偏光交霊運動による
  死者との時間差接触

    (As the other relief)



   ……まだまだ彼には出逢えます……

ほつれたザイルのいくとおりかの編み合わせ
岩の回路の向こう側
切れたザイルの果てとの距離を
ぼくは何度も往還し
そのことごとに彼の無音の鐘を聴く

(黎明に低迷する仲間たちを抱いて)
(彼のはがねの肉声は仄明るく)
(陰画ネガの谷間にたなびいた)

ぼくが今も蒼醒めたり
身を澄ます衝動に刺されたり
この後々の痛みある周期には
彼はぼくの登高の金てこである

  考え得る限りの遠くな場所に
  失墜者は必ず立っており
  いっそう遠くな異郷のうたで
  ぼくの粉々した区画を浸す
  水路に浮かんだ
  ぼくは木っ葉だ
  失墜者は山のレンズの
  空にせせらぐ運河を渉り
  鉱物時計の季節を示すが
  ぼくには巨き過ぎて読むことができない

(例えばテントのあかがね色の酒気のさなかで)
(彼はぼくらの地平をよぎり)
(ぼくらは彼の記憶に融ける)

その時だ 思うのは
彼の黄泉よみへのダイヴの中で
幾千の同胞はらから
幾千のぼくの序章が
砕かれ分かち合えたということを
その時だ 思うのは
死んでいるのは彼じゃない!
死んでいるのはぼくの非力だ……
生きているのが彼である!
生きているのが彼の無力だ……

  ……まだまだ彼には出逢えます……

(1982)

(「黎明 KY追悼号」(1983年3月1日発行)掲載)


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