Grex Vocalis(QUATTRO,QCD9308)96年
 日本でもすっかりお馴染みになったホグセット氏が指揮する団体による20世紀ノルウェ
 ー合唱曲集。他にはニーステッド、ノールヘイム、クヴェルノ作品を収録。グリーグの
 詩篇はノルウェー語版。びっくりするうまい合唱団というわけではないが、響きがいか
 にも北欧らしく透明感がある。

 宗教的合唱曲では有名なラテン語の「Ave Maris Stella」は沢山音源がある。余り演奏
されないが、この曲を含む「2つの宗教的合唱曲」の第1曲の方も、実は良い。
○Bantzer指揮Harvestehude Chamber Choir(ARTENOVA,74321 65423 2)
 超廉価盤レーベルのアルテノヴァに数枚録音しているドイツの合唱団。当盤は、聖母マ
 リアに関する音楽を集めた、様々な演奏家によるオムニバス盤。暖かい響きが良い。
○Etzold指揮Junges vokalensemble Hannover(CARUS,Carus83.147)98,99年
 歌曲「春」の編曲で触れた。
○Higginbottom指揮Oxford New College Choir(DECCA,466870-2)99年
 今やヒーリング方面最高のイギリス聖歌隊となったオックスフォード・ニュー・カレッ
 ジが2001年に出したヒーリング・アルバム「BLUEBIRD」。そしてこのグリーグ作品も、
 この手のアルバムに収録されるような知名度を得たのだ。確かに美しい演奏。当盤の選
 曲は、従来は選ばれなかったような、ちょっとひねった曲が多くて参考になる筈。
○Jorgensen指揮Danish National Radio Choir(CHANDOS,CHAN9767)99年
 「四つの詩篇」の項で触れた一枚。「2つの宗教的合唱曲」として収録。
○栗山指揮コーロ・カロス(EdACJ/DH 9702)96年
 コーロカロスがフランスに招待されて行った演奏会のライブ録音。盤冒頭のバードのミ
 サ曲はまずい状況だが、次のこのグリーグで俄然良くなって面目を取り戻す。この他に
 も僕の手許には、94年の合唱コンクール全国大会の記録CDでカロスと千葉大の演奏が
 ある。栗山氏指揮の音源が3点あるわけだ。
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA66793)94年
 既に述べたグレインジャーとカップリングしたもの。
○O'Donnell指揮Westminster Cathedral(HYPERION,CDA66669)93年
 これも既にグノーの項で登場したCD。演奏はともかく選曲は良い。
○Runge指揮Kammarkoren Acappella(FUSION,CD117)94年
 スウェーデンの合唱団。うまくないが、但し選曲は、北欧物からルネッサンス、ポップ
 スまで幅広いのが特徴。

 「男声合唱のためのアルバムop.30」は、上記のジングフォニカー盤のような全曲盤の
他に、キングズシンガーズが4曲を抜粋して歌ったものがある。しかもこれは、またまた
グレインジャーによる英語版なので貴重な音源。演奏も見事。
○コンサートコレクション(東芝,TOCE7663国内盤)75年

 管弦楽付きの、なかなか演奏されない声楽曲を集めた貴重なアルバム。
○Jarvi指揮Gothenburg SO他(DG,UCCG-4231国内盤)92年
 収録曲のうち、「南の僧院の前でop.20」に女声合唱、「陸地望見op.31」に男声合唱、
 そして未完の歌劇「オラヴ・トリグヴァソンop.50」からの情景に混声合唱が入る。い
 ずれも力作で、特に歌劇は、合唱の生命力に惹かれる。合唱団はオケの併設合唱団で、
 目覚しく上手いというわけではないが、透明感はさすがというところ。なおこの番号の
 盤は、グリーグの没後百年を機にミッドプライスで再発売されたもの。

 グリーグのピアノ曲は合唱曲よりは頻繁に演奏されている。有名な「抒情小曲集」を中
心にCDも沢山でている。ナクソス・レーベルが、グリーグのピアノ曲全集を録音してお
り、これを輸入代理店アイヴィー社が国内盤仕様で出したことがある。14枚組に及ぶし価
格は1万円を超え、こんなの誰が買うのと思いきや、この全集は異例のヒットになったよ
うだ。演奏のノルウェーのノックレベルクという人は、学者ピアニストのイメージを覆え
歌のある演奏をする。独奏曲にしぼっているのでピアノ協奏曲は入っていないが、ソロ作
品の選曲ではこの全集が最も多くの曲を収録している。実は合唱付き作品が入っている。
○ピアノ曲全集第11集(NAXOS,8.553397)94年
 合唱モノは、ペールギュントの第2組曲の中の「アラビアの踊り」、それとこちらは珍
 品だが、未完の歌劇「オラヴ・トリュグヴァソン」からの2つの小品。後者はノルウェ
 ー舞曲風で、なかなか旋律がおいしい。
○ピアノ曲全集第12集(NAXOS,8.553398)94年
 ペールギュント組曲のピアノ編曲版は、第11集に入っているのが通常だが、その異稿が
 この第12集に入っている。合唱付きは「アラビアの踊り」のみ。

 最後に編曲ものを一つ。
○Allwood指揮Rodolfus Choir(HERALD,HAVPCD242)95,97年
 「ソルヴェーグの歌」を無伴奏混声合唱で。素直な編曲だ。


グルーバー(GRUBER,Franz、1787-1863、オーストリア)

 ご存知「きよしこの夜」の原作者。これがまた、想像通り合唱編曲版の録音が山ほど出
ていて、特に集めなくても気がつけば手許に多数揃ってしまう。以下に挙げていくが、わ
かる物は編曲者を記す。また、特記なきは英語による歌唱。指揮者のアルファベット順。
○Bruffy指揮Kansas City Chorale(NIMBUS,NI5413)M.Johnson編,94年
 あーあ、なんと難しい編曲。当盤の最後には、Kevin Oldhamという人の面白い曲を収録
 している。大胆にも同じ詩にオリジナルメロディーをつけてソプラノソロに歌わせ、そ
 こに絡むフルートにグルーバーのメロディーを織り込み、ハープが伴奏する。
○Chanticleer(TELDEC,WPCS4687国内盤)94年
 1番ドイツ語、2番フランス語、3番英語による。
Chanticleer(TELDEC,WPCS11123国内盤)2001年
 マクグリン編曲版で、ソプラノソロにアップショーが加わる。

○Edison指揮The Elora Festival Singers(NAXOS,8.554179)97年
 結構面白い編曲なのに、編曲者が明記していない。困る。
○Gronostay指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901794)2002年
 ブラームスの知り合いの音楽学者マンディチェフスキの編曲。素直すぎるほどに素直な
 無伴奏混声版。演奏は例によって極上。
○Halsey指揮The Elizabethan Singers(Boston Skyline,BSD124)Lidout編,65年
 「きよしこの夜」のトラックには、どうも録音会場外の自動車の音が随分と拾われてい
 るように聞こえる。不思議な和声付け。
○Higginbottom指揮Choir of New College,Oxford(CRD,CRD3462)89年
 この団体は現在のERATOの前はこのレーベルに集中的に録音していた。
○Jung指揮Dresdner Kreuzchor(DG,449818-2)Jung編曲,96年
 もう少しうまければよいのに。ドイツ語。
○King's Singers(EMI,CDC7 49909 2)Rutter編,89年
 下に掲げる物いずれとも違うラターの編曲。無伴奏でドイツ語。 
○Luengen指揮Phoenix(SKYLARK,9904)Ramsey編,99年?
 カナダの室内合唱団。選曲、演奏にお洒落な雰囲気が漂う、掘出物のクリスマスアルバ
 ム。合唱団のメンバーによる編曲で、編曲者による語りが少し入る。悪くない。英語。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(Conifer,CDCF501)Clarence編,88年
 このアルバム、とても好きだ。マジメなクリスマスの定番。
○Nilsson指揮Swedish Radio Choir(日本クラウン,CRCC-22国内盤)Samuelson編,95年
 こんな素晴らしい企画が日本のレーベルでできるとは!編曲は平凡。スウェーデン語。
○Prizeman指揮Libera(EMI,TOCP-70100国内盤)Prieman編,2006年
 イギリスの少年合唱ユニット、リベラによる演奏で、期待通りの美しさ。
○Prosser指揮Emmanuel College,Cambridge(ASV,CD WHL2104)95年
 「きよしこの夜」の成立には疑わしい逸話がある。オルガン伴奏で演奏しようとしたら
 ミサの前にオルガンが壊れてしまったので、ギター伴奏になった、という話。その形態
 の録音がこれ。大変珍しい。今日よく聴く旋律とは少し違う。もちろんドイツ語。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,CSCD503)Rutter編,80年
 97年に復活した幻の録音。無伴奏。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD111)Rutter編,89年
 同じ編曲者のにこちらはオケ伴で、いかにもラター節。録音時期も異なる。
○Rutter指揮Clare College,Cambridge(EMI,CDM7 69950 2)Rutter編,68年
 ラター最初期の録音で、何とまた違う編曲のオケ伴。しかもドイツ語。
○Singers Unlimited(MPS,821859-2)Puerling編曲
 ヴォーカルアンサンブルの名盤中の名盤。
○Sjokvist指揮Swedish Radio Choir(CBS RECORDS,SBCD507)Widen編,90年
 ガーディナーの項であげたCD。上と同じ合唱団だが編曲は異なる(やはり平凡)。も
 ちろんスウェーデン語。
○Smedley指揮Oxford Pro Musica Singers(PROPRIUS,PROUCD134)Smedley編,93年
 演奏がうまくないけど、収録の「Follow that star」というクリスマス物の編曲集は、
 人数が多い合唱団向きの、スグレモノ。お題の曲については編曲も平凡。
○Sund指揮Orphei Dranger(BIS,BIS-CD-533)Sund編,91年
 名男声合唱団のクリスマスアルバム。指揮者による編曲は、主旋律をソプラノソロに歌
 わせ、合唱団はハミングで付ける部分が長い。演奏は素晴らしい。ドイツ語。
○Swingle Singers(PHILIPS,548303-2)Swingle編,67,68年
 初代スウィングルシンガーズの、未だに古びることのないクリスマスの名盤「パスポー
 トのないクリスマス」。他の収録曲は「ジングルベル」や「ホワイトクリスマス」、よ
 く知られたキャロルなど。他でとりあげる項がないのでここで。
○Swingle Singers(SWINGCD3)Rathbone編,80年代後半
 プライヴェート盤。東芝が出した国内盤より、こちらの方が数段良いと思う。毎年クリ
 スマスになると、僕はこのアルバムを最も頻繁に聴いている。バスに低いDesを出せる
 仲間がいたら、是非この編曲をやりたい。最近、三重県の合唱団うたおにのプライヴェ
 ート盤「Away in a manger」を聴いたら、アルバムの最後にこの編曲版が入っていた。
 もし合唱団でやりたい人がいたら、参考になるだろう。この「うたおに」盤は、演奏の
 出来には問題もあるが、選曲やアルバムのコンセプトは素晴らしい。
○Swingle Singers(東芝,TOCE-8536国内盤)Rathbone編,94年
 編曲は上と同じ。この録音当時のメンバー構成も気に入っている。
○当間指揮大阪シュッツ合唱団(サンパウロ会,P30C53038国内盤)95年
 賛美歌109番という注釈あり。ドイツ語と日本語。
○トライトーン(NEXT RECORDS,NXCD-0001国内盤)97年
○トライトーン(LEAFAGE,PCCA-01586国内盤)2001年
 上記2枚のトライトーン・アルバムでは、いずれも同じ松永ちづる編曲版を使用してい
 るが、異なる音源になる。後者はクリスマス音楽のみ。

 それで結論は?やはりスウィングルシンガーズのラズボーン編曲は、一聴の価値あり。


グバイドゥーリナ(GUBAIDULINA,Sofia、b1931-、ロシア)

 彼女は旧ソ連のタタール共和国出身で、父がタタール人で母はロシア人。作曲家として
国際的に本格的に注目されたのは、バイオリニストのクレーメルの力によるところが大き
い。バイオリンと管弦楽のための「オッフェルトリウム」を大手のDGが録音して、多く
の人に感銘を与えた。
 彼女の音楽は、同じ流行作家でもペルトやグレツキらの静謐な音楽とは明らかに違う。
激烈な音響と緊張の糸が張り詰めた静けさとの対照が耳に残る。とにかく音楽の緊張感は
タダモノではない。室内楽には、僕としても非常に惹かれる。親日家で、彼女の作品の日
本での実演も、しばしば機会がある。
 器楽曲の演奏機会が多いため、合唱曲は少ないような印象があったが、実は意外に声楽
が加わる作品が多い。手許に無い発売音源も、多数存在する。真摯な作風ゆえ、とても気
楽に聴き流せる音楽ではないのだが、たまには、こういう現代音楽も聴きたくなる。
○Leeuw指揮Schoenberg Ensemble, Netherlands Chamber Ch(PHILIPS,442531-2)93年
 「Jetze immer Schnee今やいつも雪」という演奏時間30分弱の、室内アンサンブルと室
 内合唱団のための作品。オランダ室内合唱団が演奏しているので見逃せない。緊張感漲
 る音楽が好きな人には推薦したい。もちろん、わかりやすい曲ではない。カップリング
 は、合唱は関係ないがソプラノとバリトンのソロが入る「Perception」。
○Kitajenko指揮Danish National Radio SO,Choir(CHANDOS,CHAN9523)94年
 グレツキ「ミゼレーレ」とカップリングされた、この「アレルヤ」は、管弦楽と混声合
 唱、ボーイソプラノのための作品。35分ほどの長さ、合唱団には歌いごたえがある。困
 難なフレーズの連続だ。例によって激烈な部分と平穏な部分をミックスする手法。当盤
 の演奏は、初録音としては十分な水準を保っている。難しい現代音楽好きな人向き。
○Hyokki指揮Klemetti Chamber Choir(FINLANDIA,3984-25987-2)97年
 この合唱団のアナログ時代の録音から、最新録音までを集めた2枚組。その新しい録音
 の中に、グバイドゥーリナの「Hommage a Marina Tsvetayeva」が含まれている。演奏
 時間20分弱で、全5曲からなる無伴奏混声合唱曲。ということは、ここに挙げた3曲で
 は、もしかしたら我々が演奏に関わる可能性があるものだ(ロシア語の壁はあるが)。
 骨のあるレパを求める向きには、一聴をお薦めしたい。この合唱団も、年を経るにつれ
 て技術レヴェルも上がっており、演奏も大健闘。盤のタイトルは「COOL GARDEN」。
○Gergiev指揮Mariinsky-Theaters St.Petersburg(HANSSLER,CD98.405)2000年初演ライブ
 2000年のバッハ記念年の「パッション2000」というプロジェクトのために作曲、初
 演された「ヨハネ受難曲」の初演ライブ録音。大管弦楽と混声合唱のための90分かかる
 力作で、いかにもグバイドゥーリナらしい真摯な作品に仕上がっている。


ゲレーロ(GUERRERO,Francisco、1528-1599、スペイン)

 ビクトリアよりも少し先輩。この時代のスペイン音楽といえば、どうしてもビクトリア
ばかりにスポットが当たってしまう(特に日本人はビクトリア大好きだ)が、他にも、鑑
賞・演奏に値する作曲家はいる。その一人がゲレーロ。99年は没後4百年にあたり、日本
のコンクールの課題曲にもなった。
 では早速、収録曲の重複が少ない2枚のゲレーロだけのアルバムを。
○Savall指揮Capella Reial de Catalunya(ASTREE,E8766)92年
収録曲:Alma Redemptoris mater(a4); Ave Maria(a4); Ave Maria(a8);
 Ave,virgo sanctissima(a5); Beata Dei genitrix,Maria(a6); Duo Seraphim(a12);
 Gabriel Archangelus(a4); Laudate Dominum de caelis(a8);
 O Altitudo divitiarum(a8,inst.); O Domine Jesu Christe 1(a4,inst.);
 O Domine Jesu Christe 2(a4); O sacrum convivium(a5); Pater Noster(a8);
 Regina caeli(a 8);Salve Regina(a 4);Trahe me poste te(a 5);
 この合唱団の声そのものが余り好きではないので、僕は楽しめない。悪い演奏ではない
 が。注目は三重合唱、12声の「2人のセラフィムが」あたり。ここでは器楽も加えて12
 声になっている。手許の盤は日本の代理店がちゃんとした解説・対訳を付したもの。
○Mallavibarrena指揮Musica Ficta(CANTUS,C9619)97年
収録曲:Ave maris stella; Canite tuba in Sion; Clamabat autem mulier;
 Dulcissima Maria; Dum aurora finem daret; Magnificat; O crux benedicta;
 Tota pulchra es Maria; Trahe me poste te(a 5); Vexilla regis;
 8人の歌手とポジティブ・オルガンで演奏。上記サヴァール盤よりも、声の透明度の高
 さで、僕はこちらを好む。アンサンブルの出来は、サヴァールの方が良いと思う。曲の
 方は、ゲレーロのこれが凄い、という物には未だ出会えていない、というところ。

 サヴァール盤のコメントで触れた三重合唱の「2人のセラフィムが」を、普通の合唱団
が歌った録音が手許にある。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD123)93年
 多声合唱曲ばかりを集めたアルバム。時折ソプラノを中心に不快な声も聴こえるが、12
 声が揃う部分の響きの豊かさは、聴き物。なるほど、これは興味深いレパだ。


(トップページへ)    (快楽派宣言!の目次へ)