●船戸 与一 <血と硝煙の世界……国境の向うの叙事詩>

 船戸与一は、異色だ。早稲田大学探検部出身の彼が、モスクワ経由でソ連入りして国後島のチャチャヌプリを登ったという記事を読んで、彼は小説を書くために、現地踏査を厭わない人だと実感した。未だソ連邦崩壊前夜のことである。彼はその探検行を元に後に『蝦夷地別件』を創り上げた。

 豊浦志朗の名義で『叛アメリカ史』を書いた彼は、先住民族とそれを虐げてきた略奪者たちの構図、その上に成り立った現代史の上に皺ぶく闘争と不条理の歴史に、小説という弾薬をもって風穴をあけようと試みてやまない。恩讐と欲望の果てに沸き起こる血と硝煙の宴を、彼のペンは日本冒険小説の名の下になぞってゆく。他の誰もが決してやろうとはしない世界の果てを自ら旅し、取材し、調査し、彼なりの咀嚼を施す。

 われわれが目撃するのは小説作品というかたちに昇華された彼なりの叙事詩である。現代史の語り部としての、船戸の存在は、日本活字文化において、まさに唯一無二なのだ。


満州国演義
タイトル発行年
風の払暁 満州国演義 I2007.04
事変の夜 満州国演義 II2007.04
群狼の舞 満州国演義 III2007.12



作品リスト
タイトル発行年
非合法員1979.3
祖国よ友よ1980.10
群狼の島1981.6
夜のオデッセイア1981.7
蛮族ども1982.4
血と夢1982.5
銃撃の宴1984.6
山猫の夏1984.8
神話の果て1985.1
カルナヴァル戦記1986.4
猛き箱舟1987.4
伝説なき地1988.6
緑の底の底1989.10
炎流れる彼方1990.7
砂のクロニクル1991.11
黄色い蜃気楼1992.9
蝦夷地別件1995.5
蟹喰い猿フーガ1996.1
かくも短き眠り1996.6
蝕みの果実1996.10
午後の行商人1997.10
流沙の塔1998.5
海燕ホテル・ブルー1998.8
龍神町龍神一三番地1999.12
虹の谷の五月2000.5
新宿・夏の死2001.5
緋色の時代2002.1
夢は荒れ地を2003.6
三都物語2003.9
金門島流離譚2004.3
降臨の群れ2004.6
蝶舞う館2005.10
河畔に標なく2006.3
藪枯らし純次2008.1



エッセイ、他
タイトル発行年
硬派と宿命 はぐれ狼たちの伝説1977.11
叛アメリカ史1977.11
諸士乱想トーク・セッション181994.6
国家と犯罪1997.5



翻訳
タイトル発行年著者
闇の中から来た女1979.3ダシール・ハメット


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