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Intermezzo 旅行〜憧れ〜ある歌 私は今ドイツ行きの準備をしています。それなら、さぞかしワクワクしているだろうって? さて、どうでしょう。心の片隅にはいつも、毎年減る仕事のことがあります。本当はもう、外国旅行をしていられるだけの稼ぎはない。私の仕事仲間はみんな、急いで外国旅行をしました。将来への生活不安から、今のうちに出来ることをしておかなければという焦りが出たのです。私も、まるでせきたてられるように今回の旅行を計画しました。 ほんらい旅行は、こんな風にして行くものじゃない。旅行は、行きたくて行くものです。ワクワクするはずです。「今行きたいから」行くのであって、「今でなければ行けなくなるから」なんて変です。それなら、あえて発想を変えましょう。足元の現実からではなく、あえて理想論から攻めてゆきましょう。理想の旅行像って、なんだろう。それは、憧れでしょうね。 まだ見ぬ地への憧れ。それは人を強く突き動かすもの。あまりに若い頃に旅をすると、旅先で現実ではなく、自分の心が作り出した幻を思い出として持ち帰ることがあります。私はそれすら是と考えます。いやむしろ、うらやましい。では大人になって、判断力を身に付けてからの旅はどうでしょう。抱いていた憧れは、その地の現実とは必ず違います。ところがそこから新しい種類の憧れが、今度は空中楼閣ではなく、大地に根付いた形での憧れが生じることもあります。そしてその地を去る時、いつの日かもう一度来たいと思うのです。 憧れてもいいじゃないか。真面目くさった顔をして現実と向き合うだけが人生じゃない。義務を果たした後ならば、自由に過ごす権利もある。自分の人生の方向は自分で決められる。なるほど世の中は思うとおりにはならないから、望んだ目的へまっすぐ行けないことはたくさんあるが、それでも初めの一歩をどっちに向けて踏み出すか決めるのはいつだって自分自身なんだ。その絶対的な権利を、大事に使おうじゃないか。私は自分にそう言い聞かせます。 そこで一曲、ドイツの歌を紹介させてください。憧れの歌です。歌うのはベルリンのパンク・ロックグループ「ディ・エルツテ(おいしゃさんたち)」。曲は1988年発表の「ヴェスターラント」。ベルリンにいて、遠く北海のリゾート地に恋い焦がれる歌です。 タイトル:ヴェスターラント アーティスト:ディ・エルツテ 毎日ヴァンゼー湖畔で 波に耳を傾ける タオルの上に寝そべっても 安らぐことはない この愛は終わらない また会えるのはいつだろう 時には目を閉じて 海辺にいると想像する するとこの島が心に浮かび ハートはこんなにも重苦しい この愛は終わらない また会えるのはいつだろう そんな憧れに 思慮分別はぶっとんだ 帰るんだ北海へ 戻るぞヴェスターラントに 何度岸辺に立って シュプレー川に飛び込んだことか そのたびにあれが救ってくれた 沈まないように この愛は終わらない また会えるのはいつだろう そんな憧れに 思慮分別はぶっとんだ 帰るんだ北海へ 戻るぞヴェスターラントに それはいささか高くつくが それのためなら構わない 知っているさ ここにいる人の 2人に1人は お馬鹿なお仲間 そんな憧れに 思慮分別はぶっとんだ 帰るんだ北海へ 戻るぞ 戻るぞ 戻るぞ 戻るぞヴェスターラントに 曲中に出てくるヴァンゼーはベルリン郊外に、またはベルリンとポツダムの間にあるとも言える湖です。シュプレーはベルリン市内を流れる川です。いっぽうヴェスターラントは、ドイツ領土内では最北端に位置する島ズィルトにある町で、夏のリゾート地として有名です。1990年の東西ドイツ統一でバルト海沿岸に人気が出るより前には、今以上に人気が集中していたに違いありません。日本人から見ればヴェスターラントは普通のドイツの町ですし、砂浜に独特の椅子が出揃う様子は北海沿岸でもバルト海沿岸でも違いはありません。それでも1990年以前に出来たこの曲では、ヴェスターラントはビーチリゾート地の象徴なのでしょう。ヴェスターラントは憧れの地なのです。 |