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JASAG(日本シミュレーション&ゲーミング学会)2004年秋季全国大会発表論文

 本書はIBTオリジナルのビジネスゲーム(シムマーケティング創業版)の普及を目指し、その体験版を添付し、一般学生や新入社員向けに企業を学習する素材や考え方について記述します。これから入社する学生や入社した直後の社員教育において会社とは何か?ビジネスとは何か?会計とは何か?についてゲームを通して、難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを楽しく学んで戴くことにより、企業の明日を担う若い人々がビジネスの面白さについて自分なりの夢とビジョンを築くためのキッカケとなればと期待しています。本文は出来るだけ平易に解説し、ゲームを通して深く学習することにします。

T.会社の仕組み

 皆さんは大学を卒業し会社に入りますか?それとも自ら会社を創りますか?どちらにしても会社とは何かを知ることは皆さんにとっても、これから入るであろう会社にとっても大切なことと思われます。会社には何時、誰が、何の為に創ったかという歴史があります。誰が作った会社かという誰がに相当する発起人が必ずいます。また発起人に対して資金を提供する出資者と実際の会社を経営する代表取締役(社長)がいます。自分で会社を作る場合は、その全てをあなた自身が兼務します。

既に出来あがった会社に入社する場合、皆さんは、その会社を任された社長の下で従業員として働くことになるのです。会社は、その出資金の額や社員数、責任形態の違いにより合名会社、合資会社、有限会社、株式会社等の種類があります。

さて、皆さんは何の為に会社に入ったり、会社を創ったりするのでしょうか?前者は後者に比べて不明確なことが多いものです。それは自分が起こした会社でないため、その設立目的や歴史への関心や理解不足から、大体の業種や知名度や給与・待遇で入社判断をすることに起因しています。個人で会社を創る場合は、この程度の暢気な判断は許されません。会社に入ることを、このような甘い判断に委ねて良いのでしょうか?仮に会社に入るとしても、その会社が何をして儲けているのか、業界の中での将来性はどうか等について勉強することは決して無駄なことではありません。

会社は何故儲けなければならないのでしょうか?それは儲けることにより貴方自身のみならず株主、顧客、取引先、社会等の幸せを拡大することに繋がるからです。会社が儲けることは決して悪いことではありませんが、透明性や公平さや責任等の企業倫理や企業統治を忘れて儲けのみに走ると、結果的に顧客や市場から見放されてしまいます。

皆さんが会社に入るということは、その会社のチームの一員になるということです。皆さんが野球選手で球団を選ぶ場合と、ビジネスマンとして会社を選ぶ場合は、その難易度は大きく違うのです。プロ野球選手を目指す人は、どの球団に入っても野球をすることに差はありませんが、会社を目指す人は、その仕事内容(職種)のバラエティが多く、且つ未体験ゾーンであるために、大まかな職種でしか判断できないことにもなります。このように、会社に入る時に悩んだり、迷ったりすることにより、自分は一体何をやりたいのかという基本的な課題に対峙することになるのです。もちろん自分のやりたい仕事に運良くつける人もいますが、チーム(会社)にはチームの事情もあり、いきなりは自分の望むポジションにつけないことも多いものです。会社に入ってから仕事の上で悩んだりした場合に、この学生時代に悩んだ出発点に戻り解決策を見出すことも多いのです。最初から、これしかないという仕事を見つけられる人も、同じ仕事を続けて歳を経れば他にもっと良い仕事があったのではと悩むものなのです。

会社も皆さん自身も共通している点が多々あります。それは会社も皆さんと同じ人間が構成しているからです。但し会社は人だけではなく、物,金、情報といった経営資源を相手にするのです。会社に入るということは、これら全てについての効率的で効果的な運用が求められるのです。皆さんも経営資源の一つでありながら、且つ他の経営資源を考えてビジネスを展開することに会社での仕事の面白さがあります。会社と皆さんの共通点は、どちらも幸せになりたいと思っていることや、将来こうなりたいという目的を持つことにあります。しかしながら、必ずしも「会社=皆さん個人」という単純な目的構図を描くことは簡単にいきません。そこで入社してから、会社と自分というものを対峙しながら、ときにはせめぎあいながら進んでいくことになります。そのときに大切なのは会社も個人も将来どうなりたいのかという目的(目標)意識と何をしたいのかという価値創造意識なのです。これが見えない会社や個人はビジネスの世界では淘汰されます。これらが見えても相克する場合は、会社と個人の意識を埋めていく努力が結果的に会社と皆さん個人を成長させる過程や礎になるのです。会社の中での仕事を通して独自の汎用的なソースを創造出来る人は、他の会社においても活躍出来るでしょうし、もちろんそのような人材は会社自体が求めている人材でもあるのです。このような能力をエンプロイアビリティ(従業員価値)といいます。将来、会社におけるビジネスマンも個人稼業として生きていくスタイル(会社を自分の能力で渡り歩いたり、自ら起業したりすること)が一般的になるかもしれません。プロ野球を目指す人が熱心に野球の練習をするように、会社を目指す人は熱心にビジネスの演習をすることが大学時代から必要となるのです。では、会社を中心とするビジネスの世界は如何なる仕組みで成り立っているのでしょう。

U.ビジネスの仕組み

 営利目的の会社である以上、ビジネスを通して儲けることは大前提になります。では儲けるためのお金は誰が出してくれるのでしょうか?それは物やサービスを買ってくれるお客様です。物が行き渡った現在、日本ではは良い物(サービス)なら売れるとか、安ければ売れるという考え方は通用しない時代とも言われています。逆に言えば、良い物でも安い物でも売れるとは限らないということです。儲けるビジネスの仕組みのポイントは、どれくらい儲かり(損益計算書)、どれくらい財産が増えた(貸借対照表)かの2点につきます。もちろん儲かっていても現金が無い(キャッシュフロー計算書)という状況はビジネスにとっては死命線であります。これらについては次章で説明しましょう。

儲ける為には何をすべきでしょうか?一番大切なのは、物やサービスを買ってくれる顧客(市場)を知ることです。この視点なくおこなう物作りはビジネスとしての意味を持ちません。もちろん物作りにおいて自社の強みや中核となる能力(コアコンピタンス)を生み出したり、競争の基本戦略であるコスト・リーダーシップや差別化や選択と集中を考えることは必要です。

次に重要なのは、顧客(市場)に対するマーケティングの考え方です。マーケティングは価格(PRICE)、製品(PRODUCT)、流通(PLACE)、販促(PROMOTION)の4Pが重要といわれています。現実のビジネスでは、この4Pに加えて顧客と儲けの視点を併せて考え抜くことが秘訣です。これらをミックスして考えることをマーケティング・ミックスといいます。マーケティング・ミックスはビジネス規模が大きくなればなるほど会社は部門化せざるを得ず、結果的に部門化の壁で動きが鈍くなることも多いのです。ベンチャー企業は小組織で動きが速く、これらのマーケティング・ミックス戦略を俊敏に活かして成功していることも多いのです。

このようにマーケティング技術を活かして儲けを実現するビジネス行為の背景には、それらを正確に把握し理解する会計システムがあるのです。

V.会計の仕組み

 ビジネスにおける儲けを正しく把握するために会計の仕組みを理解することは必須であります。会社は儲けることが目的であり、その会社の儲けの仕組みや数字の意味合いを分らずビジネスを行うことは普通には考えられないことなのでしょうが、会社に入った途端に、与えられた仕事に精一杯で、このような仕組みや数字が分らないことを不安に思わないことも多いものです。家計は奥さん任せの会社版かもしれません。会社が倒産の危機に瀕してからでは遅いのです。

同じ利益額であっても、その利益のために投資した額により儲けの度合いは大きく異なるのです。儲けを出すためには高く売るとか多く売るだけではなく安く作ることも多いに貢献するのです。経営の数字が、A=B−C、C=D−Eなら、Aを増やすためにEを如何に減らすかというような全体バランスとしての数字理解や行動実践が必要なのです。このように会社の全体像を知り、自分の仕事を進めていくことはビジネスをゲームと考えた場合は当たり前のことですが、現実にはこのようなオーナーシップ(自律意識)をベースにチーム・プレイが出来る会社は少ないものです。

会社の儲けや財産やお金の流れをまとめたものとして財務諸表(損益計算書PL、貸借対照表BS、キャッシュフロー計算書CFS)があります。これらの関連性を理解しておくことは会計の仕組みの第一歩です。一般的には浴槽の定理というシナリオで説明されます。会社のお金の流れや儲けの額を浴槽の水の増減で理解しようというものです。朝300リットルあった浴槽に水を満たしながら一方では底から流出している状況を想定します。夕方に浴槽が400リットルに増えたとしましょう。この100リットルの増量が会計上の純利益と考えられます。これは貸借対照表で捉えられる資本のストックとしての増加分ですが、実際どれほどの水が入ってきてどれほどの水が出ていったかは、これだけでは分りません。そこで一日どれだけの流入量(売上)があり、どれだけの流出量(費用)があったのかをフローとして示すのが損益計算書なのです。今、一日の損益計算書の流入量が550リットルで、流出量が450リットルであったとしましょう。この流入量−流出量=利益(100リットル)はストックとしての増量100リットルと一致するのです。ところで、この流入,流出のための桶を20杯用意していたとしましょう。流入時には1杯の桶に50リットル入り、流出時には41リットル入るとします。流入時の50リットルは1杯あたりの販売価格と見なし、流出時の41リットルは1杯あたりの売上原価と考えます。流入量(売上)が50リットル×11杯で、流出量(費用)が41リットル×11杯とすると収益550リットル−費用450リットル=純利益100リットルと表せるのが損益計算書です。これに対してキャッシュフロー計算書の考え方は、流入時50リットルの桶11杯(50×11=550リットル)が売上収入となり、流出用に準備しておいた41リットルの桶20杯(41×20=820リットル)が仕入支出という計算になるのです。すなわち収入550リットル−支出820リットル=純収入▲270リットルということで270リットルの不足という事態になります。では最初からどちらも11杯を用意しておけば良かったのでしょうが、この杯数がまさに売上予測となるのです。多く用意すれば余り、少なく用意すれば流入(売上)機会を損失することになるのです。(添付図参照)

ビジネスでは如何に損益計算書で黒字を計上していても、現金が不足していればゲーム・オーバー(倒産)に至ります。まさに浴槽事例のごとく勘定あって銭足らずの状況になるのです。

このような会社の仕組み、ビジネスの仕組み、会計の仕組み全般をゲーム化した教材として「シムマーケティング(創業版)を提供致します。

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W.ゲームの仕組み

 いままでお話してきた会社、ビジネス,会計の仕組み理解の為に作ったのがビジネスゲーム(シムマーケティング)です。ビジネスゲームを体験することにより,皆さんは多くの知識を学んだり、これから何をより深く学ぶべきかが分るのです。

人生やビジネスは、よくゲームに例えられます。「人生はゲームだ」とか「ビジネスはゲームだ」とかが、ゲームの主体性を表しています。その通りであることが多いのですが、唯一の違いがあります。それはゲームではリセット出来ても、人生とビジネスはリセットが出来ないことです。そのためにもゲームで試行体験することによりビジネスを学ぶことは貴重な学びを皆さんに提供できることと確信します。

一般的にゲームというものはルールとアイテムから構成されます。人生におけるルールとは道徳観や価値観みたいなものと、アイテムは人生目標などと解釈できます。同様にビジネスにおけるルールは市場、アイテムは経営目標などと解釈できるでしょう。ビジネスにあってはルール自体が変わったり(規制緩和、合併等)もしますがアイテムは自ら作るしかありません。これは個々人の人生同様、会社においてもその自律性が求められるのです。

では皆さんはシムマーケティング上で如何なるアイテムを作られるのでしょうか?

 添付

  1. シムマーケティング(創業版):ゲームの記述

  2. シムマーケティング(創業版):体験プログラム

  3. シムマーケティング(創業版):受講者マニュアル

  4. シムマーケティング(創業版):講師マニュアル

シムマーケティング(創業版)は2004年星城大学経営学部ゼミナールにて導入済です

@シムマーケティング(創業版):ゲームの記述

シムマーケティングはプレイヤーを3チーム単位に分け、それぞれのチームを会社として同一業界内で競い合う状況をシナリオ化している。プレイヤーは各自のチーム(会社)内で社長以下、営業、生産、人事、財務、調査等の部門長を決め、初年度は与えられた状況(資本金500万円)の下、各チーム同一の意思決定を下すことによって、プレイヤー自身のゲーム・ルールの理解と同一業界内での3社公平(同一)な業績均衡点を生成する。意思決定は販売計画に始まり、生産計画、人事計画、財務計画へと連なり、約100項目の意思決定を計画シミュレータの下で練り上げる。2期目以降はあらゆる意思決定がゲーム・ルールの下で可変となり、プレイヤーは景気指数や与件の業界動向を推量しながら各自の戦略を立てる。決められた時間内で意思決定を終了し、各期のゲーム・ダイアリーを記入提出する。3期目に際しては3,4,5、6期の中計を立ててから意思決定に臨むよう運営される。販売製品はA,B,Cの3種であり、これらを都市、郊外の2市場に販売生産していくことになる。販売計画では販売数量、販売価格、流通チャネル(直販店、量販店)、営業マンの数、広告媒体(インターネット、チラシ、雑誌、電話、ラジオ、DM)選択等の意思決定を市場毎に下す。次に販売計画を受けて生産計画に入る。生産計画では販売計画で決めた製品数量を確保すべく生産設備や技能系社員の数、コストダウンに繋がる品質管理投資やR&D投資額を決め、場合によっては有料情報にて購入した顧客の製品別選好度指標に沿った製品のグレードアップ仕様を図り製品自体の差別化を図り、その後部品の調達を発注する。また人事計画では販売計画と生産計画で必要とする社員(営業マン、技能系社員)の採用を決定したり、各々の教育投資額を決める。(教育投資額を怠ると退職社員が発生する)会社苦境期には社員の解雇も可能であるし、業績に伴った給与の変動も可能であるが、社員の士気等を考慮せずに実行すると従業員満足度指数にインパクトが出る。最後に財務計画を立てる。財務計画は収支のバランスから限度内での借入金や貸付金への運用及び条件を満たせば上場も可能となる。財務レバレッジ等の考慮を怠ると経営指標に悪影響も出よう。プレイヤーはこれら全ての意思決定が終了すると財務シミュレーションという計画シミュレータを実行することにより計画PL、BSを即座に入手でき、そのシミュレーション結果に基づき販売、生産、人事、財務の諸計画の修正改良という意思決定の練り上げ作業に入り、制約時間内に最終意思決定のボタンを押せば終了となる。各社の意思決定データはフロッピーに書かれ、講師用パソコンで集計され各期の業績がフィードバックされる。プレイヤーはフィードバックされた業績結果からマーケットシェアや売上、在庫及び各種経営指標(ROA,ROE,EVA等)やPL、BS、CF等の財務諸表を読み取り、次期の意思決定に備えることになる。この繰り返しを5,6期経て、ゲーム演習は終了し、各チームは通期の業績報告としてのデブリーフィング(擬似株主総会)の準備にかかる。準備資料は各期にフィードバックされた業績結果や講師側が提供する通期の累計業績一覧表から各社毎にパワーポイントで作成発表してもらう。この作成についてはチーム作業でも個人作業でもよい。この作業を通して受講者は復習の大切さを認識し、デブリーフィングによるプレイヤーの気づきを喚起することにもなる。これでゲーム全体の進行も含めた記述を終えるが、ゲームに先立つブリーフィングにおけるアイスブレーキング手法の活用やゲームとゲームの間におけるミニ講義の挿入はプレイヤーの関連知識レベルに応じて準備することになる。

       A,B,Cは割愛致します