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題名:死者の長い列 原題:A Long Line Of Dead MEN (1994) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見書房 1995.10.25 初版 価格:\1,900 前作『死者との誓い』に続いて、また『死者・・・・』ですか? といった感じで開いたこの本。前作のしんみり重いムードを引き継いでいながら、今度は少し殺人の事件そのものに工夫を凝らした非常に独特な事件。こういうのは本格ミステリの読者なんかにもけっこう受けるプロットなんだろうか? 自分は別に本格っていうのに興味がないので、よくわからないが、それにしても、やはりこの事件の考案には、作者の短編小説的な遊び心みたいなものを感じる。 それでも確実に本格の読者を離反させるのは、ブロックが執拗に描くところのスカダーのエレインとの恋愛生活風景、またミック・バルーとのやくざな夜明け、AA集会・・・・と本筋から大きく離れたところでのスカダーへの描写の数々であろうなあ。 ぼく自身今のスカダーにそれほどの魅力も感じなくなってきているんだけど(当然、かつてに較べればの意味です)、それはいつ飲み始めてしまうのかというアル中探偵の存在の不安定さというのが、未だに作者の描写にこめられていながらも、徐々に初老を迎え、人生の終わりのほうへと目を向けはじめるスカダーに、まだまだ10年やそこらでは自分の実年齢の方を追いつかせたくないではないかという読書的逃避の欲望ゆえかもしれない。 前作は非常に自分なりにのめり込む部分があったけど、総体的にはなぜ今MWA賞なのかとの疑問も感じた。そして今度はまたも「死」を主題に据えた作品で、スカダーものはこうなると「酒」といい「事件」といい、常に「死」の方角を向いたシニカルな作品という設定と統一していくわけかな、と改めて肯いてしまう。 小説的な巧さは相変わらずだけど、個人的には谷間の作品であるように感じました。87分署シリーズなどと違って、ただ独りの人生を追いかけるというのは、作者にとって小説作り以上のなにものかであることはわかる。読者がけっこうスカダーという人物に愛着を覚えているくらいなのだから、作者にとってのそれがいかほどかと想像するだに、作品への愛情はしみじみと感じられる。 作者は脇役を増やしも減らしもしているし、スカダーは驚くべき現実の速度で年齢を重ねている。こういう種類のシリーズ作品と言うのはもはや一冊の本としての評価がしにくい、っていうのが、ずっとスカダーとつきあってきてしまった読者の本音である。 もう一つ言いたいこと。 ブロックという作家は短編を読んで以来、実は情緒的な作家ではなく、計算された作品を職人的に作り出すタイプの技巧的な作家なのではないかと思い始めている。もちろんスカダーものの情緒がすべて作り物であって作者とは何の関係もない、などというつもりはさらさらないのだけれど、それにしてもこのシリーズのこの色彩の統一感やら、キャラクターの生かし方などを見ていると、最後には巧いプロット、巧いキャラクター作り、状況設定、唯一無二の個性。あらゆる素材が作者の職人的な部分を指差しているような気がしてならない。読者のハートの捉え方などは一流で、いつもどこか、うまく騙されてしまった気分を感じながら、「このできのいい大嘘」のラストページを閉じざるを得ないのだ。いつも若干の懐疑とともに、満たされながら・・・・。 (1995/10/28) |