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題名:死への祈り 原題:Hope To Die (2001) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見書房 2002.11.25 初版 価格:\2,200 前作『皆殺し』ではミック・バルーを主役に配したかのような世紀末的クライマックスを展開し、その後のスカダー・シリーズは一体どうなるのかというスリリングな決意の後、ようやく待望の新作が出た。 本作ではブロックは冒険をしている。一人称単数のハードボイルドのシリーズに三人称単数の別章を同時進行させるということは、ロバート・B・パーカーも『真紅の歓び』でのみ許した手法だが、どちらも原題を代表するハードボイルドのシリーズであるだけに作家としては相当の冒険なのではあるまいか。 そして両作に共通する問題なのだが、三人称視点をとりわけ殺人者の側に沿って取り入れることで、いわゆるシリアル・キラーを主体としたサイコ・スリラーというジャンルを従来のハードボイルド・シリーズに重ねてしまうということでもある。ある意味では否定派の大きな存在を想定しながらのことだとは思うが、やはりこれは従来のシリーズのちょっとした破壊行為と捉えられかねない。 本作はどうかというと、当然一人称単数で通せない作品ではない。ほとんどTJとの合同捜査のようでもありながら、マット・スカダーの個人生活が佳境を迎えていることが、捜査の重要なモチーフのようにもなっている。離れた妻のその後の宿命。子どもたちとの交流とトラブル。現在のエレインとの生活や、禁酒とのまだ続く闘い。エトセトラ。エトセトラ……。 三人称視点を用いた場合、マットの知らない部分を読者が知るという物語的矛盾が生じる。マットの知らない部分について書きたかったのであれば、この先の作品はどうなるのかという興味も生じる。ある意味で放り出されたままどこにも着地していないようにも見える。多くの懐疑と真実を含んだまま次作へということなのだろうか? それともこれはここで完結したことなのだろうか? どうも未読の人たちに投げかけるわけにゆかないいくつもの歯がゆさを感じてしまうのだが、どうせシリーズ読者の読むべき一作には代わりがないのだ。相変わらずブロックのストーリーテリングはのっけから巧い、この一言に尽きる、とだけ言っておこう。 (2002/11/13) |