カバレフスキー(KABALEVSKY,Dmitri、1904-1987、旧ソ連)

 通俗名曲であるが、組曲「道化師」のギャロップだけで、この人の名前は残ってよかろ
うと思っている。だれしも聴いたことがある現代の音楽は、そうは多くない。
 子供向けの教育作品や、社会主義リアリズムに則った作品が多い。社会主義リアリズム
といえば合唱、ということで、相当数の合唱曲があるようだが、殆ど聴けないし、昨今の
状況からすれば、聴く必要もないかもしれない。
 彼の合唱曲では、一曲だけ手許にCDがある。
○作曲者指揮Moscow SO他(OLYMPIA,OCD290A+B)64年
 「レクィエム」を収録。教会音楽ではなく、ファシズムとの闘いに倒れた人々を追悼す
 るもので、1964年の作品。演奏時間90分に及ぶ大曲。これぞカバレフスキーの最高傑作
 という意見もあるくらいなので注目の録音であるのは確かだが、僕には、冗長で最後ま
 で聴きとおすのが辛い。モチーフに工夫が乏しいし、内容も無意味に暗い。芸術家協会
 の合唱団の歌唱は悪くないが、ロシアにはもっとうまく歌える団体がある。合唱は関係
 ない交響曲第4番を併録。


カーゲル(KAGEL,Mauricio,b1931-、アルゼンチン/ドイツ)

 アルゼンチン生まれで、ドイツに移り拠点として活躍。現代音楽の世界での活躍は言わ
ずもがなだが、どうやら彼は合唱指揮者としての活躍も目立つようなのだ。僕は不勉強で
鑑賞したことがないが、いわゆる「シアターピース」の分野にも作品を残している。

 以前に、東混の定期演奏会で、カーゲルの合唱曲「Rrrrrrr...」を聴いたことがあるの
だが、どうもピンと来なかった。合唱曲の録音は決して多くないが、自作自演盤で優れた
ものがある。少なくとも演奏の出来は、大したものだ。
○Kagel指揮SWR Vokalensemble Stuttgart(HANSSLER,CD93.054)81,84年
 収録曲はまず、その「Rrrrrrr...」で始まる。この曲は全7楽章から成り、各曲のタイ
 トルがいずれも「R」を冒頭にする単語である。第1曲「Rrrrrrr...」は、巻き舌のエ
 チュードのような趣き。演奏は優れているが、やはり僕としてはピンとこないところ、
 続く2曲、「Anagrama」と「Mitternachtsstuk」は、現代音楽も聴くという愛好家には
 薦められる。前者は、ラテン語の回文とその4ヶ国語への訳や、文字順を並べ替えたテ
 クストを使用し、シュプレヒコールの手法が盛り込まれる。後者は、シャンパングラス
 や鉄の鎖といった変わり種も含めた多彩な打楽器群の音色が楽しい。なお、いずれも、
 日本のアマチュア合唱団がレパに入れる目的には向かない。

 手許にはもう一つ、カーゲルの小曲がある。
○Hyokki指揮Helsinki University Male Choir(FINLANDIA,0630-17694-2)96年
 20世紀の男声合唱曲ばかり集めた好盤「VISION OF MAN」の冒頭に「Die Mutation」を
 収録。この曲が特に耳を惹くというわけではないが、アルバム全体としては良いディス
 ク。


カンチェリ(KANCHELI,Giya Alexandrovich、b1935-、グルジア)

 祖国の内乱の激化を機に出国、現在はベルギー在住。近年話題の一人で、合唱関係が少
ないのが残念だが、録音は皆無ではない。
○Werthen指揮I Fiamminghi他(TELARC,CD-80455)96年
 2人のボーイソプラノ、児童合唱と管弦楽のための「Light sorrow」。約30分。ファシ
 ズム敗北記念40周年のためにライプツィヒ・ゲヴァントハウス管が委嘱、84年に完成。
 戦争で亡くなった全ての子供たちに捧げられた。子供の声は常にとおくから、弱々しく
 聞こえる。墓の下からあげる唸り声であったり、幻の声であったり、戦闘を思わせる管
 弦楽の咆哮の中での声であったり、というイメージ。この類の作品では、三善晃の「響
 紋」を連想することができる。僕は、すぐ終わる三善作品を好ましく思うが、その激烈
 な音響が嫌いな向きには、カンチェリ作品の方が好まれるかもしれない。合唱は、冷気
 を感じさせる良い出来だと思う。

 この他の合唱物ではヒリアードアンサンブルが演奏に参加している「Evening Prayer」
もある(未聴)。


カライ(KARAI,Jozsef、b1927-、ハンガリー)

 最近、日本の合唱団に圧倒的に支持される現代ハンガリー合唱曲。ハンガリー「3K」
(僕が勝手にそう呼んでいる)であるカライ、コチャール、コダーイ。この3人がいなけ
ければ、現在の日本の合唱団のレパは貧しくなっていたかもしれない。いや、むしろ、ハ
ンガリーに集中しすぎる現状はレパの硬直化を招いているとも言える。
 カライの音楽は、この3人の中では日本での演奏頻度は低いように思えるが、しかし、
他の2人が同声合唱にウケているのに対し、カライには混声の力作があるのが嬉しい。
 待望の作品集CDが一枚出ている。
○Hollerung指揮Budapest Academic Choir(Hungaroton,HCD31348)
収録曲:A Spring Night; Alleluja; Ave Maria 2; Ave maris stella; De profundis;
 Evening waterfall; Hodie Christus natus est; How it rains;
 Lament for a Flower; Night; Spring Rejoicing; Stabat Mater
 宗教的合唱曲を中心に、混声と女声の作品が聴ける。日本ではカライの代名詞的存在の
 女声合唱曲「夜」も入っている。何より演奏が素晴しい。不協和音の中から時として浮
 あがる協和音(普通のドミソの和音だったり)が印象的だが、それが何と鮮烈に鳴るこ
 とか。こういう合唱団を日本で探すのは難しい。最後に収録の「Spring Rejoicing」と
いう曲は、ごく短い、珍しくピアノ付き混声合唱だが、ピアノが美しい。

 カライの女声合唱曲が聴けるCDを、もう少し拾っておく。
○Szabo指揮Cantemus(VICTOR,VICG5392国内盤)95年
収録曲:Esteli notazas(夕暮れの歌声); Tunder,ha lennek(妖精であったら);
 Ugrotanc(跳ねて踊る)
 日本での知名度も更に上がりつつあるサボー氏率いるハンガリーの素晴らしい同声合唱
 団カンテムス。この合唱団を聴くだけでも、サボー氏がいかに優れた指導者かわかる。
 川口のリリアで日本のビクターの企画による録音が成されたのは幸せなことだ。ハンガ
 リーの世俗的小曲を集めた当盤で、カライは短い3つが聴ける。いずれも気の利いたピ
 アノ伴奏付きで、民謡をもとにした旋律の美しさが胸を打つ。特に「夕暮れの歌声」は
 忘れられない。
○Mindszenty指揮Musica Nostra Choir(HUNGAROTON,HCD31840)98年
 ファルカシュのミサ曲を中心に、オルバン、コチャールらの合唱曲が聴ける注目盤。カ
 ライは「Evening prayer」と「Ave Maria」の、無伴奏の2曲。共にとても美しい小品
 で、演奏もハンガリー独特の合唱らしい響きで優れている。


ケテルビー(KETELBY,Albert W、1875-1959、イギリス)

 ウィリアム・アシュトンという本名があり、コロムピア・グラモフォン社のディレクタ
ーや劇場の指揮者など、多彩な活動を繰り広げたようだ。作曲家としては、何といっても
「ペルシャの市場にて」。日本ではショッピング・スーパーなどで使われたりしたので、
この曲を知らぬ人も少ない。そしてこの曲が男声合唱付きとあらば、ここで取り上げたく
なる。録音は数種類あるが、特に聴き比べはしていない。
○Lanchbery指揮PO(東芝,TOCE-3250国内盤)77年
 9曲のケテルビーの管弦楽曲が入っているが、男声合唱付き(アンブロジアン・シンガ
 ーズ)は「ペルシャの市場にて」「修道院の庭にて」「エジプトの秘境で」「中国の寺
 院の庭で」の4曲。男声合唱はまずまず良い声で歌っている。録音もよくとれているが
 少し音がケバい気もする。
○Leaper指揮Czech-Slovak Radio SO他(NAXOS,8.554709/13)
 イギリスで愛好された、いわゆるライトミュージックと称されるジャンルの作品ばかり
 集めた5枚組セットに、「ペルシャの市場にて」と「修道院の庭にて」が合唱付きで収
 録されている。「ペルシャ〜」の方は、中間部の旋律が早めなのが物足りないかも。

 なお「ペルシャの市場にて」は、最近CDでも復刻された作曲者指揮盤(PEARL)を聴く
のが、最も異国情緒を楽しめるということだ(未聴)。


ハチャトゥリアン(KHACHATURIAN,Aram、1903-1978、アルメニア)

 管弦楽曲だが「剣の舞」は、誰が何と言っても20世紀の名曲に数えていいだろう。一度
聴いただけで、これほど強烈な印象を受ける音楽というのは、そうそうない。そんな彼に
合唱曲があればいいと思うが、世の中うまくいかない。しかし手許には、一枚だけ、意外
な合唱を含む音楽があった。
○Jurowski指揮Deutsches Symphonie-Orchester Berlin(CAPRICCIO,10817/8)97年
 バレエ音楽「スパルタクス」全曲盤2枚組。この演奏には、合唱が付いている。出番は
 多くないとはいえ、合唱ファンがこの曲を聴くなら、これにしたいものだ。しかも当盤
 の合唱はリアス室内合唱団だ(いつものような完璧なまでの上手さ、ではないが)。な
 お、この長大な曲の中では、合唱は関係ないが、「スパルタクスとフリーギアのアダー
 ジョ」の甘ったるい旋律が聴き物。


キラル(KILAR,Wojciech、b1932-、ポーランド)

 どうやら映画音楽の分野での活躍が目覚しい人らしい、僕は不勉強で知らなかったのだ
が。それにしても、以下のナクソス盤で、とにかくぶったまげた。こういう音楽を書くな
ら、そりゃあ映画でも成功するだろう。
○Wit指揮National Polish Radio Symphony Orchestra (Katowice),
Cracow Philharmonic Chorus他(NAXOS,8.554788)94,97年
収録曲:Krzesany; Angelus; Exodus; Victoria
 最初の「Krzesany」以外は合唱付き。この中でお薦めは「Exodus」で、ラヴェルのボレ
 ロのリズムで圧倒的に盛り上がるのである。また「Victoria」は時間が短いながら、演
 奏効果抜群というところ。派手な音楽が好きな人なら、安いナクソス盤でもあることだ
 し、必ずチェックしておくべきだろう。

 これを聴いて僕は、もっとキラルの合唱入り音楽を聴きたくなった。
○Kord指揮Warsaw PO,National Choir of Poland(TRI-M,DICA24026)2001年ライブ
 管弦楽付きの「平和のためのミサ曲」(2000年)の初演ライブ。ラテン語典礼文による、
 普通のミサ曲となったこの曲は、例えばグロリアの享楽的リズム展開が楽しかったりも
 するが、全体的には、いまいち暗くないグレツキといった趣きで、特に推薦度が高いと
 言える出来栄えとはなっていない。演奏はかなり見事である。

 興味を持った方は、映画音楽方面を洗ってみてください。


クナイフェル(KNAIFEL,Aleksandr、b1943-、ロシア)

 それなりに注目を集めている旧ソ連の作曲家だが、録音は殆どない。しかし、合唱物で
ヒーリング時代の注目盤「Chapter Eight」があるのでとりあげておく。

○Scribner指揮(TELDEC,0630-10160-2)95年ライブ
 ワシントン・ナショナル・カテドラルでの初演のライブ録音。チェロは、長年の友人ロ
 ストロポーヴィチが弾き、ワシントンの3つの合唱団が合同で演奏。旧約聖書の「ソロ
 モンの雅歌」をテキストに、教会の広い空間に、独奏チェロの音と、動きの少ない合唱
 が漂う。禁欲的かつ瞑想的で、昨今流行のヒーリング・ミュージックとして使える要素
 もある。1時間ほどかかるし、起伏が少ないので、実演で聴くよりも、CDで好きな部
 分だけを聴く方が退屈せず楽しめるかもしれない。ペルトの音楽を好む人なら、手を出
 していいと思う。倍音がよく鳴る盤だ。


コチャール(KOCSAR,Miklos、b1933-、ハンガリー)

 ハンガリー現代3「K」と呼びたい一人。近年の日本の同声合唱団のレパで、「イ調の
ミサ曲ほど流行した曲もない。楽譜も簡単に入手できる。ならばぜひCDも欲しい。
○Szabo指揮カンテムス、プロムジカ女声合唱団(BRAIN,BRCD0035国内盤)94年
 素晴らしい演奏のCDがあるので喜ばしい。パレストリーナとブリテンのミサを併録。

 他の同声合唱曲が以下のCDで聴ける。
○Szabo指揮Cantemus(VICTOR,VICG5392国内盤)95年
収録曲:Csilingelo(鐘の音); Jo szanut,jo fejsze(良いソリの道、良い斧);
 Naphivogato(太陽への呼びかけ); O,havas erdo nemasaga(ああ、雪の森の静寂);
 Tavasz-ebreszto(春の目覚め); Tel(冬)
 カライの項でとりあげた盤。コチャールはいずれもアカペラの同声合唱。特に「ああ、
 雪の森の静寂」は忘れ難い。日本の同声合唱団の指導者が惹かれるのは理解できる。
○Mindszenty指揮Musica Nostra Choir(HUNGAROTON,HCD31840)98年
 これもカライの項で触れたアルバムで、コチャールは「In memory of Love」の1曲の
 みで、もっと聴かせてほしかった。

 日本のアマチュア合唱団による委嘱初演の混声合唱曲を一つ。
○本城正博指揮松下中央合唱団(GIOVANNI,GVCS30407)2003年ライブ
 無伴奏混声合唱のための「Missa Tertia」の初演ライブ。約20分のミサ・ブレヴィス。

 同様に、日本のアマチュア合唱団による同声合唱曲を集めたもの。上記のカンテムス盤
と曲目の重複があるが、委嘱作品もある。
○北野良徳指揮多治見西高校合唱部、合唱団ますらめ(GIOVANNI,GVCS30605)2006年
収録曲:Teli alkony(冬のたそがれ);Tavasz-ebreszto(春の目覚め);
 Naphivogato(太陽への呼びかけ);Sarsokallo(泥はうんざり);
 Csilingelo(鐘の音);Tel(冬);Abrand(幻想);
 O,havas erdo nemasaga(ああ、雪の森の静寂);Adventi koszoru(待降節の花輪)
 コチャールの他、バールドシュの「ヘンルーダの花が咲いたら」と、コダーイの「聖霊
 降臨節めぐり」を収録。

 それにしても、カライ、コチャール、コダーイの、日本のコンクール(や演奏会)での
演奏頻度の高さは驚くべきほどだ。もしかして、カライやコチャールについては、日本に
おいて世界一演奏されているのではなかろうか。


コダーイ(KODALY,Zoltan、1882-1967、ハンガリー)

 ハンガリー現代3「K」の最後はコダーイ。他の2人と違い、彼は合唱愛好家以外にも
広く知られている。合唱に限っても、現代の日本の合唱団のレパ状況を考えると、コダー
イにはいくら感謝しても感謝しすぎることはない。
 CD紹介は、まずは管弦楽伴奏付きの大曲から。

 コダーイ作品で、最も人口に膾炙しているのは、管弦楽組曲「ハーリ・ヤーノシュ」だ
ろう。この中の「ウィーンの音楽時計」のメロディーは、クラシック音楽に登場するメロ
ディーは特に有名だし(しかも曲名は知られていない)、管弦楽のくしゃみで始まる序奏
や、「間奏曲」など、いい曲が揃っている。その組曲を選択する前の形態として、音楽劇
「ハーリ・ヤーノシュ」をCDで聴くことができる。語り、独唱歌手、合唱も加わる。
○Kertez指揮LSO,Edinburgh Festival Chorus他(DECCA,443488-2)68年
 カップリングも贅沢な2枚組で、男声合唱曲「くじゃくが飛んだ」と、その旋律を素材
 にした管弦楽曲「くじゃくによる変奏曲」、後述する管弦楽付き合唱曲「ハンガリー詩
 篇」も聴ける。なお、当盤はミッドプライスで、歌詞が付いていないので注意。

 なお、この「ハーリ・ヤーノシュ」には、フンガロトンにフェレンチク指揮の音源があ
るし、同じ指揮者によるオペラ「紡ぎ部屋」のCDもあるが、いずれも未聴。


 続いて、彼の三大声楽曲といわれることがあるのが、「ハンガリー詩編」「ブダヴァリ
・テ・デウム」「ミサ・ブレヴィス」の3曲。
 「ハンガリー詩編」は、第一次世界大戦後のハンガリー国内の動乱が一段落した頃、ブ
ダペスト市誕生50周年を記念して作曲された。ハンガリー語のテキストにより、熱烈な愛
国心をにじませる。コダーイの出世作となった。今でも演奏機会に恵まれている。ハンガ
リーの生んだ巨匠指揮者ショルティの最期の録音にこの曲が含まれているのも象徴的。
 「ブダヴァリ・テ・デウム」は、ラテン語で歌われる。コダーイのポリフォニー作曲技
法の見事さを示す作品、と言われる。
 「ミサ・ブレヴィス」は、20世紀に作曲されたミサ曲の中でも特筆すべき出来栄えを示
す。キリエの前に管弦楽だけの序奏があるのと、アニュス・デイの後に「ミサは終わった
Ite Missa est」があるのが特色。最初はオルガン独奏曲(これもCDで聴ける)として
作曲され、後にオルガンと合唱のために、その後に管弦楽と合唱のために編曲された。コ
ダーイは、第二次世界大戦の終結を祈りながら作曲し、初演の際は、平和を希求する心が
聴衆に伝わり感銘を与えたという。

 では、以上3曲のCDを、「ミサ・ブレヴィス」を中心にして挙げる。

○作曲者指揮Hungarian National PO,Budapest Chorus(PHILIPS,426102-2)56-58年
 「ミサ・ブレ」「テ・デウム」「詩篇」の3曲を収録する2枚組。もともとフンガロト
 ン音源だったのを、フィリップスが「ノーノイズ」システムでリマスターしたもの。演
 奏時間80分強の2枚組で、効率は良くない。何しろ作曲者指揮という絶対的価値あり。
 技術的には合唱もオケも巧くないが、血のたぎりを感じさせる。「テデウム」「詩編」
 「詩編」は、熱すぎて、もう少し冷静な演奏の方が反復鑑賞には良さそうだ。テンポ感
 感なりで作曲者の気持ちを知りたい人には必聴盤。
○Ferencik指揮Budapest SO, Hungarian R&TV Chorus(HUNGAROTON,HCD11397)69年
 「ミサ・ブレ」「テ・デウム」の2曲。悪くないのだが、合唱団の出来が今一歩なのが
 残念。
○Joo指揮Budapest PO,Hungarian R&TV Chorus他(ARTS,47378-2)82年
 「ミサ・ブレ」「詩篇」の2曲。コダーイを多く録音しているヨーの指揮。合唱団の出
 来は、ここに挙げた3枚の中では当盤が一番いいし、超廉価で買いやすいのも長所。し
 かし、ミサ曲で「イテ・ミサ・エスト」を省略(アニュス・デイで終わってしまう)の
 は、何としても残念。終わった気がしない。

 ということで、この三大声楽曲に、理想的なCDは未だ無い。3曲全てを一枚に収録し
て(少し速めに演奏すれば78,9分でおさまる)、合唱も含めてアンサンブルが磨かれてい
て、録音もいいCDが待たれる。

 「ミサ・ブレ」は僕も合唱に参加したことがあるが、キリエに、3人のソプラノ・ソリ
による難所がある。管弦楽伴奏でやると、どうしてもここがオペラチックになってしまっ
て、食傷気味になる。そこで、オルガン伴奏版の「ミサ・ブレ」が聴きたくなってくる。
ということで、オルガン付きの合唱曲のCDを挙げるが、好きな曲なものだから、ついつ
い多数集めてしまった。
○Gronostay指揮Netherland Chamber Choir(GLOBE,GLO5115)93年
 「ミサ・ブレ」と「ラウデス・オルガーニ」を収録。これで聴くと、管弦楽版では埋も
 れがちだった合唱が浮かびあがり、実に美しく響く合唱曲であることがわかる。例のキ
 リエの3人のソロも、ノンビブラートでやり通している。演奏時間20分ほどの「ラウデ
 ス〜」の方は、オルガン部分が特に充実している。前奏と後奏がかっこいい。混声合唱
 部分は、コダーイ作品としては単純に書かれている。
○Cleobury指揮King's College,Cambridge(EMI,CDC7 49092 2)87年
 コダーイは「ミサ・ブレ」のみ。カップリングはヤナーチェクのミサ曲等。上記のグロ
 ノスタイ盤との大きな違いは、ソプラノがボーイであることは勿論のこと、最後の「イ
 テ・ミサ・エスト」を合唱が沈黙してオルガンだけで演奏している点。僕自身もこの曲
 の管弦楽版の演奏に参加して、何か拭いきれなかった違和感を取り払ってくれた、思い
 出深い一枚。イテ・ミサを、歌わずにオルガンのみをボーッと聴きながら終わるのも悪
 くない。キリエのソロの最高音はCになり、グロノスタイ盤ではノンビブラートを保つ
 ため弱々しくなっているが、その点こちらはボーイなので自然。なお、オルガンを弾い
 ているLaytonは、未確認ながら恐らく現在合唱指揮者として大活躍のLaytonと同人物と
 思われる。
○Cole指揮Regent Choir(REGENT,カセットテープ)
 「ミサ・ブレ」「ラウデス・オルガーニ」「パンジェリングァ」の3曲。僕はカセット
 テープで買ったが、80年代初頭の発売時にはCDでも出ていたらしい。知名度は最低だ
 が、実はこれが「ミサ・ブレ」最高の演奏という声もあるくらい、隠れ名盤の最たるも
 の。中古店で見つけたら、この曲のファンなら即飛びつくべし!
○O'Donnell指揮Westminster Cathedral(HYPERION,CDA67147)99年
 ヤナーチェクの項で触れた。コダーイは「ミサ・ブレ」と「ラウデス〜」。オルガンの
 サウンドが聴き物なので、後者が楽しめる。「ミサ・ブレ」の終曲はオルガンのみ。
○Parkman指揮Danish National Radio Choir(CHANDOS,CHAN9754)97,98年
 「ミサ・ブレ」は、時に納得できないテンポ設定があったりする(序章のあっさりしす
 ぎのオルガンは残念だなあ)が、全体的には、実力派のこの合唱団らしい好演。終曲で
 は、ちゃんと合唱付きで演奏している。当盤で嬉しいのは、無伴奏混声の世俗曲3つが
 聴けることで、「イエスと商人」「夕べ」、そして日本ではコダーイの代名詞的作品と
 なっている「マトラの風景」が聴ける。マトラは、音源が何故か稀少なのだ。
○Backhouse指揮Vasari Singers(GUILD,GMCD7161)99年
 「ミサ・ブレ」「ラウデス・オルガーニ」「パンジェリングァ」の3曲に、無伴奏混声
 のための「夕べの歌」と「夕べ」を収録したカップリングが嬉しい。演奏も悪くはない
 が、オランダ室内やリージェント室内の演奏に比べると、どうしても聴き劣りがする。
 ミサの終曲はオルガンだけ。ここでも「ラウデス〜」のオルガンが楽しめる。
○Bruneder指揮Schola Cantorum,Klosterneuburg(ORF,CD102)95,96年
 「ミサ・ブレ」「パンジェリングァ」の2曲。オーストリア放送協会所蔵音源のCD化
 シリーズの一枚。このオーストリアの合唱団は65名を超える大人の混声合唱団で、人数
 の割に響きが透明、各パートの動きが結構わかるのが長所。男声のダサさが日本の合唱
 団に通じるものがあり、意外と参考になるかも。切り捨てるほど下手ではないし。ミサ
 の終曲はオルガンのみ(5分もかけてる、遅い!)。
○Duijck指揮Flemish Radio Choir(GLOSSA,GCDSA922202)2004年
 オルガン伴奏の「ミサ・ブレ」の他、コダーイの合唱曲だけのアルバム。ピアノ伴奏付
 きの「The Musicmakers」あたりが嬉しい。ノンビブラートの合唱による響きは、なか
 なか美しい。「ミサ・ブレ」の終曲は合唱団も歌う。良いアルバムだが、強烈な個性に
 欠けるように感じられる。SACDハイブリッド盤。
○Dijkstra指揮Chor des Bayerischen Rundfunks(BR KLASSIK,403571900500)2008年
 数々の管弦楽付き合唱曲の名演を残してきた合唱団だけに実力は高く、ここでも安定し
 た演奏を見せてくれる。終曲は合唱付きで、入りのテンポが速くて第一印象は面食らう
 が、こういう演奏もありかな。カップリングはマルタン「ミサ曲」と、プーランク「連
 祷」。SACDハイブリッド盤。
○Ferencsik他指揮Hungarian R&TV Chorus(HUNGAROTON,HCD31682)
「ラウデス〜」と短い「詩編114番」はフェレンチク指揮の72年録音、演奏時間10分強
 の佳曲「パンジェ・リングァ」はVasarhelyi指揮の66年録音。特にオルガンの音質が劣
 化しているように感じられる。当盤には、「ミサ・ブレ」の原形である、歌無しのオル
 ガン独奏版「Organoedia ad missam lectam」が入っているが、これも81年録音の割り
 には冴えない音だ。この独奏版は、BISレーベルから、コダーイのオルガン曲だけを集
 めた82年録音のCDでも聴ける(BIS,BIS-CD-199)。

 続いては、無伴奏の小規模な作品を集めたCD。
 日ごろ我々にも演奏チャンスがあるのが小規模な合唱作品。マジャール語の合唱曲は、
ハンガリーの合唱団の演奏が一番だ。言語の壁が厚いからだ。マジャール語を歌う場合、
楽譜表記上のリズムよりも、言葉のリズムに忠実に歌うのをハンガリーの合唱団は通例に
している。ここでは音符で表現できないが、例えば譜面上は八分音符2つで「タタ」とい
というリズムも、「タター」と後ろの音の方が長くなったりする。
 混声、同声(女声も男声も)の合唱曲全集の録音があれば即座にとびつくのだが、頼み
のハンガリーのレーベル、フンガロトンも、CDで全てを聴くことはできない。ハンガリ
ーの演奏家を抱えるナクソスやマルコポーロあたりに期待しているが、未だ録音の気配は
無い。現状では、現在出ているCDで楽しまざるを得ない。フンガロトンは、現在は流通
状況がよくなっているが、一時期、店頭から姿を消したことがある。心配なレーベルだ。
 では以下に手許のCDを。曲名は英語表記してあることをご容赦。
○Ferencsik指揮Hungary R&TV Chorus(HUNGAROTON,HCD12352)81年
収録曲:Hymn of Zrinyi; Jesus and the Traders; Norwegian girls;
 Ode to Liszt; The aged; Too late
 「コダーイ合唱曲集1」というタイトル。EMBが出版する混声合唱曲集の楽譜を見て
 いると、最後の方に入っているバリトンソロ付きの巨大な曲に目を奪われる。どんな風
 に鳴るのか是非聴きたい、と思った人は僕だけではあるまい。「Hymn of Zrinyi」がそ
 れ。また、コダーイの混声合唱曲では「イエスと商人」が最大傑作だと言われることが
 多く、それもここで聴ける。ところで「イエス〜」が最高だと言うのは、いかにも玄人
 好みの選択だと思う。もっと肩肘張らずに楽しめる曲は沢山あるのに。
○Sapszon指揮Hungary R&TY Chorus他(HUNGAROTON,HCD31697)
収録曲:Battle song; Geneva psalm CL; Huszt; I will go look for Death; Mohacs;
 Molnar Anna; National song; Ode to Ferenc Liszt; Orphan am I; Soldier's Song;
 Songs from Karad; The forgotten song of Balint Balassi; The hymn of liberty;
 The Peacock; To the Hungarians; Wish for peace
 「コダーイ合唱曲集3」というタイトル。混声、男声、児童合唱曲が混在。混声はハン
 ガリー放送合唱団、男声はハンガリー人民軍男声合唱団、児童はコダーイ・ゾルタン少
 女合唱団等が歌っている。録音年代も60年代から80年代まで様々。男声合唱曲のCDが
 無いので貴重であるが、これだけではまだまだ網羅できていない。続編が待たれる。
○Szabo指揮Gyor Girls' choir(HUNGAROTON,HCD12948)
収録曲:Arva vagyok; Csalfa sugar; Fancy; 4 Italian madrigals;Meghalok,meghalok;
 Night in the mountains; Two folksongs from Zobor; Vejnemojnen makes music;
 「コダーイ合唱曲集6」。恐らく80年代のデジタル録音。
○Szabo指揮Cantemus(HUNGAROTON,HCD31291)
収録曲:A Christmas carol; Angels and shepherds; Cohors generosa; Dancing song;
 Epiphany; Evening song; Geneva Psalm CL; Greeting on St John's Day;
Gypsy lament;Hippity,hoppity;Honey,honey; Horatii Carmen; Hymn to St Stephen;
 King Laszolo's men; See the gypsies; Seven easy children's choruses;
 Six humorous canons; St Gregory's Day; Stork song; Whitsuntide
 「コダーイ合唱曲集7」。恐らく89年のデジタル録音。
 この「6」と「7」のおかげで、児童及び女声合唱曲の多くを良い演奏で楽しむことが
 できる。「6」の収録曲では、「山の夜」が有名で、よく演奏されるし、事実、独特の
 雰囲気を持った佳曲。「7」の方では「天使と羊飼い」が素晴しい。余談だが、コンク
 ールでこの曲を八戸市立根城中学校が歌うのを録音で聴いたことがあるが、絶賛に値す
 るものだった。日本の同声合唱のレヴェルの高さは自慢できるところまで来た。

 上記4枚のCDのうち、曲集1、6、7の3枚は、CD初期に国内盤が出ていた。国内
盤としての復活が望まれる。7だけは、95年に国内盤として再発売されたものが、まだ生
きているかもしれない。

 以上のフンガロトンの番号付きシリーズの他、混声の合唱曲集では、同じ演奏団体によ
る良いCDが2枚でている。
○Tillai指揮Pecsi Chamber Choir(BNL,BNL112613)86年
○同指揮、同合唱団(HUNGAROTON,HCD31524)92年
(2枚共通)挨拶; イエスと商人; エマニュエルよ、来たれ;
 ジプシーがチーズを食べる; シャンドルシックのテデウム; ノルウエーの若い女達;
 聖イシュトヴァン王への歌; 遅すぎた; 老人たち; 夕べの歌
(BNL盤のみ)ハンガリー国歌; パンジェリングァ;詩篇第150番; 詩篇第50番
(HUNGAROTON盤のみ)An ode for music; 夕べ; ホラティ・カルメン;
 Naphimnusz; 嘆願して; マトラの風景; セーケイ人のラメント;
 セーケイ人へ;
 共通収録曲が多いが、後者のフンガロトン盤に、日本におけるコダーイの混声合唱曲の
 代名詞になっている「マトラの風景」が入っているから、どちらかをとるなら後者にな
 るが、前者の「夕べの歌」や「ジプシーがチーズを」などは忘れ難い。「夕べの歌」の
 歌唱の美しさは筆舌に尽くし難い。歌詞を除けば、日本の合唱団ならたいていは初見で
 音とりできる単純な曲が、そこから先、何百回練習しても、ペーチ室内合唱団の域には
 達しないだろう。僕が生きている間に、日本の団体からこんな響きが聴けるだろうか。
 後者のCDに入っている「An ode for music」は、イギリスとも関係の深いコダーイが
 すっかりホルストしてしまっている合唱曲だ。また、当盤で聴ける「Este夕べ」が僕は
 好きで、人数の多い合唱団お薦めのレパ。

 さて、そうこうしているうちに、21世紀の新録音で混声合唱曲全集を目指す新シリーズ
が開始され、同じ合唱団の演奏(指揮者は第3集のみ異なる)全3枚で完結。混声はコン
クールでもあまり聴けないし、貴重な音源だ。
○第1集/Erdei指揮Debrecen Kodaly Chorus(HUNGAROTON,HCD32364)2004年
収録曲:Miserere; Evening; See the gypsies munching cheese; A Christmas Carol;
 A Birthday Greeting; Matra Pictures; The Aged; Too late;
 Jesus and the Traders; Horatii Carmen 2.10; Transylvanian Lament;
 Annie Miller; Ode to Liszt; Song of Faith
 ほどよく土俗的、ほどよくソフトで、まずまずの演奏水準なのが嬉しい。これで「マト
 ラ」と「イエスと商人」をカヴァーできる。
○第2集/Erdei指揮Debrecen Kodaly Chorus(HUNGAROTON,HCD32365)2005年
収録曲:The Peacock; Our Father; Hymn to King Saint Stephen(for chamber choir);
 Hymn to King Saint Stephen; Evening Song; Greeting on Saint John's Day;
 Do not grieve; Norwegian girls; First Communion;
 The Forgotten Song of Balint Ballasi; Cohors generosa; Advent song;
 Geneva Psalm121; Beseeching; Song from Gomor; To the Transylvanians;
 Battle Song; The Hungarian Nation; Lament
 このシリーズは作曲順に曲を並べており、こちらは1937年から47年作曲のもので、特に
 有名な「夕べの歌」が含まれる。
○第3集/Parkai指揮Debrecen Kodaly Chorus(HUNGAROTON,HCD32366)2006年
収録曲:To the singing youth; Adoration; Wish for peace; The arms of Hungary;
 Mohacs; Media vita in morte sumus; La marseillaise; Epigraph; Stabat Mater;
 Te Deum of Sandor Sik; Come,Holy ghost; Hymn of Zrinyi;
 I will go look for death; An ode for music; Geneva psalm L
 1948年から65年作曲のもの。上述したが、大規模な「Hymn of Zrinyi」も聴ける。

 続いてこのシリーズは、男声合唱曲も録音してくれている。
○Lakner指揮Bela Bartok Male Choir - Pecs(HUNGAROTON,HCD32322)2004/5年
収録曲:The Peacock; The Watchman of Nandor; The Ruins; Bandi Bungozsdi;
 The Son of an Enslaved Country; God's Mercy; Evening Song; The Bachelor;
 The Filly; Songs from Karad; Soldiers' Song; Jezus Jesus appeared;
 Hymn to St Stephen; To the Changes in France; In A.Fay's Album; National Song;
 Appeal; Justum et tenacem; La Marseillaise; Song of Faith
 合唱団の声質があまり練れていないが、それでも無伴奏合唱の歌い方を心得た演奏で、
 印象はそれほど悪くない。収録曲では「Songs from Karad」あたりが特にお薦め。

 混声の小曲の中で、「マトラの風景」は日本ではこれだけ愛好されているから、もっと
録音があってもよさそうなものだが、現在入手可能で国際販路にのっているCDは非常に
少ない。僕の手許には、フンガロトンのLPでハンガリー放送合唱団が歌っているものが
ある。例えばペーチ室内の演奏は、土俗的という点では余りにも洗練され過ぎている不満
があり、その点でこちらのLPは優れている。これはCD化されるべきなのだろう。また
ミサ・ブレの項で触れたデンマーク放送合唱団の演奏は、柔らかすぎるように思う。21世
紀の新しい音源では、これを推薦したい。
○Fischer指揮MR Choir,MR Children's Choir(BMC,BMC CD 144)2008年
収録曲:
 St. Gregory's day; King Laudislaus'men; Whitsuntide(以上同声)
 Ode to Franz Liszt; The Te Deum of Sandor Sik; Jesus and the traders;
 The aged; Transylvanian Lament; Matra pictures(以上混声)
 全ての曲の演奏が良いとは感じないが、「マトラ」に関してはスタンダードと位置づけ
 てよいように思う。

 もう少しCDの落ち穂拾いをしておく。
 既にとりあげたCDの中で、コダーイの曲を少しだけカップリングしているのがある。
サボー指揮カンテムスを日本のビクターが起用したCD2枚。
○Szabo指揮Cantemus(VICTOR,VICG8068国内盤)89年
収録曲:Ave Maria; Veni, veni Emmanuel
○Szabo指揮Cantemus(VICTOR,VICG5392国内盤)95年
収録曲:Egyetem,begyetem; Esti dal; Nagyszalontai koszonto; Turot eszik a cigany

 男声合唱曲のCDが少ないが、「酒飲み歌Bordal」は、しばしばとりあげられている。
○Die Singphoniker(CPO,CPO999257-2)93年
 コンサートコレクション2。酒に関係する曲を多く集めたものだが、ロッシーニの「ウ
 ィリアムテル序曲」を男声合唱で歌ったりしている。
○Eberhard指揮Svanholm Singers(SVANHOLM SINGERS,SvS2)2002年
 多彩な選曲を誇るアルバム。スウェーデンの男声合唱団。

 混声、同声、それぞれに、「ジュネーヴ詩篇」による曲が数曲あるが、それらをまとめ
趣向盤がある。演奏は余りよくないが。
○Gesseney指揮Ensemble Vocal Euterpe(GALLO,CD-784)93年
 ヤナーチェクの宗教的合唱曲とのカップリング。

 同声合唱曲の名曲「山の夜」を、日本の優秀な合唱団コール・マルベリーが歌ったもの
が歌ったものがCDになっているが、セットものでしか聴けず、バラ売りされていない。

 なお最後に、コダーイの小規模な合唱曲の楽譜は、ハンガリーのEMBから、混声、男
声、児童別に3冊の合唱曲集が出ている。


ケクラン(KOECHLIN,Charles、1867-1950、フランス)

 特に知名度が高いわけではないが、各ジャンルで、少しずつ録音が出ている。生きた時
代を感じさせない、美しい抒情が、一定のファンを掴んでいるのだろうと思う。そして、
以下に挙げる一枚は、フランス近代音楽を追っかける人なら、聴いて損はない曲が入って
いる。
○Martin-Bouyer指揮Ensemble Vocal Francais(SKARBO,D SK2972)97年
 無伴奏混声合唱の「キリエ−アニュスデイ−アレルヤop.150」と、一部に器楽が入る混
 声合唱曲「アルカイックな形式による15のモテットop.225」を収録。これは、フランス
 近代の余り知られていないレパにこだわる向きには、推薦できる。清潔な抒情のある、
 わかりやすい音楽になっている。ただ、後者は、やたらとソプラノの高音を使う(Cを
 超えるような)のが気になる(逆に日本人好みかも)。演奏の方は、一見むちゃくちゃ
 にうまいような気がするが、よく聴くと、大したことない。器楽が入る曲では、合唱と
 のピッチの差のため気持ち悪くなるほど。日本の、全国コンクールで上位に入賞する団
 体の演奏の傾向と、似ていなくもない。

 せっかくだから、もう1曲、ほんの少しだけ合唱が入る管弦楽曲を。
○Zinman指揮Berlin RSO, RIAS-Kammerchor(RCA,09026-61955-2)93年
 キップリングの名作「ジャングルブック」による管弦楽曲集2枚組。「3つの詩op.18」
 に、メゾソプラノ及びテノール独唱と、混声合唱が入る(しかもここでは演奏がこの名
 合唱団!)。なんとも美しい、一部にはウケそうな音楽だ。


コッコネン(KOKKONEN,Joonas、1921-1996、フィンランド)

 交響曲作家ということになっているし、日本ではピアノ曲や室内楽がほんの少し知られ
ている。合唱曲もぼちぼちあるようで、未聴だが無伴奏のミサ曲もある。
○Soderblom指揮Helsinki PO他(FINLANDIA,FACD353)85年
 管弦楽付きの「レクィエム」。CD初期に国内盤になったことがある。真摯で率直な音
 楽が評判で、自国での演奏機会はそれなりにあるようだが、それほど感動的な曲である
 かどうか?その上、合唱はThe Academic Choral Societyという団体は、フィンランド
 の合唱団としてはあまり良くない。このCDは収録曲が35分程度で、短すぎる。

 なお、僕が実演で聴いたことがあるコッコネンの無伴奏混声合唱のための小曲曲「ラウ
ダーテ・ドミヌム」は、一聴の価値ありと思えるもの。音源も一つあげておく。
○Liimora指揮Harju Chamber Choir(ALBA,NCD19)2000年
 フィンランドはタンペレの室内合唱団で、悪くない演奏。


コルンゴルト(KORNGOLD,Erich、1897-1957、オーストリア)

 オーストリアの作曲家(生まれはチェコのブルノ)で、アメリカに移住。神童の末路を
考えさせられる人だ。何しろ、10代後半でプッチーニやシュトラウスも真っ青のオペラを
作ってしまっていた。神童のレヴェルとしては、音楽史上最高かもしれない。しかし結局
は、ハリウッドに招かれてその後映画音楽の作曲家として人生を終えてしまう。クラシッ
クの作品としては、せいぜいヴァイオリン協奏曲が残っている程度になってしまった。と
はいえ、この人の音楽には独自の世紀末的魅力がある。最近日本でもコルンゴルト研究本
が出版されたが、音楽の専門家ではなく一般の愛好家が書いたもので、こういうのが出る
ことだけでも人気の証拠。90年代後半になり、録音も続々出るようになってきた。

 ここではオペラをとり上げることになる。いくつか録音があるが、合唱が絡むオペラと
まると、手許には一枚しかない。
○Segerstam指揮Royal Swedish Opera他(NAXOS,8.660060-1)96年
 これが二十歳そこそこの作品とは、早熟ぶりに口あんぐりである。コルンゴルトのオペ
 ラの中では最も知名度が高い作品だが、録音には恵まれず、RCAにラインスドルフ盤
 がある程度だったので、ナクソス盤の登場(しかも指揮者が大物)は朗報だ。しかし、
 演奏の出来の評判を総合すると、やはり歌手の魅力でRCA盤にはかなわないということ
 になりそうだ。コルンゴルトってどんな人?というのを知るだけなら、安いナクソス盤
 は最適。ところで合唱部分だが、児童合唱が演奏に必要となる(当盤ではトムトベリャ
 学校合唱団が担当)。特に見せ場というわけではないのが残念だ。
 なお、国内盤でベルリン・ドイツ・オペラのLDがあるようだ。


コスティアイネン(KOSTIAINEN,Pekka、b1944-、フィンランド)

 何しろ日本の合唱団のレパへのフィンランド勢の浸透は量的に多く、余り有名ではない
作曲家まで網羅されてくる。しかし彼には、日本人好みの合唱曲と、そのCDがある。混
声のためのミサ曲は、ちょっとした流行曲になっている。
○作曲者指揮The Musica Choir(ALBA,MCD6)96年
収録曲:Ave Maria; Laudate pueri; Missa In Deo salutare meum;
 Regina angelorum; Te Deum
 中世以来の合唱の伝統を大切にしている。無伴奏混声6部合唱のミサ曲が注目で、伝統
 的でありながらも新味を出すことに成功している。特にキリエとグローリアが良い。当
 盤では、女声とオルガンのための「Ave Maria」と無伴奏女声の「Regina angelorum」
 が非常に美しく響く。もっと演奏されるべきだろう。
○作曲者指揮Vox Aurea(ALBA,MCD7)96年
 上記盤と同レーベルのこちらは、児童合唱のための作品集。収録時間が約50分しかない
 のが寂しいが、演奏内容はブラヴォー!最初、声が幼く感じられるが、聴き進むうちに
 魅了される。どこまでも澄み切った響きの、フィンランドの児童合唱団を聴く醍醐味が
 ここにはある。曲の方も、新しい合唱曲に関心のある児童合唱の指導者なら是非聴いて
 おきたいものだ。歌詞は英訳付き。
 
 上記児童合唱曲盤に収録の「ヤコブの子供」という曲は、叫び声などの使用が面白いた
めか、以下のCDで聴き比べもできる。
○Johansson指揮Adolf Fredriks Girls' Choir(CAPRICE,CAP21498)95年
 タイトルは「CANTEMUS2」。

 もう少し落穂拾い。
○Vocal Ensemble fiori(ALBA,NCD15)99年
 フィンランドの10名の女声アンサンブルによる、この国の現代合唱曲ばかりのアルバム
 に、コスティアイネンの「Satakieli(The Nightingale)」を収録。緊密なアンサンブル
 と独特の声質はフィンランドならではの素晴らしさ。これ以外の作品は、Virkkala、
 Holma、Niemi、Komulainen、Sermilaという日本には殆ど知られていない作曲家による
 ものだが、演奏が素晴らしいので一聴の価値あり。


クレーク(KREEK,Cyrillus、1889-1962、エストニア)

 合唱王国エストニアが生んだ19世紀生まれの作曲家。手許にあるアルバムに含まれる無
伴奏合唱曲はいずれも詩篇を題材にする宗教曲で、北欧らしい透明で深々とした音楽だ。
○Talla Vocal Ensemble(FINLANDIA,WPCS-6509国内盤)98年
 詩篇第1,22,84,104,121,141番。男性だけの超絶アンサンブル、タッラの北欧合唱曲だ
 けのアルバム。
○Talla Vocal Ensemble(MIRA,MIRA499319)99年
 詩篇第1,104,141番。こちらは99年世界合唱シンポジウムのライブ。
○Hillier指揮Estonian Philharmonic Chamber Choir(HARMONIAMUNDI,HMU907311)2002年
 詩篇第1,104,121,141番。混声の深い響きという点で、これは素晴らしいアルバム。上
 記のタッラ盤よりも、人数が多い利点がある。
○King's Singers(SIGNUM,SIGCD090)2006年
 詩篇第1,22,104,141番。いつものように流麗なアンサンブル。

 調性が残っているわかりやすさもあり、日本の合唱団にも、もう少し好まれてもよさそ
うなものだと思う。


クシェネック(KRENEK,Ernst、1900-1991、オーストリア)

 後期ロマン派の影響下からスタートして、ジャズをとりいれたり、十二音技法に傾倒し
たり、新古典主義をとったりで、作風は様々に変化している。
 声楽ものもかなりあって、歌曲が多く、合唱絡みもある。そして、本来はオペラをとり
あげるべき(ジャズオペラ「ジョニーは演奏する」など)だが、未聴。ここでは、世界を
代表する合唱団がとりあげた無伴奏混声の宗教的合唱曲をとりあげる。
○Gronostay指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5085)88年
 「エレミアの哀歌」。この音楽史上お馴染みの題材による合唱曲で、第2次世界大戦中
 に作曲。もう一枚、リアス室内合唱団のCD(HM)があるが未聴。十二音技法とグレゴリ
 オ聖歌とオケゲムばりのフランドル楽派ポリフォニーとの融合により、強い表現力を持
 たせることに成功した作品、とされている。全9曲から成り、約1時間かかる。当盤は
 演奏の方もこの有名合唱団で、作曲当時は演奏困難と作曲者自らが思っていた難曲を、
 見事にこなしている。僕個人の感想としては、全部聴き通すのは非常に辛いが、ある曲
 のある部分だけを取り出せば、確かに聴きどころありと言えそうだ。


クルーセ(KRUSE,Bjorn、b1946-、ノルウェー)

 ジャズやロックのミュージシャンとしてスタート、ジャズとクラシックのボーダーで仕
事をする人、という位置づけ。合唱曲を聴くと、その経歴もなるほどと感じるが、目立っ
てジャジーな音楽、というわけでもない。以下に挙げる中で最初の一枚は、逸品。
○Helgerod指揮Norwegian Soloists' Choir他(AURORA,ACD5000)93,98年
 99年に僕が購入した合唱CDの中でも特に印象に残る一枚。上記の他、オスロ・カテド
 ラルの混声合唱団、女声のNRK'S Studio Choirで演奏を分担しているが、いずれもなか
なかの好演。特に、女声合唱曲「Elements」が曲・演奏共に秀逸で当盤の印象が上がっ
た。その他の混声の収録曲は以下。北欧の目新しい合唱曲を探す人には大いに推薦盤。
解説に付いている歌詞が原語だけなのは残念。
 Song for winter; Renn over meg som regn; Kvinnen med hermelinen;
 Vindsalme for dei dode
○Birkeland指揮Kammerkoret CON SPIRITO(Con Spirito,CS003)98年
 A Ola,Ola,min eigen ungeという民謡の編曲。下記盤同様、難しめの音を使う。アルバ
ムとしては、北欧諸曲の合唱小曲を集め、素晴らしい出来栄え。
○Woebcken指揮Madrigal Chor Kiel(ambitus,amb97926)95年
 19、20世紀の北欧の合唱曲を集めたもの。「Dalakopen」というノルウェー民謡を編曲
 したもの。特に面白い曲、とは感じられない。
○Quattro Stagioni(QUATTORO,QCD9303)93年
 日本でも知名度が上がってきたクワトロ・スタジオーニの最近盤「Cantio」。20世紀の
 ノルウェーの合唱音楽を集めたもの。「Dove la luce」という6分半ほどのイタリア語
 合唱曲を収録。
○Quattro Stagioni(QUATTORO,QCD9302)88年
 この「Voices」はルネッサンスの合唱曲主体の一枚で、クルーセは「永遠の声Le voci
 di sempre」という5分程のイタリア語による合唱曲を収録。
○Singer Pur(ARS MUSICI,AM1208-2)97年
 北欧の合唱曲集だが、ヴォーカルアンサンブルで演奏している。これは推薦盤だ。通常
 は合唱団で演奏される曲たちが新鮮に響く。クルーセはノルウェー語の「Vanitas」と
 いう8分ほどの曲。透明感が素晴しい。

 なお、特に項は設けなかったが、後二者のCDで聴けるスウェーデンのKarkoffの短い
合唱音楽は、聴きやすい。


クーラウ(KUHLAU,Friedrich、1786-1832、デンマーク)

 この名前は、ピアノ学習者にはお馴染み、あのソナチネアルバムの人である。デンマー
クの珍曲レーベル、ダカーポのおかげで、デンマークものは沢山聴けるご時勢、ソナチネ
アルバムそのまんまの趣味のよい室内楽などに混じって、合唱付きの劇音楽がある。
○Frandsen指揮Denmark National Radio O,Ch他(DACAPO,8.224053)74年
 ロイヤル・ウエディングのために作曲された劇音楽「Elverhojエルフの丘」で、初演後
 にも王立劇場だけで千回ほど演奏されているそうだ。デンマーク語の声楽が付くが、声
 の出番は多くない中で合唱はまずまず目立つ。確かに、自分がデンマーク人なら、こう
 いう作品があると嬉しいが、我々には、雰囲気の似た音楽では例えばウェーバーのオペ
 ラなどもある。国際的に必聴の作品とは言い難い。とはいえ、デンマーク音楽の研究に
 は欠かせない作品と言えるだろう。なお演奏の方は、なにしろこの合唱団なので、合唱
 に関しては安心印。

 最近のCDで、もうひとつクーラウの小曲があった。
○Alin指揮Allmanna Sangen Uppsala(BIS,CD-934)98年
 「Majsong5月の歌」の編曲。原曲が不明であるが、わかりやすい抒情曲。


クーラ(KUULA,Toivo、1883-1918、フィンランド)

 凶弾によって非業の死を遂げたのは残念。僕はこの人にはピアノ曲から入ったが、実は
数多くの合唱曲があって、それらは、フィンランドの無伴奏合唱曲の中でも、最高峰に位
置するものだから。もっと生きてくれれば・・・。日本でも実演を耳にすることがある。
○Norjanen指揮Tapiola Chamber Choir他(FINLANDIA,4509-98235-2)93年
 まずはこの「無伴奏混声及び女声合唱曲全集」と題された一枚が必聴。出版楽譜のデー
 タが詳細に記されているのも有益。混声は特に印象的な力作が並ぶ。演奏も注目。
○Ericson指揮Accentus Chamber Choir(NAIVE,V4924)2001年
 フィンランドの無伴奏混声合唱名曲集にYonder the apple、Sunrise、My bonny lass、
 Rock my child to Tuonelaの4曲を収録。演奏の質はかなり高い。こうして他の作曲家
 の音楽と並べてみると、クーラの音楽が本物の感動を秘めていることがわかる。
○Helsinki University(FINLANDIA,0630-12720-2)80年代前半
「FROSTY VOICES」というタイトルの、フィンランディア・レーベルのサンプラー的な一
 枚。クーラは、男声合唱曲が2つ「Drifting on the Stream op.4-5」と「Eventide
 op.27b-5」が聴けるが、余りうまくない。なお、これらはクーラの男声合唱曲全集から
 の抜粋。また上記の混声のCDから「Yonder the Apple〜」も選ばれている。
○Satomaa指揮Candomino Choir(FINLANDIA,FACD918S)87年
 「Down the River Again op.4(マデトヤ編)」と「Prayer op.34b/1」の2曲を収録。
 フィンランドの合唱音楽を集めた一枚で、他にシベリウス、パルムグレン、マデトヤ、
 そして珍しいリンヤマ(b1934-)の作品が入っている。そのリンヤマにここで触れておく
 と、収録曲は演奏時間10分強の無伴奏混声合唱の「カレワラ組曲」(全6曲)。ただ抒
 情的なだけじゃなく、表現の鋭さが印象的。合唱団はソプラノが抜群に澄んでいて、ま
 さに北欧の空気を伝えてくれる。
○Tapiola Choir(BIS,BIS-CD-94)77年
 「SOUNDS OF FINLAND」というタイトルで、フィンランドの児童合唱曲を中心に、日本
 の「ほたるこい」なども聴ける。クーラは2分ほどのごく短い「Evening」のみだが、
 静かな抒情が良い。次のトラックで聴けるパヌラ作品が透明の極みで素晴らしい。
○Andersen指揮Klemetti Chamber Choir(FINLANDIA,3984-25987-2)77,78年
収録曲:Song of the Sepulchre; Spring song; Down the river; I Rock my echo;
 Yonder the apple; Sunrise; Barcarolle
 このフィンランドの合唱団の20年以上にわたる各種録音を集めた2枚組に、クーラが7
 曲入っている。特に言及すべき出来栄えではない。気合は感じられるが、録音が悪いの
 も印象を下げる原因になっている。ナマなら感動できる演奏かも。


クヴェルノ(KVERNO,Trond、b1945-、ノルウェー)

 最近、日本でも名前をよく耳にするようになってきた。短い無伴奏混声合唱曲が2曲あ
り、それが流行しているので、CD聴き比べ。曲としては、僕は後者の方が透明感が抜群
で大好きだ。

「Ave Maris Stella」
○Warland指揮Dale Warland singers(d'Note,DND1022)89年
 「A Rose in Winter」というタイトルで、20世紀の無伴奏宗教合唱曲の小曲を中心に集
 めたもの。全体的に出来の良いCDだ。本稿の「K」で特に項目は設けなかったが、ポ
 ーランドのKoszewskiの「幼きイエスIesu parvule」が、口笛を使用しているのが珍し
 く、冷気が良い。
○Ericson指揮Musikhogskolans Kammarkor(KMH,KMH-CD1)92年
 余り名前が知られていないスウェーデンの合唱団だが、さすが、上手い。
○Ruhland指揮Niederaltaicher scholaren(WINTER & WINTER,910024-2)95年
 「オルフ以前、以降」の合唱曲を集めた企画物。ということは、クヴェルノとオルフと
 の関係がある筈だが、当盤の解説では何ら言及されていない。演奏は、お世辞にも上手
 いとは言えない。
○Woebcken指揮Madrigal Chor Kiel(ambitus,amb97926)95年
 19、20世紀の北欧の合唱曲を集めたもの。並み居る北欧の名合唱団の中では聴き劣りす
 るが、悪い演奏ではない。
○Hogset指揮Grex Vocalis(QUATTRO,QCD9308)96年
 日本でもお馴染みになってきたホグセット氏の信頼できる指導力がわかる。当盤のみ、
 クヴェルノの他の合唱曲も集めていて、ミサ曲と「スタバトマーテル」を収録。クレド
 無しの15分弱のミサ曲には金管アンサンブルが付く。

「Corpus Christi Carol」(歌詞は英語)
○Graden指揮St Jacob's Chamber Choir(PROPRIUS,PRCD9138)95年
 知名度は低いが素晴らしい内容のクリスマス・アルバム。クヴェルノもグッド!
○Warland指揮Dale Warland Singers(AMERICAN CHORAL CATALOG,ACC121)95年
 何度か言及したCD「DECEMBER STILLNESS」。ハーモニー感に優れている。
○Hogset指揮Grex Vocalis(QUATTRO,QCD9308)96年
 上述のCD。演奏は悪くないが、英語の発音に疑問。
○Singer Pur(ARS MUSIC,AM1208-2)97年
 Kruseの項で扱ったもの。小人数アンサンブルの透明感がたまらない。

 以上の2曲は、すぐ終わってしまう小曲。ここで濃厚合唱鑑賞ファンのために、クヴェ
ルノの秘曲ともいえる名作をご紹介したい。
○Kvam指揮Oslo Cathedral Choir(NORWAY MUSIC,ACD4994)96年
 ソリストと2つの合唱のための「マタイ受難曲」。無伴奏、ラテン語で歌われ、CD2
 枚、当盤では演奏時間95分弱に及ぶ。冒頭合唱を聴けば、これだけでも演奏したいと思
 う人はいるはず。エヴァンゲリスト、キリストを、複数のソリストで時に合唱風にやる
 のが変わっている。調性が曖昧な部分が多く、決してわかりにくい音楽ではないが、ク
 ヴェルノの相性が良さそうな人には、一聴をお薦めしたい。


キーア(KYR,Robert、b1952-、アメリカ)

 この人について詳しい事は知らないが、興味深い声楽曲を書いているのでとりあげる。

○ENSEMBLE PAN(NEW ALBION,NA075CD)93,94年
収録曲:Songs of the Shining Wind; Threefold vision; Unseen Rain
 演奏家に、古楽演奏で定評あるグループを起用しているが、古楽の技法を生かした作品
 を作っている。すなわち、マショーやビンゲンの詩をテキストにしたり、中世のダブル
 モテットなどの技法を使ったり、楽器にリュートを使ったり。感触はすっかり中世、だ
 が20世紀作品だけあって、現代ならではの和声感覚に彩られている。収録曲のうち、
 Threefold visionは無伴奏3声のモテット、Songs of the Shining Windはリュートと
ヴィオールと3声、Unseen Rainは3声と合唱(合唱団はBack Bay Chorale)と器楽合奏
のための作品。こう書くと、中世の音楽に興味がある人には大変おもしろそうだが、僕
としては、これなら何もこの人の曲を聴かなくても、マショーなりを聴いていればいい
なと思う。キーア作品に、もっと神経を麻痺させるような美があれば、というところ。
 ちょっと前に、受難曲のようなタイトルの作品のCDが同じレーベルから出たが未聴。


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