平成12年『盆の風鈴』 自選15首
少年のゆめ深々と夏草に埋もれた鉄路とともに錆ゆく
晴れた日は思いおもいにヒ−ロ−を名乗って集いしはるかな草むら
叢に見つけし卵少年の罪をわたしと親鳥が知る
婚礼の家具積む車と霊柩車春のひなたを連なってゆく
煤煙を遠くへ散らすためにだけ高さ増しゆく火力の煙突
遠ざかるほどに見えくるものあると海が眩しい絵はがきがくる
夜半には雪になるという雨に濡れて首輪を捨てた犬よいずこへ
子の部屋に色褪せて行く「ルナシ−」のポスタ−さへも形見のひとつ
風吹けば道を尋ねる亡き吾子の声にも聞こえる盆の風鈴
まっさらな手帳に吾子の命日と生誕の日をともに書き込む
灰色のロッカ−の列 一日の重荷をそっと降ろし置く場所
冬枯れの立木にひそと身を寄せて枝張るわれの影を愉しむ
夕の色に都心のビルが染まる頃ドミノ倒しの幻想を抱く
いうなればわれも短い夏に謳う飛ぶこともなきヒト科のセミ族
さくら散る夜半に刃を研ぎ終えた少年が読む『テロルの決算』