マショー(MACHAUT,Guillaume de、c1300-1377、フランス)
合唱の音楽史を辿ってきて、作曲家個人名が出てくる最古の人物といえば、マショーあ
たりになる。もちろん実際には、そのちょっと前のペロタンあたりもいるし、ここんとこ
大流行のヒルデガルト・フォン・ビンゲンもいるのだが。
音楽史上最初の通作ミサを作曲したことで有名、それは現代の耳にも新鮮なアピールの
ある音楽だ。その「ノートルダム・ミサ」のCDだが、かなり多く出ているので、聴き比
べが可能。てもとに4種、いずれも楽器を使わず、四つの声部を男声のみで演奏。
○Vellard指揮Ensemble Gilles Binchois(HARMONIC,H/CD8931)90年
聖歌を挟んで演奏し、全曲で約56分かけている。表情が柔和な点が楽しめる。演奏だけ
をとれば推薦盤だが、難点は入手しにくいこと。当レーベルは一度倒産したらしいが、
つい最近になって、再び店頭に並び始めた。この団体、歌手にはアンドレアス・ショル
やゲルト・テュルクといったお馴染みの名前が見える。
○Hillier指揮Hilliard Ensemble(HYPERION,CDA66358)87,89年
いい演奏だと思うけど、この団体ならさらに上の演奏ができそう。当盤には「泉のレ」
と、音楽史上有名な逆から楽譜を演奏しても同じになる「わが終わりはわが始まり」を
収録。マショー入門には好適の選曲といえそう。
○Summerly指揮Oxford Camerata(NAXOS,8.553833)96年
これも美しい演奏で、価格を考えると価値が高い。併録は長編詩「真実の物語」から。
その中のLay de bonne esperanceは20分近くバス歌手一人が語り歌い。
○Clemencic指揮Clemencic Consort他(ARTENOVA,74321
85289 2)99年ライブ
単にミサを演奏するだけではなく、まず最初に、ミサが始まる前の教会の入り口で吟遊
詩人や乞食たちが演奏していると仮定して世俗作品を収録。そして教会への入場場面が
続き、その後にミサ曲になる。そのミサ曲演奏も、合い間に聖母マリアを称える音楽を
あちこちから集めて挿入している。遊び心に満ちていて、入門者には不向きかも。イタ
リアの教会の空間に漂う音をよく捉えている録音。超廉価盤であることも長所。
なお、合唱ではないが、マショーには魅力的な世俗歌曲がある。その1曲「佳き人に逢
いての帰り」を初めて聴いた時、現代人にも訴える清楚なロマンに大きな感銘を受けた。
それはマンロウ盤だったが、それ以来、僕はできるだけマショーを集めている。その中か
ら注目盤をいくつか挙げておく。
○Munrow指揮Early Music Consort of London(EMI,TOCE-6191国内盤)
70年代の録音。「宮廷の愛〜ギョーム・ド・マショーとその時代」というタイトルで、
若干マショー以外の作品を含む。この「佳き人に〜」の永遠の叙情に驚いたのだった。
正直言って、その他もすべてが面白い、というわけではないのだが。なお上記のCD番号
は国内盤初出時のもの。その後、別の番号で再発売されている。マンロウ自身による解
説が付いている。
○Ensemble Guillaume de Machaut de Paris(ADES,203712)
2枚組で、たくさん聴きたい人に薦められる。録音年がはっきりしないアナログ録音だ
が、それほど古くはない。この「佳き人に〜」もなかなか良い。音楽史の本によく出て
「ダヴィデのホケトゥス」も聴ける。
○Vellard指揮Ensemble Gilles Binchois(CANTUS,C9626)94年
ノートルダムミサのキリエから、モテット、ヴィルレなどの声楽曲に、語りを挟む。マ
ショーの熱烈ファンなら一聴の価値ありの美演。
○Vellard指揮Ensemble Gilles Binchois(CANTUS,C9625)88年
同じ演奏団体でもう一枚。コンセプトは上記盤を同様で、選曲が異なるだけ。
○Bonnardot(OPUS111,OPS30-171)96年
マンロウ盤同様、合唱ではない。奏者がフィドル弾き歌いなどを聴かせる。全13曲。
○Orland Consort(ARCHIV,457618-2)97年
この時代の音楽は、各声部を楽器で演奏するのも当然だったので、どうしても器楽付き
の録音が多くなるが、当盤は声のみ。歌曲ばかり14曲を収録。ヒーリング的味わいのあ
る事で有名になったグループの美演。何となく、バックに鳥の声が聞こえる。
○Wickham指揮Clerks' Group(SIGNUM,SIGCD011)98年
モテットを9曲。IVREA写本の音楽とのカップリング。歌手5人による美しい歌唱。
音源の最後に、マショーの歌曲をネタにした絶妙の合唱編曲物1曲を。
○I Fagiolini+The sdasa chorale(ERATO,0630-18837-2)97年
イギリスのヴォーカルアンサンブルとアフリカの合唱団との共同作業の興味深い成果。
この中にマショーが1曲。これもメロディーが美しい歌「Douce
dame jolie」をネタに
現代のミニマル風味を加味して、無伴奏の混声合唱曲にしたてたもの。マショーの音楽
の持つ美質が現代にも十分通用することを示す。ファッショナブルでかっこいい。
マショーの楽譜だが、ミサ曲については複数種の輸入楽譜がある。また、全集楽譜全5
巻が出ているが、僕がロンドンの楽譜屋で見た時は意外と高価でもなかった。
マクミラン(McMILLAN,James、b1959-、イギリス)
今、最も注目の現代作曲家、という枕詞が付くことがあるイギリスのジェームズ・マク
ミラン。彼を語るキーワードはマイノリティ、即ち出身がスコットランドという人種の側
面、それから信仰がカトリックであるという宗教の側面がしばしば言及される。しかしそ
んなめんどくさいことはさておいて、彼の音楽が最近人気を得ているのは、曲の成り立ち
などはともかく、わかりやすいことが大きな理由だろう。例えば最近、日本でステージ初
演された交響曲「VIGIL」が聴衆の人気を得たというのでCDを聴いてみたら、確かにわ
かりやすい。今や現代音楽も、一時期の前衛とは全く違う物になってしまっている。それ
は決して調性が常にわかりやすい、というわけでもないが、何をやってるのかわからない
という印象しかもてないような現代音楽とは大きく違う。マクミランの管弦楽曲について
は、高揚が明確なところがウケているのではないかと思われる。
となれば、いくつかある合唱のCDも注目される。
○McMillan指揮Polyphony(BMG,09026-68125-2)94年
収録曲:Seven Last Words from the Cross;
Cantos Sagrados(Sacred Songs)
BMGが現代音楽を扱うカタリスト・シリーズの一枚。合唱団がこの現在注目すべき団
体であるのもポイント。収録曲のうち「十字架上の七つの言葉」は混声合唱と弦楽オケ
(ここではロンドン室内管)のための約45分かかる力作。シュッツやハイドンらでお馴
染みの題材だが、イエスの言葉以外のテキストもとりいれている。後者は中南米の詩人
によるスペイン語詩の英訳に、ラテン語歌詞を加えた、オルガンと混声合唱のための20
分強の作品。いずれも、当世流行のヒーリング的宗教音楽には傾斜しない、厳しい音世
界が提示されている。なお演奏の出来は、この合唱団にしては悪いのが残念。
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA67460)2003,4年
収録曲:Seven Last Words from the Cross; Te Deum
On the Annuciation of the Blessed Virgin;
上記アルバムの「十字架上の七つの言葉」の、同じ合唱団による再録音で、指揮はレイ
トン、弦楽オケはブリテン・シンフォニア。世界初録音の2曲を加えており、これから
「七つの言葉」を聴くというなら、このアルバムが良いのではないかと思う。
○Hilliard Ensemble(ECM,453259-2)96年
現代音楽を集めた2枚組「ヒリアード・ソング・ブック」に収録された12分ほどの無伴
奏モテット「...here in hiding...」。なかなかの難曲で理解が難しい。
○Baker指揮Westminster Cathedral, Andrew
Ried:organ(HYPERION,CDA67219)2000年
収録曲:A New Song; Mass; Christus vincit; Seinte Mari moder milde;
A Child's Prayer; Changed; Gaudeamus in
loci pace(organ solo);
マクミランの宗教的合唱曲だけを集めた注目の一枚。意外にも、ヒーリング的アルバム
になっている。特に難解でもないし、耳になじみやすい。しかしそのせいか、特に個性
を感じるものでもなかった。これであれば、是非マクミランの合唱音楽をとりあげてみ
たいと思う人も、それほどはいないのでは。演奏の方は良好だから、現代イギリス最前
線の作曲家による合唱音楽の傾向を知るという目的なら、買って損は無い。
○Walker指揮Cantillation(ABC,465824-2)2001年
上記HYPERION盤でも聴ける「Christus vincit」のみだが、ソプラノソロが優れている
こともあり、アルバム全体の中でも非常に印象的。20世紀の無伴奏宗教曲だけを集めた
名盤。
○Laughton指揮Elysian Singers(SIGNUM,SIGCD507)2003年
収録曲:Divo Aloysio Sacrum; The Gallant Weaver; A Child's Prayer;
Seinte Mari Moder Milde; Tremunt videntes angeli; Cantos Sagrados;
Christus Vincit; So Deep
これも宗教的合唱曲のみ。始めの2曲がとてもきれいということもあるが、全体に、マ
クミランの合唱曲って素直できれいなんだという印象を強く与えるアルバム。お薦め。
○Backhouse指揮Vasari Singers(SIGNUM,SIGCD059)2005年
現代作品の初録音だけのアルバムに、7分弱の小品「Chosen」を収録。さすが、不思議
な吸引力がある
マデトヤ(MADETOJA,Leevi、1887-1947、フィンランド)
シベリウスの教えを受け、交響曲や、師が成し遂げられなかったオペラを残した。幸い
にも合唱作品も沢山あって、CDで聴くことができる。技法的に革新的なものは無いが、
抒情的で響きの穏健な合唱曲に見るべきものがある。
○Satomaa指揮Candomino Choir(FINLANDIA,FACD918S)85,87年
収録曲:Dream of springop.50-3; Happiness
op.13-2; Lullaby op.50-1;
River in your surface dark op.13-3; Through
the woods one summer night
シベリウスの合唱曲を中心に、クーラ、パルムグレン、リンヤマ、マデトヤの小曲を収
録。国内盤になったこともある。カンドミノ合唱団の響きには、不思議な透明感があっ
て、それがこの録音の長所。マデトヤの5曲はいずれも保守的な抒情的小品で、好まし
い演奏だと思う。
○合唱曲集op.13/2,13/3,13/5,13/6,23/9,28/1-3,30a/2,30b/1,50/2-4,
56,57/2,66/2,72/1,82/1,Leivolle(FINLANDIA,FACD006)
クレメッティ・インスティテュート室内合唱団、カンドミノ合唱団(上記盤と同音源を
使用)、Laulu-Miehet、それにOulu chamber
choirの4つの合唱団による、混・男・女
声のための小品集。残念ながら、大半の曲を歌うクレメッティ・インスティテュート室
内合唱団の演奏が透明感に欠けて良くない。ラテン語の「深き淵より」は、フィンラン
ドの合唱曲の中でも最も美しい作品の一つとされているらしい。こちらは混声版、下記
のCDで男声版を聴くことができる。
○Hyokki指揮Helsinki univ.(FINLANDIA,WPCS6117/8国内盤)90-91年
男声合唱曲全集。この名高い合唱団のCDは常に良質ではないので注意が必要だが、こ
のマデトヤの2枚組は出来が良く、ハーモニーが安定している。しかも録音が新しく、
日本語解説と対訳付きで税抜2330円で買えるとは、まさに価格破壊盤。「歌の花輪」と
いう、マデトヤが合唱とオーケストラのためのカンタータとして作曲したものを、同じ
フィンランドの作曲家アホが無伴奏男声合唱のために編曲した力作を最後に収録。確か
に心地よい作品揃いだが、こういうのを聴いていると、我々日本人にはタダタケがある
という幸福を感じる。
○Liimora指揮Harju Chamber Choir(ALBA,NCD19)2000年
オルガン付き混声合唱曲「詩篇第121番」。名手キヴィニエミのオルガンを得て、重厚
なサウンドの響きの気持ちよさに浸れる曲だ。
マーラー(MAHLER,Gustav、1860-1911、ボヘミア)
彼はデジタル録音を待っていたのだろう。ここ20年位で、随分と録音が増えた。そのお
かげで、彼はもう誰も文句を付けられない大作曲家として認知されている。交響曲のCD
だけを集めても相当の根気と金が必要だし、これだけでいくらでも「凝る」ことが可能。
彼の交響曲の中で、僕にとって最も大切なのは合唱が関係ない第9番(これは本当に名
作で、時折むしょうに聴きたくなる、特に第1、4楽章!)、続いて第2番「復活」、第
1番「巨人」、あとは同列という感じ。交響曲の録音を多種揃える金もその気もないので
僕は聴き比べをしているとは全く言えない。幾つかの合唱が入る交響曲でさえ聴いた録音
は少なくて恐縮だが、それらを挙げていく。
<第2番>
アメリカに、この曲だけを振るアマチュア指揮者キャプランがいる(CDも発売)が、
そういう人が出現するのも納得できる、あらゆる交響曲を見渡してもこの曲にしかない魔
力がある。混声合唱は最後の第5楽章に入る(しかも量は少ない)だけだが、合唱人とし
ては、一度は歌っておきたい。ベートーヴェン「第九」とはまた違う高揚感を味わえるだ
ろう。何しろ長い曲で、90分程かかってしまい、演奏会場で全部聴き通すのは辛いかもし
れないが、CDなら、好きな部分だけ抜き出すことが可能。合唱が入る第5楽章だけでも
30分以上かかる。合唱を聴くポイントとしては、バスの音域が広く、五線の下のB音がき
ちんと聞こえるか、ということも挙げられる。
○Abbado指揮Chicago SO,Ch, Neblett(S), Horne(Ms)
(DG,435037-2)76年
アバドの旧録(このCD番号は、第4番とのカップリングのもの)。LP時代には、日
本では最高の名演と評されていた。今改めて聴いてみると、確かにCDが出現するまで
は鮮烈な演奏と捉えられただろうが、やはりデジタル録音時代にも存在価値を強烈に主
張できるほどの個性は余り感じられない。合唱団は安心して聴いていられるレヴェル。
第1楽章に3つのトラック、第5楽章に11のトラックが付いているのが、こういう長大
な音楽では嬉しい。
○Tennstedt指揮LPO,Ch, Mathis(S), Soffel(Ms)
(EMI,CMS7 64471 2)81年
熱い音楽が心地よい。合唱団は予想通り余りうまくないので、褒められるべきものでは
ないが、指揮者の気迫が合唱団の歌唱からも伝わってくる。なお未聴だが、いわゆる海
賊盤にテンシュテットの白熱ライブがあるそうだ。
○Sinopoli指揮PO, Ch, Plowright(S), Fassbaender(Ms)
(DG,415959-2)85年
シノーポリにしては意外に良い。合唱もまあまあ。この2枚組は、カップリングの「さ
すらう若人の歌」があまり多くない女声(ファスベンダー)による歌唱であることと、
「若き日の歌」が珍しい管弦楽伴奏であるのに価値。
○Bernstein指揮NYPO,Westminster Ch,Hendricks(S),Ludwig(Ms)(DG,423395-2)87年
ライブ録音。これが発売された時は、「これこそ最高の名演」ともてはやされた。最終
合唱で、テンポをずいぶんをゆっくりとっているのがポイントで、それが比類ない感動
をもたらす、と評されている。確かにそうなのだが、テンポが引き伸ばされ過ぎていて
合唱は苦しい。先日もあるCD屋で大音量でかかっていたが、そういう状況で聴くと合
唱の苦しさは助長される。演奏者名を隠されたら、これほど話題にならないだろう。
○Howrat指揮リュブリャナ放送響・合唱団(ZYX-MUSIC,CLS4193)
録音年不明のデジタル・ライブ録音。千円未満で買えるし、一時期CD屋で話題になっ
たホルヴァートの体当たり的熱演が聴ける。打楽器が生々しい。なお合唱は、特に男声
の実力が低いので、合唱に主眼を置いて鑑賞するなら薦められない。
○Gielen指揮SWR SO, EuropaChorAkademie, Rundfunk-Chor
Berlin
Banse(S), Kallisch(Ms) (HANSSLER,CD93.001)96年ライブ
コストパフォーマンスは最高。廉価盤であるだけでなく、合唱付きではシェーンベルク
の「Kol Nidre op.39」と、クルターク作曲の管弦楽曲「Stele
op.33」をカップリング
して、演奏も上々。ギーレンの指揮が、精妙で弱音が美しく、かと思えば高揚は目覚し
く、感動的な演奏。合唱団も、時に崩れ気味になるが、まずは十分な出来。この価格で
あれば、合唱人の聴き比べ用に強く推薦したい。
○Zinman指揮Tonhalle Orch,Schweizer Kammerchor(RCA,82876 87157 2)2006年
Banse(S), Larsson(Ms)
ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団によるマーラー・チクルスでSACD
ハイブリッド盤。「巨人」は素晴らしいと思ったが、こちらは比較すると今ひとつ。た
だ、肝心の合唱が入る場面は悪くない。
<第3番>
演奏時間が百分ほどかかる、規模の大きさで有名な交響曲。全6楽章のうち、第4楽章
にアルト・ソロ、第5楽章には更に児童合唱+女声合唱が加わるという点で、合唱人には
見逃せない。この曲は昨今のマーラー・ブームで、実演も結構あるのだが、個人的な感想
を述べれば、これは僕の最も苦手なマーラー。部分的には色々といいところもあるが、全
部を聴き通すのはつらくて無理。せっかく合唱も登場するが、だから何だ、という気がす
ることすらある。しかし、こういう感想をもつ人間はごく少数派だ。そして僕も、以下に
挙げるギーレン盤を聴いて、初めてこの交響曲に少しだけ心が動いた。
○Gielen指揮SWR SO, EuropaChorAkademie, Freiburger
Domsingknaben, Kallisch(A)
(HANSSLER,CD93.001)96年ライブ
「第2番」に引き続き素晴らしい演奏に巡り合った。もともとギーレンという指揮者、
FM放送でライブに接するたび、その音楽性には感服していたが、このレーベルからの
マーラーだけで、僕の中での位置は急上昇。是非マーラー全集を完結して欲しい。これ
で以下のアバド盤のようにトラックが細かければもっと良かった。シューベルトの「ロ
ザムンデ」からの音楽と、ウェーベルンの「管弦楽のための6つの小品」を併録。
○Abbado指揮VPO, Vienna St Op Concert Ch,Vienna
Boy's Ch(DG,410715-2)82年
アルトソロのノーマンも含め有名演奏家揃いで、この曲のCDを語る場合、日本では必
ずひきあいに出させる。確かに悪い演奏ではない。ただし合唱は、女声合唱は声は豊か
だが美しくないし、児童合唱も全然大したことない。トラックが細かいのは嬉しい。
○Saccani指揮Budapest PO,Hungary State Opera(BUDAPEST PO,BPOL1021)2000年ライヴ
ブダペストフィルのライヴ盤22枚組から。合唱が登場する楽章は、特筆すべきものでも
ないが、第1楽章の場面転換が鮮やかで、とても楽しく聴ける。当たりだと思う。
○Tennstedt指揮LPO, Ch, Southend Boy's Ch(EMI,CMS7 64471 2)79年
テンシュテットはここでも熱い音楽を聴かせてくれる。合唱団は最上ではないが、まあ
まあ。アルト・ソロはヴェンクル。
○Zinman指揮Tonhalle Orch,Schweizer Kammerchor他(RCA,BVCC-38473/4国内盤)2006年
「第2番」同様、SACDハイブリッド盤2枚組。録音の鮮やかさが印象に残るアルバ
ムだ。価格の安さ、日本語解説と対訳、まずまずの合唱団というあたりを考慮すると、
初めてこの曲を買う人にはお薦めかもしれない。
<第8番>
初演時に約千人の演奏者を要したことから「千人」と呼ばれるお馴染みの大作。これく
らい作品の規模が大きくなると、CDで聴く気がしなくなってくる。圧倒的な音圧をマイ
クが拾えるとは思えず、どう考えても、録音よりも実演の方が楽しめるだろう。日本とい
う国は凄いと思うのは、実演の機会が実に多いことだ、信じられないくらい!
○Solti指揮Chicago SO, Vienna St Op Ch, Vienna
Singverein(DECCA,448293-2)71年
この曲のCDを語る上で必ず引き合いに出されてきた古典的名盤。確かに独唱者を含め
て演奏者は豪華だし、指揮と管弦楽を聴くならこれで十分だが、合唱を聴くなら、僕は
これは薦めない。例えばこの曲の演奏に参加する人が参考にするなら、よりレヴェルの
高い合唱を目指してほしいからだ。声は立派だが、歌いまくっているだけで和音感覚は
伝わらない。少年合唱が加わりここではウィーン少年合唱団だが、相変わらず他者と合
わせることができずに浮いている。なおこの番号の盤は、79分34秒が何とか一枚に入っ
ている。トラックが全部で16あるのも長所。
○Bernstein指揮VPO他(DG,435102-2)75年
こちらは2枚組で、第10番のアダージョとカップリング。本来は、バーンスタイン指揮
によるDGのマーラー全集は「千人」も再録音されるはずだったのだろうが、指揮者の
死で果たせず、70年代のこの録音がとりいれられた。面白いのは上述のショルティ盤と
合唱の陣容が同じこと。相変わらず同様にダメだ。この盤の短所はソリストのソプラノ
で、非音楽的な高音は、全く容認できるものではない。この録音も非常にありがたがら
れているが、合唱人にとってはそれほどの価値は無い。ただ、第2部はバーンスタイン
の濃厚な音楽がそれなりに楽しめる。全曲で24のトラックが付いているのは長所。
○Tennstedt指揮LPO, Ch, Tiffin Boy's Ch(EMI,CMS7
64476 2)86年
これは上述の2枚に比べて合唱団の実力もずっと低いし、ソリストも小粒だし、オケも
ウィーンフィルなどに比べるべくもないが、アンサンブルは良くて格段に音楽的だと思
う。迫力を求める人には不足を感じるかもしれないが。全部で18のトラック付き。
○Gielen指揮Opernhaus- und Museumsorchester
Frankfurt,Figuralchor des Hessischen
Frankfurter Kantorei,Frankfurter Singakademie,Limburger
Dom-Singakademie
(SONY,SBK48281)81年ライブ
2000年に入ってからヘンスラー・レーベルから出たマーラーが素晴らしいので慌てて入
手したギーレン盤旧譜。ライブの熱気があり、全曲が72分で終わってしまう。全部で32
のトラックが付き、演奏内容からもコストパフォーマンスは素晴らしい。当盤に言及さ
れることが余りに少ないのは納得できず、これはこれで良いのだが、合唱団をとれば、
もっと向上して欲しいので、再録音を期待している。
○Gielen指揮SWR SO,Aurelius Sangerknaben Calw,Europa Chor Akademie(Mahler),
(HANSSLER,CD93.015)98年
ギーレンによる新録音。演奏時間が80分を超え、ほぼ標準になった。全体に克明な表情
付けがなされた、室内楽的とも言える演奏。第一部は合唱団にも荷が重い感じだが、第
二部は反復鑑賞の価値あり。18のトラックが付けられている。カップリングのシェーン
ベルク「ヤコブの梯子」が素晴らしい。
○Inbal指揮Frankfurt RSO他(DENON,COCO-70401国内盤)86年
バイエルン放送合唱団、北ドイツ放送合唱団、RIAS室内合唱団などドイツの力のある合
唱団を集めた成果で、合唱の質が高い。第2部を丁寧に演奏しており、下手すると退屈
する部分でもだれることがない。ただ何というか、超の字がつく名演に入れられる類と
もいえない感じ。この番号の国内盤は1050円で買えるが、解説に歌詞が付いていない。
インデックスは細かくつけてあるが、トラックは2つだけ。
○Colin Davis指揮Bayerischen Rundfunks SO(RCA,82876 62834 2)96年ライブ
バイエルン放送合唱団、ベルリン放送合唱団、テルツ少年合唱団と、こちらもドイツの
実力ある合唱団を起用。独唱陣もカサロヴァ、ヘッペナー、レイフェルクス、パペら豪
華である。声楽陣の力が圧倒的で、2つの楽章共、終わりに近づくにつれて音楽がどん
どん高まってくる。SACD2枚組だが、通常盤一枚程度の価格で買えるのも嬉しい。24の
トラック付き。
交響曲以外の合唱モノということになると、カンタータ「嘆きの歌」がある。通常よく
演奏されるマーラーの作品で最も作曲年代が若いのは1883-84年の歌曲集「さすらう若人
の歌」だが、「嘆きの歌」はそれより早い時代に着手され、81年には完成されている。確
かに良い意味で若さが感じられ、非常にわかりやすい音楽になっている。演奏時間は約1
時間。これも近年のマーラー・ブームで、随分と演奏、録音されている。最近、オリジナ
ル盤の世界初録音という資料的にも興味深いケント・ナガノ盤が出たので、それを挙げて
おく。作曲から20年後に改訂されていて、通常はそちらの版で演奏されてきた。
○Nagano指揮Halle O, Ch(ERATO,3984-21664-2)97年
資料的には貴重だし演奏もそう悪いわけではないが、合唱団の力は、やはりイギリスの
オケ併設団体の常で今一歩なのが残念。
以上でオリジナルのマーラー作品については終わるが、編曲ものがある。
まず、歌曲なら何でも男声合唱に編曲して歌ってしまう日本の学生男声合唱団のおかげ
で、「さすらう若人の歌」には福永陽一郎編曲版があり出版されている。音源も一枚。
○畑中良輔指揮甍(2000年定演記録CD)
また、一つ珍品を挙げておくが、意外なほど音源がある編曲物。
○Gottwald指揮Schola Cantorum Stuttgart(BAYER-RECORDS,CAD800896)84年
歌曲集「リュッケルトの歌」に含まれる「Ich
bin der Welt abhanden gekommen私は
この世に捨てられて」を、当盤の指揮者が無伴奏混声16部合唱に編曲した物。何しろ原
曲がこの世の物とは思えない美しい音楽なので、編曲したくなる気持ちはわかる。当盤
には、アルバン・ベルクの歌曲「ナイチンゲール」を同様に編曲したものも収録。「こ
の世に捨てられて〜」の録音は、以下のアルバムでも良い演奏で聴くことができる。ベ
ルニウス盤が入手しやすいし、演奏も超絶。エリクソン盤の豊麗な響きも推薦。
○Bernius指揮Kammerchor Stuttgart(CARUS,Carus83.208)96年
○Bohlin指揮Maria Magdalena Motettkor(Db
Productions,CD51)97年
○Equilbey指揮Accentus Chamber Choir(naive,V4947)2001年
○Ericson指揮Eric Ericson Chamber Choir(CAPRICE,CAP21813)2008年
○Helgerod指揮Norwegian Soloists'choir(SIMAX,PSC1134)98年
○Hultberg指揮Phoenix Chamber Choir(SKYLARK,9401CD)94年頃
ゴットヴァルトによる編曲物では、「さすらう若人の歌」の第4曲も同様に無伴奏混声
16部合唱にしたものもある。克明な編曲で、ソプラノには最高音でハイCが登場。
○Grun指揮Kammerchor Saarbrucken(CARUS,83.182)2004,05年
他に上記「Ich bin〜」、および歌曲「Scheiden und Meiden別離と忌避」と、マーラー
を3曲。
また、上記「リュッケルトの歌」で挙げたアルバムの中でEquilbey盤では、交響曲第5
番第4楽章、映画でも使われて有名になった「アダジェット」の克明な合唱編曲版(編曲
者はPessonという人)を聴くことができる。これは良くぞ歌い切ったものだ。特にソプラ
ノソロ歌手の健闘は称えられてよい。
○Equilbey指揮Accentus Chamber Choir(naive,V4947)2001年
この演奏家たちのマニアックな仕事は続く。
○Equilbey指揮Accentus Chamber Choir(naive,V5048)2006年
マーラーは歌曲「Scheiden und Meiden」と「さすらう若人の歌」の終曲。
マンチュヤルヴィ(MANTYJARVI,Jaakko、b1963-、フィンランド)
スウェーデン放送合唱団が来日公演のアンコールで小曲「シュード・ヨイク」をとりあ
げていたため、その名前を知った人。その演奏も含め、これまでに聴いた彼の曲はいずれ
も興味深く、今後、急速に流行るのではないかと思われる。民謡も含め様々な要素を取り
入れ、独自に消化して新しい音を作り出している。
○ECLECTICA/Norjanen指揮Tapiola Chamber Choir(FINLANDIA,0927-41563-2)2001年
収録曲:Pseudo-Yoik; Four Shakespeare Songs; El Hambo; More Shakespeare
Songs;
Psalm 150 in Grandsire Triples; Canticum Calamitatis Maritimae;
Psalm 150 in Kent Treble Bob Minor; Kouta
待望のマンチュヤルヴィだけのアルバム。この作曲家を知るには最高の入門盤。
○SALVAT 1701/Norjanen指揮Tapiola Chamber Choir(ALBA,NCD18)2001年
1701年編纂のフィンランドの賛美歌集の編曲に語りを加えた合唱ドラマで、全曲で65分
以上かかる。マニア向け。「インスブルックよさようなら」のメロディーをそのまま借
用した賛美歌があって、その部分はひたぶるに美しい。
○Ericson指揮Accentus Chamber Choir(NAIVE,V4924)2001年
「Pseudo-Yoik」のみ。エリクソンがフランスの室内合唱団を振ったフィンランド集。
カップリングはシベリウス、ラウタヴァーラ、クーラの無伴奏混声合唱曲。
○Most指揮Academic Choir of Aarhus(DANACORD,DACOCD607)2001年
「4つのシェークスピアの歌」のみ。シェークスピアによる合唱曲だけを集める。
○Talla Ensemble(FINLANDIA,WPCS-6509国内盤)98年
男声合唱曲「幼子の声」。フィンランドの超絶男声合唱団タッラのために作曲されてい
るため、音域設定が特殊、カウンターテノールの技巧披露に最適だ。この「ある日、楽
園にて」と題するアルバムはマンチュヤルヴィのこの曲から始まるのが効果的。タッラ
のアルバム、もっと聴きたい。推薦盤。
○Chanticleer(TELDEC,WPCS-11123国内盤)2001年
「幼子の声」をもう一枚。ソプラノ歌手のアップショーとの共演になる、シャンティク
リアのクリスマスCDに収録されている。
○Birkeland指揮Kammerkoret Con Spirito(CON
SPIRITO,CS003)98年
シェークスピアによる「Full Fathom Five」と、自作の詞による「El Hambo」の、無伴
奏混声の2つの小曲。手拍子付きでノリノリの後者は、流行しそうだ。
○Rajaton(PLASTINKA,PLACD005)2002年
フィンランドの男女6人のアンサンブル、ラヤトンのアルバム「SANAT」にマンチュヤ
ルヴィを2曲、「Benedic anima mea Domino」と「Torramat do noebaengil」を収録。
前者がリズミカルで諧謔的な味もある。
○Bruffy指揮Phoenix Bach Choir(CHANDOS,CHSA5031)2003年
「4つのシェークスピアの歌」のみ。この作家のテキストのみを使った曲のアルバム。
○Chicago a cappella(CEDILLE,CDR90000 085)2004,05年
上記盤と同様のコンセプトによるアルバムで、「4つのシェークスピアの歌」のみ。演
奏者は男女各4人のアカペラアンサンブルで、かなり高度な能力を持つ。お薦め。
○Singer Pur(OEHMS CLASSICS,OC560)2005年
オリジナルではなく、ドイツ民謡の2曲を編曲。そのうち「Haissa Kathreinerle」は
この作曲家らしい手拍子足拍子で楽しく聴かせる。このアルバムはここで代表させてお
くが、ドイツ民謡を新しいアレンジで届けるというコンセプトで、他にも幾つか楽しい
ピースがある。
○Bruffy指揮Phoenix Bach Choir,Kansas City Chorale(CHANDOS,CHSA5045)2005年
「Canticum Calamitatis Maritimae」のみ。マルタンの「ミサ曲」などをカップリング
したアルバム「Eternal Rest」。SACDハイブリッド盤。
今後も新作、あるいは新録音に注目したい。
マレンツィオ(MARENZIO,Luca、c1553-1599、イタリア)
ルネッサンス期のイタリアの作曲家の中でも、特に注目すべき人だということだ。しか
し僕は、未だに彼の作品の録音で目を見張るようなものに出会っていない。専門家の評価
は非常に高いので、恐らくは録音に恵まれていない、ということだろう。1999年が没後四
百年にあたったため、ここのところ録音が増えてきている。手許にあるのは、ほんの数枚
だけだが、挙げておく。
○The Consort of Musicke(MUSICA OSCURA,70992)88年
収録曲:Baci soavi e cari;Dolorosi martir;Due
rose fresche;Fuggito e lsonno;
Liquide perle;O fere stelle;O voi che sospirate;Piango
che amor;Se quel dolor
5もしくは6声のマドリガーレ集。カークビーとタブがトップを務める演奏、悪い筈が
無い。
○Venexiana(GLOSSA,GCD920906)99年
マドリガーレ第9巻全曲。とても上手いイタリア人グループ。曲については、僕はどう
もぴんとこなかったが、推薦できる演奏。
○Grossmith指揮Claritas(ETCETERA,KTC1225)99年
収録曲:Cantantibus organis;Cantate Domino
canticum novum;Dum esset summus;
Gaudent in coelis;Hodie Beata Virgo Maria;Hodie
Christus natus est;
Jubilate Deo;Laudate Dominum;Magnificat;Missa
super Iniquos odio habui;
O quam gloriosum;O Rex gloriae;O sacrum
convivium;Salve regina;
Tribus miraculis
ケンブリッジ・クレア・カレッジ出身者を若い指揮者が率いる注目団体による、ラテン
語の宗教曲集。このテの盤が少ないので貴重だ。演奏も悪くない。
イタリア語マドリガーレの中でも、言葉と音楽との一体感において出色だということな
ので、興味がある人は、どんどん開拓すべきだろう。
マルタン(MARTIN,Frank、1890-1974、スイス)
十二音音楽の分野での貢献が重要視されている。器楽での代表作「小協奏交響曲」は、
珍しく耳に心地よい十二音音楽になっている。合唱作品もかなりの量があって、それらの
多くは無調で書かれているが、マルタンには、デジタル録音時代に入ってCDでは大ブレ
ークしたといって差し支え無い、無伴奏二重合唱のための「ミサ曲」がある。これは無調
ではなく、全編が調性音楽である。マルタンが独自の技法を確立する前の作品であり、ま
た作曲者の個人的な信仰にかかわる音楽ということで、長い間発表されずに眠っていたも
のだ。この手の話は、イギリスのハウエルズの「レクィエム」とも共通するが、この2曲
が、今日最も好んで演奏される20世紀の無伴奏宗教合唱曲となっているのは、何とも皮肉
な話である。作曲者も認めない初期の作品が、多くの人の心を捉えているのだ。もしこの
2曲が廃棄されていたら、20世紀の合唱曲の目録は明らかに寂しくなっただろう。
話を「ミサ曲」に戻すが、この曲ほど、合唱に随分親しんだ人にも、初心者にも受け入
れられる曲は、僕の合唱経験の中では他に知らないかもしれない。全曲に一貫するある種
超常的な雰囲気が人気の秘密だと思うが、この曲は宗教的であって世俗的、神秘的であっ
て直情的、高次の芸術であってミーハーなのだろう。僕は、モンテヴェルディの「ヴェス
プロ」同様、この曲のCDが出れば必ず買うようにしているが、「ヴェスプロ」のように
どれを買っても面白いから集めている、という心理からではない。マルタンのミサには、
超絶の録音、エリクソン盤がある。それは僕にとって、あらゆる合唱音楽の録音の中でも
最高位に位置するもの。何枚CDを買ったってどうせエリクソンを凌駕できないとわかっ
ていながら集めているのだ。実のところ、改めて聴いてみると、エリクソン盤も演奏技術
的には、今日的水準からは不満も残るのだが、それでもこの録音は不滅だろう。なお、実
演でこれは、というのを聴いたのは一度だけ、ケンブリッジのキングズカレッジでミサに
参加した時に、このカレッジの名聖歌隊が全曲を歌ったのだ。アルト・パートをたった一
人で、顔色一つ変えず、正確無比に歌いこなしていたカウンターテノールの妙技を、昨日
のように思い出す。
では手許の録音を録音年順にコメント。90年代に録音が急増したことに注目を。
○Ericson指揮Stockholm Radio Choir(EMI,CMS5
65348 2)75年
全てはここから始まった。今日の日本でのこの曲の演奏ブームも当盤無しには考えられ
ない。テンポ設定など独特のところもあるが、楽譜がどうとか関係ない、解釈の全てが
ハマっている名演奏だと思っている。
○Poole指揮BBC Singers(BBC,15656 91482)80年
BBCの所有するライブ音源シリーズ。カップリングはブリテンの「みどりご生まれ給
いぬ」など。演奏はごく普通。
○Eby指揮Mikaeli Chamber Choir(PROPRIUS,PRCD9965)85年
デジタル録音では演奏もいいし、特に音の良さで推薦盤。カップリングのピツェッティ
「レクィエム」がまた非常に良い。
○Otto指揮Frankfurt Vocal Ensemble(Bayer,BR10084CD)88年
それほど悪い合唱団じゃないのだが、マルタンに限っては出来が良くない。カップリン
グはレーガーの作品138。
○Darlington指揮Christ Church,Oxford(NIMBUS,NI5197)89年
残念ながらボーイが不安定過ぎ、またカウンターテノールによるアルトが突出し過ぎて
バランスが悪く、安心して聴けない。カップリングのプーランクなどはまだ良い。
○Denis Martin指揮Choeur de Chambre du midi(ERATO,45779-2)90年
発声は悪くない(メンバーが多い)のに、ハモらない。もって他山の石とすべき演奏。
カップリングのオラトリオ「ゴルゴタ」については後述。
○Summerly指揮Schola Cantorum Oxford(PROUDSOUND,PROU
CD 129)91年
実演がとても良かった合唱団だからついついCDを買ってしまうが、どうして実演とこ
んなに差があるの?と思わせる。マルタンもイマイチ。20世紀の宗教音楽集。
○Corboz指揮Eesemble Vocal de Lausanne(CASCAVELLE,VEL
1025)91年
独自の解釈が頻出してマニアには興味深いが、コルボとは相性が悪い曲だったかと思わ
せる一枚。カップリングはモンテヴェルディの4声のミサとリタニー。
○Kaljuste指揮World Youth Choir(BOHEMIA MUSIC,BM0010-2 231)92年
非常に上手いが、スウェーデンの他の合唱団の演奏を聴いていれば、特にとりあげてお
きたいものでもない。
○Backhouse指揮Vasari Singers(UNITED,88033CD)94年
それなりの好演だが、特に持っておきたい、というわけではない。カップリングはハウ
エルズのレクィエムと「Take him,earth,for
cherishing」。
○Shaw指揮R.Shaw Festival Singers(TELARC,CD-80406)94年
人数の多さを生かした分厚い音がメリット。低音が特に充実している。ただ全体に重た
すぎる気がする。CDのタイトルは「EVOCATION
OF THE SPIRIT」。
○Warland指揮Dale Warland Singers(AMERICAN
CHORAL CATALOGUE,ACC120)94年
アメリカのプロ合唱団で、アメリカには珍しくスウェーデン型合唱団に近いことが評価
できる。マルタンはまずまず。ハウエルズのレクイエムがとても素晴らしく、バーバー
のアニュスデイとアレグリのミゼレーレは良くないという評価の難しい一枚。僕がこの
合唱団のCDを集めまわるきっかけになった。
○Straube指揮Norddeutshcer Figuralchor(THOROFON,CTH2261)94-95年
来日もしているドイツの合唱団で、実力は高く、持っていて損は無いなかなかの好演。
カップリングの「エーリエルの歌」の演奏も良い。オルガン独奏の「パッサカリア」も
収録。
○Nickoll指揮Carmina mundi(EBS,ebs6039)95年
これは参った、これなら日本の学生合唱団の方が余程うまく歌っている。こういうのが
CDで発売されているという事実に興味が湧く一枚。
○Christophers指揮The Sixteen(COLLINS,14672)95年
これはカップリングの良さが推薦に値する、マルタンの合唱作品集。他に録音を求める
ことができない、オルガンと混声合唱のための「8月1日のためのカンタータ」、マシ
ョーの詩による「音楽へのオード」、そして男声合唱や女声合唱のためのシャンソン集
(この珍曲、こんな物が埋もれていたか!と思わせる、特に良い)が含まれているから
だ。もちろんミサもかなりの好演だし、「エーリエルの歌」も収録。個人的に大好きな
合唱歌手クラブトゥリーがソプラノにいるのもポイント。
○O'Donnell指揮Westminster Cathedral(HYPERION,CDA67017)97年
当盤には驚いた。英誌「Gramophone」は、毎年年末に評論家の投票で分野毎に年度の名
盤を選ぶが、当盤は合唱部門どころか、全体の大賞を獲得!そんなにいいものか、とい
う気がするが、英国人テイストの最大公約数はこれなのだろう。ここのトレブルの声は
独特なので、趣味に合わない人は避ける方がよい。録音会場の広さを感じさせるサウン
ドが嬉しい。アニュスデイの最後で人数を絞っていることに共感する(この方が演奏効
果があがる)。カップリングはマルタンのオルガン独奏曲「パッサカリア」、合唱曲で
はピツェッティの「レクィエム」と珍しい「De profundis」。
○Toll指揮Camerata vocale Freiburg(AMBITUS,amb97805)97年?
○同音源(ARSMUSICI,AM1360-2)
CDの表面からはマルタンのミサが入っていることに気づかない。タイトルはフランス
語で「MYSTERE」。マルタンの出来は期待以上でかなりのもの。デュリュフレ、フォー
レ、プーランクとカップリング。
○Rademann指揮Dresdner Kammerchor(RAUMKLANG,RK9705)97年
ドレスデン音楽大学出身者による若い合唱団。「4世紀間の宗教合唱曲集」という、エ
リクソンを意識したようなタイトル。声が若々しいのが長所。
○Mansson指揮Lunds Vokalensemble(LUNDS VOKALENSEMBLE,LVE-2)99年
遅い。各曲のタイムは7:20,6:28,6:22,4:55,5:08で計30分を超える。それなりの実力が
あるスウェーデンの合唱団なので、遅い演奏が好きな人は聴いてみるとよいかも。
○Windekilde指揮HYMNIA(CLASSICO,CLASSCD286)99年
かなりいい線だが、残念ながら最高ではない。合唱団全体の響きは、倍音もよく鳴るし
素晴らしいが、おしつけがましい声が気になる。音程も含め、アンサンブルがあれっと
いうところで乱れる。全体にとても元気がよいが、宗教曲では裏目に作用している。併
録音のプーランク「人間の顔」と「ミサ曲」の方が良い。デンマークの室内合唱団。
○Yngwe指揮Pro Musica Chamber Choir(SWEDISH
SOCIETY,SCD1118)2000年
スウェーデン、エーテボリの、声楽を専門に勉強した人を中心とする約40人の合唱団。
来日経験もあるそうだ。さすがスウェーデンで、文句なし、上手い。特に「妖精エーリ
エルの歌」と「音楽へのオード」が良い。ただし「ミサ曲」については、解釈に疑問も
多く、ピッチの不安定さが気になったりもする。収録曲が3つだけで45分で終わってし
まうのは淋しい。
○Knall指揮Collegium Vocale Zurich(MGB,CD6177)2000年
作曲者の母国の室内合唱団だが、この曲の並み居る名演奏の中で、存在を主張できるほ
どの物は無い。日本のコンクールに出ても、上位入賞はできないだろう。ところがそれ
でも、たまに鳴る、日本のほぼ100%の合唱団には不可能な、澄み切った合唱の響きに耳
を奪われる。こういう音が聴ける点、さすがはヨーロッパの合唱団だ。また、人数が少
ないのが効を奏して、他の演奏では埋もれるパートが聞こえたりもする。併録のブルン
ナーというスイスの作曲家の宗教曲が、意外と楽しめる。
○Kaljuste指揮Netherland Chamber Choir(Q DISC,Q97056)2000年
「アニュスデイ」でソプラノの声が平たくなったりする欠点もあるが、演奏技術的には
最上位にある名演で、まずは指揮者、合唱団の名声に恥じない内容。凄く上手いことは
間違いないのだが、オランダ室内合唱団の演奏の常で、今ひとつ、心に食い込んでくる
ものが少ないと感じる人がいてもおかしくない(僕の場合はそう)。教会での録音のサ
ウンドも非常に良い。24人で演奏。エリクソン盤で技術的に不満なら是非こちらを。特
筆すべきはカップリングの「エーリエルの歌」で、この曲を愛する人に推薦。もう一曲
カンタータ「Et la vie l'emporte」も収録しているが、僕はこの曲に興味がない。
○O'Donovan指揮Arcadian Singers of Oxford Univ.(LAMMAS RECORDS,LAMM137D)2001年
特にアルトの声に癖があり、響きの深さも不足で特に聴いておくべき演奏ではないが、
大学生25人でこれだけの演奏ができるという点では、やはり英国、驚異だ。
○Janz指揮Collegium Vocale Kiel・Flensburg(ARS PRODUKTION,FCD368405)2001年
約50名の合唱団。たまにヨーロッパでみかける、見事に合唱声(ちょっと癖のある)で
統一されている。日本人にはあまり心地よい声ではないし、マルタンの演奏に関しても
上手いとは言えない。しかしカップリングのバッハ「モテット第1番」など、意外に健
闘している。
○Walker指揮Cantillation(ABC,465824-2)2001年
アニュスデイだけの抜粋盤。それが惜しまれるほど良い演奏。是非、この合唱団で全曲
を聴いてみたい。
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901834)2003年
ソプラノ歌手の一部が不出来なため、この合唱団としては不安定な演奏になってしまっ
ているが、とは言え貫禄の出来栄え。全体に遅めのテンポでじっくり。カップリングの
「エーリエル」、それからメシアンの「5つのルシャン」が特に良い。
○Bruffy指揮Phoenix Bach Choir,Kansas City Chorale(CHANDOS,CHSA5045)2005年
ハーモニーは不安定な部分もある。演奏時間が30分を超えており、ゆったり感が長所に
なっている。アルバムのタイトル「Eternal Rest」のコンセプトを表現しようとしてい
るのだろう。SACDハイブリッド盤。
○Dijkstra指揮Chor des Bayerischen Rundfunks(BR KLASSIK,403571900500)2007年
まずは安定感の高い演奏。しかし時折「あれ?」っと感じるミスを犯しているような気
がするのは、どうしたことだろう。カップリングはコダーイ「ミサ・ブレヴィス」とプ
ーランク「連祷」(いずれもオルガン版)。SACDハイブリッド盤。
○真下洋介指揮松原混声合唱団(BRAIN,OSBR26007-8)2008年ライヴ
冒頭のキリエが不安定なので心配になるが、聴き進めると一定の感銘が得られる演奏。
日本の合唱団もここまでできるという成果。指揮の真下氏の並々ならぬ力量もあるのだ
ろう。合唱団の第19回演奏会のライヴ録音。
マルタンの無伴奏混声合唱曲ではもう一つ、日本でもしばしば演奏されるのが「妖精エ
ーリエルの歌」。これもエリクソンが録音したために日本の合唱界でも認知されているよ
うだが、他のCDも最近何枚かでてきている。無調に近いのでとっつきにくいが、慣れて
くるとなかなか心地良い。既述盤を除いて、他のCDを挙げる。
○Nobel指揮Netherlands Chamber Choir(PHILIPS,462098-2)53年
これは大変興味深い一枚。この名合唱団のモノラル時代から現在までの録音を集めたも
のだが、今は憎らしいくらいうまいこの合唱団も、50年代は全く大したことなかったの
がわかる。「ミサ曲」で触れた、2000年録音の同合唱団の演奏に比べると、その差は信
じられないほどで、合唱界全体の演奏水準の向上に気づく。なおこの旧演奏も、表現力
には富んでいて、それなりに楽しめる。
○Ericson指揮Stockholm Chamber Choir(EMI,CMS5 65344 2)75年
ミサ曲同様、日本でマルタンが認知されるきっかけになった演奏。
○Most指揮Academic Choir of Aarhus(DANACORD,DACOCD607)2001年
それほど実力が高いとはいえない合唱団の割には、音楽的に優れた演奏をしている。
○Bruffy指揮Phoenix Bach Choir(CHANDOS,CHSA5031)2003年
シェークスピアにテキストを求めた20世紀以降の合唱曲だけを集めた好選曲盤。アメリ
カ・アリゾナ集のプロ合唱団は軽い響きが特徴。
○Pedersen指揮Norwegian Soloists' Choir(SIMAX,PSC1298)2005年
これもシェークスピアによる現代合唱曲だけのアルバム。このノルウェーを代表する合
唱団は極めて高度なアンサンブルを聴かせる。
その他にも声楽が絡む作品が結構ある。合唱ではオーケストラ付きのオラトリオなどが
あって、マルタンの代表分野とされているが、正直言って、僕には感動の薄い曲ばかり。
規模的に手ごろな「レクィエム」すら、最後まで聴き通すのが辛い。
○Corboz指揮Gulbenkian O,Ch他(CASCAVELLE,VEL1014)74,90年
オラトリオ「In terra pax」とカンタータ「Et
la Vie l'Emporta」の好演。
○Ansermet指揮SRO他(CASCAVELLE,VEL2006)59,66年モノラル・ライブ
オラトリオ「Le Mystere de la Nativile」とカンタータ「Pilate」。2枚組。
○Faller指揮Lausanne Univ.Choir他(ERATO,45779-2)68年
オラトリオ「ゴルゴタ」。90年録音の「ミサ曲」とカップリングした2枚組。
○Bock指揮Wiener Sing-akademie, Wiener Jeunesse
orch他(HANSSLER,98.327)98年
オラトリオ「ゴルゴタ」のみ。ライブ録音の2枚組。
○作曲者指揮SRO他(Jecklin,JD631-2)73年初演ライブ
四人のソリスト、混声合唱、管弦楽、オルガンのための45分ほどの「レクィエム」。
代表作とされるオラトリオ「魔法の酒LE VIN HERBE」は、作曲者指揮盤(JECKLIN)など
があるようだが、合唱団が上手い録音が推薦される。無調音楽が好きじゃない人は止めた
方がいいかもしれないが、しかし、マルタンって本当はどんな作曲家なのかを知るには、
この作品が最適ではないだろうか。個人的には、随所にマルタンらしい切れ味を感じるも
のの、全編にわたって感動しっぱなし、というふうにはならなかったが…。テーマは「ト
リスタンとイゾルデ」の物語。
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor他(HARMONIAMUNDI,HMC901935/6)
マルティヌー(MARTINU,Bohuslav、1890-1959、ボヘミア)
あらゆるジャンルに渡って多作家で、僕には室内楽が格段に面白い。どの曲も輝きがあ
る。意外と合唱絡みの作品があるし、僕は未聴だが、オペラもいくつかある。
一般の合唱団でも演奏しやすい、無伴奏の合唱曲を集めた嬉しいCDがある。
○Kuhn指揮Kuhn Mixed Ch,Prague Radio Ch(SUPRAPHON,SU3101-2232)90年
収録曲:Brigand songs 1,2; Czech Madrigals;
Czech Nursery Rhymes;
Five Czech Madrigals; Four songs of the
virgin; Madrigals;
Three part songs for female voices; Three
sacred songs;
混声、男声、女声合唱曲を集めた2枚組。2枚で90分強の収録時間は寂しいが、ここま
でマルティヌーをまとめたCDが無いので貴重盤。日本では、2枚目に収録されている
マドリガルが時折演奏されるのを目にする。
○Valek指揮Brno Madrigal Quintet(SUPRAPHON,81
9010-2 931)98年
無伴奏の宗教的合唱曲と混声合唱のマドリガル全曲。宗教曲には世界初録音を含む。演
奏の出来の良さに驚く。ブルノ・マドリガル・クィンテットは名前通り5人の歌手から
成り、曲によって更に3人の歌手を適宜追加して演奏、基本的に各パート一名で、実に
洗練された透明な歌声。これは欠点にもなりえ、もっと民俗的であるべきという不満を
持たれるだろう。僕は、この系統の声は大好きなので、非常に心地よく聴けた。世界初
録音というのは宗教的合唱曲で、未完のチェコ民謡による「処女マリア」、それに同じ
く未刊のミサ曲。いやー、何がびっくりしたって、この「ミサ曲」だ。キリエ、サンク
トゥスとベネディクトゥスしか無いのだが、なんと、サンクトゥスとベネディクトゥス
は、シュッツの無伴奏合唱曲の歌詞をラテン語典礼文に置き換えただけじゃないか。ネ
タになったのは「宗教合唱曲集 1648」に含まれるあの名曲「Selig sind die
Toten」
と、同じ曲集の第1曲「Es wird das Szepter」。となるとジェズアルドっぽいキリエ
もオリジナルじゃないのではないかという疑問が湧くが、僕にはわからなかった。更に
驚くのは、この事実が、解説に何ら記されていないこと。いずれにせよ推薦盤。
○Kuhn指揮Kuhn Mixed Choir(SUPRAFON,SU3384-2
211)88年
エベンやメシアンの項でも触れた一枚で、無伴奏混声の「ダンデライオン・ロマンス」
が聴ける。冒頭のきれいな響きなどが印象的な13分ほどの佳曲。
○Layton指揮Netherland Chamber Choir(GLOBE,GLO5208)2003年
収録曲:Czech madrigals;Four Mariam songs;Madrigals for 5 voices;
Brigand songs;Romance of the dandelions
チェコ以外の合唱団による出色の一枚。混声合唱曲の入門として、これ以上のものはな
いだろう。
この他にも、管弦楽伴奏付きの合唱曲もいくつかある。男声合唱のための「戦場のミサ
曲」あたりが代表作とされる。室内カンタータをまとめたCDも出ているようだ。僕は未
開拓で、このジャンルで手許にあるのは一枚。
○Belohlavek指揮BBCSO & CHORUS
「ギルガメシュ叙事詩」。この題材による合唱曲といえば、日本では青島広志氏による
無伴奏男声合唱曲を思い出す。このCDは、イギリスBBCの音楽雑誌の付録についてい
たもので(何とお得!)、日本でもお馴染みの指揮者による95年のライブ録音。神秘的
かつ劇的な音楽が楽しめる。合唱団がもっとうまければ良かったのだが。
最後に珍品を一つ。
○Vostrak指揮Prague SO, Lubomir Panek Singers(SUPRAPHON,SU3058-2011)71年
作曲者のジャズからの影響を示す、5分に満たない小品「ル・ジャズ」。かなり恥ずか
しい管弦楽に始まって、後半に「ダダー」というコーラスが入る。いわゆるイロモノ。
マスカーニ(MASCAGNI,Pietro、1863-1945、イタリア)
言うまでもなくオペラが有名な人だが、最近は歌曲や、ミサなどの合唱曲だのも聴ける
ようになった。オペラの代表作「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、合唱曲が有名だ。
僕が最初に聴いたマスカーニ作品はこのオペラの有名な合唱「オレンジの花は香り」(全
日本合唱コンクールの課題曲だった)、その後、最も有名な管弦楽のための「間奏曲、さ
らに祈りの合唱「Regina Coeli」を聴いたが、これだけから推測して、牧歌的な作品なの
かと思っていた。全曲を聴いて、何とも起伏に富んでいて驚いたものだ。いずれにせよ、
合唱の名場面があるので、合唱人には楽しみのあるオペラだ。合唱の名場面は、オペラ合
唱名曲集といったプログラムを組むなら単独でとりあげることができる。
ついでにこれと対にされるオペラ、レオンカヴァルロの「道化師」に触れておくと、こ
ちらももちろん名作だが、合唱の見せ場が少ないのが残念(「鐘の合唱」くらい)。
この2曲のオペラを収録した2枚組CDを挙げる。
○ローマ聖チェチーリア音楽院管、同合唱団(LONDON,POCL3806/7国内盤)
カヴァレリアはセラフィン指揮、道化師はM=プラデルリが指揮したもの。デル・モナ
コが歌っている、古典的名盤。
手許には、ラハバリが指揮したナクソス盤が各々あるが、これも良い演奏だ。
なお、僕は未聴だが、マスカーニの他の目立たないオペラの中で、日本人なら江戸時代
を題材にした「イリス」くらいは聴いておくべきかも。
マスネ(MASSENET,Jules、1842-1912、フランス)
あまーい音楽のイメージしか無い人。ここではもちろんオペラをとり上げる。僕が彼の
オペラをCDで聴き始めたのは、安い国内盤が出始めてからのこと。ピアノのホロヴィッ
ツが、マスネのオペラをよく聴いていると語っている記事を目にしたことがあって、以来
ずっと興味はあったのだが、先伸ばしにしてきた。手許に3曲のオペラの録音。
<タイス>
○Maazel指揮New PO, John Alldis Ch他(EMI,TOCE9493/4国内盤)76年
オペラ全曲は録音対象物としてはマイナーだが、何しろマスネの代名詞「タイスの瞑想
曲」が本来どういう姿であるのか、というのがわかるオペラ。脇役に技巧的なデュエッ
トがあったり、妙に管弦楽だけの部分が多かったりでまとまりがないけれど、CDで聴
くなら気に入った部分だけ選べばいいから楽。僕は、最終曲の、タイスが死ぬ前の修道
士アタナエルとの二重唱を、一聴するや否や気に入った。「瞑想曲」がそのまま回帰し
てデュエットになってしまう。ビヴァリー・シルズのタイスもふさわしい。マゼールが
得意のバイオリンソロもやるのが当盤の特色だが、音程にハラハラ。ところで合唱団は
まずまずの出来だが、名場面として目立つ部分はないのが残念。
<ウェルテル>
○Plasson指揮LPO他(EMI,TOCE9491/2国内盤)79年
マスネの代表作の、発売以来特に絶賛されている録音。主役はアルフレード・クラウス
が歌っている。確かに各々の部分は実に甘く美しい音楽ばかりだが、続けて聴いている
と飽きる。なお合唱については、児童合唱(なるべく子供っぽい無垢な合唱)しか関わ
らないのが残念なところ。
<マノン>
○Plasson指揮Toulouse Capitol O,Ch(EMI,TOCE9359/60国内盤)82年
「ウェルテル」と並ぶ代表作で、これも発売以来絶賛を浴びる。主役はコトルバシュ。
これも僕には冗長なオペラだが、クラマックスの盛り上がりの迫力はすさまじい。合唱
は全体に渡って出番があるが、やはり名場面というのは無いのが残念。
なお、ここに挙げた3曲は、いずれも2枚組で3千円でお釣がくる。安い国内盤はあり
がたいが、対訳は付いていない。
なお、「タイスの瞑想曲」は合唱のハミングが付くということなのだが、どういうわけ
か上記のマゼール盤では、合唱が聞こえない。例えばこういうアルバムがある。
○Tortelier(Yan Pascal)指揮BBC Philharmonic(CHANDOS,CHAN9765)99年
フランスオペラの序曲などを集めたアルバム「FRENCH BONBONS」。「瞑想曲」は合唱が
入ることで荘厳さが増し、とてもいい感じだ。
きっと合唱曲でも良いものがあるんじゃないかと期待を抱かせる人だが、例えば以下の
盤にも1曲含まれているが、今のところ僕は、これという曲を発見できていない。
○Backhouse指揮Vasari Singers(GUILD,GMCD7199)2000年
「Chansons des bois a'Amaranthe」という作品。しかしそれにしても、この合唱団は
レヴェルが落ちてしまった。
マックスウェル=デイヴィス(MAXWELL=DAVIES,Peter、b1934-、イギリス)
イギリス現代では特に大切にされている。ルネッサンス音楽を研究し、そこから素材を
とった作品を多く残している。イギリスのレーベル、コリンズが数多く録音している。そ
の中に、無伴奏合唱曲だけのCDが一枚。
○Joly指揮BBC Singers(COLLINS,14632)95年
8つの無伴奏合唱曲を収録しているが、たいていは僕には難しくてよくわからない。キ
ングズシンガーズのために作曲された「House
of Winter」と「Sea Runes」も聴ける。
アマチュアでも十分演奏できそうな曲は「Lullabye
for Lucy」という作品くらい。彼
の管弦楽曲に興味がある人には、当盤最後の「Westerlings」という超技巧的な曲が面
白いかもしれないし、僕も技巧性に耳が吸い寄せられる。演奏は、よくやっている。
キングズシンガーズの委嘱作「House of Winter」を本家の演奏で聴けるアルバム。
○King's Singers(SIGNUM,SIGCD090)2006年
もう一枚、マックスウェル=デイヴィスの合唱曲を含むCD。
○Christophers指揮The Sixteen(COLLINS,12702)90年
イギリスの作曲家による20世紀のキャロルを集めたもの。親しみやすい小曲ばかりの一
枚の中で、マックスウェル=デイヴィスの「O
magunum myterium」だけは演奏時間も35
分に及ぶ難曲で、キャロル、器楽曲とオルガン曲の混合体。
マッカートニー(McCARTNEY,Paul、b1942-、イギリス)
僕はビートルズのファンではないが、彼らの音楽の良さは確かに理解できる。マッカト
ニーはクラシックの音楽まで書いてしまっているのでそのCDから。
<リバプールオラトリオ>
○Carl Davis指揮RLPO, Liverpool Phil Ch他(EMI,CDS7
54371 2)91年
発売時すぐ買ったのだが、僕はこれを聴いて、ああ、マッカートニーはクラシックなん
てやらなければいいのに、と思った。全然心に残らない。とはいえ、この曲ほど演奏回
数の多い現代合唱曲も少ないようなので、世間一般には好評なのかもしれない。
世間一般には好評なのかもしれない。
<スタンディング・ストーン>
○Foster指揮LSO, Ch(EMI,TOCP-50300国内盤)97年
こちらは上記作品と違い、ソリストが無く、管弦楽と合唱だけで演奏される。命の起源
とその意味をテーマとする。本当に、クラシックやらなければいいのに。僕はアニメの
主題歌だってドラマのテーマ音楽だって、良いと思うものはわけへだてなく評価するつ
もりだが、これは本当に面白くない。せめてもう少し短ければ良いのに。
ポールの妻リンダに捧げるアルバム「ガーランド・フォー・リンダ」が出ている。これ
は20世紀に活躍する作曲家たちの合唱曲を集めたものだが、その中に、マッカートニーの
作品「Nova」が含まれている。上述のオケ付きの大曲よりも好ましく感じられる。
○Broadbent指揮Joyful Company of Singers(EMI,CDC5
56961 2)99年
ついでにビートルズの合唱編曲物に簡単に触れておく。このジャンルは数が多すぎて、
フォローしきれないので、代表的なものだけを。
まず、ビートルズをまとめて聴けるもの。
○The Beatles Connection/King's Singers(EMI,CDC7
49556 2)86年
定番中の定番。これがあるので、後に続くものは大変。なお、アメリカの出版社(HAL
LEONARD)から楽譜も出版されていて安く入手できるが、このCDに収録されている全曲
ではないし、実際の録音とは異なった部分も結構ある。
○アカペラ・ビートルズ/合唱隊(DENON,COCO-7530)91年
日本の音大声楽家出身者たちの8人組。こういう声が豊か過ぎる人たちの合唱は好みが
分かれる。
○Clark指揮Royal PO,Royal Choral Society(DISKY,EH874372)
これはB級品。ロイヤル・アルバート・ホールでのライブ録音で、ビートルズ、アバ、
そしてクィーンの音楽を管弦楽化した演奏。ビートルズとクィーンでは、いかにもあり
がちな合唱が加わる。録音もあまり良くないし、編曲もパンチに欠ける。スーパーマー
ケットのBGMに使えるくらいか。このレーベルなので3枚組ながら非常に安い。
単品ものはそれこそ山ほどあるが、このジャンルの中で、僕自身が最も気にいっている
のは、スウィングルシンガーズが編曲・演奏している「フール・オン・ザ・ヒル」。演奏
者の長所が最も生きているものだと思う。チャイコフスキーの「序曲1812年」がメインの
一枚(VIRGIN)で聴けるが、同演奏のプライヴェート盤(SWINGCD6)の方が音質は好み。
珍品では、池辺晋一郎が東混のために無伴奏合唱曲に編曲したものが数曲があるが、出
版されていないし、埋もれている。歌詞も日本語化されているので、この手の物が嫌いな
人は触れる必要がない。僕自身は、クラシックの耳になっているためか、こういうクラシ
カルなものも悪くないと思った。
メルナス(MELLNAS,Arne、1933-2002、スウェーデン)
北欧物のレパに敏感な日本でも注目されつつある、現代作曲家。決してわかりやすい作
品ではないが、新しいレパを追いかけるなら注目。
○Pollanen指揮Tapiola Choir(ONDINE,ODE884-2)96年
CDの標題は「レインボウ・サウンズ」。文字通り、様々な国の様々な音楽を入れてい
て、日本の歌では「アイヅバンダイサン」と「アカトンボ」が聴ける。超絶児童合唱団
だ。収録の「Aglepta」という曲が、日本の同声合唱団もとりあげている。
○Johansson指揮Adolf Fredriks Girls' Choir(CAPRICE,CAP21498)95年
「Aglepta」を聴き比べたい人のための別音源。かなり良い演奏。
○Ericson指揮Eric Ericson Chaber Choir(PHONOSUECIA,PSCD38)89年
収録曲:Dream; Succsim
エリクソンの現代スウェーデン物の一枚だが、とにかく演奏が凄い。ここまで冴えた演
奏はなかなかできない。ここで聴ける混声の「Dream」という曲も日本での実演を目に
する。当盤収録の他の「M」で始まる作曲家ではMarosという人の「Turba」が聴ける。
○Singer Pur(ARS MUSICI,AM1208-2)97年
収録曲:Nagon gang; Universum
既に何度か触れているディスク。メルナスとしてはわかりやすい、短い小曲を2つ。後
者は当盤の最後から2曲めに収録、締めくくりのHermodssonの「Song
to Faro」という
曲が印象的だ。
○Eriksson指揮The Rilke Ensemble(FOOTPRINT,FRCD010)2003年
収録曲:Tre Korsatser till dikter av Tage Danielsson;Sweet Spring;10 Ordsprak;
Omnia tempus habent;Quis est homo qui non fleret;Laude;Skymning
2002年に亡くなった作曲者の業績を追悼するアルバム。この演奏家たちだから演奏の質
の高さは保証済み。無調的な作品を十分な水準でこなしている。たとえば現代風のマド
リガル集「Sweet Spring」第1曲における春の描写など、面白い。「Laude」は演奏時
間8分を超える、当盤の収録曲では最も普通の無伴奏混声合唱曲っぽい力作。
メンデルスゾーン(MENDELSSOHN,Felix、1809-1847、ドイツ)
このドイツ・ロマン派を代表する作曲家には、嬉しいことに合唱作品もたくさんあり、
録音も多い。シューベルト、シューマン、ブラームス、そしてメンデルスゾーン、こうい
う音楽を他人に聴かせられるようになれば、合唱団も一人前だと思うが、譜面づらは易し
いのに、うまく演奏するのは非常に難しい。
僕自身は、どうもその音楽に今ひとつ強烈な魅力を感じていない(どうしても器楽曲に
劣る)ので意識してCDを集めたりしていないが、それでもオムニバス物などでたまって
くる。
まず管弦楽と合唱で演奏される作品から。
<交響曲第2番>
○Ashkenazy指揮Berlin Deutsches SO, Berlin
Radio Ch他(DECCA,448181-2)94年
メンデルスゾーンの交響曲は初期の弦楽のための作品を除くと5曲あって、言うまでも
なく第3番「スコットランド」と第4番「イタリア」が有名。人気の薄い第2番に合唱
と独唱がついている。確かに、音楽の実質に乏しいように思う。どうせそうなら、当盤
のように、指揮者等はさておいて、かなり優秀なドイツ語圏の合唱団の録音を選択する
のがいいかもしれない。それにしても、それほど聴き手を惹きつける作品でもない。し
かし、演奏に参加したことがある人には好評だ。
○Rilling指揮Bach-Collegium Stuttgart,Gachinger
Kantorei(HANSSLER,98.176)97年
余り話題にならないだろうが、少なくとも合唱を聴くには、なかなか好ましい演奏。
<真夏の夜の夢>
○Harnoncourt指揮ECO, Arnold Schonberg Ch(TELDEC,9031-74882-2)92年
最も人気のあるメンデルスゾーンの一つ。何しろ、他のどの曲が忘れ去られても残りそ
うな「結婚行進曲」がある。この作品の完全全曲盤は少なく、当盤も抜粋盤。「妖精の
歌」と「フィナーレ」に女声合唱がついている。序曲やスケルツォなど、合唱が無い曲
の方がいい曲だ。当盤の合唱団は声が未熟で音程も甘く、余り評価できない。ただ演奏
全体はアーノンクールらしく活気がある。併録はゲーテのバラードによる「最初のワル
プルギスの夜」。これも19世紀の世俗カンタータの傑作として知られる。が、序曲がメ
ンデルスゾーンらしくなく良くないので、なかなか合唱が入ってくる先まで耳がいかな
8。テンポの速い部分はいかにもこの作曲家らしい良さがあるのだが。
「真夏」の録音、カタログを見ていると惹かれるものが結構ある。特に、ヘレヴェッヘ
盤は良さそうだ。日本人なら、小沢指揮吉永さゆり語りのCDもいいだろう。また手許
にはクーベリック指揮の60年代の録音(DG)もあるが、バイエルン放送合唱団の出来
が意外に良くない。ソプラノ独唱のマティスが可憐な声で素敵だ。
<エリア>
「聖パウロ」と共に2大オラトリオとされる。アナログ録音時代にはそれほど録音され
なかったように思うが、ここのところ続々と出てくるようになった。序奏以下、メンデル
スゾーンのイメージとはちょっと違う厳しい楽想が印象的。特に緊張感の高い序奏の後、
合唱が入ってくるあたりはゾクゾクさせられる。長すぎるのが欠点だが、合唱の部分は充
実している。CDだと好きな部分だけ選べるからありがたい。演奏時間は、CD2枚にぎ
りぎり入る、というところ。CD選択にあたっては、英語版とドイツ語版があることに注
意が必要。表題もドイツ語では「Elias」、英語では「Elijah」となる。
○Sawallisch指揮Leipzig Gewandhaus, Leipzig
Radio Ch(PHILIPS,438368-2)68年
ドイツ語版。随分古い録音になったが音もそれほど悪くないし、ソリストもマティス、
シュライアー、アダムらを揃え、合唱団もうまい(声質に好みは分かれるが)ので、今
後も存在価値を主張できるものだと思う。
○Burgos指揮New PO,Ch(EMI,CZS5 68601 2)68年
サヴァリッシュ盤に比べ合唱団の実力が劣り、時に非音楽的な音程のとり方をするのは
困るが、演奏全体の熱気はかなりのもので、期待以上に充実感を与える。こちらもソリ
ストにギネス・ジョーンズやF=ディスカウ(さすがの出来映え)らを揃える。
なお以上の2枚は共に廉価盤で安く買えるのはよいが、共に歌詞がついていないのは大
減点。
<聖パウロ>
こちらも近年CDが増加。平和な楽想が心を和ませる。特に器楽の序奏が涙物で、これ
からどんな美しい音楽がはじまるんだろうと、期待を抱かせる。
○Spering指揮Chorus Musicus Koln(OPUS111,OPS30-135/6)94年
このレーベルに宗教曲を続々録音している団体。あまりうまくないが、透明な響きが長
所。それにしても、もう少し合唱のレヴェルが高い録音を選ぶべきかもしれない。
カタログを眺めていると、2大オラトリオには良さそうな音源が沢山ある。特に、この
2曲のヘレヴェッヘ盤には食指が動くが、2枚組フルプライスにはなかなか手が出ない。
「聖パウロ」には、日本人による演奏、淡野弓子指揮のCDを一部聴いたことがあるが、
実に良い演奏だった。また、最近、「現時点における全曲盤」と銘打った3枚組がアラベ
スクから出たが未聴。
メンデルスゾーンの教会合唱曲の全貌を知りたい人のために、うってつけのディスクが
ある。この他に、シュトゥットガルト室内合唱団による複数枚の録音(CARUS)もある。
○Matt指揮Chamber Choir of Europe(BRILLIANT CLASSICS,99997)2002年
オラトリオを除き、「教会合唱曲全集」と銘打たれたもの。この10枚組なのに5千円で
お釣りがくるアルバムは、演奏水準の高さもあり、超お買い得。きっと聴き手は、いく
つもの宝物を発見できるだろう。
次に、教会合唱曲をある程度まとめて聴けるCDを挙げておく。
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901704)99年
収録曲:Jauchzet dem Herren alle Welt; Mitten wir im Leben sind op.23-3;
Three motets op.69; Three psalms op.78;
Missa breve; Zum Abendsegen;
メンデルスゾーンのCDをたった一枚だけ持つとしても相応しい素晴らしい一枚。無伴
奏合唱曲の美しさに心底浸れる演奏。
○Corboz指揮Gulbenkian O, Ch(ERATO,WPCS5677/78国内盤)77,78,87年
収録曲:詩篇第42,95,115,114,98番; Lass'o
Herr,mich Hulfe finden; Lauda sion
この番号の国内盤は2枚組で2千円、それで訳も付いているお買い得盤。演奏レヴェル
も、今日の耳には少し不満も残る(特にオケ)が、鑑賞水準には達している。最も有名
な「ラウダ・シオン」他、耳を強烈に惹きつける合唱曲が含まれていて、素晴らしい。
2枚続けて聴くと飽きるが、それぞれの曲はどれも演奏する価値がある。
○Best指揮Corydon Singers(Hyperion,CDA66359)89年
収録曲:Ave Maria op.23-2; Ehre sei Gott
in er Hohe; Hear my prayer;
Heilig,heilig; Kyrie eleison; Mitten wir
im Leben sind op.23-3;
Sechs Spruche op.79; Three psalmes op.78;
Verleih uns Frieden;
無伴奏合唱曲を中心とする小規模な合唱曲を集めたもの。こちらも、合唱ならではの美
しい響きに耳を奪われる瞬間のある曲が多い。地味で目立たないが、たまにはこういう
合唱曲を歌ってみるのもいい。なお演奏は、この団体にしては不出来な部類で、時に音
がぶらさがるのが気になる。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CHAN,CHAN10363)2000年
収録曲:Sech Spruche fur das Kirchenjahr op.79; Hear my prayer;
Beati mortui op.115-1; Die deutsche Liturgie; Ave Maria op.23-2;
Jauchet dem Herren,alle Welt;Laudate pueri op.39-2; Magnificat op.69-3;
Drei Psalmen op.78
教会合唱曲だけを集めたアルバム。この合唱団らしい、美しい演奏だが、最上級とまで
の賛辞を贈るほどでもないと感じる。
なお、カタログを見ると、この分野でもヘレヴェッヘが録音を残しているのが注目。
小規模の教会合唱曲で、飛びぬけて愛好(イギリス中心の話だが)されているのは「我
が祈りを聴きたまえHear my prayer」で、非常に歌いがいがあるソプラノ独唱を伴うオル
ガン伴奏付き混声合唱曲。これは今やヒーリングにも使われているし、作曲者には申し訳
ないがポップスに近い感触もあるせいか、CDもやたらある。僕も特に集めていないが、
上記のハイペリオン盤も含めて、随分と集まってきた。ソロがボーイか大人かが選択の大
きな分かれ道。なお、上に述べたMATT指揮の全集盤では大人がソロを歌い、管弦楽伴奏で
かつドイツ語歌唱である(タイトルもHor mein Bitten)。
○Best指揮Corydon Singers(Hyperion,CDA66359)89年
上記CD。ソロは大人。
○Ericson指揮Ericson Chamber Choir(EMI,CDC5
56259 2)90年
ソロはバーバラ・ヘンドリクス。宗教的歌曲を集めた一般愛好家に評価が高いCDのよ
うだが、これらの曲にオペラ的歌唱法を持ち込んでいるので、個人的には好まない。よ
り清潔なソロであってほしい。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(Conifer,74321
16851 2)93年
ソロはボーイの声に近い大人。アレグリのミゼレーレがタイトルの一枚。ソロは不安定
だが全体は良い。個人的愛聴盤。なおこの演奏は何度か言及している「Choral
moods」
(75605 51308 2)というタイトルの2枚組でも出ている。この廉価盤は推薦。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CHAN,CHAN10363)2000年
上記CD。再録音にあたる。こちらのソリストも悪くないが、93年録音盤の方がヒーリ
ング的な雰囲気がよく出ている。
○The Rosebery Chorus(IMP,PCD2021)93年
ソロは特に子供っぽいボーイだが、はかなくてお薦め。超廉価盤。
○Runge指揮Kammarkoren Acappella(FUSION,CD117)94年
ソロは大人。ピアノ伴奏なのが珍しい。好ましくないと思うが。
○Higginbottom指揮NewCollege,Oxford(ERATO,0630-14634-2)96年
ボーイのソロ。英国と日本でバカ売れしたCD「アニュスデイ」に収録。僕には何故そ
んなにウケたのかよくわからないが、こういう少年の声に惹かれる人が多いのだろう。
この曲については、ソロは悪くない。
○Pryce-Jones指揮Halifax Choral Society(NAXOS,8.553876)96年
ソロは公募したボーイ。残念ながら合唱団が素朴過ぎて日本人には不向き。
○Page指揮Choir of Uppnigham School(DECCA,455645-2)97年
イギリスでブレイクしたボーイ、アンソニー・ウェイ君をフィーチャーした一枚。ソロ
の声質は良いが音程の取り方が不満、合唱団も音がぶら下がり気味で、余り良くない。
○Boys air choir(VICTOR,VICP-60517)98年
レイトンの項で触れたように、少し編曲も施した新感覚盤。これも、僕は首の牽引を受
けながら、何度聴いたことだろう。癖になる美は確かにある。
日本のアマチュアにも馴染みが深いのは、世俗的合唱曲かもしれない。何しろ声楽を志
した人ならまず知っている(歌ったことがある)「おおひばり」があるし、合唱曲では、
「緑の森よ」や「三つの民謡」がよく知られている。では世俗的合唱曲のCDを。
○Gronostay指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5075)89年
混声のための合唱曲op.41,48,59,88,100を収録。「緑の森よ」はop.59-3、「三つの民
謡」といわれているのはop.41の第2〜4曲、「おおひばり」はop.48-2になる。これは非
常にハイレヴェルの録音で、とりあえずこれでかなり満足。なお同様の録音でかなり以
前に聴いたことがあるのはライプツィヒ放送合唱団(BERLINCLASSICS)、これも良い。
○Singphoniker(CPO,999091-2)93年
男声合唱曲集でop.50,75,115,120などを収録。ジングフォニカーは各パート一人のアン
サンブルで、いわゆる「合唱団」の演奏ではない。質は非常にいい。
番外とでもしたいところで、メンデルスゾーンの曲で良く知られているものには、賛美
歌「Hark!The herald angels sing」がある。もうクリスマスの定番、CDも山ほど。
なおここで、メンデルスゾーンの姉で、宮廷画家ヴィルヘルム・ヘンゼルと結婚した作
曲家ファニー・メンデルスゾーン(1805-1847)にも触れておきたい。弟と前後して若くし
て亡くなった。女性であるという理由で、せっかくの作品もなかなか出版されない、とい
う目に遭ったようだが、いくつかの作品が残された。そして合唱曲もある。
○Kagelman指揮Heidelberg Madrigal Ch(BAYER,BR100
041CD)88年
3人の女性作曲家、ブーランジェ、クララ・シューマン、そしてファニーの合唱曲と歌
曲を集めた企画物。ファニーの曲は、6つの小曲からなる混声合唱曲「Gartenlieder」
と、混声8部合唱のための「Nachtreigen」を収録。いかにもロマン派の無伴奏合唱曲
らしい、なかなかの佳品だと思う。特に8部合唱の後者は、秘曲としては第一級と言え
るのではなかろうか。演奏の方は、声の練り上げが今一歩で、アンサンブルも雑になる
ことがあるのが残念。クララの合唱曲には、ファニーほどの才能は感じられない。
未聴だが、ファニーの混声合唱曲をまとめたCDが、CPOから出ている。
また、同じレーベルCPOには、少し知名度の高いオラトリオのCDがある。
○Blankenburg指揮Kolner Kurrende(CPO,999009-2)84年ライブ
「聖書の物語によるオラトリオ」。40分ほどの混声合唱とソリストのための作品で、最
近日本初演がなされたので入手してみた。合唱が活躍するが、無伴奏合唱曲ほど優れて
いるとも思えないし、何より当盤は合唱団のレヴェルが低いのが難点。
メシアン(MESSIAEN,Olivier、1908-1992、フランス)
彼ほど20世紀の音楽家たちに影響を与えた人もいないだろう。邦人作品からもメシアン
の響きがずいぶんと聞こえる。
僕が初めて聴いたメシアン作品は確か中学生の頃、合唱付き管弦楽曲「我らが主イエス
・キリストの変容」のマゼールによる来日公演の模様を、ほんの少しテレビで見た経験。
たった数分のことなのに、僕は金縛りにあってしまった。そして高校の音楽室で、小沢指
揮トロント響の「トゥーランガリラ交響曲」のLPを聴いて、僕のメシアン好きは決定的
になった。高校時代、小遣いが月千円程度だったころ、親に唯一甘えて贅沢させてもらっ
たのが、メシアンのピアノ曲「嬰児イエズスに注ぐ20のまなざし」の楽譜を注文してとり
寄せたことだった。大学に入学して上京し、入学祝いを握り締めて僕が最初に音楽関係で
やったことは、渋谷ヤマハで「トゥーランガリラ」のスコアを買ったことだった。
このメシアン体験が、自分の現代音楽の受容をどんなに楽にしてくれたことか。そして
高校の頃夢中になった「トゥーランガリラ」交響曲だが、どうしてあんなに共感したか、
ある書物を読んで膝を打って共感した。それは、この曲が、子供の頃に聴いた映画やテレ
ビの怪獣モノの音楽から受けた感動と共通するものがある、ということ。メシアンの代表
作にこの言い方は失礼なのは承知だが、それでも僕は、「トゥーランガリラ」=「怪獣音
楽」説に共感する。今でも、「トゥーランガリラ」のCDは可能な限り集めている。
話が逸れてしまったが、合唱を伴う作品もいくつかある。まずは大作オペラ「アッシジ
の聖フランチェスコ」から。最近出たケント・ナガノ盤は未聴。
○Ozawa指揮(CYBELIA,CY833/6)83年ライブ
作曲当時から、どうも規模がめちゃ大きいらしいという噂が先行したオペラの世界初演
ライブ。何しろ長く、CD4枚組で4時間近くかかる。日本で演奏された時は作曲者自
身による演奏会用の抜粋版だったようだ。さすがにこれだけ長いと、必聴とは言い難い
ものがあり、メシアンのディープなファン向けになると思う。
続いて、先に述べた僕のメシアン初体験曲「我らが主イエスキリストの変容」。マタイ
福音書、トマス・アクィナス、ミサ典書など、キリストの変容に関する記事をもとにした
合唱と管弦楽のための約90分の大作。ラテン語を歌う合唱は演奏困難。いかにもメシアン
らしい響きが充満している。
○Dorati指揮Washington Royal PO, Westminster
Ch他(DECCA,425616-2)64年
ドラティの残した録音の中でも代表作に数えられているようだが、残念ながら合唱団の
質が低い。もっと鮮烈な合唱でなくては。録音も古くなった。なお当盤の番号の2枚組
は、50分を超えるオルガン独奏曲「主の降誕」(独奏はプレストン)とカップリングで
ミッドプライスなのでお得。この作品の終曲のかっこよさはメシアンでも特筆物。
○Rickenbacher指揮RSO Berlin,NDR Chor,Rundfunkchor
Berlin(KOCH,3-1216-2)96年
上記盤の後に出たデ・レーウ盤も世評は高いとは言えなかったところに登場。新しい録
音の登場は歓迎したい。合唱団も良いところを起用しているが、例えば一番最後の和音
がいまいち決まっていなかったりするのは残念だ。合唱は関係ないが管弦楽版の「われ
死者の復活を待ち望む」とのカップリング。
○Chung指揮Orch.Philharmonieque de Radio France,Choeur de Radio France
(DG,UCCG-1114/5国内盤)2001年
メシアン没後10周年に発売された目玉盤。まずはこれが定盤になろう。合唱団は必ずし
も満足させるものではないけれども。
○Cambreling指揮SWR SO Baden-Baden,EuropaChorAkademie(HANSSLER,CD93.225)2000年
分売もされているが、この番号の盤は、メシアンの管弦楽作品集8枚組。カンブルラン
という指揮者の恐るべき才能を実感できるセットだ。「トゥーランガリラ」1曲だけで
も、比類ない音楽性がわかる。残響の美しいサウンドも魅力。上記のチョン盤と並んで
聴き比べに値する好演の登場は大いに歓迎したい。合唱団も健闘しているが、表現力は
チョン盤の方が上だと思う。
次に、女声合唱とピアノ、オンドマルトノ他の楽器のための「三つの小典礼」。この約
40分ほどの作品は、録音が少ないが、メシアンのファンならば聴いて損は無い佳曲。器楽
部分はピアノを中心にいつものメシアンらしい色彩とリズムがまばゆいし、女声合唱の活
躍度は高い。
○Chung指揮Orchestre Philharmonique de Radio France(DG,UCCG-1422国内盤)2008年
メシアン生誕百年で録音・発売されたアルバム。チョン・ミュンフン指揮の音源が発売
されたのは嬉しいが、Maitrise de Radio Franceには、もう一歩高い精度を求めたい。
カップリングは2曲の管弦楽曲で、「天上の都の色彩」と、「聖体秘蹟への賛歌」。
○Schrofel指揮MadchenChor Hannover(ARSMUSICI,AM1405-2)2003年ライヴ
僕としては最も満足している演奏。「モーツァルトからメシアンまで」というタイトル
でまとめられた、ハノーヴァーの少女合唱団の演奏会ライヴ盤。声質が透明で、ピアノ
やオンドマルトノその他の楽器と親和性の高い、こういったタイプの女声合唱団による
音源は嬉しい。ライヴ録音で、演奏の精度の高さは嬉しいところ。他の収録曲だが、普
通は男声合唱団が頻繁に演奏するシューベルトの「セレナーデ」や、ブラームスの女声
合唱のための名曲「アヴェマリアop.12」に合唱団が参加する。他にモーツァルト「魔
笛」からの一場面や、同じ作曲家によるソプラノソロ、ピアノ、管弦楽のためのレチタ
ティーヴとアリア、そして現代物でノーノの「Canti di Vita e d'Amore」からのソプ
ラノソロのためのアリアが収録されており、それぞれに、手ごたえ十分。
○Edwards指揮London Sinfonietta Chorus(VIRGIN,VBD5
61916 2)90年
2001年にブリテンの無伴奏合唱曲集とバジェットプライス2枚組として再発売された、
貴重な音源。演奏が最善かといわれると疑問もあるが、とりあえず安い。「5つのルシ
ャン」とモテットも聴ける。
○Cardon指揮L'Ensemble de Grenoble(FORLANE,UCD16504/05)83年
合唱も含めてグルノーブルの演奏家による。ルイ・ド・フロマン指揮による「トゥーラ
ンガリラ」のいまいち冴えない演奏とカップリングの2枚組。「小典礼」の方の演奏は
合唱団の声が透明なのが良い。楽器とユニゾンになるところは音程が気になるが。
知名度が高いのは20分ほどの無伴奏混声合唱曲「5つのルシャン」。ルシャンとはルフ
ラン、即ちリフレインの古語。16世紀フランスのル・ジュヌのシャンソンの形式に影響を
受けて作曲された。テキストもリズムを生かすたメシアン自身が考案した造語という、知
的作品。話が逸れるが、そのメシアンが激賞したル・ジュヌのシャンソン集「春」も、こ
ういう話になると当然気になるレパで、全曲のCDも入手できる(ARION)。
「5つのルシャン」は、「トゥーランガリラ」と歌曲「ハラウィ」と共に、「トリスタ
ン三部作」とされている、愛の叙事詩。愛を考えるのにふさわしいレパートリーの一つに
なるだろう。SATB各3人の12人の歌手のための作品だが、もちろん混声合唱団が歌うこと
もできるし、アマチュアなら1パート複数人の方がいいだろう。それにしても歌唱は非常
に困難、これは演奏するのは正に超絶技巧が要求されるが、日本でアマチュア合唱団もや
り始めた。僕自身のこの曲に対する感想だが、確かに音楽的価値は非常に高いのだろう。
しかし、これを声楽で演奏することに、器楽的になりきれないもどかしさを感じる。もち
ろん、人の声だけが持つ演奏効果も大きいが、楽譜を見ながら聴くと、器楽ならもっと音
楽に切れ味をもたせる事が可能なのに、と思わせる。手許の録音を年代順に。
○Couraud指揮Choeurs de L'ORTF(ERATO,WPCS-4284国内盤)68年
国内盤だが対訳は無いし、LPをそのままCD化したもののため、カップリングがクセ
ナキス「夜」とペンデレツキ「スターバト・マーテル」のみで全部で37分ほどしか収録
時間がないのが残念。12人の歌手で演奏。鮮烈な出来で、時期の割りには録音も良い。
○Ericson指揮Stockholm Radio Choir(EMI,CDM7
69817 2)75年
エリクソンの2種ある3枚組のうち「Virtuose
Chormusik」の方。これは多い人数で演
奏していて音が厚い。ソリストも質が高い。
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(DEUTSCHE SCHALLPTALLEN,DS1003-2)88年
知名度の低い隠れ名アルバムで、プーランク「人間の顔」とダニエル=ルシュール作品
を併録。ちょっと安全運転過ぎるか、という印象だが、うまいことは勿論うまい。
○Kuhn指揮Kuhn Mixed Choir(SUPRAFON,SU3384-2
211)89年
この合唱団には荷が重い。エベン、マルチヌー、ノヴァークらの合唱曲が聴ける。
○Edwards指揮London Sinfonietta Voices(VIRGIN,VBD5
61916 2)90年
各パート一人。パワーがある声による合奏としては、かなり良い。上記番号の盤は2001
年に再発売された廉価盤2枚組。
○Christophers指揮The Sixteen(COLLINS,14802)96年
ジョリヴェ「祝婚歌」と上盤と同じダニエル=ルシュール作品を併録。メシアンは12人
の歌手で、それぞれの氏名も記載されている。アンサンブルの精度は高いが、もっと迫
力(気合い)があれば、と思わせる。
○Jorgensen指揮Danish National Radio Chorus(CHANDOS,CHAN9663)96年
これも手堅過ぎる気がするが、12人の歌唱は、まずまずのレヴェルを確保している。メ
シアンの小曲、シュトックハウゼンとクセナキスが聴けるカップリングが嬉しい。
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901834)2003年
12人の歌唱。冒頭から遅すぎる感じがあるが、聴き進めるにつけ、細部にわたり克明に
描く手法に感服させられる瞬間多数。これは面白い。マルタン「ミサ曲」他を収録。
日本のアマチュア合唱団による抜粋盤(2、3番のみ)が手許に一枚ある。
○栗山文昭指揮コーロ・カロス(96年フランス演奏旅行の記録CD)
最初に入っているバードがとんでもなく悪い出来でぎょっとさせられるが、次のグリー
グで取り戻し、件のメシアンで質の高さに驚かされるCD。よくここまでできたもの。
といっても、ソリストは音を伸ばしているうちに弱さが目立つし、テンポも遅すぎる欠
点はある。栗山指揮の三善作品などを聴き慣れた耳には、この濃厚演奏は好ましく受け
とれる(上記の一般発売のCDよりもカロスの方を買うほどに)だろう。
もう1曲、なぜだかヒーリングにも使われて演奏頻度が上がっているように思われるの
が、ごく小さいモテット「O sacrum convivium」。メシアンとしては演奏も容易だが、そ
うは言ってもそんなに楽でもない。クライマックスで発声なり音楽の流れなりが破綻しな
いようにするのは大変だ。手許に複数の録音があるが、テンポのとりかたが様々で、一番
短いものでは3分半、長いと5分以上かける。
○Warland指揮Dale Warland Singers(d'Note,DND1022)89年
「A Rose in Winter」というタイトルの一枚。余り存在を知られていない録音だが、ビ
クトリアとハスラー以外は20世紀の宗教的合唱曲を集め、演奏も分厚い響きで好演。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF176)89年
フォーレのレクィエムやデュリュフレのモテットなどとのカップリング。そのメイン曲
の演奏がお薦めなので、メシアンは嬉しい埋め合わせ。
○Edwards指揮London Sinfonietta Voices(VIRGIN,VBD5
61916 2)90年
5分以上かけた、かなり遅めの演奏。「小典礼」「ルシャン」の余白に入っている。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD124)93年
「Images of Christ」というタイトルの一枚。最後にメシアンが入っている。選曲がバ
ラエティに富んでいる。3分半で終わってしまう演奏。
○Westenburg指揮Musica Sacra(RCA,09026 61822
2)93年
RCAの現代音楽シリーズ、カタリストの一枚。リゲティの「永遠の光」などを収録。
テンポが遅いのが長所にも短所にもなっている。クライマックスで破綻が見えるのが残
念。現代音楽好きなら面白い、無伴奏混声合唱曲のアルバムだ。Mで始まる作曲家では
アメリカのRobert Moranの「Seven Sounds
Unseen」という作品が耳あたりが良い。
○Jackson指揮BBC Symphony Chorus(ASV,CD DCA
900)94年
ダニエル=ルシュール作品集に入っている。大人数を生かしてテンポゆったりめ。特に
推薦できる演奏というわけでもない。
○Jorgensen指揮Danish National Radio Chorus(CHANDOS,CHAN9663)96年
「ルシャン」の項で触れた。遅いテンポで粘る。頂点がもっときれいなら・・・。
○Higginbottom指揮New college,Oxford(DECCA,466870-2)99年
この曲はこういうヒーリング・アルバムに入るくらい、認知度が高まったのだ。
○Spanjaard指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5215)2000年
この合唱団としては、明らかに不調の部類に入る演奏ではないだろうか。
○Walker指揮Cantillation(ABC,465824-2)2001年
5分半近くかけた、かなり遅い演奏。20世紀の無伴奏合唱曲だけの好アルバム。
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901834)2003年
4分54秒をかけた遅めの演奏。まずは合唱団の名前に恥じない演奏。
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