パレストリーナ(PALESTRINA,Giovanni Pierluigi da、c1525-1594、イタリア)

 ポリフォニーの勉強に最適と言われる。確かにそうなのだろうが、それにしてもパレス
トリーナの音楽は調和して響き過ぎる。美し過ぎる音楽である結果、僕は彼の曲を聴いて
いると決まって睡魔に襲われる。ほんとは、この天才を前にそういうことではいけないの
だろうけど(モーツァルトに今いち心から共感しないのと同じですね)。
 もちろん玄人にも素人にも評判は最高で、録音もたくさんでている。そもそも作品数が
多く、ミサ曲も90を越えるらしい。この収集は大変だ。僕は相性が悪いものだから体系
的鑑賞からは程遠い行動をしているが、それでもかなり持っている。まず代表的セット。
○Tallis Scholars(GIMELL,CDGIMB400)
収録曲:Missa Assumpta est Maria; Missa Benedicta es; Missa Brevis;
 Missa Nasce la gioja mia; Missa Nigra sum; Missa Papae Marcelli;
 Missa Sicut lilium inter spinas; 他聖歌など
 このセット4枚組で有名なミサは網羅できるし、ミサの元になった旋律も収録されて参
 考になる。もちろん演奏の質の高さは保証付き。作品としては、やはり世評通り、「マ
 リア被昇天のミサ曲」の美しさは際立っているように思う。

 とにかく美しく響き過ぎるために、BGMとして聴けてしまう一面もある。そんな側面
を結果的に捉えてしまった良い録音がある。
○O'Donnel指揮Westminster Cathedral Choir(HYPERION,CDA66490)91年
 Missa Aeterna Christi munera他。CD店でかかっていて魅せられて買ってしまった。
 申し訳ない言い方だが、ある意味でムードミュージック的!当盤には有名なモテットや
 後述の「ソロモンの雅歌」抜粋なども入っているのが嬉しい。なおこのコンビのパレス
 トリーナは他にもあるが未聴。気にいった人はどんどん聴くとよいだろう。

 他にもミサ曲を含むCDで、いずれも良いものが手許にあるから、挙げておく。
○Tallis Scholars(GIMELL,CDGIM994)94年
収録曲:Alma Redemptoris Mater; Magnificat primi toni; Missa Papae Marcelli;
 Nunc dimittis; Stabat Mater; Surge, illuminare;
○Brown指揮Clare College,Cambridge(EMI,CDZ5 69703 2)96年
収録曲:Assumpta est Maria;Ave Maria;Beata es,virgo Maria;Hodie gloriosa;
 Magnificat septimi toni; Missa Assumpta est Maria; Regina coeli
○Vartoro指揮S.Petronio Di Bologna(NAXOS,8.553314)95年
収録曲:Missa L'homme arme(4v); Missa sine nomine(6v); Peccantem me quotidie;
 Sicut cervus desiderat; Super flumina Babylonis;
○Szabo指揮Cantemus(BRAIN,BRCD0035)
収録曲:Missa sine nomine

 ミサ以外の作品では、まず「ソロモンの雅歌」全29曲。これはパレストリーナの絶頂
期に出版された作品だが、どうも持っているCDが悪いのか、ピンと来ない。この曲集か
らの録音はとても多いので、自分としても聴き比べが必要だ。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD122)

 次に代表作の一つとされる「スタバトマーテル」。手許のCDの中では、上記のタリス
スコラーズの94年ライブが良い。

 最後にすぐおわってしまう曲でパーソナル・チョイスを。モテット「Hodie Christus
natus est」である。キリスト誕生の喜びを歌うこの詞による良い曲はたくさんあるが、
その中の白眉だろう。実に喜ばしい、楽しい作品だ。是非体験したい。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD124)93年
○Keene指揮Voices of Ascension(DELOS,DE3174)94年


パルムグレン(PALMGREN,Selim、1878-1951、フィンランド)

 この人の曲を初めて聴いたのは学生時代、フィンランドの音楽紹介に努めるピアニスト
舘野泉氏が弾く「三つの夜想的情景」という叙情的なピアノ曲。そのどこまでも清澄な響
きに魅せられて以来、この作曲家の名前はずっと気にしている。合唱曲もかなりあるよう
だ。手許のCDは少ないが挙げておく。そのうち、混声合唱曲もまとめて聴けるようにな
るのを期待。以下はごく小曲ばかり。
○Hyokki指揮Helsinki University Ch., Talla(FINLANDIA,3984-21442-2)97年
○Hyokki指揮Helsinki University Ch., Talla(FINLANDIA,3984-21443-2)97,98年
 いずれも男声合唱曲集で、2枚で55曲の小曲が聴ける。演奏は名高いヘルシンキ大学の
 男声合唱団で、持ち前の柔らかさを発揮しているが、めちゃくちゃ上手い、というわけ
 ではない。ただし、そのOBで結成されたヴォーカルアンサンブル、タッラが演奏するト
 ラックについては、テノールが超絶に上手く、必聴。作品はいずれも分かりやすく抒情
 的だが、強烈に心惹かれるものが欲しいところ。2枚とも50分未満なのが寂しい。なお
 本稿執筆時点で第3、4集の録音まで発売されている。
○Andersen指揮Klemetti Institute Chamber Choir(FINLANDIA,3984-25987-2)77年
 フィンランド民謡から現代のグバイドゥリーナまで幅広いレパに及ぶ、クレメッティ室
 内合唱団の名演集2枚組。パルムグレンの無伴奏混声合唱のための小曲を6曲。録音当
 時のこの団体は今ほど上手くないが、暖かい演奏は悪くない。
○Satomaa指揮Candomino Choir(FINLANDIA,FACD918S)87年
 Poplars、Sorrow、The goblinの3曲、いずれも短い混声合唱。感触がひんやり。


パリー(PARRY,Hubert、1848-1918、イギリス)

 イギリスでは人気の高い人。オラトリオ運動で大きな足跡を残したが、現在では特に有
名な2曲の小曲「I was glad」「Jerusalem」がロンドン夏の風物詩プロムスの最終日で
必ず歌われる。従って、プロムスの記録CDなら必ず聴ける。では普通に演奏した盤を。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,74321 16851 2)93年
 アレグリのミゼレーレがメインの一枚。パリーはオルガン伴奏ですっきり。

 肝心のオラトリオも何枚かディスクがあるようだから、興味のある人は聴くことができ
る。手許にはそれ以外で1曲。中規模の合唱曲がある。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF155)87年
 「Song of Farewell」という全6曲約30分の無伴奏混声曲集を収録。この合唱団らしい
 柔らかく美しい歌唱が光る。もっと頻繁に演奏されてもよさそうなのだが。カップリン
 グはスタンフォードの宗教的合唱曲で、そちらも好ましい演奏。


ペルト(PART,Arvo、b1935-、エストニア)

 グレゴリオ聖歌ブームと前後してクラシック界でブレークした作曲家。静謐な音楽が、
ヒーリング・ブームともクロスしてもてはやされた。同業者たちは「なぜこんな単純な音
楽がウケるんだ」と歯ぎしりしているに違いないが、まさに時流にのった人だ。また、無
音の状態を再生するのに適したデジタル録音向けの音楽でもある。
 日本でブームの火付け役になった録音で合唱が入っている一枚から。
○アルボス〜アルヴォ・ペルトの世界(ECM,J32J20224国内盤)87年
 器楽曲に混じって、3つの合唱曲「バビロン河のほとりに座し」「スンマ」「深き淵よ
 り」を収録。演奏は禁欲的な音楽に適するヒリアードアンサンブル。なお当盤に収録の
 「スターバト・マーテル」は、声楽は入るが合唱ではない。

 ヒリアードアンサンブルはその後もペルトのCDを出し、日本における彼の評価を決定
づけた。
○(ECM,837109-2)88年
 ラテン語テキストによる70分ほどの「ヨハネ受難曲」。ヴァイオリン、チェロ、オーボ
 エ、ファゴット、オルガンが加わる。所要時間の割には動きが少ない。感動を持って全
 部を聴きとおせる人は、ペルトと相性が良いと言えそうだ。
○(ECM,847539-2)90年
 35分ほどかかる室内管弦楽付きの「ミゼレーレ」。激烈な部分も少しあるが、たいてい
 は静謐。ごくたまに聴くとハッとする美がある。ヒリアードに加えて20人の合唱団が参
 加。「フェスティナ・レンテ」と声楽が入る「サラは90歳だった」を併録。

 その後、ペルトのCDは雨後の筍のように発売された。もちろん合唱付きの音楽が重要
なジャンルで、たくさんのCDが出ている。最初はどれにも、ある程度の感銘を受けてい
たのだが、僕はだんだん飽きてきた。果たしてこれらの音楽に、汲めども尽くせぬ魅力、
といえるものがあるのかどうか。このあたりは好みが分かれるところだろう。
 そんなわけで、特にペルトのCDを集めているわけでもないのに、例えば合唱の代表作
と言える(僕はあまりいいと思わない)「Magnificat」などは、手許に10種類を超える音
源がある。流行がみてとれるというものだ。
 では多数のペルトのCDの中で、良い物を挙げておく。
○Kaljuste指揮Estonian Philharmonic Chamber Choir(VIRGIN,VC5 45276 2)96年
収録曲:Beatus Petronius; Cantate Domino; De Profundis; Memento;Missa Syllabica;
Seven Magnificat Antiphons; Solfeggio;Statuit ei Dominus
 適度に分厚い響きが深淵を覗き込むようなペルトの音楽に合っている。最近の作品も聴
 ける選曲も良い。「Missa Syllabica」はここでは無伴奏。オルガン伴奏版は次で。
○Hillier指揮Theatre of Voices(HARMONIAMUNDI,HMU907182)96年
収録曲:And one of the Pharisees...; Cantate Domino; De Profundis; Magnificat;
 Missa Syllabica; Seven Magnificat Antiphons; Solfeggio Summa; The Beatitudes
 この演奏団体独特の現代的、都会的な響きにミスマッチ感があるが、まずまずの出来。
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA66960)97年
収録曲:Berliner Messe; De Profundis; Magnificat; 7 Magnificat Antiphons;
Beatitudes
 よく演奏されるオルガン付きの「ベルリン・ミサ」が聴ける。現在、僕が最も好きなコ
 ンビの演奏だが、このように禁欲的な音楽への相性は今一歩と感じた。
○Kaljuste指揮Estonian Philharmonic Chamber Ch他(ECM,ECM1505)93年
収録曲:Berliner Messe; Magnificat; Silouans song; Te Deum
 こちらの「ベルリン・ミサ」は伴奏が管弦楽なのがポイント。当盤には、もう一つ30分
 近くかかる管弦楽付き大曲「テ・デウム」を収録。題材のせいもあって、時にペルトに
 は珍しく明るい展開もあるが、それでもテ・デウムにしては静けさが広がる。カップリ
 ングの「Silouans song」には合唱は入っていない。
○Kaljuste指揮Swedish Radio Choir(BIS,BIS-CD-1157)2000年
収録曲:Dopo la vittoria(1996);Bogoroditse Djevo(1990);I am the true vine(1996)
 シュニトケ「合唱協奏曲」の余白に収録された小曲3つ。録音は2000年だが発売が2004
 年なので、「Dopo la vittoria」は下のレイトン盤が初録音を名乗っている。
○Hillier指揮Estonian Philharmonic Chamber Choir(HARMONIAMUNDI,HMU907311)2002年
 バルト海沿岸諸国の無伴奏混声合唱曲集に10分未満の「…which was the son of…」の
 世界初録音。
○Layton指揮POLYPHONY(HYPERION,CDA67375)2003年
収録曲:Dopo la vittoria(1996)*;Nunc dimittis(2001)*;
 ...which was the Son of ...(2000);I am the true vine(1996);
 Littlemore Tractus(2001)*+;Triodion(1998)*;
 My heart's in the highlands(2000)*+;Salve Regina(2002)*+
 ( )内は作曲年。*は初録音。+はオルガン付き。
 このコンビによるペルト集の2集め。演奏の良さに惹かれるアルバム。「My heart's
 in the highlands」はカウンターテノールとオルガンのための作品で、演奏は、ヒリア
 ード・アンサンブルの、デイヴィッド・ジェームズ。作曲者立会いの録音。
○Pitts指揮Tonus Peregrinus(NAXOS,8.555860)2001年
 ヒリアードアンサンブルが初演した「ヨハネ受難曲」の、女性を含むイギリスの少人数
 アンサンブルによる演奏。オックスフォード・ニュー・カレッジで創設された団体とい
 うことだが、その実力は極めて高い。聴き比べ派にも推薦。
○Chung指揮Coro e Orch dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia(DG,469076-2)
 2000年。シャルパンティエ、モーツァルト、ヴェルディ、ペルトという古今の4人のテ
 デウムを集めたアルバムで、チョンが振っているのが注目される。それなりの演奏では
 あるが、物足りなさも残る。何より合唱団の実力の問題があって、合唱人に大いに推薦
 できる演奏とはなっていない。ペルト作品に17ものトラックを付しているのは長所。
○Walker指揮Cantillation(ABC,465824-2)2001年
 ペルトは1997年の無伴奏混声合唱曲「The Woman with the Alabaster Box」のみ。
○ピアノ:Grimaud、Salonen指揮Swedish RSO & Choir(DG,471769-2)2003年ライブ
 ピアノ、混声合唱と管弦楽のための「クレド」(1968)。バッハの平均律などを平和に引
 用と思いきや、中間で激烈になる。後の有名になってからのペルトとは作風が異なる。
 フランスの女性ピアニスト、グリモーのDG移籍第一弾として発売されたもの。スウェー
 デン放送合唱団は、カップリングのベートーヴェン「合唱幻想曲」でも活躍。

 この他、「カノン・ポカヤネン」という長大な合唱曲の2枚組や、「Litany」を収録し
たECM盤など、何しろ量が多いものだから、未聴CDは沢山ある。
 手許には、その他にもペルトを数曲ずつ収録したCDがある。同様に現在流行している
作曲家、グレツキ、タヴナーらの音楽とのカップリングのケースが多い。特筆すべき演奏
の出来というのもないので省略。
 なお、日本の合唱団で積極的なのは豊中混声合唱団で、定演記録CDで聴ける。


パターソン(PATTERSON,Paul、b1947-、イギリス)

 彼の合唱曲でCD化してほしいのは、何といってもキングズシンガーズが見事に演奏す
る「タイム・ピース」。しかし現在は無いからCD化希望という状態。その他の合唱作品
では「海のミサ曲」が優れた作品だと聞いたことがあるので入手してみた。
○Simon指揮Royal PO, Brighton Fetival Ch(RPO,CDROI5008)86年
 単純にミサ通常文によるのではなく、別のテキストと組み合わせる。例えばグローリア
 は天地創世の神話、クレドが無いかわりにノアの洪水の描写、アニュスデイには水上を
 歩くキリストの話を盛り込んでいる。音楽の外面的効果は大きく、ブラスや打楽器の活
 躍もあって、聴きやすい現代音楽になっていることは確かなので、好む人もいそうだ。
 僕自身は、一回聴けばそれでいいという感想。グローリア後半の盛り上がりなどは結構
 いける。カップリングは弦楽合奏のためのシンフォニア。


ポーラス(PAULUS,Stephen、b1949-、アメリカ)

 特にこれという存在でもないと思うが、クリスマス周辺の仕事が目立つ。アメリカの好
合唱団のCDを紹介してたいので。
○Carols for Christmas/Warland指揮Dale Warland Singers(D'Note,DND1015)
 編曲及び自作のクリスマスキャロルを16曲、約45分収録したもの。何度かとりあげ
 ているこの合唱団は、アメリカの団体としては優秀で、なかなか楽しませてくれる。編
 曲には「?」というのもあるが、ハープやギターで伴奏させるものは面白い。人数が比
 較的多い合唱団でクリスマスキャロルを歌いたいなら、参考になるものだと思う。


ピアソール(PEARSALL,Robert、1795-1856、イギリス)

 19世紀にマドリガルを残した。その中で、「Lay a garland」というゆったりした8声
のマドリガルは、短い中にもドラマがあり(she diedという言葉に静かなクライマックス
がくる)、着目する価値がある作品だと思う。オックスフォードのスコラカントルムの来
日公演で、ショッキングなくらいの感銘を受けた記憶がある。ではそのCDを挙げる。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD119)92年
 「A CAPPELLA」というタイトル。まずまずだが、この合唱団にしてはいまいち。
○Summerly指揮Oxford Camerata(NAXOS,8.553088)94年
 中世から民謡までのイギリス合唱曲のアンソロジー。コストパフォーマンスが高い。
○Kay指揮The Cheltenham Bach Choir(SOMM,SOMMCD207)96年
 ラターの「Birthday Madrigals」全曲が楽しめるCD。ピアソール作品ではもう1曲、
 「Who Shall Have my Lady Fair?」も収録。演奏は良くないが。
○TALLA(FINLANDIA,WPCS-6509国内盤)98年
 フィンランドの超絶男声アンサンブルのアルバム。
○musica intima(ATMA,ACD2 2227)99年
 カナダの新感覚の合唱団のヒーリング色の濃い演奏。僕の好みにはぴったり。

 手許にもう一つ、ピアソールを聴けるCD。
○Hilliard Ensemble(HARMONIAMUNDI,HMA1901153)85年
 いわゆるグリーやキャッチと分類されるジャンル。ピアソールは以下の2曲。
 「O who will o'er the downs so free」「There is a paradise on earth」


ペンデレツキ(PENDERECKI,Krzysztof、b1933-、ポーランド)

 三善や一柳と同じ生年。トーンクラスターの技法を駆使したことで有名なこの作曲家を
初めて聴いたのは確か中学生の頃、ネオ・ロマン主義などと呼ばれた風潮にのった「バイ
オリン協奏曲」だった。それが大変印象的だったので、以来気になる作曲家である。ポー
ランド人はに敬虔なカトリック信者が多く、ペンデレツキも宗教的題材による合唱曲が多
い。日本のコンクールでも耳にする。どうしても激烈な音楽になりがちで、演奏の精度の
高さよりも気合のようなものが前面に出てしまうが、現在入手できるCDは複数あって、
好みで選択できるようになっている。

 まず、初期作品で代表作といえる「ルカ受難曲」を収録したCDから。
○Czyz指揮Cracow PO,Ch(muza,PNCD017A)66年
 この受難曲は、精神的にはバッハの伝統を受けついている。しかし作曲技法はクラスタ
 ーはもちろん、合唱をシュプレヒコール風に扱うなど現代の手法によっている。当盤は
 合唱団が優秀で演奏もすぐれていることもあって、ペンデレツキ作品の傾向を知りたい
 人には推薦できる。なお当盤は2枚組で、「ルカ受難曲」は90分近くかかるが、カップ
 リングにペンデレツキの代名詞的管弦楽曲「ヒロシマの犠牲によせる哀歌」が収録され
 ているのが嬉しい。また、合唱付きでは最初期の「ダヴィデ詩篇」、及び40声混声合唱
 と打楽器と弦楽のための「時と静寂の次元」が入っている。この後者は前衛度が高いの
 で、苦手な人は気持ち悪くならないように。なお「ルカ受難曲」には作曲者指揮盤もあ
 る(ARGO)。

 もう一組、管弦楽付き合唱曲が廉価で聴ける盤に触れておく。
○作曲者指揮Polish Radio Symphony Orchestra of Krakow,
 Polish Radio Chorus of Krakow他(EMI,CZS5 74852 2)75,83年録音
 EMIの2枚組廉価盤シリーズ「ダブル・フォルテ」の一組。74年初演のテデウムと80
 年初演のマニフィカート、2つの管弦楽付き合唱曲の全曲が収録されている。この題材
 なら、普通は喜ばしい内容になる筈だが、そこは、ネオ・ロマン主義と呼ばれた頃のペ
 ンデレツキ。時に調性が顔を覗かせるほどに、一時期の激烈な作風は影をひそめた、彼
 にしてはわかりやすい音楽ではあるが、十分に「気持ち悪い」感じ。きっと、一般的な
 音楽愛好家から最も嫌われるのは、こういうタイプの現代音楽ではなかろうか。演奏の
 出来栄えは、とても良いのではないかと思う。特に合唱団の優秀さは称賛に値する。収
 録曲がもう一つ、大曲「ポーランド・レクィエム」に含まれる「ラクリモーザ」も聴け
 る。その他のカップリングは合唱が関係ない曲で、珍しい「Kanon」はともかく。ペン
 デレツキの代表作とされる交響曲第2番「クリスマス」を聴くことができる。この題名
 なら、きっと心温まるクリスマスサウンドが・・・と想像されるかもしれないが、そう
 ではない。何がクリスマスなんだかさっぱりわからないという人が多いだろう。

 その他、手許にある録音に触れておく。
○Kuivanen指揮Tapiola Chamber Choir(FINLANDIA,4509-98999-2)93年
収録曲:Agnus Dei; Benedicamus Domino; Benedictus; In pulverem mortis;
 Miserere; Sicut locutus est; Song of Cherubim; Stabat Mater; Veni Creator
 フィンランドのタピオラ室内合唱団がペンデレツキの無伴奏宗教作品だけをとりあげた
 一枚。これは実に澄み切っていて、不協和音でも音楽が混濁することがないのが長所。
 北欧好みの人には是非推薦したい一枚。一方、こんなすっきりしたのはペンデレツキで
 はない、と感じる向きもあるだろう。
○Kaljuste指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5207)2001年
収録曲:Agnus Dei; Benedicamus Domino; Benedictus; De Profundis;
 In pulverem mortis; Miserere; Song of Cherubim; Stabat Mater; Veni Creator
 こちらも無伴奏宗教作品のみの一枚で、オランダ室内合唱団24人による歌唱。タピオラ
 盤とは違う意味で、磨きぬかれた透明感がある。そのクォリティの高さには脱帽。スタ
 ンダードとして長く語り継がれるべき演奏。
○作曲者指揮ワルシャワ国立フィル合唱団(FREQUENZ,061-001)89年
収録曲:Agnus Dei; Psalm of David; Sicut locutus est; Song of Cherubim;
 Veni Creator; ルカ受難曲より4曲
 ペンデレツキ作品には作曲者自作自演盤が多く、その一枚。

 アニュスデイやスタバトマーテルは、割と好んで演奏・録音されている。後者にはエリ
クソン指揮ストックホルム放送合唱団の録音もある(EMI)。その他、確かキングズシンガ
ーズも演奏していたキリスト教によらない男声合唱曲「Ecloga8」は、タッラ・ヴォーカ
ルアンサンブル(FINLANDIA,0630-17694-2)の録音が国内盤もあり入手容易。
 合唱付きの大作は他にもあって、たとえば「ポリッシュ・レクィエム」は作曲者指揮盤
などが入手できる。また21世紀に入ってもCDの発売が相次いでいるので、好きな人は、
どんどん買いすすめればよいと思う。


ペロタン(PEROTIN、12-3世紀、フランス)

 現代の我々が合唱をやる上で、直接とりあげることはないにせよ、教養として知ってお
いて損はない音楽として最古のものは、レオナンやこのペロタン(ペロティヌス)あたり
のオルガヌムかもしれない。それまでの単旋律の音楽が多声になったというわけで、音楽
史の本にはいろんなことが書いてあるが、オルガヌムを知るには耳から入るが一番、とい
うわけで、代表盤としてこれを聴いてみよう。
○Hilliard Ensemble(ECM,ECM1385)88年
 ペロタンの代表作で4声のオルガヌム「Viderunt omnes」や「Sederunt principes」な
 ど、一枚これペロタン(と作者不詳の数曲)。まずは冒頭の「Viderunt〜」だけでも、
 どんな音楽かわかるのだが、意外なほど現代の耳に新鮮、独特の恍惚感がたまらない。
 ヒリアードの演奏は、冒頭が幽玄過ぎるくらいだが、徐々に盛り上げていく。

 もっと元気の良い演奏を耳にすることもあるし、たまには自分たちで歌ってみるのも気
持ち良いかもしれない。ペロタンはパリのあのノートルダム大聖堂で活躍したということ
だが、この音楽がどんな風に鳴り響いたのか、想像するのも楽しい。

 同種のディスクは色々と発売されている。注目の演奏家によるアルバムを。
○Vellard指揮Ensemble Gilles Binchois(ambroisie,AMB9947)2003年
 タイトルは「ペロタンとノートルダム楽派」ということで、ペロタンの「Sederunt」な
 どに加え、作曲者不明の初期のモテットやコンドゥクトゥスを収録。歌手に女性3人が
 加わっていることもあって、実に美しい仕上がりになっている。国内盤仕様で、日本語
 解説が付いている。

 さて、せっかくだから、ペロタンのもう少し後の時代、フランスのアルスノヴァと呼ば
れた音楽を代表する作曲家フィリップ・ド・ヴィトリ(PHILIPPE DE VITRI,1291-1361)に
触れておきたい。初期のモテット(といっても内容は世俗的)を知るのに、この一枚を。
○Sequentia(DHM,77095-2-RC)88年
 ド・ヴィトリのモテットとシャンソン集。14世紀のパリで流れた音楽に思いを馳せるの
 も楽しい。

 この後、マショーが登場することになる。


パーシケッティ(PERSICHETTI,Vincent、1915-1987、アメリカ)

 器楽曲に比べると合唱曲の重要度は低いように思われるが、日本の合唱団のプログラム
にのっているのを見たあるので、手許のCDを挙げておく。
○Brooks指揮Mendelssohn Club(NEWWORLD,80316-2)83年
収録曲:LOVE for women's chorus; Mass for mixed chorus; Winter cantata
 「Winter cantata」は女声合唱にフルートとマリンバ付き。ミサ曲は無伴奏。「Love」
 は聖書からテキストをとった無伴奏女声合唱曲。現代アメリカの合唱曲は、このように
 どうも捉えどころのない音楽が多い。しかも当盤の合唱団はビブラート過多で困る。


ペテルセン(PETERSEN,Wilhelm、1890-1957、ドイツ)

 アテネ生まれでドイツで活躍。彼については全く知識が無いが、名指揮者ブルーノ・ワ
ルターが評価したそうだ。「大ミサ曲」が良いという噂を耳にしたので入手してみた。

○Breitschaft指揮Meinz Cathedral Orch, Ch(WERGO,WER6213-2)90年
 4人のソリストと管弦楽、合唱、オルガンという、普通の編成の作品で、演奏時間は約
 70分。テキストも全く普通のミサ通常文。作曲時期を考えると驚くほど保守的。要する
 にごく普通の、ドイツロマン派の延長上にあるミサ曲である。特に挙げるほどの佳曲と
 言うほどのこともない。普通の調性音楽が好きな、ドイツ音楽マニア向け。


ペテルソン=ベリエル(PETERSON-BERGER,Wilhelm、1867-1942、スウェーデン)

 ワグネリアンで、国民楽派と分類されるであろう彼には、初期に叙情的な合唱作品があ
り、その手の作品好きには見逃せない。無伴奏合唱曲をまとめて聴ける好盤がある。

○Eby指揮Mikaeli Chamber Choir(BLUEBELL,ABCD030)89年
 19世紀末、作曲者が20歳代に書いた無伴奏混声合唱のための歌曲を28曲集めたもので、
 特に注目は「8つの歌op.11」。憂いに満ちた第1曲「Stemning(英語訳Mood)」を聴け
 ばハマる人はたくさんいる筈だ。北欧の抒情的合唱曲を集めたプログラムを組むなら是
 非考慮に入れたい。その他にも、自分がスウェーデン人ならレパにしたい曲ばかり。例
 えば新実徳英氏が時折書くわかりやすい抒情的作品に感触が類似しており、ワグネリア
 ンらしい雰囲気は皆無。なお当盤の欠点は、録音年代の割りに音が良くないこと。音に
 拡がりが無いし、きめが粗く聞こえる。合唱団の方も、いつもよりテノールの声質が耳
 障りだったりする。

 上記盤は入手しにくいので、入手容易なものも挙げる。
○Stenlund指揮Malmo Chamber Choir(BIS,BIS-CD-181)79年
 「8つの歌op.11」を収録。当盤は、カップリングの他の作曲家の曲も良いのでお薦め
 だが、アナログとはいえ録音がBISにしては平凡。

 既に述べた「8つの歌」の第1曲は佳曲だけに、以下のCDでも聴ける。
○Parkman指揮Danish National Radio Choir(CHANDOS,CHAN9464)95年
○Woebcken指揮Madrigal Choir Kiel(ambitus,amb97926)95年
 いずれも北欧の合唱曲を集めたものだが、そういう趣向のアルバムなら必ず入れたくな
 る佳曲なのだ。

 いくつか落ち穂拾い。
○Parkman指揮Uppsala Univ. Chamber Ch(CHANDOS,CHAN9543)96年
 オペラからの抜粋らしいピアノ伴奏付きの「Danslek」と、歌曲を無伴奏混声合唱に編
 曲した「Som stjarnorna pa himmelen」。
○Singer Pur(ARSMUSICI,AM1208-2)97年
 スウェーデン人のソプラノと5人のドイツ人男声によるグループ、ジンガーピュアによ
 る、北欧合唱曲を集めたアルバム。ピアノ曲を合唱に編曲した「Till resornaバラの花
 に寄す」が入っている。ちょっとジャンル違いのリアル・グループもそうだが、スウェ
 ーデンの女声のリードヴォーカルは何て素晴らしいのだろう。なお当盤で他にPで始ま
 る作曲家では、30歳代前半で亡くなったParkmanという人の、シェークスピアをテキス
 トにしたなかなか面白い曲を収録。


ペトラッシ(PETRASSI,Goffredo、1904-2003、イタリア)

 あまり目立たないようでいて実は、管弦楽付き合唱作品が重要な作曲家ということだ。
CDもかなり出ているが、僕は今のところ未聴、開拓する価値はありそうだ。てもとには
短い無伴奏の佳曲「ノンセンス」の録音が2種。7分ほどの現代的手法に満ちた作品で、
ユーモラスな描写を試みている。
○Ericson指揮Stockholm Chamber Choir(EMI,CDM7 69818 2)71年
 貫禄の好演。ただ、もっと少ない人数による演奏も聴いてみたい曲だ。
○Groba指揮Coro de la Comunidad de Madrid(TVRE,65057)95年
 余り録音が無い、現代曲も歌うスペインの合唱団。さすがに上記盤には及ばない。


プフィッツナー(PFITZNER,Hans、1869-1949、ドイツ)

 いわゆる後期ロマン派の音楽で、マジメな音楽を沢山残したらしい。「らしい」という
のは、僕は歌曲を除いては殆ど聴いたことがないからだ。彼の音楽には「エッチ度が不足
している」という知り合いもいる。そこで以下の合唱曲CDを聴いてみたが、確かにこれ
は楽しめる類の音楽ではなく、重厚、実直、マジメなことはよくわかる。やはり音楽はド
イツでなくては、と考える人なら聴いて損はない作曲家かもしれない。
 最近、歌曲をドイツのCPOレーベルがまとめて出しているので聴いてみたのだが、一
曲一曲ずっしりとした手応えがある。なるほど、もう少し開拓する余地がありそうだ。

○Jochum指揮BRSO,Ch(ORFEO,C273 922 1)52,55年ライブ
収録曲:Das dunkle Reich op.38; Urworte Orphisch op.57;Von deutscher Seele op.28
 オルフェオ・レーベルがシリーズで出しているライブ録音の一つで、当盤はモノラルの
 当盤はモノラル録音の2枚組。3つの管弦楽付き合唱作品を収録。最初の作品は、妻に
 捧げるレクィエムの意味合いがある。「ドイツ精神について」が長い力作。聴き通すの
 は結構大変だ。合唱が無く管弦楽だけの部分に見るべきものがあるように思う。同曲の
 新しい録音ではホルライザー盤(KOCH SCHWANN)を見たことがある。

 声楽作品では、オペラ「パレストリーナ」が重要な作品とされていて、世評高いクーベ
リック盤(DG)や、地味なスウィトナー盤(BERLIN CLASSICS)がある(未聴)。


ピアソラ(PIAZZOLLA,Astor、1921-1992、アルゼンチン)

 世間はピアソラ・ブームまっさかり。十分流行していたところに、チェロのヨー・ヨー
・マが登場するCMもあったりで、一般の認識度も上がったこと。とあらば、合唱曲も探
したくなるのが人情というもの。編曲物が聴けるCDを。
○Sund指揮World Youth Choir(BRAIN,JVMC0001/2国内盤)
 WYCの名演集2枚組。大人数で生真面目に「天使の死」をやるとこうなります。
○SWINGLE SINGERS(PRIMARILY A CAPPELLA)2003年
 スウィングル編曲の「天使のミロンガ」。このアルバムは、ラテンやスタンダード、リ
 チャード・ロジャーズの作品などを集めたもの。
○向井正雄指揮ヴォーカルアンサンブルEST(GIOVANNI,GVCS30601)2005年ライヴ
 「Buenos Aires Hora Cero午前0時のブエノスアイレス」と「Calambreしびれ」。なか
 なか、かっこよくやれている。

 きっとこれから、合唱でピアソラを、という団体も増えてくるだろう。それにしても、
この爆発的人気は何なのだろう。どうせなら、存命中のブレイクなら良かったのに。


ピエルネ(PIERNE,Gabriel、1863-1937、フランス)

 ごく小さい管弦楽曲「小牧神の入場」くらいしか大衆的人気が無い。僕も殆ど聴いたこ
とがないが、いくつかのピアノ曲、室内楽から、もしかしたら発掘する価値があるのでは
ないかと思わせるものがある。以下の合唱付きの神秘劇「ベツレヘムの子供たち」も、見
逃すのは惜しい。
○Rosel指揮Maitrise de Radio France他(ERATO,3984-24239-2)87年ライブ
 オペラと分類してもよいかもしれない約1時間の作品。ソリスト数人と語り手、児童合
 唱が入る。これはメロディーラインも耳を引くし、いかにもフランスっぽい響きも楽し
 めるし、キリスト誕生の神秘を見つめる子供たちの眼差しを伝える、なかなかの佳曲だ
 と思う。ピエルネには他にもこのジャンルの作品があるそうなので、もしかしたらもっ
 といい曲があるのかもしれない。なお、この番号の輸入盤は2枚組の廉価盤で、ピエル
 ネの室内楽とカップリング。安いのは嬉しいが対訳が全く無い。


ピンカム(PINKHAM,Daniel、b1923-、アメリカ)

 この現代アメリカの作曲家の合唱曲も、日本の合唱団のプログラムに上がるのを見たこ
とがある。比較的新しいCDが手許に一枚。

○Teeters指揮Boston cecilia他(KOCH,3-7180-2H1)92年
収録曲:Advent cantata; Christmas cantata; Wedding cantata
 3つの小カンタータが、室内楽に混じって収録されている。「クリスマス」はガブリエ
 リを意識して、ブラスの伴奏が付く。終曲の動きなどは面白い。演奏は、まずまとも。


ピツェッティ(PIZZETTI,Ildebrando、1880-1968、イタリア)

 作品数は少ないし、録音も多くなかったが、最近ようやくCDが増えてきて、隠れ名曲
のバイオリンソナタや、ピアノ曲なども聴けるようになってきた。合唱の分野でも大切な
作曲家。
 主要作では、「レクィエム」「三つの合唱曲」「二つの合唱曲」、以上の3つというこ
とになるだろう。それらをまとめたCDなら、デンマーク国立放送合唱団盤(CHANDOS)が
ある(未聴)。

 特にお薦めの曲はやはり「レクィエム」。無伴奏混声のこのジャンルの曲は少ないし、
この佳曲の存在はありがたい。特に有名な聖歌を引用した「怒りの日」は魅力がある。
○Eby指揮Mikaeli Chamber Choir(PROPRIUS,PRCD9965)84年
 マルタンのミサでとりあげたもの。こちらの曲も演奏・録音共に良く、名盤だと思う。
○Poole指揮Group Vocal de France(EMI,72435 55150 2)94年
 この団体の録音は常に良いというわけではないが、ラフマニノフなどを収めた当盤は全
 体に出来が良い。この曲を愛する人なら聴いて損はない。
○O'Donnell指揮Westminster Cathedral(HYPERION,CDA67017)97年
 これもマルタンのミサとのカップリングだが、ピツェッティでもう1曲、録音が珍しい
 「De profundis」が入っている
○Toll指揮Camerata Vocale Freiburg(ARSMUSICI,AM1265-2)99年
 このドイツの合唱団の響きは、ちょっぴりスウェーデン的で一聴の価値がある。聴き比
 べに好適。ハウエルズとプッチーニ(超小曲)のレクィエムとの組み合わせ。
○Johnson指揮Conspirare Company of Voices(CLARION,CLR917)2005年
 アメリカのプロ合唱団によるSACD2枚組。実力が高い団体で、とても美しいが、起伏に
 欠ける気もする。ハウエルズのレクィエムやホイッティカーの小品などを収録。

 その他、手許の音源。
○Ericson指揮Stockholm Chamber Choir(EMI,CMS5 65348 2)75年
○同(EMI,CDM7 69818 2)75年
 前者に「三つの合唱曲」、後者に「二つの合唱曲」を収録。同じ盤ならいいのに。
○Mansson指揮Lunds Vokalensemble(LUNDS VOKALENSEMBLE,LVE-2)99年
 「三つの合唱曲」のみ。アルバムは「Recordare,Domine」と、第3曲の題名をタイトル
 にしている。カップリングのマルタンの「ミサ曲」の遅さが聴き物。
○Sund指揮Orphei Drangar(BIS,BIS-CD-733)96年
 「歌うサル」という合唱曲をメインにした一枚に、ピツェッティの珍しい男声合唱のた
 めの小品「Per un morto」が入っている。
○Caetani指揮Robert-Schumann-Phil.(MARCOPOLO,8.225058)97年
 映画音楽として作曲された「炎の交響曲」という短い曲に合唱が入るのだが、ほぇ?こ
 んな曲も書いてるの、ピツェッティって!と驚かされる、うるさいながら逸品。当盤の
 メインはピアノ協奏曲。

 この他、カラヤンのライブ録音でオペラ「大聖堂の殺人」を聴いてみたことがあるが、
音質が貧弱なだけでなく、曲の方もわけがわからなかった。どうも謎の作曲家である。


プーランク(POULENC,Francis、1899-1963、フランス)

 あらゆる分野にわたって作品を残し、いずれも独特の魅力で好まれているが、合唱曲も
大切だ。彼の作風を形容する言葉には「軽妙、洒脱」という決まり文句がある。それは、
管弦楽曲や室内楽、ピアノ曲、あるいは歌曲にあてはまる。合唱曲においては、熱心なカ
トリック信者としての側面が表れるので、他ジャンルと少し違う顔を楽しめる。
 よく言われることだが、プーランクにとって幸運だったのは、身近にエリュアール、ア
ポリネールといった卓越した詩人がいたことで、啓発されるものは大きかったようだ。僕
はパリで、音楽家の墓巡りという、だからどーしたという散歩をしたことがある。パリ市
内のペール・ラシェーズ墓地には芸術家の墓が多く集まっているが、プーランクの墓を訪
れた際には、忘れずにエリュアールとアポリネールのも探した。ならばフランス語にはこ
だわる必要があり、フランス語ネイティヴの歌手にこだわって録音を探す必要もあろう。

 僕が初めてプーランクの合唱曲に触れたのは大学の合唱団に入った時。本格的に触れる
ようになったのは就職してから。まことに、もっと早く親しんでおくべきだった。
 色々と実演も聴いたが、プーランクに関しては忘れられない思い出がある。それは、ケ
ンブリッジのキングズカレッジで、その名高い聖歌隊が歌う「クリスマス・モテット」。
自分の中で、あの演奏を超えるプーランクを想像することは出来ない。一生にそう何度も
立ち会うことはできない体験だった。

 1999年の生誕百周年の機会に、EMIから全集CD全4巻が出た。国内盤は輸入盤と価
格差が小さかったし、解説や、声楽曲では全て対訳付きで、これは嬉しい。プーランクを
好きになれそうな人には自信を持って薦められる全集だ(とはいえ各巻ともCD5枚ほど
になるので、安くはないし、合唱にしか興味が無い人にも演奏の質などの理由から薦めら
れない)。合唱が入る作品は、第2〜4巻にまたがっている。ではその全集の収録曲順に
あわせて、曲毎に録音を挙げていく。そして規模の小さい無伴奏合唱曲については後で、
アルバム毎に収録曲を整理したい。各曲の覧でコメントを省略している盤については、ア
ルバム毎で整理した覧をご参照いただきたい。

<バレエLes Biches牝鹿>(1923年)
○Pretre指揮Philharmonia O, Ambrosian Singers(全集第2巻)80年
 当時のサロンの雰囲気を音楽化したバレエ音楽。20分程度の5曲から成る組曲版で演奏
 されることが多いが、ここではオリジナルの全9曲。しかも当盤では混声合唱が入って
 いる(演奏はアンブロジアン・シンガーズ)。たまに聴くと実に爽快。

<Litanies a la Vierge noire黒衣の聖母への連祷>(1936年)
 プーランクが敬虔な合唱作品を書く端緒になった作品で、結局プーランクは、これを超
えられなかったと言われるくらい、重要な作品。神秘的な雰囲気が楽しめる。女声合唱の
ための作品として貴重なレパで、演奏時間は10分弱。オリジナルのオルガン伴奏版と、作
曲者自身による弦楽+ティンパニ伴奏版がある。
○Jouineau指揮Maitrise d'enfants de la Radiodiffusion(全集第2巻)57年
 オルガン伴奏版。雰囲気は悪くないが、演奏レヴェルは一昔前。
○Baudo指揮Choeurs et Orchestre National de Lyon(HARMONIAMUNDI,HMC905149)84年
 弦楽+ティンパニ伴奏版。カップリングの「スターバト・マーテル」がお薦め。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD108)88年
 弦楽+ティンパニ伴奏版。グローリアや無伴奏合唱曲とのカップリング。
○Piquemal指揮Choeur Regional Vittoria d'Ile-de-France他(NAXOS,8.553176)92年
 オルガン伴奏版。エリック・ルブランの弾くオルガンと、素直な声質の女声が織り成す
 響きは、悪くない。カップリングは「スターバト・マーテル」と「グローリア」。
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
 オルガン伴奏版。指揮のエキルベイは、アーノルト・シェーンベルク合唱団に参加した
 後、エリクソンに師事した女性合唱指揮者。録音はどれも高水準で、注目株。
○Toll指揮Camerata vocale Freiburg(AMBITUS,amb97805)97年?
 オルガン伴奏版。当盤のメインはマルタンの「ミサ曲」。
○Dijkstra指揮Chor des Bayerischen Rundfunks(BR KLASSIK,403571900500)2008年
 オルガン伴奏版。SACDハイブリッド盤。カップリングはマルタン「ミサ曲」とコダーイ
 「ミサ・ブレヴィス」。

<Messe en sol majeurミサ曲>(1937年)
 クレドの無い約20分の無伴奏混声のミサ曲。サンクトゥスのカリヨンのような楽想や、
アニュスデイの浮遊するソプラノソロなどが特に聴き物。やはりこれを一度は歌ってみた
いのだが、技術的困難のため、なかなかとりあげにくい。卓越したソプラノソロも必要。
なお後述するが、オペラ「カルメル会修道女の対話」との関係にも注意。
○Neary指揮Winchester Cathedral(全集第2巻)87年
 悪い演奏でもないが、以下に挙げる名演たちには敵わない。可憐なボーイソロは良い。
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIA MUNDI,HMC901588)95年
 手許の音源ではこれが最高。やはりこの合唱団は、やってくれる。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
 ハーモニーの座りの良さでは上記盤に一歩譲るが、当盤の利点は、ソプラノが高音の苦
 しさを感じさせないこと。サンクトゥスのオザンナは、これ以上の演奏は考えられない
 し、アニュスデイにもこの団体の美質が生きている。
○Cole指揮Regent Chamber Choir(REGENT,REGCD101)88年
 この演奏家たちによるコダーイが非常に良かったので捜し求めていた一枚、ようやく中
 古店で見つけたが、大したことなかった。
○Christophers指揮The Sixteen(VIRGIN,VC7 59311 2)91年
 声が豊かな歌手たちがバリバリ声を出してまとまらない。
○Mansson指揮Hagerstens Motet Choir(SWEDISH SOCIETY,SCD1054)93年
 ソプラノの細さが気にならないこともないが、自然な合唱の響きが美しい合唱団による
 演奏。ただしアンサンブルが最上級ということでもない。終曲のソロが、僕はあまり好
 きじゃないタイプなのに、濃厚さに不思議な魅力があるあたりは聴きものだ。
○Eby指揮Mikaeli Chamber Choir(PROPRIUS,PRCD9126)94年
 ソプラノ・ソロに許容できるビブラートがあって、耳を引き寄せる。ヴォーン・ウィリ
 アムズとヒンデミットのミサ曲と組み合わせで、この合唱団に興味がある人に推薦。優
 秀録音だと思う。
○Kuhn指揮Prague Philharmonic Choir(SUPRAPHONSU0011-2231)95年
 アニュスデイというタイトルで、国内盤にもなった。スラヴィツキとノヴァーク作品が
 聴けるのが利点の盤で、プーランクの演奏はちょっと苦しい。
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
 かなりの好演だが、もう一段ビブラートを抑えてくれれば・・・。
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5185)98年
 何しろ指揮がエリクソンで合唱団がここだから、誰もがひれ伏すような演奏が登場する
 のではと期待したが、確かに名演だけども一番とも言えない。特にこの曲は問題多し。
○Hogset指揮Grex Vocalis(SIMAX,PSC1151)98,99年
 日本でも御馴染みのホグセット率いる合唱団。上手いかと言われるとそれほどでもない
 のだが、倍音の鳴りがすごい。
○Windekilde指揮Hymnia(CLASSICO,CLASSCD286)99年
 カップリングの「人間の顔」ほどには良くない。
○里井宏次指揮The Taro Singers(LIVENOTES,WWCC-7391国内盤)2000年ライブ
 この合唱団について書くときは、いつもこう表現してしまうけど、惜しい!もう一息な
 んだけどなあ。ライブとしては非常に健闘していると思う。

<4 Motets pour le temps de Noelクリスマスの4つのモテット>(1952年)
 約10分で終わるし、技術的にもこれが手ごろなので、よく演奏される。特に神秘的な第
1曲と、クリスマスの喜びを直截に表現する第4曲が人気。
○Neary指揮Winchester Cathedral(全集第2巻)87年
 これも酷い演奏ではないが、やはり以下の名演たちには敵わない。
○Brown指揮Clare College,Cambridge(MERIDIEN,CDE84153)84年
 フランスの合唱曲を集めた好CDで、ベーシック・ライブラリーとして強く推薦。
○Cole指揮Regent Chamber Choir(REGENT,REGCD101)88年
 ミサ曲の項参照。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD108)88年
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIA MUNDI,HMC901588)95年
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
○Swingle Singers(SWINGCD11)96年?
 このプライヴェート盤のタイトルは「LIVE!」。ドビュッシーのシャンソンと並ん
 でスウィングルシンガーズの異色レパ。よくぞやりました。プーランクで最も耳に馴染
 む合唱曲であることの証しだろう。当盤では8分の7拍子に編曲された一風変わった
 日本古謡「さくら」が聴ける。
○Edison指揮The Elora Festival Singers(NAXOS,8.554179)97年
 日本では余り知られていないカナダの合唱団によるクリスマスアルバムだが、これは堀
 り出し物。うまい、美しい。
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA67623)2007年

<4 Motets pour un temps de Penitence悔悟節のための4つのモテット>(1938-39年)
 通向け。内容がプーランクとしては晦渋だし、技術的にも難しい。しかし、耳が慣れて
くると、この曲の独特の魅力は耳から離れなくなる。第4曲「Tristis est anima mea」
のソプラノソロも聴き物。ところで、この第4曲の終結部et ego vadam〜の部分は、プー
ランクの全合唱曲中でも最も荘厳な美に満ちて素晴らしい。何度聴いてもゾクゾクする。
同様の感触で、曲の終結部の"サビ"の部分は、「エクスルターテ・デオ」の後半や、また
「ミサ曲」のサンクトゥスのオザンナなどに登場する。
○Jouineau指揮Choeurs de Radio France(全集第2巻)84年
 他の盤では聴けない大人数歌唱の迫力はあり、同様の規模で演奏する人の参考にはなる
 し、確かにこの曲には、そんな表現を受け入れる可能性も秘めてはいる。しかし、細部
 ボケのこの演奏を、普通に推薦するわけにはいかない。ところで僕は、これはプレート
 ル指揮だと思い込んでいたのだが、この全集CDではジュイノー指揮になっていた。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD108)88年
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIA MUNDI,HMC901588)95年
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5185)98年
 この曲の演奏は、このアルバムでも特に期待はずれ。
○Enevold指揮Trinitasis Kantori(POINT,PCD5152)98年
 例えばリアス室内合唱団あたりは上手すぎて真似なんてできっこないとするならば、こ
 のデンマークの室内合唱団を目標にするとどうだろう。ビブラートを極力抑えた声によ
 る美しい響きの作り方、参考になる。このプーランクでも、終曲のソプラノソロはいま
 いちだけど、全体は良い。
○Hogset指揮Grex Vocalis(SIMAX,PSC1151)98,99年
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA67623)2007年

<Sept Repons des tenebresテネブレの7つの応唱>(1961年)
 ソプラノソロと混声合唱のための宗教的作品だが、ソロは括弧付きで児童、合唱も括弧
付きで児童合唱と男声合唱、と楽譜に記されている。演奏時間は約25分。最晩年作で、死
後まもなく初演。これは目立たないが、実はこれこそがプーランクの最高傑作という人も
いるくらいの、まさに通好みの作品。
○Pretre指揮Nouvel Orch. de R.France, Choeurs de R.France他(全集第2巻)83年
 ソロは児童、合唱団はMaitrese de la Sainte ChapelleとPetits Chanteurs de
 Chaillotで、児童合唱を起用。録音は新しいが盤の表記はアナログ録音となっている。
 プーランクの権威プレートルが振ってくれているのは嬉しいが、合唱の音程が酷く、合
 唱人には薦められない。是非以下のシックスティーン盤を。
○Christophers指揮BBC Phil., The Sixteen(COLLINS,14462)94年
 プレートル盤の不満を埋めてくれる盤がようやく登場。合唱団はもちろん大人。ソロが
 僕ひいきのクラブトゥリーなのが嬉しい。カップリングはストラヴィンスキー「詩編交
 響曲」やティペットの「黒人霊歌」など。合唱団の人数が少ないから響きは薄いが、合
 唱人にはこちらを高く推薦。

<Laudes de Saint Antoine de Padoue讃歌>(1959年)
 作曲順で最後の宗教的無伴奏合唱曲は、男声。曲の評価の割りには録音が少ない。
○Christophers指揮The Sixteen(全集第2巻)89年
 ちょっと声が豊か過ぎ、張り切りすぎ。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
○Gregoire指揮Ensemble Vocal Phonandre(STUDIO SM,D2482)95年
 そんなに上手いわけではないが、フランス人による録音は貴重。柔らかいトップは参考
 になる。カプレの「3声のミサ」を男声合唱でやってるのが目玉の一枚。
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5185)98年
○Talla(FINLANDIA,WPCS-6509国内盤)98年
 フィンランドの超絶男声アンサンブル。

<Gloriaグローリア>(1959年)
 管弦楽付き合唱作品としては最も人気がある。ラテン語ミサ通常文のグローリア部分だ
けを作曲したもので、ファンファーレ的冒頭に始まり、「ラウダムス・テ」の宗教的題材
とも思えない躍動感などが人気の理由。20分強で終わってしまう規模も手ごろ。特に驚か
されるのが最後の「Qui sedes〜」の後半で、これはもう、殆どムード音楽スレスレのロ
マンティックさ。こりゃ人気が出ないわけがない。ソプラノソロもポイント。
 録音はそれこそ山ほど発売されているが、手許には少ない。
○Pretre指揮ORTF Orch., Choeurs de la R.TV.Francaise(全集第2巻)61年
 作曲者立会いの録音という歴史的価値あり。そんなにうまいわけではないのだが、特に
 合唱団のソプラノのカンタービレのあり方に、僕はしびれてしまう。ソロはロザンナ・
 カルテリ。
○Ozawa指揮BSO, Tanglewood Festival Ch.(DG,427304-2)87年
 速めのテンポとダイナミックなサウンドが心地よい。こういうのを聴くと小沢は素晴ら
 しいと思う。それと何といっても聴き物はソプラノソロのキャスリーン・バトルで、ム
 ード音楽にはばっちり。僕が指揮者でもこの質の声を使いたい。代表盤候補。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD108)88年
 こじんまりやっているのが特徴で、こじんまりし過ぎと感じるが、そういうのを求める
 人には推薦。ソロのドンナ・ディーンは細過ぎる。後述する無伴奏合唱曲が中心。
○Piquemal指揮Choeur Regional Vittoria d'Ile-de-France他(NAXOS,8.553176)92年
 ピクマルは細部まで目の行き届いた演奏を聴かせてくれるが、合唱団が最上級とは言い
 難いことと、何となく薄いヴェールの向こうに声がある感触となっているのが難点。し
 かし、カップリングも含め、悪くない一枚だ。ソロはダニエル・ボルスト。
○Corboz指揮Lisbon Gulbenkian Orch,Ch(FNAC,592273)93年
 さすがに安定している。ソロのブリギッテ・フルニエは、音程に疑問がある箇所がある
 が、声質は透明で良い。当盤のメインはプッチーニの「グロリア・ミサ」。
○Layton指揮Polyphony,Trinity College Cambridge他(HYPERION,CDA67623)2007年
 相変わらず何を振らせてもレイトンは上手い。ここでのソプラノソロ、スーザン・グリ
 ットンの歌唱が僕の好みに合わないのが残念。
○Haitink指揮Chicago SO,Ch(CSO-RESOUND,CSOR901906)2007年ライヴ
 シカゴ響のライヴ録音シリーズから。約150名の合唱団の響きの分厚さが効を奏してい
 る。少しゆったりめだが、最近は速い演奏が多いので、たまにはこういうのもいい。ソ
 プラノソロは現代オペラでも活躍するジェシカ・リヴェラで、悪くはない。カップリン
 グはラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲。

<Stabat Materスターバトマーテル>(1950年)
 プーランクの代表作のみならず、20世紀最高の合唱作品ということだ。ということだ、
というのは、僕は学生時代に初めて聴いて以来、どうもこの曲に馴染めないから。とはい
え僕の趣味の問題なので、皆さんには是非触れていただきたい。「グローリア」同様、ソ
プラノソロ付き。
○Pretre指揮Orch. du Conservatoire, Choeurs Rene Duclos(全集第2巻)63年
 きっと代表的録音として今後も語り継がれるのだろうが、合唱団は、いただけない。こ
 の録音だけを聴いてこの曲を「20世紀最高の合唱作品」と評する人は、いないのではな
 いか。なおソロはクレスパン。
○Baudo指揮Choeurs et Orchestre National de Lyon(HARMONIAMUNDI,HMC905149)84年
 合唱指揮をベルナール・テテュが担当している、なかなかの好演。オーケストラのサウ
 ンドも含め、雰囲気が非常に良い。ソロはミシェル・ラグランジェ。カップリングは無
 伴奏の「Salve Regina」と、弦楽・ティンパニ付きの「黒衣の聖母への連祷」。
○Ozawa指揮BSO, Tanglewood Festival Ch.(DG,427304-2)87年
 「グローリア」とカップリング。こちらもソロはバトル。
○Piquemal指揮Choeur Regional Vittoria d'Ile-de-France他(NAXOS,8.553176)92年
 超廉価盤としては満足すべき演奏。合唱団は最上とは言えないが、ピクマルの細部まで
 行き届いた表現が補っている。

<4 petites prieres4つの小さな祈り>(1948年)
 美しい男声合唱曲。第1曲「Salut」のサビの部分は耳について離れない。
○King's Singers(全集第2巻)78年ライブ
 キングズシンガーズ結成10周年ライブから。この音源が入ったことは、演奏はいまいち
 揃いのこの全集の価値を大いに高めている。しかしこのライブ、全体像はいつになった
 らCD化されるのか?
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
○Gregoire指揮Ensemble Vocal Phonandre(STUDIO SM,D2482)95年
 Laudesの項を参照。
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5185)98年
○Sund指揮Orphei Drangar(BIS,BIS-CD-1233)2002年
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901872)2004年


<Exultate Deoエクスルターテ・デオ>(1941年)
 3分ほどの小さいモテットだが、演奏効果は素晴らしい。
○Alldis指揮Groupe Vocal de France(全集第2巻)81年
 少人数で演奏。一体感に乏しく、きめも粗く、推薦できない。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD108)88年
○Christophers指揮The Sixteen(VIRGIN,VC7 59311 2)91年
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIA MUNDI,HMC901588)95年
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5185)98年
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA67623)2007年

<Salve Reginaサルヴェ・レジナ>(1941年)
 エクスルターテ・デオと対照的に静的なモテット。
○Alldis指揮Groupe Vocal de France(全集第2巻)81年
 これも演奏の出来はいまいち。
○Baudo指揮Choeurs et Orchestre National de Lyon(HARMONIAMUNDI,HMC905149)84年
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD108)88年
○Christophers指揮The Sixteen(VIRGIN,VC7 59311 2)91年
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIA MUNDI,HMC901588)95年
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5185)98年
○Layton指揮Polyphony(HYPERION,CDA67623)2007年

<Ave verum corpusアヴェ・ヴェルム・コルプス>(1952年)
 ごく小さい女声合唱曲だが、女声のための大切なレパ。
○Alldis指揮Groupe Vocal de France(全集第2巻)81年
 これもいまいち。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD108)88年
○Christophers指揮The Sixteen(VIRGIN,VC7 59311 2)91年
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5185)98年

<Dialogues des Carmelitesカルメル会修道女の対話>(1956年)
 このオペラ、もっと早く知っておくべきだった!演奏時間2時間以上の大規模作品。フ
ランス革命を題材にしており、修道女たちが断頭台に登るショッキングなフィナーレまで
の、珍しく深刻なストーリー。無伴奏合唱曲からプーランクに親しんでいる人も、ミサ曲
のアニュスデイから借用の主題が発見できて、興味深く聴ける筈(僕はこのオペラを聴い
てしまったおかげで、ミサ曲に対する印象も大きく変わってしまった)。小沢が日本で上
演しており、感動的な上演だったと人づてに聞いた。全集盤の他、手許に新しい録音。
○Dervaux指揮Theartre National de l'Opera de Paris(全集第3巻)58年
 古いが、今でも十分鑑賞に使える録音。フランス語による歌唱。
○Nagano指揮Lyon Opera(VIRGIN,7 59227 2)90年
 若い聴衆をオペラ座に集めるケント・ナガノの、プロコフィエフ「三つのオレンジへの
 恋」などと並んで代表的録音に挙げられるもの。全体に精気があるし、女声ソリストは
 明晰な発音の歌手揃いで好ましく、合唱団も悪くない。サウンドも良好で推薦盤。

 なお、このオペラの第2幕第2場で女声合唱で歌われる「アヴェマリア」は、全日本合
唱コンクールの平成4年課題曲になったことがある。この課題曲選択はうまい。あっとい
う間に終わるが単独で演奏されても効果的だから。以下のCDでも聴ける。
○安積女子高校第25回定期演奏会
 色々なアヴェマリアを集めたステージの一つ。管弦楽部分はピアノ伴奏。この合唱団と
 いえども、定演となると全ての曲が高水準というわけではないのがわかり、少し安心す
 る。当盤のメインは、もちろん鈴木輝昭「森へ」の全曲。

<Les Mamelles de Tiresiasティレジアスの女房>(1944年)
 アポリネールのテキストによる、どたばた喜劇。こういうの、いかにもプーランク的。
合唱団の活躍度は低い。でも愉快なプーランクが好きな人なら必聴。
○Cluytens指揮Theatre National de l'Opera Comique(全集第3巻)53年
 古いモノラル録音ながら、いまだに代表盤として君臨。音質も悪くない。

<Secheresses枯渇>(1937年)
 混声合唱と管弦楽のためのカンタータで、演奏時間は15分強。初演は大失敗に終わった
そうだ。プーランクの激しい面が強い作品。
○Pretre指揮Nouvel Orch. de R.France, Choeurs de R.France他(全集第3巻)83年
 やはりもう少し合唱が上手い演奏の録音が待たれる。

<Figure humaine人間の顔>(1943年)
 このダブルコーラスのための作品は、音楽的にもメッセージ的にも素晴らしい。自分が
作曲家で、一生に一つこういう曲ができたら幸せだ。第二次世界大戦下、イギリスのBB
C合唱団が初演したもの。終曲「自由」は否が応にも感動を呼ぶ。エリュアールの詩も特
筆もの。僕が属していた大学合唱団で、何とかこの曲がやれないかと話題になることがよ
くあったが、めちゃくちゃ難しい癖に20分で終わってしまうとか、最後のソプラノソロの
ハイEは誰がやるとかで、結局ダメだった。実演では、大阪シュッツ合唱団が、日本の合
唱団としては驚異的に音がとれていた。余談だが、確か日本では東混が日本語で歌ってい
た筈。なにはともあれ、ハイレヴェルのレパにこだわる合唱人なら、これは必聴。
○Christophers指揮The Sixteen(全集第3巻)89年
 シックスティーンがヴァージン・レーベルに収録していた2枚のプーランク・アルバム
 の音源が全集に採用された。まあまあ。きめの細かさでは、いま一歩。
○Ericson指揮Stockholm Chamber Choir(EMI,CMS5 65344 2)71年
 初めて聴いたのはこの演奏。第7曲の後半の展開に感動したことを思い出す。やはりシ
 ンフォニックな点では良い。最後のハイEが、一瞬遅れて聞こえてくるのが面白い。
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5205)99年
 世界のトップクラスの合唱団を指揮したエリクソン再録音。30人未満の合唱団でこのシ
 ンフォニックな響きは凄いの一言。
○Mansson指揮Hagerstens Motet Choir(SWEDISH SOCIETY,SCD1054)80年
 スウェーデンの合唱団で、店舗をゆったりめにとり、合唱の響きを大切にする音楽作り
 が印象的。アンサンブルは最上級ではなく、たまに乱れもあるが、こういう演奏が好き
 という聴き手がいても不思議ではない。終曲の終止のハイEをやっていないのも特徴。
○Alldis指揮Groupe Vocal de France(EMI,CDC7 49086 2)87年
 よくぞ14人でやりました。想像以上によくやれている。
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(DEUTSCHE SCHALLPTALLEN,DS1003-2)89年
 メシアン、ダニエル=ルシュール、そしてプーランクの、いずれ劣らぬ20世紀フランス
 が生んだ無伴奏混声の名曲をカップリングした、知名度が低い名盤。相変わらず手堅過
 ぎる欠点はあるが、響きの美しさでは出色。
○Gardiner指揮Monteverdi Choir(PHILIPS,446116-2)94年
 悪い演奏ではないがガーディナーならもっとうまくできたのに、と思わせる。細いソプ
 ラノと、音質が練れていない男女混合のアルトと、声を張り上げる男声とのバランスが
 悪いのかもしれない。ハーモニーが混濁して団子になることがある。なおこの曲は、コ
 ーラスの掛け合いの効果が目覚しいが、この録音ではその様子がよくわかる。
○Wood指揮New London Chamber Choir(HYPERION,CDA66798)95年
 熱いことは熱いが、この合唱団には荷が重く、高貴さが感じられない。
○Hogset指揮Grex Vocalis(SIMAX,PSC1151)98,99年
 技術的な余裕は無いが、捨て難い美しさを持つ演奏。
○Mansson指揮Lunds Vokalensemble(LUNDS VOKALENSEMBLE,LVE-2)99年
 スウェーデンの50人を超える合唱団。録音の残響が美しいが、合唱団の実力はそこそこ
 レヴェルで、必聴というほどでもない。
○Windekilde指揮Hymnia(CLASSICO,CLASSCD286)99年
 デンマークの室内合唱団。実力は相当のものだ。
○Equilbey指揮Accentus Chamber Choir(naive,V4883)2000年
 英誌「Gramophone」で絶賛されていた。フランス語を母国語とする歌手が殆どを占める
 合唱団は、こういう曲で強みを発揮する。最後のハイEも強烈。録音状態も良い。
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901872)2004年


<Un soir de neigeある雪の夜>(1944年)
 これまたエリュアールの詩による。もうちょっと盛り上がるかなあ、と思ったら突然終
わってしまうのが残念。演奏時間5、6分ほど。
○Christophers指揮The Sixteen(全集第3巻)91年
○Alldis指揮Groupe Vocal de France(EMI,CDC7 49086 2)87年
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(VICTOR,VICC23003国内盤)93年
Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5205)99年
○Shaw指揮Robert Shaw Festival Singers(TELARC,CD-80408)94年
 響きが分厚いのが長所。特に低音は良く鳴る。カップリングはブリテン、ラヴェル、ド
 ビュッシー、バディングス、アルヘント。
○Wood指揮New London Chamber Choir(HYPERION,CDA66798)95年
○Hogset指揮Grex Vocalis(SIMAX,PSC1151)98,99年
○Equilbey指揮Accentus Chamber Choir(naive,V4883)2000年
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901872)2004年
○Cambreling指揮Europa Chor Akademie(CAPRICCIO,67151)2005年


<Petites voix小さな声>(1936年)
 この同声合唱曲は、日本で最も演奏されているプーランクかもしれない。コンクールの
自由曲でしょっちゅう耳にする。プーランクの友人たちの子どもに捧げられた可愛らしい
作品。5曲で6、7分で終わる。録音が少ないのが残念。
○Besson指揮Maitrise de la Radiodiffuson Francaise(全集第4巻)53年
 古いし、一昔前の演奏レヴェル。これでは困る。
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(VICTOR,VICC23003国内盤)93年
 大人の女声合唱による。
Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5205)99年
 これも大人の女声合唱。ちょっと重過ぎるかも。
○Wood指揮New London Chamber Choir(HYPERION,CDA66798)95年
 この曲にこの声質は好みじゃない。
○八戸東高校(BRAIN,BOCD-5002国内盤)88年
 フランス語は別にして、よくできました。児童合唱っぽいのがよい。全日本合唱コンク
 ール名演集の第2集に収録。

<Sept Chansons7つの歌>(1936年)
 アポリネールとエリュアールの詩を選択し、声をオーケストラ的に使用していることで
初演当時から大評判だったらしい。野心的な作品だが、親しみやすいというわけではない
から、好みは分かれそうだ。演奏技術も高度。7曲で10分ちょっとで終わってしまう。
○Ericson指揮Stockholm Radio Choir(全集第4巻)75年
 初めて聴いたのがこの演奏だったが、シンフォニックなことでは一番。
Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5205)99年
 上記盤より音が良くなって、絶賛に値する演奏になった。

○Alldis指揮Groupe Vocal de France(EMI,CDC7 49086 2)87年
○Christophers指揮The Sixteen(VIRGIN,VC7 59311 2)91年
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(VICTOR,VICC23003国内盤)93年
○Wood指揮New London Chamber Choir(HYPERION,CDA66798)95年
○里井宏次指揮The Taro Singers(LIVENOTES,WWCC-7391国内盤)2000年ライブ
○Equilbey指揮Accentus Chamber Choir(naive,V4883)2000年
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901872)2004年
○Cambreling指揮Europa Chor Akademie(CAPRICCIO,67151)2005年


<Chanson a boire酒飲み歌>(1922年)
 プーランク最初の合唱曲は男声合唱の小曲。実にユーモラス。
○Christophers指揮The Sixteen(全集第4巻)91年
 上手いは上手いが、ちょっとまじめかなぁ。
○Alldis指揮Groupe Vocal de France(EMI,CDC7 49086 2)87年
Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5205)99年
○Die Singphoniker(CPO,CPO999257-2)93年
 この5人組の「コンサートコレクション2」というCDに収録。酒に関係ある曲を多く
 カップリング。この曲の演奏もこれがユニーク。
○Eberhard指揮Svanholm Singers(SVANHOLM SINGERS,SvS2)2002年
○Wood指揮New London Chamber Choir(HYPERION,CDA66798)95年
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901872)2004年

<8 chansons francaises8つのフランスの歌>(1945年)
 親しみやすいことでは最右翼。楽しいプログラミングには好適の曲ではあるのだが、日
本人が歌う場合には早口フランス語の壁がある。鑑賞するだけなら予備知識無しで大いに
楽しめる。
○Christophers指揮The Sixteen(全集第4巻)91年
 まずは満足だが、ちょっと声が豊か過ぎるか。
○Alldis指揮Groupe Vocal de France(EMI,CDC7 49086 2)87年
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(VICTOR,VICC23003国内盤)93年
Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5205)99年
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD119)92年
 CDのタイトルは「ア・カペラ」。選曲は良いが、演奏は特筆すべきものというわけで
 はない。
○Wood指揮New London Chamber Choir(HYPERION,CDA66798)95年


 では、以上に挙げたディスクの中から、プーランクだけを集めたものを、再度ディスク
毎に整理してみる。
○Creed指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIA MUNDI,HMC901588)95年
収録曲:Messe; 4 Motets pour un temps de Penitence; Exultate Deo; Salve Regina;
4 Motets pour le temps de Noel;
 宗教的合唱曲では演奏だけをとればこれを第一に推したいが、収録曲が少なく50分強で
 終わってしまうのが残念。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF151)88年
収録曲:Messe; 4 Motets pour un temps de Penitence; Exultate Deo; Salve Regina;
4 Motets pour le temps de Noel; 4 petites prieres; Ave verum corpus;
Laudes de Saint Antoine de Padoue;
 無伴奏の宗教的合唱曲を全部聴きたいならコレ。
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(ACCORD,205892)96年
収録曲:Litanies; Messe; 4 Motets pour un temps de Penitence; Exultate Deo;
Salve Regina; 4 Motets pour le temps de Noel; 4 petites prieres;
Ave verum corpus;
 「Laudes」が無い代わりに「Litanies」が聴ける。もうちょっとソプラノのビブラート
 を抑えてくれれば強く推薦できるのに。
○Rutter指揮Cambridge Singers(COLLEGIUM,COLCD108)88年
収録曲:Gloria; Litanies; 4 Motets pour un temps de Penitence; Exultate Deo;
Salve Regina; 4 Motets pour le temps de Noel; Ave verum corpus;
 無伴奏曲は混声のみ、小ぶりの「Gloria」と弦楽+ティンパニ伴奏の「Litanies」が聴
 けるのがポイント。
○Christophers指揮The Sixteen(VIRGIN,VC7 59311 2)91年
収録曲:Messe; Exultate Deo; Salve Regina; Ave verum corpus; Chanson a boire;
Sept Chansons; Un soir de neige; 8 chansons francaises;
 宗教曲と世俗曲が混じっている。世俗曲の方が、歌手たちの豊かな声に合っているよう
 に思う。幾つかの音源はEMIの全集に採用されている。
○Alldis指揮Groupe Vocal de France(EMI,CDC7 49086 2)87年
収録曲:Chanson a boire; Sept Chansons; Figure humaine; Un soir de neige;
8 chansons francaises;
 最小人数の歌手での演奏が特徴で、「人間の顔」は14人。
○Equilbey指揮Choeur de Chambre Accentus(VICTOR,VICC23003国内盤)93年
収録曲:Sept Chansons; Petites voix; Un soir de neige; 8 chansons francaises;
 フランスのピエール・ヴェラーニから出たCDの国内盤化。価格も安く日本語対訳付き
 で良心的。ラヴェルの3つのシャンソン以外はプーランク。フランスの合唱団であるこ
 とが強み。指揮者はエリクソンの弟子にまずは恥じない演奏をしている。「人間の顔」
 が無いのが残念。
○Wood指揮New London Chamber Choir(HYPERION,CDA66798)95年
収録曲:Chanson a boire; Sept Chansons; Petites voix; Figure humaine;
Un soir de neige; 8 chansons francaises;
 世俗合唱曲を全て収録。これは評価の難しい合唱団で、声質に耳を楽しませる要素がな
 いからとっつきが悪いが、現代モノの表現力にかけてはなかなかのものがある。プーラ
 ンクでも、冴えないなあと思わせる部分がある一方で、時折耳をそばだたせる表現をみ
 せる。「人間の顔」はいまいち。英国のCD関連誌「GRAMOPHONE GOOD CD GUIDE」では
 ベタボメ。
○Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5185)98年
収録曲:Messe; 4 Motets pour un temps de Penitence; Exultate Deo; Salve Regina;
4 Motets pour le temps de Noel; 4 petites prieres; Ave verum corpus;
Laudes de Saint Antoine de Padoue;
 マーロウ盤同様、無伴奏の宗教的合唱曲を網羅。素晴らしいディスクであることは間違
 いないものの、演奏者名からの期待度からいけばハズレ。オランダ室内合唱団が不調。
 特にソプラノが時に非音楽的な声を聞かせるのが残念(肝心の悔悟節モテットとミサ曲
 が悪い)。かと思うと、そのソプラノがはっとするようなさすがの名人芸を聞かせる部
 分もあったりして、評価が難しい。いずれにせよ宗教的合唱曲全集であることは価値が
 高く、マーロウ盤のビブラートを排した子供っぽいとも言える声が我慢ならなかった人
 には、エリクソン盤は嬉しい筈。さて、僕はマーロウ盤とエリクソン盤のどちらを薦め
 る?と問われれば、前者にするだろう。曲数を絞ったディスクではリアス室内盤が、や
 はりいいと思う。
Ericson指揮Netherlands Chamber Choir(GLOBE,GLO5205)99年
収録曲:Chanson a boire; Sept Chansons; Petites voix; Figure humaine;
Un soir de neige; 8 chansons francaises;
 上記の宗教合唱曲集に比較して、粗が目立たず、十分に満足できるアルバム。買って損
 は無い。重たい「Petites voix」には否定的意見も多いだろうが。

○Hogset指揮Grex Vocalis(SIMAX,PSC1151)98,99年
収録曲:4 Motets pour un temps de Penitence; Messe; Un soir de neige;
Figure humaine
 CDのタイトルは「人間の顔」の終曲からLIBERTE(自由)。ヴォイストレーナーとし
 て日本でもかなり名前が知られるようになったホグセット氏率いる合唱団。日本人の耳
 には、あまり上手に聴こえないだろう。声が日本人好みではない。特にソプラノは、子
 供っぽいくらいの、ノンビブラートの声。男声の声質も、肌ざわりが悪い。アンサンブ
 ルのレヴェルも、リアス室内などを聴いてしまうと、とても極上とは言えない。目玉の
 「人間の顔」も、余裕を持って対応しているとは言い難い。では当盤の価値は全くない
 かといえば、そうではない。特に、ソプラノの情けないくらい細い声を中心に、時々こ
 れまで聴いたことのないような繊細な表現(とまではいかない、繊細な音の消え方)を
 楽しむことができた。それから、録音会場の教会の響きのせいもあるが、倍音の鳴りが
 凄い。プーランクのミサ曲のベネディクトゥスの終止などは、「人間の顔」の終曲の終
 止のような音だ。結論として、指揮者としてはともかく、ヴォイストレーナーとしての
 ホグセット氏から我々日本人が学ぶべきことは、たくさんあるように思われる。
○Equilbey指揮Accentus Chamber Choir(naive,V4883)2000年
収録曲:Sept Chansons; Figure humaine; Un soir de neige;
 演奏はかなり良好だが、収録曲が3つだけで40分程度。これは残念!
○Reuss指揮RIAS-Kammerchor(HARMONIAMUNDI,HMC901872)2004年
収録曲:Sept chansons; Une soir de neige; Figure humaine;
 Quatre petites prieres de saint Francois; Chansons a boire
 前回のこの合唱団によるプーランク集から10年近く経た第2弾。これも第1集と同じく
 収録時間が53分程度というのが残念。もちろん演奏の質の高さは、驚異的である。
○Layton指揮Polyphony,Trinity College Cambridge他(HYPERION,CDA67623)2007年
収録曲:Gloria; 4 Motets pour un temps de Penitence; Exultate Deo; Salve Regina;
 4 Motets pour le temps de Noel
 作曲家が誰でも抜群の上手さを見せるレイトン。「グローリア」や「悔悟節」で、さす
 がの実力を見せる。全体としては、最高と言える仕上がりではないと感じる。

 プーランクの無伴奏合唱曲をCDで揃えるのは意外に悩ましい。宗教曲の場合、演奏だ
けならリアス盤でよいが収録曲が少ない。合唱曲を全て聴きたいならマーロウ盤(宗教曲
はエリクソン盤でもよい)とウッド盤で揃うが、演奏が最上というわけでもない。評判の
盤は上記でだいたい網羅したつもりだが、未聴盤で世間で高く評価されている宗教合唱曲
を集めた盤ではショウ盤(TELARC)がある。また、世俗的合唱曲はフランス語ネイティヴの
歌手を含む録音も欲しい。上述盤ではオールディス盤とエキルベイ盤がそれにあたるが、
フランス人による録音は少ない。ネイティヴではないが、エリクソン盤(GLOBE)も良い。


プレトリウス(PRAETORIUS,Michael、c1571-1621、ドイツ)

 音楽史ファンには、例えば舞曲集「テルプシコーレ」がよく知られている。しかし、こ
と合唱方面に限れば、クリスマスの作曲家である。もちろん本当はそれだけではないのだ
が、固定的イメージ。なんたってモテット「In dulci jubilo」があるからだ。これなら
聴いたことがある方はたくさんおられる筈だし、手許にあるたくさんのクリスマス物CD
で、ちょくちょく見かける。そして仮にクリスマスの作曲家だと決めてかかるなら、この
一枚を買えばOKという凝ったアルバムがある。

○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,75605 51256 2)95年
収録曲:In dulci jubilo; Nun kommt der Heiden Heiland; Puer natus in Bethlehem;
Resonet in laudibus; Vom Himmel hoch; Wachet auf; Wie schon leuchtet;
 プレトリウスの合唱曲だけの録音自体、あまり見かけない。収録の7つのモテットにつ
 いて作曲者が残した複数の編曲をとりあげているのが面白い。「In dulci jubilo」な
 ら4つのバージョンが聴ける。全て無伴奏で演奏。この合唱団にしては不調かと思われ
 るが、十分に美しい歌唱になっている。

 プレトリウスのモテットをネタにして現代スウェーデンの作曲家サンドストレームが編
曲を行っているが、それはサンドストレームの項で。
 なお、ドイツ音楽史の裏街道を歩むようなレーベルCPOは、同姓別人のプレトリウスで
複数のアルバムを作っている、何てマニアックな!


プロコフィエフ(PROKOFIEV,Sergei、1891-1953、ロシア)

 20世紀が生んだ巨人の一人。「ピアノソナタ第7番」一曲だけで、僕にとっては大作曲
家なのだが、何を聴いてもハズレがない、というわけではない。西欧に出たと思ったら結
局33年にソ連に戻って、社会主義リアリズムに則った創作活動になったことも、評価を難
しくしている。
 どうしても器楽曲中心に見られるので合唱は重要視されないが、合唱曲は全く演奏され
ないわけではない。例えば、映画のための音楽をもとにした「アレクサンドル・ネフスキ
ー」には、信じられないほど多くの録音が存在するし、知名度が高いとは言えない「イワ
ン雷帝」の録音も予想以上に沢山あるようなのだ。
 では、量は少ないながら、手許のCDを挙げる。

<アレクサンドル・ネフスキーop.78>
○Abbado指揮LSO, Ch(DG,435151-2)79年
 合唱付き音楽では最も有名。映画音楽をもとに全7曲にまとめられたカンタータ。僕に
 は大した曲に見えないのだが、録音が特に多いことからして、アピール力は高いという
 ことだろう。僕はロンドン響時代のアバドが好きで、この録音もまずまず。当盤は3枚
 組、アバドがDGに入れたプロコを集めたもの。アルゲリッチやミンツとの協奏曲も含
 む。なお、合唱団は残念ながらあまり良くないので、もっと合唱が上手い録音を探した
 い。映画の雰囲気に合った演奏というのもあるのだろう。洗練された演奏は不釣り合い
 だという意見を聞いたこともある。なお、より曲数の多いフィルムスコアには、新しい
 テミルカーノフ盤(RCA)がある。

<Zdravista op.85>
○Gleeson指揮LPO, Geoffrey Mitchell Choir(CARLTON,30366 00122)95年
 いかにもソ連復帰後のプロコらしい叙情が聴ける。アレクサンドル・ネフスキーと並行
 し39年に作曲されたが、もとはスターリンの讃歌で、戦争中はプロパガンダのために放
 送で使用された。作曲者の死後、60年代に歌詞が代えられ、ロシアの伝統と共産党とを
 称える内容になった。そしてさらに、共産党への言及を削除してロシア民族の伝統への
 讃歌に純化した歌詞による録音がこれで、新しい歌詞による初録音とのこと。曲につい
 ては特に注目すべき出来でもないと思う。演奏については、合唱団が立派なのが収穫。
 当盤のメインはチャイコフスキーの管弦楽曲「ロメオとジュリエット」のオリジナル版
 (合唱は入っていない)。

<イワン雷帝>
○Gergiev指揮Rotterdam PO, Chorus of Kirov Orch(PHILIPS,456645-2)96年
 アレクサンドル・ネフスキー同様、エイゼンシュタインとの映画制作から生まれた。最
 初に作曲した部分は体制に高く評価されたが、次いて作曲すると、雷帝(権力者)の弱
 みを描いたせいで、スターリンの逆鱗に触れ、プロコフィエフは映画音楽を止めた。こ
 の曲の場合、「アレクサンドル〜」のように、演奏会用カンタータを作曲者が作ること
 はなかったが、死後にソ連の指揮者スタセヴィチが演奏会用の版を作った。当盤もそれ
 によるが、スタセヴィチが挿入した語りの部分は割愛。また、イギリスの指揮者ランケ
 スターは、ロシア語の代わりに英語の語りを挿入して上演したそうだし、CDカタログ
 にはパーマー版というのもある(CHANDOS)。バレエ用の編曲もあるようだ。いずれにせ
 よ、当盤で聴くと、なかなか楽しめる、冗長ではあるけれども。

<冬のかがりびop.122>
○Serebrier指揮Scottish Chamber O(ASV,CD DCA 760)91年
 「ピーターと狼」は、やはり凡人には作れない見事な音楽だと思う。いくつかある子供
 向け音楽の一つがこの「冬のかがりび」で、子供たちの冬の日の小旅行を描く約20分の
 標題的管弦楽。第5曲に児童合唱が少し入るのでここで挙げた。オリジナルはもちろん
 ロシア語だが、当盤では英国のPaisley Abbeyの少年合唱団が、合唱指揮者による英語
 訳を歌っている。また、もともとは各楽章の前に詩の朗読が付されたようだが、当盤で
 は省略。カップリングは「古典交響曲」などいずれもプロコの管弦楽曲。

<ON GUARD FOR PEACE op.124;BALLADE ABOUT A BOY WHO REMAINED UNKNOWN>
○Rozhdestvensky指揮Chorus and USSR Radio SO(OLYMPIA,OCD206)
 録音年不明のアナログ録音。体制に則った曲を書くには、教育目的がてっとり早いわけ
 で、晩年のプロコには若い人の演奏のために書かれた作品がいくつかあり、「平和の守
 り」もその一つ。後者の「バラード」も前者同様に戦争を主題にしたもの。これらの曲
 は、今後どうなっていくのだろうか?例えば前者は名作の誉れ高いのだが、思想的意味
 が薄れた上に、音楽的にも特に素晴らしいとも思えない。なお当盤の演奏、児童合唱の
 声質に時代を感じさせる。

 結局、上記に挙げた曲は全てソ連復帰後の作品となった。いずれも、僕にとって大切に
なりそうな作品というのは見当たらないが、一番面白く聴けたのは「イワン雷帝」。
 この他に、「彼らは七人」というバーバリズム的作風を見せるカンタータが有名なよう
だが未聴。アンチェル盤(PRAGA)がカタログにのっている。プロコ作品を全てチェックし
ないと気が済まない人には、CHANDOSから「十月革命のためのカンタータ」も出ている。
 また、オペラが13曲あるようで、最近になってゲルギエフ率いるキーロフ・オペラが録
音に注力したおかげもあって、何曲かはメジャーレーベルのCDで聴けるようになった。
例えばトルストイを原作にする「戦争と平和」は数種類の録音があり、一度は聴いておく
べきかもしれない。行進曲のみ知名度が高い「三つのオレンジへの恋」は、フランス語歌
唱によるケント・ナガノ盤(VIRGIN)の評価が高い。


プッチーニ(PUCCINI,Giacomo、1858-1924、イタリア)

 言わずとしれたオペラの大家だが、まずはオペラ以外の合唱曲から。
○Corboz指揮Gulbenkian O(FNAC,592273)93年
 「グローリア・ミサ」。作曲者18歳の作らしいが、生前はオペラに転用されたりはした
 が出版すらされず、死後1951年にアメリカで出版された。約45分かかるが、グローリア
 とクレドで30分以上かかる。意外な人気曲で、日本でも社会人の合唱団などで歌われて
 いる。声楽家好みなのだろう。わかりやすいメロディーもなかなかのもの。数種の録音
 があるが、プーランクの「グローリア」とカップリングしたコルボ盤は、安定感有り。
○Webber指揮Gonville & Caius College,Cambridge(ASV,CD DCA 914)94年
収録曲:Requiem; Salve Regina; Vexilla regis;
 ヤナーチェクの宗教的合唱曲集とのカップリング。すぐ終わってしまう曲だが、例えば
 レクィエムはちょっと気になる小品。合唱団の質の高さで、良いCDだと思う。

 さて、肝心のオペラだが、いわゆる「三部作」を一つと数えると、彼のオペラは10曲し
かないし、全てが成功作というわけでもない。それなのに世界中の劇場のレパを押さえて
いるのだから大したもの。ところが、合唱の名場面というのが無い。プッチーニ・オペラ
・アリア集のCDは山のようにあっても、オペラ合唱曲集をアルバムにできないのが、例
えばヴェルディとは大違い。せいぜい「蝶々夫人」中の「ハミング・コーラス」位が有名
と言える程度。しかし、名場面は無いが合唱に歌い甲斐があるオペラはある。それは「ト
ゥーランドット」。僕は演奏に参加したことはないが、例えば演奏会形式で上演するにし
ても合唱団には美味しい(しんどいが)筈だ。これも3大テノール絡みで人気がさらに上
がった感のあるアリア「誰も寝てはならぬ」だって、合唱付きで聴く方がいい。終結部は
アルファーノが補佐しており評判は悪いが、とりあえず合唱は高らかに歌える。
○Karajan指揮VPO他(DG,POCG2841/2国内盤)81年
 ブリブリ鳴りまくるウィーンフィルと、それに負けずに声を張り上げるウィーン国立歌
 劇場合唱団が快感。テンポ設定が変とか、キャストがトンチンカンなどの問題はあって
 も、スペクタクルな性格もある曲なので、カラヤンとの相性が良好。いつも文句をつけ
 てしまうウィーン少年合唱団も、それほど耳触りではない。
○Molinari-Pradelli指揮Teatro dell'Opera di Roma(東芝,TOCE-9137/8国内盤)65年
 カラヤン盤だけでは耳が偏るので、古典的名盤と言われているこれも聴いた。ニルソン
 の歌うトゥーランドットと、コレルリの歌うカラフが魅力。合唱団の声も素晴らしい、
 特にバス。ただ、この演奏をCDで聴くと、実演なら何倍も素晴らしいんだろうなと想
 像させられる。その点、カラヤン盤はCDで自宅鑑賞用として完成度が高いと感じる。

 ということでプッチーニのオペラは量が少ないから、一通り聴いておくとよいと思う。

 1曲だけ、プッチーニ・マニアが喜びそうな合唱編曲物。
○Allwood指揮Rodolfus Choir(HERALD,HAVPCD242)95,97年
 よく秘曲とかいって紹介される弦楽四重奏曲「菊」を無伴奏混声合唱にしてしまった。


パーセル(PURCELL,Henry、c1659-1695、イギリス)

 イギリスの生んだ天才作曲家。その没後三百年にあたる95年、僕はたまたま1ヶ月ほど
ロンドンにいたが、CD屋にはパーセルが溢れ、演奏会広告もパーセルだらけ。如何に英
国で大切にされているかがわかる。日本ではそれほどでもないが、それでも記念CDや演
奏会を目にした。
 パーセル作品でクラシック音楽ファンが聴いて「あー、これこれ」と思うのは、ブリテ
ン作曲の「青少年のための管弦楽入門」の力強いテーマではなかろうか。そのモトネタの
劇付随音楽「Abdelazer」からの序曲や、合唱物は無いが代表作を集めたオムニバス盤が
あって、パーセルを知識として一枚だけ欲しいという人には薦められる。
○Music for a while(L'OISEAU-LYRE,443195-2)
 ワゾリールのカタログからパーセルのいいところを抜粋。CDのタイトルになっている
 歌曲は有名で、事実、半音階の天才的な使用は一聴の価値あり。カークビーの歌う数曲
 の歌曲が絶品。

 脇道気味だが、その歌曲の名曲「Music for a while」を無伴奏混声合唱に編曲した珍
盤がある。スウェーデンのとても上手い室内合唱団が、指揮者の編曲版で演奏。
○Eriksson指揮Rilke Ensemble(PROPHONE,PCD005)90年

 パーセルが天才たるゆえんは、声楽曲における英語への音楽の乗せ方が卓抜であること
だそうだ。僕にはそれを論評する才は無いのだが、物の本ではそういうことである。
 ではまず、たくさんパーセルを聴きたい人向きの6枚組。
○A PURCELL COMPANION(HARMONIA MUNDI,HMX2901528/33)
 1.オペラ「ダイドーとイーニアス」(全曲)
 2.Funeral Sentences, Te Deum, Anthems
 3.室内楽集
 4.オペラ「アーサー王」(抜粋)
 5.歌曲集
 6.オルガン作品集
 このレーベルが誇る演奏家たちによる名演を集めたもの。「ダイドー〜」の指揮はクリ
 スティー、「アーサー王」はデラー。ヘレヴェッヘ指揮による2.のディスクが、合唱
 人には最も推薦できる。この中に「Hear my prayer, O Lord」というごく短い無伴奏で
 も演奏できる8声のアンセムが収録されているが、これは半音階を実に効果的に使った
 優れた曲で、パーセルをレパにいれようと考えるなら第一に検討していただきたい作品
 だし、録音も非常に多い。日本のコンクールの自由曲でもたまに出てくる。パーセルが
 苦手な僕でも、この数分の短い曲はイチオシ、とても好きだ。

 その名曲「Hear my prayer, O Lord」の録音は手許にたくさんあるのだが、たった一枚
だけ挙げるとするならこれを。なお、現代スウェーデンの作曲家サンドストレムがこの曲
を編曲しているが、それについてはサンドストレムの項で触れる。
○Marlow指揮Trinity College,Cambridge(CONIFER,CDCF152)87年
 合唱人がパーセルを1枚だけ買うなら推薦したい「王室礼拝堂のためのアンセム集」。
 有名なアンセムが網羅されている。件の曲に関しても素晴らしい演奏。なお、この演奏
 家による93年の演奏も発売されている。

 パーセルの声楽作品といえば、オードと呼ばれる、半分は世俗的な音楽がある。管弦楽
付きで、序曲に始まり、合唱、独唱、重唱が入り交じる。これが数が非常に多く、パーセ
ル好きの方はハイペリオンからでている沢山のCDを買い漁ればいいが、普通はそうはい
かない。僕も殆ど持っていない。有名なオードには、「来れ、汝芸術の子」という祝典的
な曲がある。この曲はピノック盤が有名なのだそうだが未聴。

 その他、パーセルのCDは聴き切れないほど多く発売されているので、パーセルこそ真
の天才だ!と感じる人なら、どんどん聴き進めることができる。
 最近、安いナクソスで珍らしい曲の良い録音が出たので触れておく。
○Mallon指揮Aradia Baroque Ensemble(NAXOS,8.554262)97年
 シェークスピア劇「テンペスト」のための音楽。パーセル作かどうか疑わしいとのこと
 だが、収録されている曲の美しさには疑問の余地がない。たまに合唱も入る。演奏する
 のはカナダのアンサンブルだが、なかなかのハイレヴェルだ。

 以上でパーセルは終わるが、日本でも、アンセムなどは、もう少し演奏されてもよいの
ではないかと思っている。


クィルター(QUILTER,Roger、1877-1953、イギリス)

 この時期のイギリスの独唱歌曲は、独特の叙情で英国では一部に人気がある。僕がこの
ジャンルに気づいたのは、ピアニストのハフが代表作「Now sleeps the crimson petal」
などをピアノソロに編曲して極美演奏を繰り広げているのを聴いてから。
 スウィングルシンガーズが、イギリス人にしかウケそうにない企画をしている。
○PRETTY RING TIME/Swingle Singers(SWINGCD9)94年
 当盤は、スウィングルシンガーズのプライヴェート盤の中でも、日本では最もウケない
 だろう。20世紀イギリスの歌曲を合唱編曲したものを集めている。クィルターは上述の
 「Now sleeps〜」を含め6曲だが、意外と良くなかった。原曲の方がいいかも。


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