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題名:クラッシュ 監督・脚本:ポール・ハギス 出演:サンドラ・ブロック 、ドン・チードル 、マット・ディロン 、ジェニファー・エスポジート 、ウィリアム・フィクトナー 、ブレンダン・フレイザー 製作年 : 2004年 製作国 : 米国 ここのところ『ミリオンダラー・ベイビー』や硫黄島二部作でクリント・イーストウッドと組んで世界的に名を馳せるようになったポール・ハギスが、一方で監督・脚本をこなし、そのどちらの仕事振りも評価され、アカデミー賞を獲得してしまった。これだけを聞くといわば怪物映画なのだが、実際に観てみると、最近のアカデミー賞の傾向でもあるのだが、怪物らしさなどは、どこにも感じさせない。 1980年にロバート・レッドフォードが初めてメガフォンを取った「普通の人々」が、驚くべきことにアカデミー作品賞を獲得したあのときと同じように、アメリカは(日本と同じように)今も病んでいる。人種の問題、心の問題を、こうして映写機の真芯で捉えようとして、強い気持ちで切り拓いた映画こそが、地味であれ、常に評価され、受け入れられてゆくということなのだろう。 マーティン・ルーサー・キング牧師暗殺から40年、ロドニー・キング事件に端を発したロス暴動から15年、人種間葛藤から永遠に足を洗うことのできないアメリカはLAの物語。群像タイプの映画で、誰もが主人公であるように見えるのは、誰にも少しずつ感情移入できてしまう表現豊かな脚本と演技陣のもたらした精一杯の表現の賜物だろう。 ぶつかり合うことでわかってゆく。つまりぶつかり合わなければわかり合うこともない真実。自動車事故のクラッシュに始まり、人の衝突、クラッシュがもたらす暴力、失態、理解、共感、労わり、孤独、絶望、愛情といった数々のヒューマンな要素を過酷なまでに抉り出す。多くの短編小説を読んでいるような語り口の鮮やかさが、この映画の全編に込められていて、一瞬たりとも見逃せないほどに密度が濃い。 大小の印象的なシーンは心の映画史に深く刻み込まれることになりそうだ。とりわけ「私がパパを助けてあげる」と重厚の前に父に飛びつく幼い娘のシーン。また、複雑な思いの再会が絡んだ車両火災の救出劇。この二つのシーンは、本作品中の白眉だと思う。
(2007/02/24) |