さよなら、アンバサダー

新たに背負い込んだ欠陥
“インスタントアンチリバース”

 新型アンバサダーは、その後もう一つ大きな欠陥を背負い込んだ。それは“インスタントアンチリバース”である。逆転防止機構が爪式からローラーベアリング式に変わり、そのローラーベアリングはハンドル基部に収められるようになった。このハンドル基部が右カップに取り付けられている強度が、長期の使用に耐えられないほど弱いのである。
 スプールからメインギアにかかる力と、ハンドルの逆転方向からかかる力を、この部品が受け止めている。ここには相当強い力が加わるはずだ。にもかかわらず、厚さ1mm程度しかないアルミ製のカップに俵型の穴を開け、そこに同じ俵型をしたハンドル基部の接合部分を差し込み、打ち付けてかしめてあるだけなのだ。真鍮製ならまだしも、アルミ製のカップでこれをやると、腐食と変形で徐々に穴が広がり、ハンドル基部がぐらぐらし始めて、最終的にはすっぽ抜ける。
 
この現象を、私はProMaxで経験した。ProMaxは他の点でも造りが粗悪な、品質の低いリールだった。使い始めてすぐに複数の不具合が出始めた。ただし、私がこのリールをオフショアのバーチカル・ジギングにも使用したことは明らかにしておかなければならない。あれほどリールを酷使する釣りはない。特に猛然とジグをしゃくるのがいけない。おまけに、ロッドを持つ左腕だけでしゃくると疲れるから、リールを巻く右手もリールのハンドルを引っ張り上げて、ロッドをしゃくるのを助ける。そんなことをすれば、逆転ストッパーにかかる負荷が非常に大きい。
 強調しておくが、逆転ストッパーが壊れたのではない。逆転ストッパーを組み込んであるハンドル基部が、アルミのカップからもげたのである。個々のパーツが弱いのではなくて、強度に関するトータルなバランスが悪い。要するに設計上の問題だろう。

 ハンドル基部は約1o厚のアルミプレートにかしめてあるだけ。ここにインスタントアンチリバースのローラーが組み込まれている。スプールとハンドルの逆転をここで止めているわけだから、この部品には強い力がかかる。案の定、ガタが出て、緩んですっぽ抜けたからエポキシ系接着剤で固定してある。

 ハンドルにもボールベアリングが入っているが、その恩恵であるはずの耐久性を実現する間もなく、ゴムのノブがすっぽ抜けた。ふにゃふにゃのゴム製ノブを、なんと差し込んであっただけである。シャフトもかしめ方が弱く、ぐらぐらになっていた。

 “インスタントアンチリバース”は、現在のアンバサダーに広く採用されている。4000/5000/6000番台の新型はすべてこの方式である。したがってProMaxで起こったような不具合が、アンバサダーの主力である4000/5000/6000番台にも起こりうる。リールにとって特に過酷なバーチカル・ジギングにさえ使用しなければ大丈夫なのではないのか? アンバサダーの場合、その答えは30年後に明らかになる。それが「AbuGarcia for life」とロゴに謳うことの意味である。私は他のリールにこんな厳しいことを要求しない。

※for life・・・ABU社が潰れてしまった今、そんなことを言っても仕方がないが、かつてABU社は製品に「life time guarantee」、つまり終身保証を約束していた。それを知っているユーザーなら、「for life」がいかに責任の重い約束か、理解している。まちがっても「人生を彩るAbuGarcia」などと翻訳しないように。「for life」とは、明確に「終身の、一生」という意味である。[株式会社三省堂 デイリーコンサイス英和・和英辞典]。

 私は旧型の爪式の逆転防止機構になんの不満もなかった。ハンドルの遊びなど、リールを巻いていてそれほど気になるものではない。いわば余計なお節介の“インスタントアンチリバース”のせいで、アンバサダーの耐久性が大きく損なわれたのは残念でならない。



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