経営と研修(新しいCBTを目指して)
2001年度第53回全国能率大会優秀論文賞(全日本能率連盟主催)
-先端経営のモデリングとシミュレーション方式による経営教育の実践-
インスティテュート・オブ・ビジネステクノロジー代表取締役 池端正志
日本経済のバブル崩壊以降、日本企業は何を学んだであろうか。グローバルな市場競争が、否応無しに日本マーケットに侵入し勝ち組み、負け組みと揶揄される企業間競争の最中で、企業業績の評価基準である会計システムも国際基準への対応が求められる現状である。欧米にみるビジネス展開の基軸は、マーケティングと経営の戦略化にある。
これらの学習なくしてビジネス競争に勝利できることは極めて難しい状況になりつつある。最近はやりのネットビジネスも、この基軸を忘れると栄枯盛衰をまざまざと見ることになる。IT社会に向かって、若い人材が欧米同様にアントプレナーにチャレンジすることは多いに結構であるが、上記基軸を実践の場を通して初めて学ぶことは、あまりにもリスクが大きい。そこで、この両基軸に焦点をあて、パソコンによるマーケティングと経営の戦略シミュレーション・ゲームを開発し、CBT(コンピュータ・ベースド・トレーニング)として実践してきた。企業内における財務会計は結果業績を反映したものであり、これに先立つマーケティング計画や経営計画等の意思決定が、如何に結果業績に反映するか、シミュレーションを通して受講者が仮想体験し、現実のビジネス競争にトランスレートしうるかが、戦略シミュレーション・ゲーム研修の要点である。現実企業経営システムをモデル化し(モデリング)、その仮想ビジネス・シミュレーション・ゲームを受講者が体験し(プレイング)、その結果をデブリーフィングすることによって現実ビジネスへとトランスレートする(トレンスレーティング)という学習連鎖をゲームの輪と称する。企業内におけるグループワーク研修(ワークショップ)として、受講者お互いが学び合い(相互学習)、体験しながら学ぶ(体験学習)、この研修手法は企業におけるリーダ同志の問題意識の共有や現実の場での協働を促進するだけでなく、従来の講義スタイルから受講者自らが考え、学び合うという、より豊かな学習プロセスへと変革しうるものであると確信している。
企業経営は、過去の成功体験ではなく仮説を検証しながら経営するスタイルが要求され、より創造的な経営スタイルが提唱されている。(参考:「知識創造企業」野中郁次郎、竹内弘高)該書において企業の知識スパイラルとして知識の共同化、表出化、連結化、内面化という知識変換のモードが定義されている。これらモードに対応する、新しい研修スタイルが今後の企業内研修に求められよう。今回、開発実践してきたビジネス・シミュレーション・ゲーム研修は、まさに上記第4のモードである知識変換の内面化としての体験(行動)による学習に位置付けられよう。本論文では、このビジネス・シミュレーション・ゲームに焦点をあて、これらゲームの類型、ゲームの輪(モデリング、プレイング、トランスレーティング)における開発・実践上のTIPS、コーディネーターとして必要なスキル、ビジネス・シミュレーション・ゲームの課題と将来等について記述することにより、新しい21世紀の企業内教育分野としての発展に注力していきたい。
目次
3−1.モデリング過程におけるTIPS
3−2.プレイング過程におけるTIPS
3−3.トランスレーティング過程におけるTIPS
下図赤字はIBTのゲーム(シムマーケティングTM)特性です。
1.ビジネス・シミュレーション・ゲームの類型(図1参照)
ビジネス・シミュレーション・ゲームの歴史は過去半世紀に遡る注1ことになろうが、最近ではパソコンの進化とともに、従来の計算プロセスでのネックが解消され、パソコンやインターネットを利用した第2世代のビジネス・シミュレーション・ゲーム開発が活発化しつつある。この種のゲームは企業人を対象とするのみならず、大学生や中高生までに渡って経営意思決定やビジネスの仕組み、お金の流れを理解する研修ツールとして幅広く利用されつつある。ゲームとしてのジャンルはシミュレーションを主体とするものであるが 、その利用目的や教育目的、技術的要素によっては様々なゲーム形態をとる。これらの形態を理解して実施しないと、研修効果が期待したものにならないことも多い。
また、そのゲームを運営する講師(コーディネーター)自身のスキルも研修効果を左右するノウハウ部分が大きい。本稿では企業人を対象にビジネス・シミュレーション・ゲームを開発・実践してきた私自身の経験から、その開発・実践におけるTIPS等を紹介することにより、将来に向けての本分野のより一層の進化を期待したい。ビジネス・シミュレーション・ゲームを類型化するのは娯楽ゲームを類型化する以上に難しい気もする。単に画面を見るだけでは、ゲームの違いや効果を認識することは困難である。私自身、欧米や日本で過去作成されたゲームを調査、体験した結果、図1のような視点により分類することで、ビジネス・シミュレーション・ゲームの特徴やレベルを理解したいと思っている。視点1のビジネスモデルはゲーム・ジャンルともいうべき領域である。いままでに開発されてきたビジネス・シミュレーション・ゲーム群から、それらゲーム内容の特徴やゲーム対象分野により分類してみると視点1のようなジャンルに分けられる。視点2のゲーム戦略はゲーム内容自体に戦略性(他社との競争優位を目指す要素)やメタ戦略性(競争相手の立場で競合関係を読み、自社戦略を立てる)の或無しで分類する。視点3はコンピュータをどの程度、ゲームのマテリアルとして利用するかの度合である。視点4はゲームにおけるコンピュータ利用がネットワークかオフラインかの分類である。視点5の研修期間はゲームを利用する研修期間の長短で分類される。視点6はゲーム自体が個人型(コンピュータ対戦型)か競争型(グループ対戦型)かの分類である。視点7はゲームの競争ロジックがゼロサム型かノンゼロサム型かで分かれる。最後に視点8としてゲームのオブジェクト要素によるゲームの深度を測定分類できる。(この視点8での詳細オブジェクト要素は視点1のビジネスモデルに依存する)このような分類を試みた背景には、それぞれのゲームが誰を対象に何の為に創られたかというゲームの目的性が最も重要であるというゲーム導入の基本視点がある。今回の作品としての経営シミュレーション・ゲームは、論文上での詳細説明は割愛するが上記視点に沿って分類すると、視点1=マーケティング型、視点2=メタ戦略型、視点3=PC(オールインワン型)、視点4=オフライン型、視点5=短期日型、視点6=競争型(グループ対戦型)、視点7=ノンゼロサム型、視点8=市場*2、製品*3、競合会社数*3(4)、意思決定数150項目/サイクルとなる。以下は本経営シミュレーション・ゲーム注2開発・実践の経験からの論述である。
2.ゲームの輪(図2参照)
経営シミュレーション・ゲームのようにビジネス・シミュレーション・ゲームを集合研修(競争型)として実施するに際しては、そのゲーム自体を設計する設計者:クリエーターとゲームを運営する講師:コーディネーターとゲーム自体を演習体験する受講者:プレイヤーの3要素で構成される。クリエーターとコーディネーターが同一であることも多い。(娯楽ゲームの場合はクリエーターとプレイヤーで構成されるのが一般的である)
これらの3要素の関連を第1番目のゲームの輪ととらえる。次に第2番目のゲームの輪について述べる。クリエーターは最初に現実の経営システムや企業間競争を参考にビジネス・シミュレーション・ゲームのシナリオや仮想経営モデルを設計する(モデリングの過程)、そして次にプレイヤーはその仮想経営モデル・ゲームをコーディネーターの運営のもとプレイする(プレイングの過程)、最後にプレイヤーは仮想ゲームでの体験結果を現実の経営システムや企業間競争へと照らし合わせ変換する(トランスレーティング)ことにより、現実企業経営のヒントとしたり現実経営課題を考えたり展望したりするのが第2番目のゲームの輪と位置付ける。これら2つのゲームの輪にいることを理解した上でゲームを進行しないと仮想現実(バーチャルリアリティ)の狭間で誤解が生じることも認識すべきであろう。ビジネス・シミュレーション・ゲームの開発・実践に当たって最初に強く認識すべきなのは、この2つのゲームの輪である。
3.開発・実践のTIPS
開発・実践については前述第2番目のゲームの輪における3つの過程(モデリング、プレイング、トランスレーティング)毎に、それらを構築・運用する上でのTIPSを記述する。
3−1.モデリング過程におけるTIPS:
モデリングはクリエーターがビジネス・シミュレーション・ゲームを創作する起点となるプロセスであり、第2番目のゲームの輪を認識し、ゲームの目的性、狙いを明確にすることが肝要である。これは娯楽ゲームしかり、全てのゲーム創りの最初にクリエーターは確認し、経営モデルの概念化へと向かい、シナリオ設計、プログラム設計、データー設計等の開発工程のプロセスを経る。
3−1−1.ゲーム設計の単純化と現実性と適用性のバランス:
ゲーム設計に際しては、ゲームのプレイング上からは単純な方がプレイしやすいが、その単純化において現実性が薄れないような工夫が必要であり、併せて研修としての適用上のバランス(日程、時間、プレイヤーのレベル等)を常に配慮して設計する必要がある。
3−1−2.仮想データの検証固め:
現実性の観点からすると、ゲーム上の金額データは国内通貨(¥)をベースに設計するのがベターであり、ゲーム結果の各種財務・経営分析の指標値も現実を逸脱したものにならないよう仮想データとプログラム間で検証しながら開発することが、ゲーム自体の迫真性を高めることになる。欧米のゲーム・モデルを持ち込む場合も、せめて自国通貨にデータ変換する開発努力は要求される。
3−1−3.ゲーム・シナリオの物語性:
ゲーム研修の実施日程やゲーム内での仮想期間(ゲーム・サイクル)においては、起承転結のある物語性をシナリオ設計やデータ設計(景気変動の波等)に内包しておかないとプレイヤーにとっては平坦でつまらない、飽きっぽいゲームになりかねないことになる。
3−1−4.外生変数の取り扱い(ランダム性とギャンブル性):
ゲームで生じる外生変数(景気変動、R&D成功率、保険リスク等)は、そのランダム性によりプレイヤーを刺激する効果はあるものの、あまり依存しすぎたゲーム設計はギャンブル性を増し、健全な研修効果を損なう危険性もあり注意を要する。
3−1−5.タイムラグへの配慮:
景気の反映、在庫、減価償却、税金支払、配当金支払等の期をまたがるタイムラグは意思決定プロセスや財務諸表での対応が必要である。
3−1−6.インターアクション(相互作用)への配慮:
ゲーム設計においては、価格と広告の弾力性をはじめ、意思決定諸要素間(販売計画、生産計画、人事計画、資金計画等)の相互作用を反映するためのロジックを組み込む必要がある。
3−1−7.イレギュラー対応:
ゲーム終了期に闇雲な意思決定をしたり(世紀末戦略)、ゲーム市場を意識して混乱させるような無謀な意思決定に対しては、ガードをかける必要がある。さもないとプレイヤー全体がしらけた状況に陥り、ゲームにおける迫真性が崩壊する。
3−1−8.マルチメディアの効果的利用:
ビジネス・シミュレーション・ゲームにおいては、個人型はともかく競争型(グループ対戦)の設計上、過度のマルチメディアの取り込みは、プレイヤー間の集中度や健全性の妨げになることもあるので注意が必要である。ビジネス・シミュレーション・ゲームにおけるプレイヤーの知的関心度はマルチメディア以上に、取り扱われるビジネス世界のルールや分析数値の追求にあることを忘れてはならない。
3−1−9.画面操作の設計:
PC型の場合、意思決定や分析項目の入出力はボタン方式かプルダウン方式かに分かれるが、検索一覧性の観点から、前者は競争型(グループ対戦)、後者は個人型(コンピュータ対戦)にマッチしている。プルダウン方式はボタン方式より、各種検索項目を多重化できるが、複数プレイヤーがチームとして取り組む競争型ゲームにおいては、プレイヤー間の検索項目が交錯し、一時に画面上で検索目的が共有できない場合も生じる。
3−1−10.プログラム開発(プロトタイピング):
ゲーム開発に際しては、仮想データとプログラムを一体化して開発を進めるのが効率的であり、基本となるボディ・プログラムに次々とアイデア画面を想起し、画面設計から入り、プログラム改良に結び付けるプロトタイピングの開発手法が有効である。
3−2.プレイング過程におけるTIPS:
プレイングにおいてはプレイヤーが簡単で深く且つ楽しく学べるようにコーディネーターとしての運営スキル(フアシリティティング注3)が要求される。プレイヤーが参画意欲を持ち、楽しく達成感のある研修を可能とする為に、コーディネーターは下記運用TIPSを効果的に利用すればよい。
3−2−1.飽きないゲーム運用:
ゲーム自体、難しすぎると敬遠され、簡単すぎると飽きられるという、せめぎあいの中で、如何にしてゲームの健全性と迫真性をバランスよく維持していくかの工夫はゲーム設計のみならずゲーム運営の面でコーディネーターが配慮する必要がある。
3−2−2.ブリーフィングとデブリーフィングの効果的進め方:
ゲーム開始時(ブリーフィング)にはプレーヤーをスムーズにゲームの世界に誘うアイスブレーキングの手法注4が有効であり、ゲーム終了時(デブリーフィング)には疑似株主総会を通してプレーヤーの気づきを促す工夫が必要である。
3−2−3.チーム編成への配慮:
ゲームを利用した体験学習(ワークショップ)はプレーヤー相互の自立した学習でもあり、企業人対象の場合は、プレイヤー個々人のキャリアを考慮した混成チームがプレイヤー間での新しい知の触発を促すことが多い。営業、製造、経理等の職種混在チームの編成は、研修後の現場での経営参画や協働においても、研修効果を発揮する。
3−2−4.研修スペースの準備:
競争型(グループ対戦)ゲームにおいては、チーム個々に部屋を設けるより、総人数収容より、多少大き目の部屋で、呉越同舟にて進行する方が臨場感、対抗意識からも効果的である。
3−2−5.時間配分への配慮:
ゲーム自体の複雑性やプレイヤーのレベルにもよるがプレイヤーが欲求不満にならない程度の検討時間と振り返り時間は必要である。また意思決定結果のフィードバックに時間を掛けすぎたり、結果検討の振り返り時間を短縮したりするのはゲーム研修全体でのプレイヤーの乗り(ゲームでの健全なハマリ状況)を阻害する要因ともなる。
3−2−6.ゲームの公平性:
ビジネス・シミュレーション・ゲームはプレイヤーがTRY TO WINを目指そうとするものであるという視点から設計されるのがよいが、コーディネーターはゲーム自体での勝ち負けに対するプレイヤーの拘りを和らげる配慮をチームそれぞれにコメントすることも必要である。形勢不利なプレイヤーには志気高揚を、形勢有利なプレイヤーには更なる努力を求めながらの進行がコーディネター・コーチングのコツである。
3−2−7.コーディネーター・マニュアルの準備(合いの手、神の手、ミニ講義):
クリエーターはゲームの第3者利用の観点からは下記のコーディネーター用マニュアルを整備しておく必要がある。
・ミニ講義(ゲームを補足する各種基本セオリー等の解説)
3−2−8.プレイヤー・マニュアルの簡潔性:
プレイヤー・マニュアルは出来るだけ簡素なものがベターで、娯楽ゲーム同様ゲーム内容を教えすぎるものは良くない。いきなりコンピュータ画面に向かっても、そのゲーム・ルールなり、方向、コンセプトが推測できるような画面設計が重要となる。
3−2−9.n人ゲーム特殊形態としての3人ゲームの効果性:
現実企業間競争の相手は多数である場合が多いが、ゲーム研修としての効果は3人ゲームがプレイヤーにとっての満足度、理解度は高い。その理由としては競争相手の戦略の読みが覚えやすいことや、読みの効果が明瞭にフィードバックされること、証明の感覚があること、ゲームのダイナミズムが実感できること等が挙げられる。
3−3.トランスレイティング過程におけるTIPS:
ゲーム終了後のトランスレーティング過程において、コーディネーターはゲームに近い現実の事例を紹介したり、ゲームと現実をブリッジするテーマでの討論を取り入れたりすることで、ゲームにおけるプレイヤー同志の問題解決の共有体験から現実課題への協動へと導く効果が期待できる。
3−3−1.自社課題の取り込み:
ゲーム終了後に自社の業績や課題・展望といった話題を取り込むことは、既にゲームを通して経営システムを体験しているプレイヤーが全社的視点を持ち、意欲的に自社経営参画意識を持つ動機付けにもなる。
3−3−2.ビジネス・シミュレーションと仮説検証経営:
情報技術の進化とともに、ビジネスモデル自体が変化しつつある現在、仮説を立て検証する経営アプローチが重要となる。このアプローチに際してシミュレーション技法は有効である。
3−3−3.仮説検証経営と創造性:
仮説をたて検証する経営アプローチは、過去の数値や経営目標値のトップダウンを超えた豊かな計画性や参画性を生み出すところから経営における創造性の芽が育つであろう。
3−3−4.創造性とナレッジマネジメント:
企業経営の創造性は、いきつくところナレッジマネジメントに至ると思う。企業経営におけるナレッジマネジメントを育み、継承していく手段はあるのだろうか?
3−3−5.ナレッジマネジメントとビジネス・シミュレーション・ゲーム:
上記手段として、知識変換の内面化注8(参考「知識創造企業」野中郁次郎、竹内弘高)ともいうべき体験(行動)による学習としてビジネス・シミュレーション・ゲームは位置付けられよう。企業活動にあって、行動を伴わない知識は意味がない。この知識の行動化を可能にするには、現実の場においての企業行動の積み重ねが重要であり、これらが企業の文化を築くのである。この現実の場を、シミュレーション技法により仮想体験し、現実企業行動へのヒントを掴んだり、協働への足掛かりとしようというのがビジネス・シミュレーション・ゲームの本質的且つ大きな狙いである。
4.コーディネーターのスキル(コーチング・スキルの向上)
ゲームを運営するコーディネーターの最も重要なスキルはコーチング・スキルである。プレイヤーの気づきや主体性を重要視した研修運営が求められる。
4−1.マルチスキルの修得:
コーディネーターには以下のようなマルチ・スキルが必要である。
4−2.プレイヤーの気づき(ファシリテータ・スキル):
企業内研修の場合、コーディネーターはプレイヤーの気づきを最優先し、ゲームそのものを教えるとか経営自体を教えるとかいう態度は避けるべきである。ワークショップにおけるファシリテーターとしての役割が必要である。
4−3.アイスブレーキング手法の活用:
プレイヤーが楽しく有益なゲーム研修にするためには、コーディネーターはゲームの様々な局面で、アイスブレーキング手法の取り込みを考慮する必要がある。これによってプレイヤーは無理なくゲームの世界に入り、現実と仮想間でのゲームの輪の意識が芽生えることになる。
5.ビジネス・シミュレーション・ゲームの課題と将来:
半世紀前に米国でスタートしたビジネス・シミュレーション・ゲームも、いまやパソコンの進化とともに第2世代の開発・実践へと歩みつつある。日本においても先進欧米からの受け売りではなく、和魂洋才の新しいビジネスモデルやビジネス・シミュレーション・ゲームの開発が求められよう。今後の更なる発展の課題としては下記の諸項目が挙げられる。
5−1.全社的経営計画モデルへの接近:
ゲームで実施するパラメータやデータを現実のビジネスモデルに近づけたり、ケース事例と組み合わせたりして、全社的経営計画モデルとゲーム・モデルとの接近を図る。
5−2.意思決定パッケージの活用:
現実モデルとの接近に伴い、関連情報やデータが飛躍的に増大しようが、ゲーム自体に意思決定パッケージを連結さすことによって、より高度な分析手法による意思決定力を強化する。
5−3.最適チームサイズと相互知のスキーマ:
ゲーム研修としてのチーム内プレイヤー人数の最適化と、プレイヤー間の相互知の交換による新しい知の創出や変換プロセスが如何に有効であるかという理論化がなされれば、いわゆるワークショップといわれるスタイルの学習効果が証明されることになろう。これにはプレイヤー個々人の知識のデータベースが、他のプレイヤーの知識データベースとリンクしたとき、新たな知のスキーマが創発されるプロセスの研究につながる。
5−4.国際会計基準(キャッシュフロー、時価会計、連結決算等)の遵守:
グローバル化の進展とともに、国際会計基準への準拠が必要であり、ビジネス・シミュレーション・ゲームにおける設計対応も必須となろう。
5−5.ゲーム・クリエーターの育成(ビジネスゲーマー)
ゲームのクリエーターは、コーディネーターのマルチスキルの中でもビジネス経験と情報技術に関するスペシャリティが基盤スキルとして要求される。欧米では大学教授が民間教育産業と連携してビジネス・シミュレーション・ゲームを開発しているケースも多い。
5−6.プレイヤーの人材評価(アセスメント):
プレイヤー自身のゲーム研修におけるリーダーシップや役割遂行能力を個人のコンピテンシーの観点からアセスメントする研究も、将来経営幹部選抜評価の1視点となろう。
5−7.WBT(ウェブ・ベースド・トレーニング)とトレーニングAI:
個人型(コンピュータ対戦)でのネットワーク・ゲームは可能であろうが、競争型(グループ対戦)についてはコーディネーターのコーチング・スキルやプレイヤー相互の知の交換プロセスをネット上で如何に取り込むかのヒューマン・インターラクションが課題であり、トレーニングAI注9や電子コミュニティ注10分野での今後の進展と並行して研究されるであろう。
5−8.新しい競争モデル(グローバリゼーションとコーペティション)のゲーム化:
ビジネス・シミュレーション・ゲームにおける競争のモデル自体が2つの大きい変化の時代に入っている。グローバリゼーションとコーペティション注11である。これらの複雑なモデルを如何に簡単にそして深く且つ楽しく学べるゲームとして作りあげるかは、ビジネスゲーマー自身がアイデアを創出する真骨頂となろう。
5−9.ゲームのクラスター化:
1章に述べたビジネス・シミュレーション・ゲームの類型とともに、この種のシミュレーション・ゲーム研修の効果的導入には、プレイヤーのレベル(学生、新入社員、中堅社員、幹部社員)に応じた各種ゲームのクラスター化が必要であろう。
以上