A subgroup: A 型亜型。定性的及び定量的な差異によるA 型の分類。 A1 は最も一般的で80% を占め、残りは A2 である。この他にも A3 , A x , A m 等が極僅か見出される。

Aberrant clone: 異常クローン。Forbideden clone( 禁止クローン) のこと。仮想のクローンである。胎生期に抑圧されていたクローンが成熟期に活性を取り戻して自己免疫疾患を発症することもあるという。

Aberrant gene: 異常遺伝子。Chromosomal aberration, radiation induced chromo-somal aberration のような表現をする。

Absorbed anti-A 1: B 型血清を A2 型赤血球で吸収した試薬。赤血球上の A1 抗原の検出に使用される。

Absorption: 吸収。数種の抗体の混在する血清から、不必要な抗体を, それに対応する抗原を持った血球などを加えて吸着させて取除き、必要な抗体のみを血清中に残す操作をいう。特異性を高める操作。 adsorption と互換的に用いられる。

Accessible antigens: 寛容抗原。抗体産生細胞に正常に接することができる自己抗原、この抗原に宿主は寛容になっている。

Accessory cells: 補助細胞。抗原提示細胞と免疫刺激細胞(immunostimulant cells)を合わせてaaccessory cellsまたはhelper cellsという。

ACD: Acid-citrate-dextrose solution.カルシウム・キレート剤であり、dextrose は保存赤血球の栄養となる。

Acetate Ringer's solution: アセテート・リンゲル液。Sellards(1910)がフィリピンでコレラの治療に酢酸ナトリウムと重曹を使用したのが最初と言われている(Cash 1969)。下痢による急性アチドーシスと脱水症を治療し尿毒症への進展を防ぐのが目的であった。当時の経験では重曹水の方は高圧滅菌するのに炭酸ガス分圧を高く保つ必要があり大量に消毒しにくい欠点があった。酢酸ナトリウムはオートクレーヴが容易、安価、安定、体内での寿命が長い、等の利点があった。乳酸ナトリウムは黴が生えやすい、ガラス器具を腐食する、体内寿命がまちまちであると言う欠点で使用されていなかった(Cash 1969) 。著者は独自に酢酸ナトリウム・リンゲル液をラクテート・リンゲル液の代わりに使用して実験的臨床的に好成績を挙げたものであるが、後者があまりにも先行しすぎたため様子をみてきた( Sumida 1968-a, -e, 隅田 1969-b)。その後の経過は欧米でも同じであったようで、酢酸ナトリウムが本格的に研究されはじめたのは人工透析(表1 ―6-1)が盛んになった1970年以降に透析液の組成として使用されている(Richards 1982, Burnier 1992, Frey 1994)。本文

α chain of immunoglobulin: α鎖。IgA のH 鎖。ヒトIgA にはIgA1とIgA2のsubclassがあるので、それぞれをα1 鎖とα2 鎖と呼んでいる。

Acquired antigen: Antigen 参照。acquired immunity:獲得免疫。

Acquired B: A 型の人の赤血球が細菌感染によって抗B と弱い凝集反応をすること。A 抗原のN-acetylgalactosamine からアセチル基が細菌酵素によって切断されるために生じる。又は赤血球が抗B 血清の着色色素acriflavine と反応して凝集する現象。

Acquired immunodeficiency syndrome (AIDS): 後天性免疫不全症候群。Human immunodeficiency virus(HIV) 感染による臨床的及び検査上の疾患。AIDS患者は免疫系が重症欠損性であり、広範な日和見感染症や腫瘍症に容易に罹患する。

Acquired tolerace: 獲得免疫寛容。

Actinomycin D: アクチノマイシン D。RNA 鎖の伸長を妨げる抗生物質。

Activated protein C: APC. Protein C はヴィタミンK 依存性のセリンプロテアーゼ前駆体である。Protein C は血管内皮細胞膜上のthrombomodulin(thrombin 受容体) に結合したthrombin(cofactor 増幅因子でありactive protease である) によって活性化(PC のH 鎖のArg:12-Leu:13 結合を限定分解して12残基のアミノ酸鎖の活性化ペプチドを遊離) してAPC となる。APC は活性化[因子と活性化X因子を燐脂質とCa2+の存在下に失活させるが、この時protein S(ヴィタミンK 依存性) がcofactorとなって[a とXaの失活を促進する( 活性化していない[因子とX因子も失活させるが、活性化した因子をより強力に失活させる) 。従ってprotein C とprotein S の先天性欠損症では凝固は進行するはかりであるから重症多発性血栓症を発生する。結果的にAPC は線溶促進的に作用することになる。

Active center: 活性中心。active site 活性部位とも言う。基質が結合すると触媒作用を発揮するようになる酵素分子の部位。巨大な酵素分子表面の割れ目(cleft) 又はポケット(pocket)のようなものと表現されている(Bhagavan 1992) 。活性中心の触媒作用の発現様式には 2説がある。錠鍵関係説(lock and key relationship model) と誘導適合説(induced-fit model、D.E. Koshland による) である。活性部位の型と基質の型は鍵と錠のように最初から相補的とするのが前者、活性中心の型は先ず基質が酵素に結合してから基質に適合するように酵素の立体的整合が誘導されるとするのが後者である。どちらでも結果は同じ事のようにおもえるが、後者の考え方でなければallosteric effectsの理論(Jacques-Monod 1965, Koshland 1966) には発展しないだろう。酵素免疫法(EIA) において、ある酵素が標識として使用されるために被検体( ハプテン) と結合( 共有結合) させるが、活性中心に直接結合させると酵素は失活する。従ってハプテンは活性中心から離れた部位に結合していなければならない。ハプテンの結合して酵素を標識化( 修飾) 酵素と言う。修飾酵素反応の特性はミハエリス(Michaelis)定数( Km) が一つの指標となる。活性中心には基質結合部位と触媒部位とがあると言われる(Bhagavan 1992) 。例えばAcetylcholinesteraseによるacetylcholine のcholine と酢酸への加水分解では、陰イオン化部位(anionic site)が前者で、エステラチック部位( esteratic site) が後者であるとされている。神経筋結合部位のbasal lamina内には沢山のacetylcholinesteraseがあってacetylcholine が迅速に分解される。この分解が起こらなければ筋繊維の持続低脱分極が起こることになり、呼吸不全の原因となる。

Acyclovir: Acycloguanosine, purine化合物。単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus )1型と2 型及び水痘- 帯状疱疹ウイルス(varicella-zonster virus) に特異的に作用する素晴らしいアイデアで生まれた抗ウイルス剤。本剤は毒性が無くウイルス感染細胞に優先的に取り込まれる。それはこのウイルスの合成するthymidine kinaseのほうが細胞由来のthymidine kinaseよりも遙に効果的にacyclovir を燐酸化するからである(細胞由来のthimidine kinaseはacyclovir を燐酸化できないとも言われる) 。ひとたびacyclovir がherpes simplexとvaricella-zosterウイルス由来のこの酵素でより強力に活性化されてacyclovir monophosphate に合成されると、細胞由来のキナーゼはこれをさらにacyclovir triphosphateへと合成する。これは細胞内のDNA polymeraseを阻害するよりも遙に効果的にウイルスのDNA polymeraseを阻害するので、結果的にはウイルスはDNA の複製ができなくなり死滅することになる(Levinson 1992) 。ヘルペスが発症(回帰発症と言われる) するのは宿主の免疫能低下( 化学療法等) 、悪性腫瘍、臓器移植、放射線照射などである。従って臨床輸血の領域では同種および自家骨髄移植後の回帰発症の予防と治療に抗ウイルス剤が使用されているが、acyclovir 抵抗性のウイルスが出てきているようである(Wade 1983, 1984, Saral 1981) 。

Adaptor molecule: アダプター分子。タンパク質合成過程でアミノ酸をmRAN鋳型の適当な位置に結合させる小RNA 分子(tRNA)。それぞれの分子はアミノ酸にも鋳型のコンドにも特異的。

Additive solution: 赤血球濃厚液(CRC) の赤血球の寿命延長又は若返りに使用される添加剤。adenine, dextrose, 糖、各種抗酸化剤、エネルギー代謝に必要な栄養物質等を組成とする。CRC は42日まで期限が延長されている。凍結保存の有効期限は年の単位であるから比較出来ない。

Adenosine triphosphate: ATP. アデノシン三燐酸。全ての生物のエネルギーは、高分子の異化作用で生成する化学エネルギーであり、ATP がこのエネルギーを蓄えている。ATP の生成は@高エネルギー物質の加水分解と共役して生成、A酸化的燐酸化、つまり種々の基質がクエン酸回路で高いエネルギーの水素( 電子) を次々と遊離( 酸化) しながら最後には低いエネルギーの酸素と結合して水(H2 O)となるが、この行程で発生するエネルギーによるATP の産生である。遊離した水素( つまり電子) は先ずNAD に伝達され、NADH2 となる。この水素はフラビン酵素(FAD→FADH2 ) に伝達され、さらにチトクロームへ伝達され、次第にエネルギーレベルを下げてゆき水になるまでの過程を電子伝達系( 水素伝達系又は呼吸鎖) と言う。電子伝達系で電子( 水素) が移動してゆく過程でATP が形成される現象を酸化的燐酸化と言う。水素と電子の関係はH 2→2H+ +2eと考えて、H + ( プロトン) の形で先ず移動して後から電子が結合すると考えればよい。電子伝達系の最終段階は
     1/2O2 +2H+ +2e→H2 O
と表される。ここでH + ( プロトン) 一つ又はe(電子) 一つを、酸化還元反応に係わる一電子当量と言う意味で還元当量(reducing equivalent) と言う。電子伝達系では最終的には酸素が二つの還元当量を受取り還元して水になる。全行程は正に細胞呼吸(cellrespiration)であり、沢山の一連の還元反応がミトコンドリア内膜内で連鎖して行われているので呼吸鎖電子伝達(respiratory chain electron transport)と言われる。

Adenylcyclase: アデニルシクラーゼ。ATP から環状AMP をつくる反応を触媒する酵素。

Adhesion: 粘着、付着。血小板が損傷血管壁または血小板以外のものの表面に付着すること。

Adhesion molecules: 接着分子。Ams 。細胞と細胞を接着させる分子。単なる接着剤的分子と機能的分子があるようだ。前者は組織や器官の構築に役立ち、後者は他の細胞が接着するとその情報を細胞内に伝達する働き、つまり抗原認識のような働きをする糖蛋白であると言われる。リンパ球のホーミングにもAms(homing receptor gp90 MEL )が働いているようである。 Tリンパ球の抗原認識でもAms は必要とされている。T リンパ球上に発現しているαβTCR (T cell receptor) は抗原提示細胞(APC) 上の自己MHC 抗原とこれに結合した抗原ペプチド断片の複合体(MHC class II αβの上の抗原断片) を認識するが、更にリンパ球の活性化のためにはCD4 とClass II、 CD8とClass I の結合、更にCD2(LFA2) とそのリガンドLFA-3 、 CD11a(LFA1)とそのリガンドICAM-1の結合、以上の全ての結合が必要であるとされる。かくして Tリンパ球活性化のシグナルが細胞内へ伝達される( 付図参照) 。つまりAms がT リンパ球と抗原提示細胞をしっかりと結合されている間に活性化信号がT リンパ球の核に伝えられるのである。Ams の接着作用によって信号伝達の十分の時間的余裕が出来るのである。従ってAms を持っていない人(患者) は感染の繰り返しと防御的炎症反応を発現出来ずに死亡してしまうと言われる(Eremin 1992) 。

付図1-a1

CX-calnexin proteasome=多触媒性プロテアーゼ,Ii=Invaliant chain (class U MHCがエンドソーム内の抗原ペプチドと結合するように方向づける)。 TAP=Transporters aasociated with antigen processing (ATP 依存性でペプチドの移動を助けたり阻止したりする。)

付図1-a2

付図。抗原提示における接着分子の役割。図 a-1とb −1 を見るかぎりclass I MHC 分子もclass U MHC分子もいづれも細胞内で処理した抗原ペプチドをそれぞれの細胞膜上でCD8 +刹細胞 Tリンパ球又はCD4 + ヘルパー Tリンパ球の受容体(TCR) に直接提示しているように描かれている。しかし実際はa-2 とb-2 に示すように抗原提示が達成されるためには多くの接着分子の助けを借りなくてはなららない。尚、図a-1 とb-1 の理解のためにMHC 分子のclass I とclass Uの違いを表にまとめておいた。

付表 1

class Iclass U
対応抗原HLA-A, -B, -CHLA-D, -DR, -DQ, -DP
分布領域殆どの体細胞(免疫担当細胞も含む) 免疫担当細胞に限定的。特にB-cell, マクロファージ、樹枝状細胞、中好性白血球、非活性Tリンパ球、肝、腎、脳(ミクログリアを除く)
分布なし赤血球
機能ウイルスのような“細胞内”生成抗原蛋白を細胞質内のプロテテアゾームで消化してペプチド化する。この抗原ペプチドをCD8 + 殺細胞性 Tリンパ球はMHC 拘束的に認識してパーフォリン等の抗原ペプチドを提示した感染細胞をパーフオリン等を分泌して殺す(自滅又はアポトーシス) 。" 細胞外" の抗原蛋白や細菌や寄生虫等を貪食又はピノサイトーシスで細胞内にとり入れて消化分解したペプチドをclassU MHC拘束的にCD4 +  ヘルパー Tリンパ球の受容体が認識して活性化し、増殖分化してマクロファージを更に活生化したり Bリンパ球の抗体産生を助ける。

 この領域でも略語が多く使用される。主なものを参考までに引用しておく。
LFA-1: Lymphocyte-function asociated antigen-1。ICAM-1とICAM-2に結合する。
ICAM-1: Intercellular adhesion molelcule-1。LFA-1 に結合する。
ECM: Extracellular matrix 。細胞外基質。コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、テネイシン等が含まれ、言わば細胞外被物質である。ECM 受容体を介して細胞相互の結合が起こる。リンパ球の活性化、接着、遊走等の機能を促進。
VLA: Very late activation antigen 。インテグリンファミリーに属するAM分子の中でβ1 サブファミリー(CD29)に属する数種の分子を言う。細胞結合とリンパ球のホーミングに作用するようである。
LEC-CAM: Lectin-epidermal growth factor complement-binding cell adhesion molecule .ELAM-1: Endothelial-leukocyte adhesion molcule.
CD44: Pgp-1 とも言われる。受容体。白血球、赤血球、上皮、繊維芽細胞、脳などに表現されている糖タンパクである。パイエル板の内皮細胞(HEVs)に接着するためのリンパ球のホーミングレセプターとも言われる(ligand としてMadCAM, mucosal addresin cell adhesion molecule-1 が接着を助ける) 。この接着にはヒアルロン酸(hyaluronic acid) が必要のようであ。つまりリンパ球-CD44-ヒルロン酸- 内皮細胞(Bリンパ球では骨髄基質細胞) のように結合する。抗CD44抗体で処理した胸腺へはpro-T リンパ球のホーミングが阻止されるので、CD44はpro-T (pre-Tの前駆細胞) の胸腺への移入に必要とされている。CD44はB リンパ球分化の初期に、proBリンパ球表面に発現しているCD-44 が骨髄基質細胞上のヒアルロン酸に結合する。つまりpro-B リンパ球と骨髄基質細胞との結合はヒアルロン酸とCD44を介してである。次にpro-B 上のc-kit tyrosine kinase (受容体) と骨髄基質細胞上の幹細胞因子(stem-cell factor)とが結合し、骨髄基質細胞が分泌する可溶性IL-7が共同作用して、kinaseが活性化しpro-B リンパ球の分裂が誘導される。、更にpre-B(pro-からpre-になることに注目されたい) へと分化成熟するにはIL-7のみで十分であり骨髄基質細胞へのつなぎ止めは別のCAMs(cell-admesion molecules) が働くとされる。可溶性IL-7はpro-B とpre-B リンパ球上のIL-7受容体と結合する。pre-B リンパ球の表面と細胞質内にはμH 鎖が形成されているが、pre-B リンパ球が骨髄基質細胞面を離れて未熟B リンパ球となるときはにはμH はIgM となっており、成熟B リンパ球ではIgM と少し遅れてIgD が表現される。染色体での遺伝子配列においてJ 領域に隣接するC 領域の中でCμが最もJ 領域に近く、その隣にCδが配列されているためであろう(co-expression of IgM and IgD) 。
尚、人B リンパ球における遺伝子配列は中心体-V-D-J-C(Cμ-Cδ-Cγ3-C γ1-C γ2b-Cγ2a-Cε-Cα)- である。このBリンパ球の分化成熟の過程で遺伝子の再配列が起こり胚遺伝子のV,D,J,及びC の遺伝子群(cluster) から一つずつの遺伝子断片(gene segment)がDNA 上に再結合してmRNAに転写される。antibody repertoire, antibody synthesis, class switching参照。ショックの臨床でもAms は重要な位置を占めてきている。特に毛細管の透化性が亢進して肺不全状態では、間質のコラーゲンと巨大蛋白分子はゲル化して水と塩を捕獲してしまい毛細管循環は破綻してしまう。このような毛細管循環で重要な意義を持ってくるのがAms であると言われ、@intgrins ( LFA-1, fibronectin, 血小板糖蛋白等), A免疫グロブリンの接着分子、Bcadherins, CLFC-CAM - ELAM-1, Dリンパ球ホーミング受容体等の5 つの分子群が上げられている。これ等のAms が細胞対細胞、細胞対基質の相互干渉又は白血球の内膜への粘着に相互に関与していると言われる。

Adjuvant: 抗原増強剤。ある抗原と混合して投与すると, その抗原性を増強する物質。

Adoptive immunity: 養子免疫。拒絶反応が免疫反応である一つの証拠となる現象。Passive immunity( 受身免疫) の一種。免疫のある固体からの抗体( ジフテリア、破傷風等) 或いは抗毒素を別の固体に与えて免疫を獲得させる方法をいう。この時、抗体手はなく感作リンパ球を別の固体に接種して受動的に免疫を獲得させる方法を養子免疫をいう。この方法はlymphokine activated killer cellss(LAK) 療法として癌治療に応用された (Rosenberg 1985, 1987)。

付図2

養子免疫が成立するためには移入されたリンパ球が異物として拒絶破壊されずに生着する必要がある。 ヒトでは一卵性双生児しか成立しないと考えられていたが、図の B1 ラットを培養装置にしてここでB2( つまり癌患者) のリンパ球に IL-2 を加えて培養し、殺癌性の強力なkiller T cell に仕立てて元の癌患者に移入するわけである。拒絶破壊されずに生着して癌だけを破壊するようになるという。 Rosenbergは 139例の癌患者のうち12例を完全寛解したという。黒色腫、腎細胞癌(100% 効果的と言われる) 、リンパ腫などの症 例に完全寛解や部分寛解の効果を示したという。

しかしこの治療法はIL-2 の副作用による患者の死亡例が多すぎたため、腎細胞癌以外はあまり行われなくなったと New York 州 BuffaroのRoswellpark 癌研究所の医師は失望していた。1991年夏のことであった。その頃は TIL (Tumor Infiltrating Lymphocyte)療法といって癌の中にもぐりこんでいるリンパ球を集めて同じことを行っていた(Topalian 1987, Fisher 1987) 。このほうがより効果的であるとのことであった。同じ頃、LAK 細胞は活性化された NK 細胞によって生体内で拒絶されることがマウスの実験で示されている(Brubaker 1991) 。本邦でも早くから多くの施設で追試されたが(Shimizu 1987) 、「採取されるLAK 細胞数に比例して、培養に要する時間・労力や培養空間が膨大なものとなり、とても一般化した治療法とは言い難い」、と清水(1996)は述懐している。

Adoptive immunotherapy: 養子免疫療法。 LAK cell-IL2 療法、TIL-IL2 療法、PM-IFN-r療法等があり、1980年後半の癌免疫療法のトピックスとなった(Stevbenson 1987) 。自己リンパ球療法(autologous mononuclear cell therapy) も同義語。

Adsorption: 吸着。特異的抗原を添加してある血清から抗体を除去する操作。不活性粒子あるいは赤血球表面の抗原に特異的抗体を結合させる操作。例: 抗原を吸着させた赤血球凝集による抗体検出。absorptionと互換的に用いられる。

Adverse effects: 逆効果、害作用。transfusion reaction、side effect of blood transfusion等と同義語。

AFC: Antibody forming cell.

Agglomeration: 赤血球の可逆的凝集。ブドー糖液中で生じる。生理食塩水の添加により解除される。

Agglutinates: 凝集赤血球の集塊。

Agglutination: 凝集反応。浮遊分散している赤血球上の抗原と抗原とが抗体で架橋し赤血球が集合すること。抗原抗体反応の第一段階が感作sensitization であるとすれば、第二段階の可視的反応が凝集反応である。感作していても非可視的である。

Agglutinin: 凝集素。抗体の別名。凝集反応をおこさせる抗体。例えば Albumin agglutinin アルブミン凝集素はアルブミン溶液中で赤血球の特異的凝集反応をおこさせる凝集素( この同義語は不完全抗体) 。食塩水凝集素は食塩水中での赤血球の特異的凝集反応を起こす凝集素( この同義語は完全抗体) 。Auto-, atypical, cold, hetero-, iso-,normal, pan-, typical, 参照。

Agglutinogen: 凝集原。抗原として凝集素を産生し、これと反応して凝集させるあらゆる物質。

Agglutinoid: 類凝集素。不完全抗体の一種。

Aggregation: 集合, 集塊形成。抗原抗体反応ではない。血小板ははじめは可逆性であるが時間がたつと非可逆性の集合をする。ADP-aggregation: ADP(adenosine diphosphate) を加えて生じる血小板集合。

Agonist: 働筋、主働筋( 群) 。

AIDS-related complex (ARC): AIDS関連症候。AIDSに先行する各種の症状名。持続性の淋巴腺主張症、下痢、不明の体重減少等。

Alamine aminotransferase (ALT): non-A, non-B(NANB)型肝炎時に増加する肝臓の酵素。以前はSGPTと言われていた。アルコール過飲、過酷な運動等でも上昇する。ウイルス検査では発見出来ない肝炎検査のため供血者に行う代理テストsurrogate testとして用いられている。

Albumin: アルブミン。人血漿中の最多量の蛋白。ある種の抗原抗体反応を強化するため強化促進媒体として使用される。

Albumin-agglutinating phenomenon: アルブミン凝集現象。アルブミンの保存剤であるカプリル酸ナトリウム(sodium caprylate)による凝集。caprylate が存在する時のみ凝集が起こる。

Allele,allelomorph,又は allelic gene: 対立遺伝子。アリール。対立因子。対立形質。一対の相同染色体のそれぞれの上にある特定の遺伝子座位を占めている一連の遺伝子の片方。遺伝形質を決定する。一対の染色体上で同じ位置を占め, 同じ形質( 例えば血液型) の表現機能に関与している遺伝子の一方をいう。allelic genes, allelomorphic genes, alternate forms of a gene, allelesはいずれも同義語。一方の染色体上にある一つの遺伝子のこと。★対立と言う訳語は分かりにくい。対立は対峙とかにらみ合いと言う意味であり、共存共栄の意味は薄い。本来はgene copy の同義語(McConkey 1993) である。片方の(one of a pair) と言う適当な邦語訳は無いものだろうか。対立しているのではなく夫婦のように共存共栄している片方の遺伝子なのである。

Allergen: アレルゲン。アレルギー誘発抗原, またはハプテンである物質。

Allergic death: アレルギー死。抗原による過剰刺激の結果, 抗体産生細胞または抗体をもつ細胞が死滅すること。

Allergic disease: アレルギー性疾患。アレルギーによっておこる疾患。じんま疹( 表在性障害),結節性多発性動脈炎( 深部性障害) など。

Allergy: アレルギー。Clemens Peter Pirquet (1906)が最初に用いた。allos(alter)+ergon(action) の造語。ある抗原あるいはハプテンに対する動物の反応性が変化している状態。 Hypersensitivity 過敏症が同義語として用いられている。Allergy 反応は感作相(sensitization phase、抗原と初回接触相 primary exposurephase)と作動相(effector phase, 抗原と再接触相re-exposure phase)とに分けられる。
感作相はヒトや動物の体内に隈なく配置されている抗原提示細胞が侵入してきた非自己の抗原を貪食処理してT cellに抗原提示し、T cellがB cellに抗原を認識させ、helper-T cell の信号を受けて B cell は plasma cell となり細胞親和性抗体(cytotropic antibody) を産生する。この抗体のFc部分は組織の肥満細胞や末梢血中の好塩基球のFc受容体に結合しやすい性質があるので、それらの細胞表面の受容体に結合して血液循環に乗る。つまり肥満細胞と好塩基球の表面は沢山の抗体が結合して、しかもいずれの抗体も抗原結合部位を外界に向けて、対応する抗原に遭遇すると何時でも結合出来るような状態で体中至る所に配備されるのである。ここまでが感作相である。allergy状態の成立である。
作動相とは再びもとの抗原が投与されて起こる。3つの反応系がある。1). 抗原が感作肥満細胞表面の抗体(IgE) と結合して肥満細胞内の顆粒( 化学伝達物質) が離脱( 脱顆粒現象) して化学伝達物質が遊離して平滑筋収縮、細小動脈拡張、血管透過生亢進等を惹起する。2). 投与された抗原が血中の他の抗体(IgG) と結合して免疫複合体となり補体系を活性化するので aphylatoxinや趨化生因子を生じる。3). 抗原が effector Tcellを活性化して lymphokine を遊離させる。いずれの反応系も炎症を主体としたallergy 症状が成立する。
通常、allergy 反応は次の4型に分類されている(Gell-Coombs 1968)
I 型反応: anaphylaxis 型或いはIgE 依存型である。狭義のallergy 反応である。
II型反応: 標的細胞( 抗原となった細胞) 表面に結合した抗体に補体が結合活性化して細胞融解や組織破壊を生じる反応で細胞毒性反応 cytotoxic reaction といはれる。もう一つは標的細胞に結合した抗体のFc部分が作動細胞(effector cell) のFc受容体(K細胞、マクロファージ、好中球、好酸球等が持っている) に抗原非特異的に結合して細胞障害に導く。lymphokineや蛋白分解酵素を分泌して標的を殺すのである。このような機作を抗体依存性細胞伝達性細胞障害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC) といはれる。この時、標的細胞上のC3b もeffector cell の持っているC3b受容体と結合して細胞障害の一因になるといはれる。血液型不適合輸血、Rh不適合妊娠による新生児溶血性疾患、血小板減少性紫斑病、顆粒球減少症、Goodpasture's 症候群等が代表的である。輸血学と最も関係の深いallergy 反応である。
III 型反応: 抗原と抗体が結合する割合において抗原過剰域では可溶性結合物 (immune complex) ができる。この免疫複合体は組織に沈着したり、補体を活性化したり、血小板凝集を促進することによっておこる組織反応をいう。動物のArthus反応、ヒトでは血清病、外因性アレルギー性肺炎、ループス腎炎を含む糸球体腎炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis, ABPA) 等がある。
IV型反応: 遅発性アレルギー性細胞反応。

付表 2 過敏症の要約( 英国の免疫学者R.R.A. Coombs とP.G. Gell による分類)


type
抗体又は関連細胞
antibodies or
cells involved
作動細胞
effector cells
作動因子
mediators
関連疾患
associated disorders
T
迅速型
IgEmast cells
basophils
histamine
SRS-A *
ECF-A *
その他
アレルギー性耳炎
アナフィラキシー
外因性喘息
アトピー
U
細胞毒型
IgG
IgM
多核白血球補体
K cells 球
新生児溶血性疾患
迅速移植片拒絶反応
myasthenia gravis
輸血反応
V
免疫
複合体
IgG
IgM
多核白血球補体Arthus reaction
リウマチ性関節炎
血清病
SLEW
W
細胞
伝達性
T cells
Macrophages
単核球cytokines接触皮膚炎
感染症(mycobacterial,
protozoal, fungal
結核等)
sarcoidosis
HVGR(拒絶反応),GVHD

 注意。過敏症は別の原因によっても起こる。IgA は補体の代替経路を活性化してアナフィラトキシン(C3a, C5a, C4a) を遊離し、これが肥満細胞から色々な作動因子を分泌させ表のT型過敏症と同じ反応を生む。無IgA 血漿のヒトが抗IgA を持っていると輸血によって激症のアナフィラキシーショックを起こす( 本文参照) 。
* SRS-A: slow-reacting substance of anaphylaxis. Leukotrienes(LTC4 , LTD4 ,LTE4 等) も含まれる。脂質であり気管支平滑筋収縮と血管透過性亢進の作用がありヒスタミンの作用を強化する。
* ECF-A: eosinophil chemotactic factor of anaphylaxis. 好酸球の作動因子中和作用を阻止しブラヂキニンとセロトニンの遊離を促進する。
* SLE: systemic lupus erythematosus.

All-,Allo-: 他、異常、異質、変態、異性体を意味する接頭語(prefix)。例えば、抗Deは同種抗体(alloantibody)であるがD 陰性の人がD 陽性の他人の赤血球を輸血されると形成される。

Alloantibody,isoantibody: 同種異型抗体または同種抗体。同種ではあるが別の個体に存在する抗原と特異的に反応するある個体に産生された抗体。血液関係の研究には同種抗体(isoantibody) が、移植の研究には同種異型抗体(alloantibody)が多く用いられる。

Alloantigen,isoantigen: 同種異型抗原または同種抗原。同種ではあるが遺伝学的には異なる個体に抗体産生の刺激を与えることができる抗原。

Allocytophilic antibody: homocytophilic antibody とも言う。同種異型細胞親和性抗体。同種向細胞抗体。同種の動物細胞には付着しても, 他種の細胞には付着しない抗体。抗原である細胞と結合して肥胖細胞などからヒスタミンなどを分泌させるレアギンやIgE などのような抗体をいう。例えばヒトのP-K 抗体。

Allogenecic: 同種異種の。同種であるが遺伝学的に異なる個体に属している。表を参照。

                         
付表 3. 免疫遺伝学の用語のわずらわしいもの
名  詞形 容 詞備 考ギリシア語
好ましい好ましくない好ましい使ってもよい好ましくない
AutograftAutogeneicAutogenous
Autochihonous
Autoplaslic
Autologous
自己村自己,適合autos=self
SyngraftSyngeneicIsogeneic
(Isogenic)
Isologous遺伝的に同質の個
体間,適合。一卵
性双生児のような
syn=with,
together
AllograftHomograftAllogeneic
(Allogenic)
Homologous遺伝的異なる同一
種間の個体間。
ふつう不適合
al1os=Other
XenograftHeterograftXenogeneicHeterologous
Heterospecific
Heterogeneic
異種間で不適合xenos=foreign
AllotypeSerum
isoantigen
AllotypicIsoantigeneic遺伝的に異なる同
一種内の個体に関連している
AlloantigenIsoantigenAlloantigenicIsoantigenicふつう不適合
alloantibodyIsoantibodyAlloimmune
Histocompatible
Isohistogenic
Isoimmuneドナーの遺伝子型が
宿主にとって異質で
ないとき。近交系一
F1雑種子孫

Allogeneic disease: homologous disease,wasting disease,runt disease,secondarydisease,etc.: 同種異型免疫疾患, 同種免疫疾患, 消耗疾患, こびと病,2次免疫疾患。宿主対移植片反応によっておこる疾患。急性と慢性がある可能性あり。

Allogeneic inhibition: 同種異型抑制反応。生体内あるいは試験管内で同種異型細胞が接触したとき、互いに*制しあう、抗原性が異なるためにおこる発育抑制反応。

Allograft,homograft: 同種異型移植片, 同種移植片。同種異型の提供者に由来する移植片。

Alloimmune,isoimmune: 同種異型免疫, 同種免疫。同種異型抗原に対して特異的に免疫になっている状態。

Allosteric protein: アロステリック蛋白( 又は酵素) 。大きな蛋白分子である酵素は立体構造( stereo-)をしている。この立体構造の特定の部位が基質となる特定の蛋白と結合して消化分解反応が始まる。この特定の部位を活性部位という。この活性部位と異なる(allo-) 部位に基質蛋白とは別の低分子物質(allosteric 因子、リガンドまたはeffectorという) が結合するとによって酵素活性が変化する現象をallosteric effect といい、このような酵素をallosteric酵素という。ヘモグロビン( α1 , α2 , β1 , β2の4つの鎖またはsubunitsからなる tetramer)も allosteric protein の一種で, この蛋白の共通の特徴としてその酸素解離曲線はsigmoid 型を呈す。 酵素反応の初速度と基質濃度の関係は Michaelis-Menten の式で与えられ、酵素曲線は双曲線となる。この蛋白(または酵素)はプロトマー(protomer) とよばれるサブユニットが対照的に会合体(oligomer)を形成しており, 各プロトマーは基質, 活性化剤, および阻害剤( これらをすべてリガンド ligand という)との結合部位をもち, この allosteric 蛋白の弛緩期(relaxed state) に基質と活性化剤が、緊張期(taut state)に阻害剤が親和性を示すという。つまり, 弛緩期と緊張期でリガンドに対する親和性が変化するのである。ヘモグロビンでは H+ , CO2 ,O2 ,2,3-DPG などがリガンド( 配位子) である。ヘモグロビンはどのsubinit にリガンドが結合しても共同的に他のsubunit も変化するとされている。Allosteric効果によって一連の反応の酵素活性が調節されるような酵素を律速酵素(rate limiting enzyme)という。一般的にはPhosphofructokinase(PFK-1), fructose 1,6-bisphosphatase(FDPase), glucokinase, pyruvate kinase などをいうようである。酵素活性を律速調節する効果としては他に燐酸化、脱燐酸化他もあるようだが、allosteric効果が最も重要である。

付図3 付図3。本来はCambridge のMax Perutzが酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの結晶のX線回折によって立体配座(conformation 又はtertiary structure) が一定の軸を中心として異なることを発見したのに始まる(Bunn 1977) 。一般的なアロステリック酵素の特性は4 量体noヘムに酸素が結合することによって起こる立体構造( 配座) の変化で説明される。輸血学を学ぶ者にとっては親しみやすい酵素である。基質(S) つまり酸素が 4つのヘム(subunit enzyme)に結合するモデルはMond(---------) とKoshland(―――――) によって示された。□は T立体配座(tense or taut conformation, T state, deoxyhemoglobinの状態) を、○は R立体配座(relaxed conformation, R states, oxyhemoglobinの状態 )を示す。S が必要以上に速く結合して最終産物(4つの○に酸素が結合) が出来上がると、反応は停止して、酵素の形が不活性となり、それ以上の基質( 酸素) とは結合しない。これがアロステリック効果である。組織では酸素分圧が低いので酸素が1 個取り上げられると、今度は逆の効果が働き酸素は酵素( ヘモグロビン) から一気に離れてしまう(ここが大事なところ!)。同時に炭酸ガスと置換されてしまい肺に送り返される。

Allotypes: 同種異型( ヒト免疫グロブリンの型) 。アロタイプ。一対の対立遺伝子形質。免疫グロブリンの同種抗原性の遺伝的な違い。血清同種異型 serum allotypes。対立遺伝子によって決定されるヒト免疫グロブリンのγ及びαH 鎖とκL 鎖の定常部領域(constant regions)内に存在する遺伝的なアミノ酸配列の違いとされている。Gm同種異型(IgG上のアロタイプマーカー) 、Am同種異型(IgAとIgM 上のアロタイプマーカー) 、Km同種異型( κL 鎖のアロタイプマーカー) 等がある。ただ一人のヒトでは全ての鎖は同一のアロタイプを持っている。以上のうちKmはInv とも言われる。Gmアロタイプが最も多くGm(1) からGm(27)まであり、Amが2 つ、Kmが3 つある。アロタイプは法医学( 親子鑑定) 、人類学、血液型学等の研究に応用されている(松本1990) 。

Allotype proteins: 同種異型タンパク。遺伝的に支配されている抗原性の相違をもつ、様性に基づくあるタンパクの変種。例,IgG の場合のGm,Inv,Am の3 種類がある。

Alternative complement pathway: 第二補体活性化経路。alternative もう一方の、二者択一の。補体の活性化がC3 から始まる反応様式。代替えのと言う意味もあるが、最初からこの経路を活性化する因子があるので決して代替えではない。第一が無いのだから第二と言う訳もおかしい。secondとは表現していないのだから。classical を" 古典"と訳すなら" 選択" または "代替" の方がいいのではないか。いつの間にか" 第二" が定着しかかっている。

Alternative pathways of coagulation activation: 血液凝固活性化代替経路。血液凝固活性化経路は本質的には内因系と外因系の機序に分離しているのではなく、相互に絡み合っていることが多くの研究者によって指摘されてきた( Altman 1967, Kisiel 1997,Lotspeich-Steinger 1992)。事実、Z因子は内因系 ( ]Ua)又は共通経路]a によって活性化されて二本鎖Za となるが、この二本鎖Za は組織因子が活性化する単鎖Za よりもずっと強力に]を]a に活性化するという。また、\a やkallikreinによってin vitroのガラス表面でもZ因子はZa に活性化される( Altman 1967)。このことは、]U、prekallikrein, HMWK 等の先天性欠損症で異常出血が見られないのは、接触相が無くても血液凝固は生じることの説明にも繋がる( Lotspeich-Steinger 1992)。
ここで留意しておかねばならぬことは、血液凝固活性化が内因系と外因系の機序にハッキリと分離しているのではなく、実際には絡み合っているので、血液凝固活性化代替経路(alternative pathways of coagulation activation)であると言われている( Altman 1967, Kisiel 1997, Lotspeich-Steinger 1992) 。事実、Z因子は内因系 (]Ua)又は共通経路]a によって活性化されて二本鎖Za となるが、この二本鎖Za は本来の外因系の組織因子が活性化する単鎖Za よりもずっと強力に]を]a に活性化するという。また、\a やkallikreinによってガラス表面でもZ因子はZa に活性化されると言う( Altman 1967 ) 。このことは、]U、prekallikrein, HMWK 等の先天性欠損症で異常出血が起こらないのは、接触相を経由しなくても血液凝固は起こるためである(Lotspeich-Steinger 1992)。DIC での血液凝固も両系統の活性化が共鳴増幅して起こると考えるべきであろう。

Amino acid: アミノ酸。タンパク質の構成成分。通常20種類あり、L 型の立体配位をとる。すべてのアミノ酸は同じ基本構造を含み, 側鎖R が異なる。

付図4

付表4

20種類のいづれも同じ炭素原子に-COOH と-NH2 (-NH3 ) を一個ずつ結合している。この炭素原子をα炭素原子と言う。20種類のアミノ酸( グリシンと除く) は全てキラル中心(chiral center. chirosはギリシャ語で手の意味。手は鏡像である) となるα炭素原子を持つ。不斉炭素原子と言う( 斉は整える、合わせるの意味である) 。L 型とD 型は鏡像であり、互いに重ねる事は出来ない。α炭素から離れるごとにβ、γ、δ、ε等と命名されている。付表参照。

Amino acid residure: アミノ酸残基。アミノ酸のアミノ基NH2 からH を, カルボキシル基-COOH から OH を、つまりH 2 0 1 分子を脱離した形をいう。アミノ酸がこうして脱水しアミノ酸残基同士の形で結合( これを脱水縮合という)したものが蛋白質である。

Amino terminal: アミノ末端(N末端) 。ポリペプチドの2 つの末端のうち、遊離のα- アミノ基のあるほうをいう。

Amino acid sequence: アミノ酸配列順序。ペプチドあるいはタンパク質中のアミノ酸の一次元配列順序。

Amino acid side group: アミノ酸の側鎖。アミノ酸の項参照。

Aminoacyl adenylate(AA〜 AMP): アミノアシルアデニレート。タンパク質合成のとき,アミノ酸がtRNAと結合する前に、ひとまずATP のα燐酸と結合して生成する反応中間体。アミノ酸とAMP の結合体(AA 〜AMP)である。このアミノ酸は直ぐAMP を捨ててtRNAの3'- 又は2'- のOH基と結合して3'-aminoacyl-tRNA 又は2'-aminoacyl-tRNA が形成される。

Aminoacyl synthetase: アミノ酸活性化酵素。20種のアミノ酸それぞれにたいする酵素があって、それらは次の2 種の反応を触媒する。(1) アミノ酸とATP からアミノアシルAMP(AA〜AMP 。活性化されたアミノ酸) とピロリン酸をつくる反応。(2) 活性化されたアミノ酸をtRNAに転移させ、アミノアシル tRNA と AMPを生ずる反応。

Amino group: アミノ基。 -NH2 という原子団。水素イオンと結合して -N + H * を生ずるので典型的な塩基性基。

Amniocentesis: 羊水穿刺術。検査目的で羊水を穿刺採取すること、又はその方法。

Amniotic fluid: 羊水。羊膜内で胎児を浮遊させている漿液。

Amorphic gene: 無形成遺伝子, サイレント遺伝子(silent gene), 抗原をつくる作用をもたない遺伝子。抗原をコードしていない遺伝子。O, h, le, se等の血液型遺伝子。血清学的に検出出来る物質を産生しない遺伝子と言ったほうが正しいかもしれない。

Amphipathic: 両親媒性の。amphi-はギリシア語でboth、pathosはpassion, sufferingの意味。Amphiphilic と言うこともある。philosはlovingの意味であると言う(Garrett 1995)。代表的な両親媒性分子は脂質。脂質分子の極水性(polar) の頭部は親水性(hydrophilic) であり、尾部( 一本と二本がある) は疎水性(hydrophobic) である。脂質分子は両親媒性であるが故に水溶液内で二重膜やミセルを形成する。一本尾の脂質は尾部を内側にしてミセルを形成すると中に水を持たないが、二本尾の脂質は二重膜となって水を含んだ小液胞(vesicle) を形成することになる。ミセルも小液胞もいづれも表面は陰性に荷電しており水分子の水素と水素結合している。ミセルは相互に反発し合っている。脂質に両親媒性という特性が無ければ、細胞の基本的単位である小液胞の形成は無いのであり、両親媒性こそ脂質分子の最も重要な特徴とされている所以である。

Anabiosis: 起死回生の状態。単に蘇生ともいう。活動停止状態(state of suspendedanimation) 。

Anamnestic response,recall phenomenon or memory phenomenon: 既往性応答、想起現象, 記憶現象。最初に感作された抗原とは別の特異性の抗原導入に際して最初の抗原似対する抗体がより強力に再生産されること。ある特定の抗原にあらかじめ応答したヒトや動物にみられ、その抗原に対する抗体産生反応が促進されている状態。同一抗原の再移入によって起こるより強力な免疫応答を言うことがある。24乃至48時間で高力価のIgG が産生されることがある。例えば、血友病では第VIII因子にたいするインヒビターが産生されるが、既往性応答能の高い患者(high respnder) では高力価のインヒビターが産生される事がある。

Anaphylactic antibodies,anaphylactogenic antibodies: アナフィラキシー抗体, アナフィラキシー誘発抗体。Prausnitz-Kustner antibodies を参照。真性アナフィラキシーをおこす抗体。

Anaphylatoxin: 血清に抗原抗体結合物( 免疫複合体) を加えて反応させ、この血清を動物に注射するとアナフィラキシー様症状をおこす。このような活性を示す血清中の物質をアナフィラトキシンと呼んでいる。C3a やC5a はアナフィロトキシンとしての活性がある。

Anaphylaxis,acute: アナフィラキシー, 急性。ある種の抗原に2度目に曝されたときに、肥満細胞の表面( の Fc receptor)に強力に結合しているIgE 細胞親和性抗体( 抗Fc receptor 抗体、抗IgE 抗体などもある) に元の抗原の多価ハプテンが複数個の抗体( 受容体) に交叉連結(cross-linking) することによってこれらの幾つかの抗体( 受容体) を細胞表面で引き寄せて凝集させる。このため肥満細胞表面は各所で絞り染めするように締め上げられるて全体が縮小する。この縮小によって内部の顆粒が絞り出される(degranulation) 。顆粒からはhistamine, serotonin, heparin, PAF, SRS-A(LTC 4, LTD4 ), ECF-Aなどの化学伝達物質(chemical mediaters)が迅速に遊離して迅速全身性反応を引き起こす。この生体反応は予測は難く、数分のうちにおこる全身性ショックでしばしば致命的な事もある。この現象はPortierRichet(1902)がイソギンチャク毒素を繰り返してイヌに注射すると死亡することを発見し、これを無防御状態anaphylaxis(ana はwithout 無、phylaxisはprotection防御) とよんだことに由来しているようである。Arthus reaction を参照。

Anemia: 貧血。赤血球、ヘモグロビン、或いは循環血液量の減少した病態。赤血球破壊、失血、赤血球産生能低下、ヘモグロビン産生低下等によって起こる。輸血の適応を考える上での重要な病態。

Angstrom: オングストローム (Å) 。長さの単位。原子の大きさなどを表すのに都合がよい。 1Å= 10-8p。

Anisoylated: アニゾール(anisole, anisoyle) を結合した- 。例えば、plasminogen の活性化中心(catalytic centre 。kringle 部位でない分子構造部分) にanisole をエステル結合させたanistreplase (ASPAC)にすると、体外でstreptokinase と混合してアシル化プラスミン複合体として静注しても血液循環中のplasminogenを直ちに活性化する事はない( 遮断効果があるとされる) 。従って急速静注してもkallikrein/kallidin 系の活性化もなく低血圧も来さないという利点がある。結合しているanisoyle基は体温で35分後には水解して排泄されるので好都合であるとされる(de Bono 1990)。しかし本邦ではまだ市販されていないようである。Anisoyleはベンゼン環に−OCH3 の結合したエーテルであり、methylphenyletherまたはmethyloxybenzen と言っても正しい。Anistreplase は plasminogen active site−O−CO−anisoyleの構造である。

Anomer: アノマー。α-D-glucoseとβ-D-glucoseのようにC1 の立体配置の相違による立体異性体(anomer)、つまり環の大きさの等しい一対を言い、αとβで区別する。C1の-OH(ヒドロキシル基) が最も大きい番号の不斉炭素原子( asymmetric, dissymmetriccarbon 又は chiral center. 多くは -CH 2 OH の炭素がC6) の置換基と互いに反対側(trans) がα-anomer 、同側(cis) のものをβ-anomer という。anomer炭素を持つ糖はもはや還元糖の作用はない。2 糖や多糖のグリコシド結合していない端( 遊離のanomer 炭素) は還元作用を持っているので還元末端(reducing end)と言われる。尚、maltose, lactose, sucrose 等は2 糖であり、片方の糖の水酸基がもう一つの糖のanomer炭素と結合している。この結合をO-グリコシド結合(O-glycosidic bond又はlink) と言う。もう一つはN-グリコシド結合(N-glycosidic bond) である。これは糖のanomer炭素と窒素原子( 全てのヌクレオチドに見られる。例えばadenosine におけるadenine とfructoseの結合) との結合である。不斎炭素原子とは飽和炭素原子に結合している四つの基( 原子又は原子団) が全て異なるときその炭素原子を不斎炭素原子と言う。図 D-glucose のC-1 のアルデヒド基とC-5 の水酸基が反応して(C-1が不斎化して) ヘミアセタール結合すると、C-1 の炭素に関してαとβの2 種類の立体異性体(anomer)が形成される。

Anomer carbon: アノマー炭素。anomer参照。

Antagonist: 阻害剤、拮抗剤( 筋) 。agonist の反対語。agonist と同じ受容体に結合するが、受容体の活性化やコンフォーメーションを変化させて信号伝達経路(signal transduction pathway) を活性化することもない。アンタゴニストの結合によってアゴニスト( 又はメヂエター) が結合出来なくなるだけのことである。しかし、アゴニストの量を増加すれば同じ効果が現れる。つまり効果(%、Y 軸) とアゴニスト量(X軸) の関係(drug antagonism) は投与量応答曲線(dose-response curve) がアンタゴニストの投与量を増やすに連れて右方移動するだけで効果は低下しない(competitive antagonist の場合) 。non-competitive antagonistを増量しても効果が低下するだけである( 右方移動しない) 。

Antecubital: 肘前の。採血や瀉血(phlebotomy)に頻繁に使用される部位。肘の屈側。

Anti-A1 lectin: Dolichos biflorus から精製される植物抽出物。A 1 抗原を持つ赤血球を凝集させる。

Anti-antibodies: 抗- 抗体。抗体が抗原と結合する際に分子内に「ゆがみ」ができると考えられる抗体( ガンマグロブリン分子) の潜在的抗原決定基に対してつくられる自己抗体。また、この用語は比較的ひろい意味として、同種異型, 異種異型動物につくられた, 複合物をつくっていない抗体に対する抗体にも用いられる。

Anti-anti-M: 抗- 抗M 抗体。

Antibody: 抗体。しばしばAbと略す。抗体は特異的免疫原( 又は抗原) 刺激に対する体液性免疫応答の結果、B リンパ球の成熟型である形質細胞(plasma cell) によって産生される。その抗原と特異的に反応する物質。全部ではないが一般には免疫グロブリンに属する物質。自己以外の赤血球で免疫されたことがないのに存在する抗体を自然抗体という。自然( 正常) 抗体には抗A, 抗B ならびに不規則抗体がある。

Antibody-reaction site,antigen-binding site,antibody-combining site: 抗体反応部位, 抗原結合部位, 抗体結合部位。抗体表面の局部にあり、抗原の抗原決定基の部位と反応する部位で, 抗原決定基の形を反転したようになっていると考えられている。

Antibody repertoire: 抗体レパートワー。抗体目録又は献立。個々のB リンパ球の持っている生殖細胞遺伝子(germline gene, or DNA. 両親から性細胞を経由して遺伝したDNA. Tリンパ球やB リンパ球のような体細胞で見出される遺伝子再編成を受けていないDNA 。生粋のDNA 。) は数セットの遺伝子分節(gene segments) を持っていてそれぞれが任意に再結合( 配合) してH 鎖とL 鎖のV 領域をコードしている。
人の抗体H 鎖の遺伝子の染色体( 第14染色体) 上の配列は
  中心体-5'-V-D-J-C(C μ-Cδ-Cγ3-C γ1-C ε2-C α1-C γ-Cγ2-C γ4--Cε1-Cα2)-3'
のようになっている。V 領域には約300 分節、D 領域には10分節(20 以上とも言われる) 、J 領域には4 分節(9とも言われる) の遺伝子が存在するとされている。それぞれの領域から1 個づつの遺伝子が抗原に対応して組合わされるとすれば、H 鎖で300 ×10×4=12,000組となる。L 鎖ではD 領域分節は存在しないので300 ×4=1,200 組の組み合わせができる。H 鎖とL 鎖の組み合わせも任意であるから12,000×1,200=14,400,000種類の抗体は形成されることになる。実際は遺伝子分節が別の再結合したり、突然変異によるこもあり更に多い種類( 目録又は献立) の抗体が形成されることになるとされている。わずか1,000 み満たないとされる染色体分節がこのように膨大な抗体レパートワーをコードしていることは驚くべきである。利根川(1983)によってこの理論が立証されるまでは、人ゲノムの全DNA を動員しても、個々の抗体にそれぞれ対応する完全は遺伝子を調整支給する(accommodate) ことは到底不可能と考えられていたと言う。生殖胚遺伝子分節の選択的再結合がこの問題を打開したのである。
上述したようにC 領域の最初に位置しているのがμ鎖であるから動物の血清中に初期に現れるのはIgM であり、その次に位置するδ鎖がコードするIgD は非常に痕跡しか現れない。ところがB リンパ球の分化が進につれてIgD のみならずその外のclass のIgが現れることは、遺伝子の再編成(somatic rearrangement of separate gene segment)によってC μと配合していたV 領域が別のC H 遺伝子分節( 例えばC γ3 またはC α) と配合するためとされる。C γ3 が選択されるとその外の遺伝子は切り継ぎ(splicing)されmRNAが形成され、続いて翻訳(translation) が起こりγ3 H 鎖を持ったIg class が出来上がる。したがって、Igのclass(またはisotype)は変転換(switch)されるがV 領域はそのまま残ることになり、同じV 領域(VH とV L ) をもったIg class( またはisotype)、つまりIgM, IgD, IgG, IgE, IgA が形成されることになる。同じpre-B から由来したIgで発見された事実のようであるが、遺伝子の再編成機構の一つとして重要とされている。V 領域は同じであるから同じ抗原に対応して異なったclass の抗体が攻撃することになり、抗体の効果が高まるための免疫応答であろうか。
尚, T リンパ球受容体( 単にT リンパ球としても同じ) レパートワーの形成も抗原に対応する数だけ存在するのであるから抗体レパートワーの形成と同じように考えられている。例えばV βドメインをコードする特異VDJ 遺伝子を形成するにはV, D, J のそれぞれの分節を1 個づつ選択するのであるから、V β遺伝子( 又は対立遺伝子) が25種類、D β遺伝子が2 種類、J β遺伝子が12種類とすれば25×2 ×12=600種類の異なったVDJ β鎖の組み合わせが出来ることになる。同じ遺伝子組み合わせ機序で考えるとα鎖は5,000 種類の組み合わせが可能であり、最終的にはαとβ鎖が任意に組合わされるのであるから600 ×5,000=360,000 種類の異なったαβTCR 分子が産生されることになる。TCR レパートワーにおいても実際は更に微妙な組み合わせが起こることがあるようなのでαβTCR 分子の全レパートワーは1017にもなると言われる。最後にこの様な遺伝子の再編成は免疫細胞においてのみ特異的に起こるものであって他の細胞では起こらないとされている。

Antibody response: 抗体応答 (反応) 。抗原刺激に応答しておこる抗体産生反応(immune response を参照) 。

Antibody screening test: 抗体スクリーニング試験。患者や供血者の血漿又は血清中のラントシュタイナーの法則に従わない血液型抗体( 不規則抗体) の検出を目的とした間接抗グロブリン試験。O 型血球を使用しブロメリン法または間接クームス法で行う。欧米人に多い抗D は日本人には少なく, むしろ抗E が多い。日赤中央血液センターの調べでは不規則抗体検出率は供血者で0.036 %, 患者で0.2%であったという。抗Leb , 抗Lea , 抗E, 抗H, 抗P 1 , 抗Fya その他の順に見出されている。Typing and screeningのscreening は不規則抗体スクリーニングのことである。Typing and screening 済の血液は交差試験を省略して輸血できる。

Anti-C: 抗C 抗体。O 型血清中の抗A および抗B 抗体は, A 型およびB 型の血清中の抗Bおよび抗A 抗体とは別のものではないかという考えがあり、このO 型血清中の抗体をAとB の共通抗原C に対する抗体( 抗C Anti-C) あるいは、抗A と抗B の両方の特異性をもった抗体(hybrid antibody) といわれている。事の発端は, O 型血清にA 型血球を加えて生じた凝集塊から、抗A と抗B 抗体が解離されてくるという現象に対する解釈からである。Wiener(1966), Dodd(1952), Bird(1953), Milgrom(1952)らの説がある。

Anticoagulant: 抗凝固剤。

Anti-complement activity: 補体活性化作用。補体を活性化する作用のある免疫グロブリンは臨床使用できないので製剤としては不合格である。そのための試験がIg製剤に義務づけられている。抗補体活性と訳すと補体に対する抗体と間違える可能性がある。

Antigen,(Ag): 抗原。これまで生体内に無かった物質を非経口的に投与すると中和抗体産生をおこさせるあらゆる物質。Blood group antigen ( 血液型抗原) を参照。免疫原と同義語として使用されるが、全ての抗原が免疫原ではない。

Antigen-antibody reaction: 抗原抗体反応。血清のような溶液に浮している抗原、あるいわ厚さ約45Åの細胞膜構造の一つである抗原と対応する抗体とが結合する現象。抗原と抗体が結合しているかどうかの見極めがキーポイントとなる。一般的には一相、二相、三相に分類されている。一相反応は抗原と抗体が物理化学的に結合して抗原抗体複合物を形成する反応。相互の結合を安定化する分子間の力は、水素結合、無極性または疎水性相互作用による水を排除した抗原と抗体の結合、イオンまたはクーロン力( 距離の2 乗に逆比例) による相互作用、van der Wahles力( 距離の6 乗に逆比例) による相互作用、比極性粒子間のロンドンの分散力等が関与している。ラヂオイッムノアッセイ、酵素抗体法、蛍光抗体法等が一相反応を利用した測定法である。二相反応は抗原と抗体の結合によって反応系が変化して、沈降、凝集、粘着、中和(細菌、毒素、ウイルス等) 、補体結合反応などを生ずる現象。三相反応は抗原抗体反応の結果としての生体反応。Schultz-Dale反応、Prausnitz-K7stner 反応、受身皮膚アナフィラキシー反応、ヒスタミン放出反応等でがある。

Antigen epitope: 抗原エピトープ。抗原決定基(antigen determinant) とほぼ同義語で、化学構造の明らかなもをいう。

Antigenic determinant: 抗原決定基。抗体と特異的に反応する抗原の部分。抗原抗体反応の特異性を決定する構造。抗体の活性部が認識する化学構造で、巨大な抗原分子のほんの一部分である。

Antigenic factor: 抗原因子。抗血清と反応する凝集原の部分。抗原決定基。

Antigenic paralysis: 抗原麻痺。

Antigenicity: 抗原性。特異的抗体を産生し、その抗体と反応する能力あるいは強さ。

Antigenize: 動物に抗原を投与すること。すなわち適当な条件で抗原性をもつことが知られている物質を投与すること。投与された抗原は, 試験動物に特異抗体を発生させるこもできるが、できないこともありうる。(antigenization  名詞)

Antigen presenting cells: 抗原提示細胞。APC またはAPCs。骨髄で生成し主として皮膚、リンパ節 、脾臓、胸腺等に定住している。文字どうり細胞内で処理された抗原ペプチド(8〜10アミノ酸残基からなる。Cruse 1995) を抗原感受性のリンパ球(CD4ThまたはCD8CTL) がこれを認識できるようにクラスI 又はクラスUMHC 分子の溝にしっかりと結合して細胞膜表面に差し出す細胞である。Adhesion moleculesの付図参照。皮膚のLangerhans細胞は代表的なAPC とされている。このAPC はヴェール細胞(veiled cells)となって輸入リンパ管からリンパ節に入り排出部の傍皮質(paracortex)へと流れていく(Roitt 1996)。傍皮質にはTリンパ球が沢山絡みついているので皮膚から運んできた抗原をTリンパ球に提示する効果的な場所である。APC は抗原( ウイルス、細菌その他) を細胞内で消化処理した色々な抗原断片を、クラスTMHC 分子はCD8 + 殺T リンパ球(CD8 +CTL)に、そしてクラスUMHC 分子はCD4 + T リンパ球(CD4 +Th) に非自己抗原として認識し易いように提示する(MHC拘束、MHC restriction という) 。このMHC拘束または束縛とは、自己のMHC 分子がTリンパ球に抗原認識の拘束的資格を与えることとなり、Tリンパ球が自己のMHC 分子が提示する抗原にのみ限定して反応する現象である。CD8 + CTL は本質的には病的細胞( ウイルス感染、癌他) を殺す目的のリンパ球である。病的細胞がクラスTMHC 分子によって抗原提示するのを待ちうけていリンパ球であるか、CD8 + CTL は抗原提示を受けると直ちにパーフォリンを分泌して病的細胞を殺してしまう。病的細胞が死滅する現象をアポトーシスと言う。病的細胞のことを標的細胞(target cells 、例、fibroblasts)と言うが、抗体や補体の攻撃をうける細胞も標的細胞と言う。クラスI 及びクラスUMHC 分子の体細胞上の分布に関してはAdhesion moleculesの付表を参照されたい。他にも濾胞樹状細胞(follicular dendritic cell)と呼ばれる特殊なAPC があり、この方はリンパ節と脾のBリンパ球領域の濾胞内にある。

Antigen tolerance: Antigen paralysisと同じ。

Antiglobulin test: 抗グロブリン試験。Coombs test を参照。

Antigram: 抗原記号。赤血球上の抗原の有無を意味する表記法。+は抗原有り、−は無し。

Antihemophilic factor(AHF): 貯蔵血漿から製造した第[因子の凍結乾燥製剤。AHF は血友病A の治療に使用される。★加熱またはSD処理によってウイルス( 被服ウイルスのみ。HB, HC, HIC は不活性かされる) は不活性化されている。

Anti-H lectin: Ulex europaeus から精製される植物抽出物。H 抗原を持つ赤血球を凝集させる。

Anti-human globulin: 抗ひとグロブリン。Coombs 試薬。ヒトglobulin の注射によって動物( しばしばウサギ) で産生される globulin 。

Anti-lymphocyte serum(ALS): 抗リンパ球血清。特に記載がないかぎりは異種動物由来のリンパ球を免疫注射してえられた抗血清。

Anti-M lectin: Iberis amara から精製される植物抽出物。M 抗原を持つ赤血球を凝集させる。

Anti-N lectin: Vicia graminea から精製される植物抽出物。N 抗原を持つ赤血球を凝集させる。

Antiphosholipid antibody syndrome: 抗燐脂質抗体症候群。患者血清中に抗カルヂオリピン抗体、その他の抗陰性荷電燐脂質抗体、またはループス抗凝固因子(Fleck 1988)等が存在するときに起こる症候群で、静脈及び動脈血栓、習慣性流産、血小板減少症等を特徴とする。マウスによる実験成績であるが、抗炎症剤であり、cyclooxygenase活性を阻害しprostaglandin 合成障害剤であるアスピリンとInterleukin-3 がこの症候群の発現阻止に有効と言われる。アスピリンがマクロファージのcyclooxyagenase を活性化を阻止し、そのためアラキドン酸代謝をlipoxygenase経路へと移動させるのでロイコトリエンの過剰産生が起こり、ロイコトリエンがIL-3生成をin vitroでもin vivo でも刺激することになると言う。結果的にアスピリンがIL-3産生に導くことになると言う(Fishman 1995)。

Antithetical: 相反の、正反対の。対立遺伝子の産物を参照するときに使用される用語。Rh型のC とcは相反抗原(antithetic antigens) であると言われる。C とcは、それぞれの対立遺伝子によってコードされているか、同一染色体座位の一遺伝子の二者択一型のコード形式のいずれかであろうとされている(Quinley 1993)。したがって、一染色体上でヒトはその座位にC 遺伝子かc 遺伝子を持つが、両方は持てない。C とc 遺伝子は共優性であり、両方が存在すると、それぞれの染色体上の抗原C と抗原c は両方とも抗原を発現する。白人の70% はC 抗原を、80% はc 抗原を発現すると言われる。しかし両抗原ともD 抗原ほどは免疫原性は無い。

Anti-thymocyte globulin (ATS): 抗胸腺リンパ球血清。T-cellをより強く刺激する。これに対し, 抗免疫グロブリン血清は B-cell を刺激する。

Anti-T lectin: Arachis hypogaea から精製される植物抽出物。T 抗原部位を表現している赤血球を凝集させる。

Antiviral drugs: 抗ウイルス剤が少ない理由は次のようである。ウイルスの代謝は正常細胞のそれに似ているのでウイルスを殺そうとすれば細胞も死ぬからである。ウイルスの増殖(replication) が患者が無症状潜伏期にも起こっているからである。もう一つは薬剤抵抗性ウイルスが突然変異でうまれることである。しかし抗ウイルス剤の幾つかはその作用部位から考えられ、acyclovir(アシクロヴィル、ゾビラックス) のように実用化しているものもある。作用部位から考えられた製剤は、ウイルス侵入部位での脱殻阻止剤(amantadine)、ウイルスDNA 又はRNA 合成阻害剤 (acyclovir, ganciclovir, vidarabine, idoxuridine, trifluridine, azidothymidine, ribavirin等) 、ウイルスmRNAによる蛋白合成阻害剤(interferon, methisazone等) などである。 ウイルス特異酵素、前駆ポリペプチド鎖の分割剤(cleavage)、その他である。

APC: activated protein C. Protein C 参照。

Apoptosis: アポトーシス。細胞の自然死又は予定死(programmed cell death) 。誘導細胞自殺(induced cell suicide)と言うこともある。提唱者(Kerr 1972) がAberdeen大学ギリシア語教授J. Cormackに聞き合わせたところ、apoptosis は花弁や木の葉の落下を意味するギリシア語αποπτωσισに由来すると言われる。発音は語尾から二番目の音節を強調すべきであるからptosisのp は発音しないで、後半は既に一般に使用されている下垂症(ptosis 、発音はtosis)のように発音してほしい、とその論文の脚注にある。Kerr等は、細胞の持続的な分裂増殖と死滅のバランスが維持されるためには生理的細胞死(physiological cell death)を明確に定義しなければならない、との考えで新概念apoptosis を提唱したようである。今になって考えればH.E.染色やMay-Giemsa染色でもいくらでも認められた所見だが、食細胞による壊死細胞の浄化過程に過ぎない、或いは顆粒球の分節化の進んだもの(hypersegmentaiton) 、等と軽く考えていたものであろう。提唱者によるとapoptosis は細胞形態の特徴的消失像を意味するが、予定死は細胞死を運命ずけられた自然現象とした概念と考えられているようだ。卵か鶏かの議論であろうが、組織像やladder現象を読む時にはapoptosis と言う用語が今や必要である。Kornberg(1974)がnucleosomeの構造を提唱したことで、apoptosis の研究により一層の拍車がかかった。電気泳動によるladder現象もその一つである。Current Content で文献検索すると1990年に入ってからは毎週20〜40の論文が出てくるし、総説本( Kaufmann 1997, Martin 1997)も多数出版され理解し易い。Apoptosis の誘因としては、@Fas 受容体とFasLとの結合(HIV-1によるリンパ球のapoptosis もこれに入る) 、Aサイトカインやホルモンの増加や欠乏、細胞周期の阻害、BApoptosis 誘導因子(Ca ++の増加) の活性化、apoptosis 抑制因子(Bcl-2等) の欠失やDNA の損傷( 電磁波照射、抗腫瘍剤、恒温と低温)、いずれもp53 の活性化→ICE とその類縁体の活性化→endonuclease活性化を経てapoptosis 、等がある(Fraser 1996,Evans 1995, Lodish 1995, Nagata 1997) 。Apoptosis は、虚血によって細胞群、組織、臓器などが死滅する病理学的な壊死と区別されている。apoptosis は個々の単一細胞が生体内で除去(deletion)されることである(Thompson 1992) 。

付表5
アポトシス壊死
形態学的特
散発的な単一細胞の除去(deletion)。十分に注意して観察すると光学顕微鏡でも発見できる。短時間段階的進行。細胞群または組織全体の死
易染色で光学顕微鏡で容易に観察できる。長時間連続進行。
膜泡(membrane blebbing) 形成するが
膜構造消失(membrane integrity)無し。多核白血球の顆粒は正常。
膜構造が消失し、細胞内容流出。
多核白血球の顆粒放出
細胞は縮小と断片化しアポトシス小体形成が急速に起こる。絨毛消失細胞の膨化と融解は緩徐に起こる。
炎症反応無し(サイトカイン分泌なし)炎症反応著明(多種多様のサイトカインの分泌あり)
近辺の正常細胞と一部のマクロファージにより貪食される。マクロファージにより貪食される。
近辺の細胞も一緒に死滅する。
ライソソームの分泌正常。ミトコンドリアDNAの変化はほとんどなし。ライソソーム分泌と漏出が起こる。
ミトコンドリアの形態変化著明。
クロマチンの網状構造の消失し、核は均質な濃縮塊を形成縮小し、核の辺縁押しやられるクロマチンは不定型塊状(V度)に凝集
生化学的特徴
UV, X線, 酸化,加熱ショック,重金属,細胞毒などの
中等度刺激で誘発される高度刺激で誘発される。
合成と活性化行程でON-OFFは厳密に制御された行程である。ON-OFFのホメオスターシス制御は消失し、イオンの能動輸送は消失。
細胞内シグナル伝達過程でエネルギーを必要とする。エネルギーは不要である。
CED蛋白(ced遺伝子制御蛋白)や酵素などの巨大分子が新規合成(de novo synthesis)される蛋白や核酸の新規合成はない。
アポトシス遺伝子の発言と転写あり。
p53遺伝子が関与(G1期延長)する。
新規遺伝子の転写なし
p53遺伝子が関与しない。
DNA は無作為的に単一ヌクレオソーム長(180bp)とその整数倍(360,540,・・・)に断片化する(Iadder現象,TUNEL染色,蛍光染色で陽性になる)。付図参照。DNA は無作為的に消化( 断片化) される。

付図5
付図5-1
  付図5   Nucleosomeとapoptosis.
  Apoptosis の検査と診断で大切なのは、DNA の断片化の検出である。著者は先ず血球はMay-Giemsa染色で、組織はヘマトキシリンエオジン染色で核の濃縮と、断片化濃縮核を貪食したマクロファージの光学顕微鏡像を観察する。次に決め手としてTUNEL 染色法、電気泳動像(ladder 現象) 、DNA 結合性蛍光色素アミノベンズイミド( ヘキスト33342, 333258)染色法( 蛍光顕微鏡像) 等を実施している。これらの検査法とその結果を理解するためには染色体の構造とその基本単位であるnucleosomeの理解が必要である。この付図と模型は、Andrew 1993, Bird 1997, Devlin 1997, Garrett 1995, Janeway 1997, Lewin 1997,Lodish 1994, Martin 1997, Kaufmann 1997等の既述を参照して著者が作成した。略語 bp: base paires, PR:packing ratio.

付図6-1

付図6-2

   Apoptosis 細胞核の特徴
@ リンパ腫。リンパ節のヘマトキシリンエオジン染色。Apoptosis 細胞やこの細胞核(apoptosis小体) を貪食したマクロファージ( 矢印) が沢山認められる。他にも核の濃縮や断片化を認める( 当院病理。竹下盛重博士撮影) 。
A Apoptosisを起こした細胞(1個) 。慢性関節リウマチ症患者血液のMay-Giemsa染色。濃縮した核は多数に分断されてい。この疾患は自己免疫疾患であり多数のapoptosis 細胞が末梢血中に認められる。自己免疫疾患では体細胞膜や核の再配列(redistribution)が起こりマクロファージに貪食されやすくなり (Vaishnaw 1997) 、それだけ一層に自己抗原をB リンパ球に抗原提示する量も機会も多くなり自己抗体の産生が加速されることになる(用語casupase参照) 。
B Apoptosis細胞(5個) の蛍光染色像( ヘキスト33342 で染色) 。10年間−196 ℃凍結保存リンパ球( 解凍後5%CO2 ,37 ℃, 24時間恒温静置) 。
C Apoptosisを起こした細胞(4個) 。慢性関節リウマチ症患者末梢血液のMay-Giemsa染色。濃縮した核は多数に分断されている。
Aでも述べたようにこの疾患では多数のapoptosis 細胞が末梢血中に認められることが多い。DとEはCと同じリンパ球ののTUNEL 染色。赤褐色に染色されたリンパ球のアポトシス核が多数認められる。正常の細胞はエメラルド緑に染色される。多数のapoptosis 白血球が認められるのは慢性関節リウマチ症患者末梢血液所見の特徴の1 つであろう。F10年間-196℃凍結保存リンパ球(f.)の解凍後12時間37℃恒温静置後のladder現象は判然としない。このリンパ球にUV照射(250nm, 4,320J/cm 2 / 時×18時間室温照射) するとladder現象( b, c, d, e) を示す。最初のbandはマーカーの123 bpと246 bpの中間で246bp 寄りで 200 bp 付近にある(b〜e)。ただし、このゲル電気泳動法は123 bp単位の小分子量DNA 検出のためであり、更に高分子量DNA 断片(5〜150 kb) の検出にはpulsed-field electrophoresis法( Raza 1996)が必要となる。MDS でも高分子量DNA 断片のアポトシスが起こることがあるのでTUNEL 染色法や ISEL 法( in situ end labeling) でも検出出来ないことがあり、上述のpulsed field electrophoresis法が必要となると言われる。

Arachidonic acid cascade: Eicosanoid, leukotrien参照。

Arrhenius equation: アレニウス方程式。反応速度定数(rate constants)と活性化エネルギーとの関係。1889年 Svante A. Arrhenius( スエーデンの化学者、1859〜1927) によって "酸によるショ糖化の反応速度について" という論文のなかで提唱された。次式で表現されている。
 k = Ae-Es/RT、この式は k = A exp( −Es/RT)とも書く。−Esは−ΔG ‡とも書く。
 GはGibbs free energy of activation の意味で、縦に繋がる2 つの+はdouble dagger(二重短剣) 記号で、化学では遷移状態(transitional state)または活性化状態のエネルギー(free energy) を意味する。
 Es: アレニウスの活性化エネルギー( calories/ mole)
 R: 気体定数(1.987 calories mole-1degree K-1)
 T: 絶対温度(K)
 A: アレニウス比例定数(Arrhenius preexponential factor) 、頻度因子(frequency)、度数因子、前指数項A (preexponential factor A) 等とも呼ばれる。時間あたりの回数であるからs -1( 時間の逆数、/s、/ 秒 )を含んでいる。
 k: 反応速度定数(reaction velocity constant)。反応物質と生成物質のそれぞれの濃度の関数に比例して起こる反応速度の比例定数( この場合の比例定数は反応速度を濃度の冪関数としたもの) 。
 e: 2.71828(自然対数の底)
この式は、速度定数k と活性化エネルギー( −Es) は指数関数的に反比例の関係にあることを意味している。また、活性化エネルギーが低ければ反応速度は大きくなり、活性化エネルギーが高いと反応速度が小さくなる、と考えられる。

Arthus reaction: Arthus 現象。アルサスまたはアルチュス反応。Arthusは抗原( ウマ血清) を動物( ウサギ) の皮内に毎日一週間以上連続くして注射した。特異的沈降性抗体を持っようになった時点でこのウサギに再びウマの血清( 同じ抗原) を注射すると注射部位に浮腫、出血、壊死、潰瘍等の炎症、つまり出血性壊死激を特徴とする過敏反応が現れるとして1903年に記載した。抗原抗体反応と補体活性化及び多核白血球浸潤などを伴う。Arthus反応は今日のアレルギー分類(Gell and Coombs 1968)ではIII 型の典型例とされている。全身性のArthus現象もおこる。Nicholas Maurice Arthus(1862-1945)はフランス生理学者。

ASL: 抗リンパ球血清。anti-lymphocyte serum の略。

ASPAC: anisolyated streptokinase plasminogen activator complex. 別名anistreplase。anisolyated とhrombolysis 参照。

Aspirin: おそらく最も古くから広範に使用されてきた抗血小板剤であろう。Aspirinは酵素反応性serineをアセチル化することによって血小板のcyclo-oxigenaseが非可逆的に阻害されるので、thoromboxaneA2の形成も阻害されるので、血小板機能が阻害されることになる。Aspirinは更にprostacyclin (抗血小板)を産生する内皮細胞酵素群をも阻害するが、臨床的には大きな支障は無さそうである。大量のaspirin投与によって炎症反応のメヂエターのひとつである転写因子(NF-κB)を阻害すると言われる。
 Aspirinが血小板cyclo-oxigenaseを完全に阻害する投与量(成人患者)は30〜1,200mg/日と巾があるが、最近では80〜3225mg/日となっている。少量ほど胃腸障害は少ない。多量投与(975mg)では脳血管病予防により効果的であり、抗粥状硬化作用もあるようだ。Aspirinには心筋梗塞の一次的および二次的な予防効果があり、一過性脳虚血発作(transient ischemic attack)後の脳卒中の予防効果もある。心筋梗塞後の致命的卒中の危険性を42〜45%、非致命的心筋梗塞(再梗塞)を31~49%、血管疾患による死亡率を13~22%、それぞれ減少させると言う(DeLoughhery, T.G.: Hemostasis and Thrombosis. Landes, 1999)。
 Aspirinの作用は経口または舌下に投与すると非常に急速に現れる。Aspirin投与時の血液循環中の血小板cyclo-oxygenaseは永久阻害されるので、その抗血小板効果(例:出血時間の延長)は阻害血小板が新造血血小板と置換されるまで持続する。Aspirin服用中止後数日に及ぶ。従って、緊急(手術)の場合は血小板輸血が必要である。Desmopressinが血小板阻害に拮抗すると言われる。人工僧帽弁置換術後又は心房細動のある場合はaspirin投与量はやや多くなり160mg/日として、INR 2.5~3.5となるように warfarin を併用する(DeLoughhery, T.G.: Hemostasis and Thrombosis. Landes, 1999)。

A+T/G+C ratio: A+T/G+C 比。DNA 分子中の塩基対アデニン- チミンの組とグアニン- シトシンの組の量比を示す。

Atopy: アトピー。P-K 型のT型過敏症(IgE-mediated allergy) を意味する言葉としてしばしば用いられる。皮下や鼻、喉、肺等の粘膜組織の表面近くに存在する肥満細胞表面のFc受容体にIgE(初回アレルゲン免疫により生じたもの) 抗体が結合している所へ、次の機会に同じアレルゲンが結合(cross-linkingと言う。肥満細胞-Fc 受容体-IgE- アレルゲンの結合) すると、肥満細胞質中の顆粒が細胞外に放出されて、顆粒内容物( メヂエターはヒスタミンとプロスタグランヂン) が周辺組織に遊離する。かくして血管拡張、急性炎症、組織損傷、平滑筋収縮、気管支収縮等の症状が出る。掻痒、湿疹、アレルギー鼻炎( 枯草熱) 、喘息、食物アレルギー等である。常染色体性優性遺伝し、遺伝子は第11染色体長碗(11q) に位置している(Cookson 1989)。従って、親がアトピーであるとその子は罹りやすく、一卵性の方が二卵性よりも発症率が高いと言われる。塩基好性細胞も同じ反応を示すようである(Staines 1993)。

ATP: Adenosine triphosphate.アデノシン三燐酸。

ATPase: P-ATPase, V-ATPase, F-ATPaseの 3クラス( タイプ) ある。P はplasmamembrane, V はvacuole(リソソーム, エンドソーム, 液胞膜等) 、F はエネルギー共役因子(energy-coupling factorsのf)から来ている。

ATS: anti-thymocyte serum.

Atypical agglutinin: 不規則凝集素。対応抗原を欠く人の血清中に見出されることのある赤血球の凝集素または抗体。★Atypical antibody と同じ。

Atypical antibody: 不規則抗体。抗A,抗B 以外の血液型抗体。★対応する抗原を欠く赤血球を持つ人の血清中に時折発見される抗体。輸血や妊娠によって免疫だれた場合が多い。日本人では抗D,抗E,抗Lea , 抗Leb , 抗Lea+b , 抗P 1 , 抗HI, 抗M 等( 本文参照)。他にも沢山見出だされる。抗体スクリーニング試験。Atypical antibody, atypicalagglunitin, irregular antibody, unexpected antibody に同じ。

Autoadsorption: 自己吸着。本人の赤血球を使用してその血漿又は血清中の自己抗体を除去する方法。

Auto-agglutinin: 自己凝集素。赤血球が自己の血清で凝集するときの凝集素。多くは他人の血球も凝集させる。

Autoantibodies: 自己抗体。生体内に発生した抗体で自分自身の抗原と反応する抗体。自己免疫性溶血性貧血を生じる。その抗原刺激は明らかでないが、自己の抗原または異種または同種の共通抗原の刺激によることはありうる。

Autoantibody disease: 自己抗体病。Autoimmune deseaseを参照。

Autoantigen: 自己抗原。自己抗体産生を刺激する自分自身の抗原。Autochthonous, indigenous:原発性の, 原産の。自分自身から由来し、体の一部と考えられること。autologousと同義語。疾病の例では、原発性腫瘍= 宿主に発生した腫瘍。

Autocrine: オートクリン。自律性の。endocrine 、paracrine 等と共に生成したメヂエターの細胞間相互作用の仕方を分類した用語。メヂエターの作用機序の違いを説明する時に使用される。Autocrine: 自律分泌作用。PHA で刺激すると Tリンパ球はIL-2を放出し、このIL-2が Tリンパ球自身を刺激して自己増殖分化することをオートクリンすると言う。抗原提示細胞がクラスUMHC 分子に抗原ペプチドを結合させてCD4 + ヘルパーT リンパ球(CD4+ Th)に提示すると、このCD4 + Thは活性化してIL-2を遊離するのだが、CD4 + ThはIL-2受容体を持っているので、遊離されたIL-2がIL-2受容体を持っているCD4 + Thを次々と活性化する機序もオートクリンである。マクロファージを代表とする単核球がLPS の刺激で分泌するTNF は生成した細胞自身又は同じ種類の細胞の増殖を活性化する。したがって少量のTNF でも大量のTNF と同じような効果が現れる。TNF 受容体は多くの細胞表面に分布しているためであろう。プロスタグランヂンE 2 は細胞内で分泌されて同じ細胞内のライソソーム酵素を活性化して蛋白分解する。Paracrine: 異所分泌作用。Prostacycline やnitric oxide(NO)のように血管内皮から分泌され隣接した血管の平滑筋に作用する。このメヂエターは標的細胞群の近辺で分泌され、生物学的な至近距離しか拡散しない。Endocrine: 内分泌作用。このメヂエターはその化学的信号が標的細胞群から離れた場所で分泌され、化学的指令が血流によってある程度の距離を移動しなければならない。副腎皮質ホルモン、活性化マクロファージの分泌するinterleukin I 等である。

Autocrine hypothesis: オートクリン仮説。自律仮説。発癌の仮説。殆どの正常の体細胞は他の細胞の放出する増殖因子(grouth factor) の作用で増殖分化するが、癌細胞は自己の放出する増殖因子で自律的(autocrine) に増殖分化するとする仮説。Autocrine に対して前者をparacrine(他律性、異性) と言う。

Autologous donation: 自家預血。供血者と受血者が同一人の血液提供。

Autograft: 自己移植片。移植されるその同じ動物からとった移植片。

Autoimmune disease、autoallergic disease、autoantibody disease: 自己免疫患者, 自己アレルギー疾患, 自己抗体病。適切な基準により, 細胞性あるいは液性の自己抗体が患者自身の抗原と反応しあうためにおこると考えられる疾患。Burnet のクローン選択説にもとづいた禁止クローンの復活説が自己抗体の産生機序として有名。輸血で重要なことは, 自己免疫性溶血性貧血のような患者ではなるべく輸血をひかえることである。輸血は疾患の悪化を促するからである。Autoimmunize,autosensitize:自己免疫, 自己感作。動物自身の抗原でその個体を免疫する。

Autologous: 自己の。ある個体自身に由来しているもの。

Autologous bone marrow transplantation: 自家( 自己) 骨髄移植。悪性腫瘍の治療前に自己の骨髄( 幹細胞) を採取保存( 凍結保存が一般的) しておき、強力抗腫瘍治療( 抗癌剤や深部照射) の後の骨髄機能荒廃期に保存しておいた自己骨髄を自家移植する方法。拒絶反応や移植片対宿主反応が無いのが特徴である。問題は、保存骨髄中に混在している腫瘍細胞の「再増殖による再発」と寛解期の骨髄幹細胞の「再度の腫瘍化」であると言われる。再発予防のために自家移植前に混在する腫瘍細胞除去(purging) が色々な方法でおこなわれているが完全な方法は無い(immunotoxins 参照) 。腫瘍細胞の残存が5%以下でも十分再発すると言われる(Jansen 1985) 。再度の腫瘍化は幹細胞自体が多様性(heterogeneity) を持っているのでその調整は至難とされている。寛解期の白血病細胞であれば尚更の事であろう。

Autologous mononuclear cell therapy: 自己リンパ球療法。養子免疫療法の同義語。LAK, TIL等参照。

Autoradiograph: オートラジオグラフ。放射性物質( たとえば放射能で標識した細胞の切片) を写真乾板と密着させておくと、放射能の当ったころが感光するので、写真を調べると放射性物質の存在個所がわかる。

Autoradiography: オートラジオグラフィー。細胞学的標本や巨大分子中の放射能を, 写真乾板に感光させることによって検出すること。

Autosome: オートゾーム, 常染色体。性染色体以外の総ての染色体。ヒトでは22対ある。

Avidity of an antiserum: 迅速かつ強力な赤血球凝集力, 結合力。

Bactericidal permeability increasing protein: BPI. 殺菌性透過亢進蛋白質。食細胞の殺菌系には酸素依存性( 活性酸素による) と酸素非依存性とがある。後者はBPI,カテプシンG, デフェンシン、アズロシジン、リゾチーム等の顆粒内貯蔵の殺菌物質によって殺菌する。

Bacteriolysis: 溶菌( 現象) 。抗体と補体によって細菌が破壊する現象。Richard Friedrich Johannes Pfeiffer(1858- ) にって発見された。

Base analogue: 塩基誘導体。通常の塩基とは少し異なるプリン, ピリミジン。あるもの(たとえば、5 - ブロモウラシル) は通常の塩基の代わりに核酸中に取り込まれることがある。

Base pairing rule: 塩基対の法則。二重らせんの核酸ではアデニンは常にチミン( またはウラシル) と、グアニンはシトシンと塩基対をつくらねばならないことをいう。

Basic amino acid: 塩基性アミノ酸。中性付近で実効電荷がプラスになるアミノ酸。

B cell: B 細胞。B リンパ球。ファブリキウス嚢で産生される細胞という意味で、嚢性リンパ球 bursa equivalent,derived または dependent cell,つまり B cell というようになった。ヒトではこのような嚢はないので、骨髄内またはリンパ瀘胞内で B細胞が分化するので bone marrow derived( 骨髄由来) と考えてもよい。その分化にはT 細胞の作用をうける。抗体産生前駆細胞(precursor) である。AFC である。

Beck's triad: Beck氏三主徴。心嚢タンポナーゼの診断となる血圧低下、静脈上昇、心音微弱をいう。

Bence Jones proteins: Bence Jones 蛋白。多発性骨髄腫において過剰につくられた免疫globulin の L鎖からなる尿中蛋白。κ型とλ型あり。単一クローン性の抗体で、Praproteinの一種である。 Sia test 参照。

Beta-structure: β構造。β-strand β鎖、β-pleated sheet β襞状布ともいわれる。蛋白のポリペプチド鎖が構成する二次構造の一つ。最低 2本のポリペプチド鎖が平行に並び、分子間又は分子内でCOとNHが多くの水素結合で結合( 又は相互作用) しているので、襞のある布状形成となる。扇面或いはアコーデオンカーテンを想像すればよい。Complementarity deternining regionの付図を参照されたい。二次構造にはもう一つα-structure( αらせん構造、球状蛋白) である。余談であるが、蛋白質の構造は4 つの階層(hierachies)に分けられていて、一次構造がアミノ酸( 残基) の線状構造で全て共有結合している。三次構造(tertiary structure)は二次構造の蛋白( α- とβ- 構造)のアミノ酸残基のR 基を介して相互に絡み合ってより複雑な構造を形成する。抗体( 免疫グロブリン) やミオグロビンがその例であり、分子内は多くの水素結合、イオン結合、van der Waals 力、疎水結合作用、S-S 結合等が作用しあって立体配座(conformation)を構成している。最も高次の四次構造(quaternary structure, subunit structure。ヘモグロビンでは4 量体 )の中で代表的なヘモグロビン(oligomeric protein という)は4 つのサブユニット( α1, α2, β1, β2 ) が強く疎水結合したものである。この疎水性は8 つ(ABCDEFGH)のαらせん( 球状蛋白) を構成するアミノ酸残基による。ミオグロビンの表面は親水性( 電荷をもつた) アミノ酸残基で構成され容易に会合することはなくmonomer である。

Bethesda units: BUと略す。Betheda inhibitor assay とも言う。患者血漿と正常血漿( 既知力価第[因子を持つ血漿) の規定量( 等量) を混合し、37℃で2 時間反応させ、残存第[因子量を通常の方法で測定する。対照反応( 緩衝溶液と正常血漿) の残存第[因子量と比較して患者血漿中のインヒビター量( 活性) を計算する。1 BUは2 時間で第[因子活性の50% が不活性化( 減少) する患者血漿1ml 中のインヒビター量( Kasper 1975, Key 1981) 。インヒビターは抗体であり、BUの0.2 〜0.8 がElisa 法測定力価の16, 37が512 、58〜231 が1,000, 341が4,000 、7,700 が32,000以上に相当するようである。Blisa 法の方が短時間で簡単であると言われる( Mondodrf 1997)。10 BU 以下のインヒビターを持った患者では第[因子を投与してインヒビターを中和する、10 BU 以上の時はFEIBA を投与してbypass療法を行う( Lake 1995, Poller 1997)。FEIBA 参照。

Bg antigens: Bg 抗原。赤血球上に存在するHLA 抗原をBg抗原という。いずれもHLAclass I 抗原で、Bga (HLA-A7), Bgb (HLA-B17), Bg c (HLA-A28) 等があり、対応する抗体を含む血清と弱い凝集反応を示す(Morton 1969, 1971) 。また、HLA-A2と-A28は交差反応するのでBcはHLA-A2とも反応するようである(Nordhagen 1974)。HLA-10, -A9,-B12, -B15 等も見出されることもあるという(Nordhagen 1977)。Bg抗原の発現は当然輸血前の抗体スクリーニング試験の障害となり、市販抗血清にも含まれていることがあると言われる(Daar 1984) 。大切なことは市販のポリクロナール抗D 血清が抗HLA 抗体を含んでいないことを確認することである(Pavone 1974) 。以前は Ot, Ho, Bennett-Godspeed-Sturgeon、或いは Donna 抗原と呼ばれていたようである。Bgb+c 抗原もあると言われる(Bryant 1995) 。

Bilirubin: 胆汁の赤色沈着色素。血清中に存在。

Biological clock: 生物時計。体内時計。ある生物学的構造( 遺伝子) が一定の周期で発現する機構。

Biological response modifiers: BRM。生物学的応答調整因子。免疫調整剤。免疫応答を変える広範スペクトル分子、つまり蛋白質。サイトカインと殆ど同義語と考えてもよい。BMR は単独の化学物質としてではなく、幾つかのBRM が相互に協力して作用する。Interkeukin 2 は単独では抗癌作用は無いが、T リンパ球を活性化して殺癌作用が発揮される(LAK参照) 。Interleukins, interferons, hematopoietic cology-st imylating factors, tumor necrosis factor, B lymphsite growth and differentiating factors, lymphotoxins, macrophage activating and chemotactic facors, macrophage inhibitory factor, eosinophil chemotactic factor, osteroclast activating factor等である。BRM は宿主の免疫系を調節(modulate)して抗腫瘍防御機序を強化すると言う。以上の因子の幾つかは組み替えDNA 技術で生産され、商品化している。Interferonαはhairy cell leukemia の治療に使用される。

Biphasic: 二相性。一つの反応が起こるのに二つの場を必要とすること。例えば、発作性寒冷血色素尿症の抗体IgG は抗P特異性を持っているので寒い外気に晒された皮膚の末梢循環中に赤血球と結合( 感作) する。この感作された赤血球が温かい体内に戻ってくると溶血がおこる。

Black lipid membrane: 脂質黒幕。直径約1mm の少孔を有するテフロン製ポットの孔を無極性溶媒n-デカン等に溶解したレシチンを筆で塗って作った厚さ4-〜130 Å( 生体膜は30〜150 Å) 、静止膜電位0 〜140mV(生体膜は10〜80mV) 他の性質を持ったモデル膜(Mueller 1962,Bangham 1968, Montal 1973, 中垣 1975, 奥 1994)。構造的には生体膜に類似した脂質二重膜(bilayer lipid membrane, BLM) で、光の波長よりも膜がはるかに薄くなるので干渉縞も消えて色のない灰黒色に見えるので黒幕と呼ばれる。

Blastogenesis: 胚子発生。リンパ球分裂のことだが、一般的には" 幼若化 "rejuvenescence といわれる。Mitogenesis,transformation も同じ。この現象を応用したものが MLC である。

Blastogenic factors(BF): リンパ球を非特異的分裂させる因子。つまり活性因子。Lymphokines 参照。

Blocked cells: 遮断血球。遮断抗体(1価抗体, 不完全抗体) で被われた血球。その血球は被っている抗体と同じ特異性をもつ。食塩水抗体( つまり完全抗体) では凝集しない。Antibody を参照。

Blocking antibody: 遮断抗体。不完全抗体を参照。不完全抗体と結合した血球は、そのあとで対応する完全抗体と反応させても凝集しない。これは不完全抗体で遮断されているためである。したがって遮断抗体といわれた。初期には不完全抗体の検出法として、この遮断試験が行われた。しかし、感度が悪いので現在は用いられていない。現在はもっぱら Coombs 試験あるいは酵素処理法が用いられている。

Blood container: 血液コンテナ。血液保存容器。通常は液体窒素に血液、骨髄、組織、臓器等を凍結保存するときのプラスチック製又は金属製の容器を言う。液体窒素の運搬用貯蔵槽を意味することもある。

Blood group antigens: 血液型抗原。赤血球表面にある100 種以上の抗原。遺伝子(gene)がその生成酵素を支配している。遺伝子の産物。

Blood group substances: 血液型物質。ただし、唾液のような体液中にある抗原は型物質といわれる。抗原が溶液中にあるときは一般に血液型物質という。特異的抗体を中和することのできる水溶性抗原である。赤血球抗原と同じ特異性をもつ。赤血球上にあるときはA抗原、B抗原というが血漿や体液中にあるときは型物質といわれる。唾液中に分泌されるものもそうであり、Lewis 抗原も唾液、血漿などに水溶性の血液型物質として認められる。

付図7

Bohr effect: ボーア効果。ヘモグロビンのような酸素運搬物質が水溶液または血液の中にあるとき、炭酸ガスの分圧をあげたり, 溶液を酸性にすると, 酸素がたやすく運搬体から離れてくれる現象をいう。したがって、ヘモグロビンは組織( CO2 が多い) で酸素を離し、肺(O2 が多い) で酸素を多く担いうるようになる。実際はpCO 2 の変化に影響される pH (H+ ) の変化でボーア効果が現れるのである。水素イオンが増加すると、酸素解離曲線は右方移動し、減少すると左方移動する現象を言う。但し、pHは6 〜9 の間でのことである。化学式は HHb+ + O2←→ HbO2+H+で表される。Δlog P 50/ ΔpH = −0.40 の関係があるので、pHが0.1 低下するとP 50は2.5 〜3 torr増加するとされている(Woodson 1991)。これとは反対に (reciprocal interaction of O2 and CO2 という) PO2 が低下するとCO2 含有量が増加する現象を Haldane効果という。尚、Bohr効果のBohrはChristian Bohr( コペンハーゲン大学生理学教授) で、息子が Niels Henrik David Bohr(1885-1962)、孫がAage Niels Bohr(1922-)である。息子が1922年に、孫が1975年にそれぞれノーベル物理学賞を受賞している。

Bombay phenotype: H 遺伝子の欠如で生じる表現型。その人の遺伝子型は で記載される。Bombay型(Oh)の人の表現型は表試験(forward) でO型であるが、裏試験(reverse) でもO型となる。強力な抗H が存在するからである。Bombay型の人の血清中には抗A、抗B、そして抗Hの三種類の抗体が含まれているのである。従ってO型血球( OH)をBombay型の人に輸血するとBombay血清中の抗H によって強烈な不適合反応(溶血)を起こすのである。

Bolus: 一回静注(intravenous bolus) 。この反対語はcontinuous intravenousinfusion( 持続点滴静注) である。

Bovine albumin: 牛血漿の Cohn 分離の第X分画。

BPI: bactericidal permeability increasing protein 参照。

BRM: biological response modifiers参照。

Bromelin: 赤血球からシアール酸(sialic acid) を分割除去する蛋白分解酵素( パイナップルからとれる) で、抗体と赤血球との反応を促進するが、ある種の抗体を破壊してしまうこともあると言われる。

Buffer: pHの変化に抵抗する物質または溶液。

Bulbus cranialis venae jugularis: 頸静脈上球。Jugular venous bulb oxygen saturation 参照( Grubhofer 1998) 。

Buoyant density: 浮遊密度(gm/ml) 。溶質又は細胞( 通常は血球) の浮遊密度が溶媒または懸濁液の密度より大きいか小さいかによって沈降または浮上が起こる。浮遊密度=密度+浮力因子+他成分の濃度勾配で表される。測定者によって微妙に異なるが、血球成分の分離には必要な数値である。例(Pretlow 1982)。

赤血球1.09-1.11
顆粒球1.080-1.095
好酸球1.090-1.095
好中球1.080-1.085
リンパ球1.052-1.077
芽球1.043-1.067
B リンパ球1.062-1.075
細胞毒リンパ球<1.062
NKリンパ球1.050-1.070
T リンパ球1.065-1.077
単核球1.050-1.066
血小板1.03-1.06
骨髄細胞( 巨核球を除く)1.05-1.09
巨核球1.02-1.05

Bursa of Fabricius: Fabricius 嚢。鳥類の排泄出腔に開く盲嚢で液性抗体を支配すると考えられているリンパ系細胞。B-cellの Bは Bursaの Bである。哺乳動物では厳密な意味でのFabricius 嚢は存在しないが、胎児肝と成人骨髄がこの機能を代行している。

付図8

Bursa Fabricii, Bursa of Fabriciusは排泄腔(cloaca)の背面に小管(dorsal surface)で連絡している。

C3 convertase: 古典的補体カスケードでC3をC3a とC3b に分割する活性化C4a2b で構成されている酵素。代替経路ではC3転換酵素は活性化C3bBb で構成される。

C3a: C3 分子の生物学的活性フラグメントで,anaphylatoxin の一つ。

C5a: C5 分子の生物学的活性フラグメントで,anaphylatocin の一つ。

Cadaveric blood transfusion: 屍体血輸血。Yudin(1936) に始まり今日でも続いている(Agranenko 1990)。

Calyx: 萼( ガク) 。 花の雌蘂と雌蘂を包んでいる花被( 花びら) は花冠( 花弁) と萼( 萼片) から構成されている。萼は一番外側の花被である。Glycocalyx参照。

Capsid: ウイルスゲノムを包んでいる殻で,capsid proteinとも言う。Envelopeは外包であり,脂質であり,lipid envelopeとも言う。脂質は界面活性剤に溶けるが,蛋白は溶けないし,熱にも強い。Parvovirus B19は外包を持たないのでSD処理法では不活性化出来ない。

Caramelization: カラメル化。蔗糖(sucrose) を160 ℃以上に加熱した黒褐色化した水溶性の物質( カラメル caramel) で,水溶液は右旋性( αD=+66.5°) で,蔗糖分解酵素で加水分解するとブドウ糖と果糖になる。ブドウ糖の右旋性が果糖の左旋性より大きいので結果的には左旋性となる。これが転化糖(invert sugar)である。水溶液は弱い苦味があり,食品の着色料に用いられる。

Carbonyl radical (またはgroup): カルボニル基. >C=Oで表される。
>C =⌒O, >C= 付図9-6, >C+付図9-5 -
などとも表される。

カルボニル化合物の中で 付図9-3 (Rは炭化水素基またはH)を aldehyde, 付図9-4(R, R'は炭化水素) をketon という。

aldehydeの-CHOの原子団をaldehyde radicalまたはformyl radicalとよぶ。単糖類はladehyde基を持つものを alldose,keton 基を持つものをketoseという。D-glucose は前者に,fructoseは後者に属する。

付図9

Carboxylation: カルボキシル化。カルボキシル基導入反応。有機化合物にカルボキシル基を導入する反応。例えば肝細胞内でprothrombin 前駆物質にヴィタミンK依存性にCO2 と O2 が反応して-COOH 基を導入し,-COOH を二つ持つprothrombin が形成される。

Cardiac output: 心拍出量。ml/kg 体重/ 分,又は L( リットル)/m 2 ( 体表面積) / 分で表現される。後者は心係数(cardiac index, CI) と言われる。心拍出量は心拍数,心筋収縮能,前負荷(preload) ,後負荷(afterload) の4 因子で決定される。輸血と輸液の目的は前負荷を適切なレベルに回復させるためである。心室と大血管内腔の血液不足( 前負荷の低下状態) ではポンプの効果( 心拍出量の増加) は期待出来ない。前負荷の評価はSwan-Ganz カテーテル検査による。後負荷は心筋の収縮力に抵抗する力であり,その主成分は動脈圧と血液粘度である。動脈圧は毛細管前括約筋によって生じる抵抗によって変化する。後負荷が増加すれば,前負荷の増加があれば心拍出量は維持される。ショックの治療において後負荷を減少させて心拍出量を増加させるためには血管拡張剤( ニトロプルシッド,ニトログリセリン,プロスタグランデイン等) が使用されるが,低血圧を招かないようにすることである。

Cardiolipin: 牛の心臓から抽出されたα,α'-diphosphatidylglycerolでWassermann反応の抗原として使用されている。

Carrier: 保菌者。明らかな症状を呈さずに病原体が潜在, 排出される個体。保菌者が疾患をひろげる。

Carrier sate of infection: 維持型持続感染。細胞集団が一部の感染細胞( 全体の1%以下) と大多数の未感染細胞とからなり,感染細胞におけるウイルスの増殖・放出と未感染細胞の増殖との間に平衡が保たれている場合を言う。もう一つは,大多数の細胞が感染していて,ウイルスの増殖に従って細胞は壊れずに共に増殖する場合であり,内部共存型持続感染(endosymbiotic infection) と言われる。前者は不安定で,後者は安定である。

Caspases: カスパーゼ。Apoptosis 細胞の蛋白分解酵素であり,10種類が分類されている。Apoptosis 進行過程の最終段階での主要蛋白分解執行酵素(main excutioners)である。特にFas-mediated apoptosisの最終分解酵素であると言う者もいる( Gamen 1998)。Apoptosis 進行の最終段階でapoptosis 信号が不活性caspase に達すると,カスパーゼ活性化蛋白(caspase activating protein, CAPP)の作用で幾つかのカスパーゼが活性化する。Caspase は構造蛋白( 細胞の生存に必要な蛋白) とDNA を分解断片化する蛋白分解酵素群( Martin 1995, Alnemri 1996, Henkart 1996)で,cysteine protease(cysteine aspartate-specific proteases) の一族(family)である。以下のように分類( 丸かっっこ内は従来の呼称) されている( Martin 1997)。カスパーゼの作用で細胞膜の変形(blebbing)と核膜虚脱(nuclear envelope collapse) を生じると,マクロファージがこれを認識して貪食する。マクロファージがapoptosis 細胞を認識する機序は次のように考えられている。細胞膜(plasma membrane) は燐脂質二重膜をなしている。外側の膜の燐脂質配列には正常ではphosphtidylserine(PS. 内側の配列にのみ参加している) は参加していないが,apoptosis 細胞膜ではPSが外側にも配列するように押し出され(PS translocase またはaminophospholipid scramblaseの作用による) ,再配列( redistribution) すると言う(Martin 1997)。マクロファージの膜受容体にはPS受容体とTSP-VnR(vitronectin receptor)-CD36の3 量体構造( 受容体) がある。Apoptosis 細胞膜表面にPSが現れ,更にTSP(thrombospondin) 結合蛋白が現れると,PSはマクロファージのPS受容体に結合し,TSP 結合蛋白も同じようにマクロファージのTSP-VnR-CD36受容体に結合するので,この両方の刺激によってマクロファージはapoptosis 細胞を認識して貪食する( Martin 1997)。CaspasesがDNA 分解でヌクレアーゼ(exonucleases とendonucleases がある) とどのように協力するのかは不明であるが,ヌクレアーゼはapoptosis の最終段階で作用しDNA を分解し断片化して食細胞が貪食し易くするのだろうとされている( Distelhorst 1997)

付図9-0

ICE: interleukin-1 β converting enzyme。CED-3 と高い相同性(29%) のあるapoptosis 蛋白。CED-3 がcysteine protease のICE familyに属するので通常はICE/CED-3 protease family と記述する。CED-3: ced-3 が産生する蛋白(ced は celldeath の略)。ced-4 の産生するCED-4 はCED-3 と共にapoptosis 蛋白(apoptosisで細胞を殺す蛋白) 。ICE と相同性のある蛋白。ced-3 と ced-4 の発現を抑制するのが ced-9 である。
Nedd2: neural precursor cell-expressed, developmentally down-regulated gene.
ICH-1: Ice, ced-3, homology-1. CED-3 とICE の両方に全体的に相同性のある遺伝子ced-3 と Ice の産生する蛋白。
 TX/ICH-2: ICE/CED-3 family の中で一番ICE に近い。

Cathepsin: 細胞内蛋白分解酵素。

Categoric identification of antibodies(CIA): 抗体のカテゴリー認識。血清学的諸問題を識別認識し解決する体系的方法。

Caveolae: littlea cave( 微小陥凹, Xavier 1999) 。カヴェオラ。Cave( 洞窟,陥没穴) にola(縮小と意味する接尾語) が着いたもの。カヴェオラは形質膜又は原形質膜のフラスコ型非被覆性微小陥入穴( non-coated flask-shaped microinvaginations of the plasma membrane 又は plasmalemma vesicles 。直径70 nm ) であり,洗剤に抵抗性の膜の島 detergent-resistant membrane islands) で高飽和性脂質で構成されているので脂質性救命筏(lipid rafts) とも言われる( Xavier 1999) 。本書では膜貫通性糖蛋白である外因性凝固組織因子(TF)が存在する細胞膜の部位として使用している。文章では, caveolar TF はnon-functionalである、 TF の受容体機能はTFがcaveolae内に落ち込む(translocation) と低下(downregulate)する,従って細胞膜上のTFの大半が非活性であるのはcaveolaeに密かに潜在(encryptped)しているからである,等のように使用される( Rao 1998, Schwab 1999)。Endocytosis やpinocytosis とは異なる新しい細胞膜領域(domain)の概念である。受容体,G 蛋白,tyrosine kinase 他の多くの蛋白がカヴェオラで濃縮し,活性化して細胞膜からの信号伝達に重要な役割を果たすのであろう。特に重要なのはcaveolaeの担う免疫系の活性化である。TNF-αが引き金を引くapoptosis は細胞膜のcaveolae-like domains (CLDs)で始まると言われる( Ko 1999)。このCLDsには信号分子(Fyn, protein kinase Cα, Raf-1, phospholipase Cγ1, tyrosinephosphoproteins ) が存在し,TNF 受容体 1(TNFR1) もCD36と共にCLDsに共存していると言う(Ko 1999)。

CD-95: 骨髄細胞と Tリンパ球の膜上に発現している43kDの抗原。その他の細胞系にもある。Fas 又はAPO-1 と同義語で,APO-1(Fas/CD95) とも表現される(Krammer 1995)。人遺伝子座は10q24.1 。この抗体(Fas抗体) は広範囲な細胞毒作用がありアポトシスを招く。TNF 媒介性細胞毒作用に感受性の細胞も抗fas モノクロナール抗体によって細胞死する。FasL(ligand)がFas(つまり受容体) に結合するとアポトシスが発生する(Nagata 1997) 。Fas 参照。

cDNA: copy-DNAまたはcomplementaryDNAの略。いずれも同じ意味。逆転写酵素(reverse transcriptaseを使用してRNA(実際はmRNA) をDNA へコピーしたものであり,遺伝子分枝化技術(gene cloning technology) の中で最も重要な基本的手技の一つである。実用上は遺伝子の全てが必要ではなく,目的の蛋白をコードしているmRNAのDNA コピーが必要なのである。

CDR: Complementarity determining rerion(相補性決定領域) 参照。

ced: cell death から由来したアポトシスの遺伝子。ced 遺伝子の命令で合成される蛋白はCED と記述する。ced-1から ced-9まで発見されている( kaoufmann 1997)。

Cell: 細胞。本書では多くの場合" 赤血球 "の意味が多い。また,免疫学的には" リンパ球" という意味で使用される。例えば,B cell, T cell は B-lymphocyte, T-lymphocyte 」ことである。Anti-thymocyte globulin は" 抗胸線細胞グロブリン" と訳すよりも" 抗 Tcell血清" と訳す方が一般のようであり, わかりやすい。とにかく, 免疫学では同義語が多すぎる。まるで,免疫学は" 造語学(phylology)"いや" 修辞学(rhetoric) のような気がする。細胞はいつも膜につつまれている。今日, 細胞の一番外側 を包 む細胞膜をはじめとして,細胞内微細構造まで液晶のような構成" をしているという考え方である。細胞膜は Singer-Nicolson (1972) のいうように脂質二重膜からなり,この膜のあちこちに球状の疎水性蛋白質がはまり込んでおり,この蛋白質の塊はあちこちと流動しているという。これが細胞膜の構造の流動モザイクモデル(fluid mosaic model)である。Ceramide, 液晶等の項参照。付表 2 参照。

Cell-associated antibodies,cell-bound antibodies: 細胞結合性抗体。細胞内または膜上に結合した抗体。抗体産生細胞の膜上の抗体と細胞親和性抗体の両者がある。

Cellular affinity: 細胞の親和性。同種の細胞が互いに特異的に付着しあう傾向をいう。異種の細胞どうしではこれは起こらない。ガン細胞にはこの性質がない。

Cellular receptors for IgG: IgG 受容体。FcγR(IgG のFc部分の受容体を意味する) 。FcγR は3 つのfamilyに大別され,それぞれのCD,分布,機能は次のようである。IgGに高親和性の受容体はFcγRIのみで(Kd=10-9M),他は低い(Kd=10-7) 。

付表6.

FamilyCD分布機能
FcγRI64活性化食細胞食作用
FcγR UACDw32食細胞食作用
FcγR UBCDw32Bリンパ球抗体フィードバック
FcγR VACD16NK リンパ球ADCC( 抗原依存性リンパ球
伝達性殺細胞作用
FcγR VBCD16中好性白血球食作用
                           

(Abbas 1994)

Cell transfer: 細胞移入。In vivo culture(生体内培養) に同じ。

Center for biological evaluation and research(CBER): 生物学的評価研究センター。血液銀行施設が報告義務のあるFDA(Food and Dru Administration)内の部門。

Centers for Disease Control (CDC): 疾患制御センター。ある種の感染症が報告される米国政府機関。CDC はヘルスケアワーカーがHIV に感染するのを防ぐための指導をする。

Ceramide: 脳組織などを構成する脂質でグリセロールを含まないsphingosine という物質がある。Sphingosine はアミノアルコールを含んでいる。Sphingosine を基幹とした糖脂質をglycosphingolipide (sphingoside)という。Ceramideはsphingosine と高級脂肪酸の酸アミド体(N-acylsphingosine) であり,下図の化学式の CH 3 −(CH) n−CO−では n=18 が最も多いが,C 16からC 20までの同族体も含まれる( 単にC 20とのみ記載している書籍もある。例: Stryer 1995)。★つまり,Ceramideはsphingsine塩基のアミノ基に脂肪酸が酸アミド結合したものである。血液型活性を示す糖脂質の多くは,このようなlactosile ceramideを共通の内部骨格( 例。P 型抗原物質はGalNAcβ1-3 −Gal α1-4 −Gal β1-4 −Glc β1-1 −Ceramideである) としてもっている。この例のように,GalNAc(N- アセチルガラクトサミンから始まり4 種類の糖が連結してceramideで終わる糖鎖をgloboside と言う。★

付図9-1

    X: H − sphingosine( Hが結合すると−NH3 - となる)
    X: CH3 −(CH 2 ) n −CO− ceramide( 次の化学構造式の糖に Hが結合したもの) 。
 Ceramideの−CH2 OHに糖が結合して−CH2 − O−糖となったものが下図のglycosphingolipid である。

付図9-2

赤血球膜上のABO式,Lewis 式,P式等の血液型物質はその土台となる物質が脂質二重膜にがっちりと嵌まり込んでいる(intrinsicまたはintegral proteinのように) ,この土台から抗原決定基( または糖determinant sugar)伸びている。土台となっているのが糖脂質(glycosphingolipid) と糖蛋白質(glycoprotein)である。

付図10


Chemically modified antisera: 化学的修飾抗血清。抗体分子が化学的に開大してより大きな距離を橋渡し出来るようにしてある試薬抗体で,試薬として使用されるように蛋白濃度を下げてある。この試薬は生体内で赤血球を蛋白が被覆しているようなときに,陽性直接抗グロブリン試験を示す赤血球のタイピングに役立つ。

Chemical shift: 化学シフト。原子の核種が同じでも原子核の周辺の化学的環境が異なるとNMR の共鳴線が別々の位置に観測される現象。化学シフトは基準物質の共鳴線の位置から試料の共鳴線の位置のずれをppm 単位で表す。基準物質と試料の共鳴周波数をそれぞれνR , νS とすると化学シフトの値δは
       δ = 10 6 ×( νS −νR )/νR
となる。遮蔽定数の大きい核ほど高磁場に現れる。化学シフトの原因は核の周辺の電子雲によって外部磁場から遮蔽されるために生じる。外部からの実際の静磁場の値を Hoとすると核のうける静磁場の値は Ho (1−σ) となる。
ATP と無機リンP i の化学シフトはpH依存性であることが分かっているので(Ugurbil 1981),細胞内pHの測定に役立つ(付図11参照)。
 ADP の二つの燐酸,α- とβ- は化学的環境が異なる( 図59-1) 。α- 燐酸は二つのエステル結合(O-ester bond)に挟まれている。一つはriboseのC1に,もう一つはβ燐酸に結合している。ところがβ燐酸の方はO-ester bondとの結合が一つあるだけである。このようにα- とβ- の燐酸の31P はそれぞれ化学的環境が全く違うので,共鳴線は別々の箇所に記録される。この事を化学シフトが異なると言う。更に,この二つの31P 核の間のスピン−スピン相互作用(scalar spin-spin coupling) のために,それぞれの燐から出るNMR シグナルは分裂しているので,共鳴線は二重線(doublet) となる。しかし生体材料の場合は試料が複雑であるから共鳴線群としてαとβの山( 付図) となって記録される。同じように,ATP の末端γ- 燐酸もADP の末端β燐酸と化学的環境が類似しているので,両方の共鳴線は相互に隣接して共鳴線群として現れるが,環境は幾分違うので高磁場ではATP γとADP βとが分別出来るし,しかもそれぞれが二重線をなしていることが分かる。ATP とADP のα燐酸の共鳴線も同じように隣接した共鳴線群となって現れるが,それぞれが二重線をなしている。ATP のβ燐酸はATP とADP のα- とγ- とは化学的環境が違う。β燐酸は二つの別々の化学的環境を持ったO-ester に挟まっているので,その共鳴線は別の場所に現れる。更に,隣接する二つの31P 核( αとβ) によるスピン- スピン相互作用で3重線(triplet)となる。この場合も生体材料では普通は共鳴線群としてγ燐酸の山が記録される。以上の事は,純粋な燐化合物の溶液のNMR を記録した場合のことである。無機燐(Pi ) の31P 共鳴線もその独特の化学構造ゆえに他の共鳴線とは識別され,0より左方に現れる。その他のfuructose-1,6-bisphosphateなどのような糖燐酸はPi共鳴酸の更に左方−2 〜−5ppm 領域に現れる。

付図11
   付図11。 Pi とATP の31P 化学シフトはpH依存性である(Ugurbil 1981)。−80℃と−196 ℃で凍結保存した赤血球ではそれぞれの31P 化学シフトに違いが認められるのは,細胞内のpHの影響によるものであろう。31P 核は何処にでもあり(abundant, この事を天然同位体比100%と言う) ,スピンを持っている。細胞の31P NMR スペクトルを記録すると細胞内の沢山の燐を含んだ分子から共鳴が検出される。ATP, ADP, 及びPiはその代表的な三つの分子である。これらの分子内の31P の核の化学的環境が異なると,ラジオ波を照射すると( 核にエネルギーを与える事,励起exite させる事) 異なる共鳴周波数を持つ事になり化学シフトは違ってくる。

Chemical splencectomy: 化学的摘脾術。IgG で被覆した粒子( オプソニン化した粒子)が食細胞のFcγR と結合して貪食除去される機能を妨害する治療法。特発性血小板減少性紫斑症(ITP) の治療法の一つに脾臓摘出術があるが,IgG を静注してFcγR を遮断又は機能低下させる薬物的治療法を言う。

Chiasma: キアズマ。第一成熟期の太糸期(pachytene) から後期の初め( 複糸期diplotene)にかけて二価或いは多価染色体の染色分体間の交叉現象。相同染色体を構成する染色分体が分離せずに一か所又は2 〜3 箇所でくっついている様に見える現象を言うようである( 茅野1990) 。

Chimera: キメラ。遺伝学的に異なる組織からできている個体。遺伝学的に異なる接合子( 受精卵) から由来している固体の中の二種類以上の異なる染色体構成あるいは染色体構成を持つ細胞から出来ている状態。同種骨髄移植の成功例。本来の血液型は分泌型ならば唾液でも調べることができる。

Chirality: 光学対称性。掌性。立体異性体(anomer)の鏡像は重ね合わすことが出来ない。これをキラルであると言う。chir- はギリシア語で掌(cheiro)を意味する。両手指はキラルであり,掌が炭素原子であるとすればこれをキラル中心(chiral center) である。不斎炭素原子(asymmetric carbon) はキラル中心にあってアノマーを形成している。anomer参照。

Chloroquine diphosphate: クロロキン 2燐酸塩。赤血球からIgG 抗体を解離するのに使用される試薬。クロロキンを使用すれば,表現型合わせに抗グロブリン法が必要な時でも,自己抗体で被覆された赤血球の表現型合わせをすることが出来る。

Chromatid: 染色分体, クロマチド。染色体が2 本に複製して,それらが中心体でくっつき合っている状態にあるもの。

Chromomere: 染色小粒。直接生物の染色体上のクロマチンがかたまって" ビーズ" 状になった部分。遺伝子の重複の領域と思われる。1 本の長い糸がところどころ玉になったもの。

Chromosome: 染色体。細胞分裂のときにのみ細胞核内に沢山認められる黒色桿状の構造物の中の一つ。DNA の糸束。染色体の遺伝子機能単位への細分化と形質単位は付図2-3 を参照されたい。 (付図 2-3) 。

Cis-AB: 遺伝情報の不等乗換え(unequal crossing over) の例はABO 式血液型で報告されている。そのような報告は父権論議に関して起っているようである。不均等乗換の最も普通の例は,同一染色体上にA とB のの遺伝子を両方とも持っている人( AB/O) の場合である。不等乗換えは相同染色体がずれて対合(pairing) したたまま乗換がおこるものと考えられているようである。普通の乗換えでは相同染色体同士の間で相同の部位で対称的な切断が起こり,相互に染色体部分を交換して再結合が起こるので,遺伝子A とBが交換されるだけである。不等乗換えによる稀な例をcis-ABと言って同一染色体上にあるA とB の遺伝子を両方とも遺伝的に子孫に伝えることになる。例えば,第一世代 (T) の♂(AB, AB/O) と♀ (O, O/O) であれば,第二世代(U) は♂(AB, AB/O) と♀(O, O/O) のようになり,♀が(O, O/O)であれば第三世代でも同じように♀( O, O/O) との子は( AB, AB/O) が現れることになる。普通はAB型とO 型との子はA 型かB 型しか生まれない。

Cis position: シス位又はシス配列。同一染色体上の同一cistron 内にあること。シスとは同側の意。

 a  b   a  b  
──── または ─────  のようなとき
─────────
 α β   A  B 

Cis-product antigens: シス産生抗原。二つの遺伝子が一対の相同染色体(homologous chromosones)の一方の染色体上にある時に産生される抗原。Cis-AB参照。

Cisterna, cistrernae: 細胞液を満たした偏平膜様嚢(flattened membranous sac filledwith fluid) 。偏平嚢。Clathrin, Golgi cisternae 参照。

Cistron: シストロン。S.Benzer (1957)は遺伝子を三つに分けた。突然変異の遺伝子単位として muton (ムトン),組み換え遺伝子単位として recon (レコン), 機能上の遺伝子単位( つまり染色体上の座, 古典的遺伝子) として cistron( シストロン) を想定した。さらに cistronより小さい単位として compron, citron の集合として operon も考えられている。 付図 2-3 参照。

Citrate: クエン酸塩。クエン酸はカルシウムと結合して血液凝固を阻止する。

Citrate phosphate dextrose (CPD): CPD液。 血液の抗凝固液として普通に使用されている保存液。使用期限は21日間。

Citrate phosphate dextrose adnine (CPDA-1): DPDA-1液。CPD 液に次いで使用されている血液の抗凝固保存液。保存期限は35日間。

Citrate toxicity: クエン酸中毒。クエン酸とカルシウムの結合によって起こる中毒症。ヒリヒリする痛み,テタニー症状等。大量のクエン酸血輸血を受けた小児に起こり易い。

Class I major histocompatibility complex molecules: クラスT主要組織適合遺伝子複合体分子。成熟赤血球以外の全ての有核細胞上に認められる。Class T MHCと略す。クラスT MHCはCD8 + 細胞毒性 Tリンパ球(CD8+ CLT)と強力して拒絶反応を起こす。

Class U major histocompatibility complex molecules: クラスU主要組織適合遺伝子複合体分子。 クラスUMHC と略す。HLA-DR, HLA-DQ, HLA-DP抗原等。B リンパ球,活性化 Tリンパ球,単核球,巨核球,樹枝状細胞,早期造血細胞,ある種の腫瘍細胞等の細胞膜上に認められる。このクラスUMHC が非自己抗原ペプチドをCD4 + ヘルパー Tリンパ球に提示する。細胞性免疫応答において非自己抗原を最初に認識するときにヘルパー Tリンパ球の助けが必要とされている。

Class switching: antibody repertoire参照。

Clathrin: クラスリン。細胞膜の小窩領域(invaginated pit regions)の内面( 細胞膜の内側cytoplasmic face) ,この小窩又はゴルジシスターネ( ゴルジ偏平嚢 Golgi cisternae) 領域から生じた小胞の表面を被覆している繊維状の主要ポリペプチド分子。細胞外に蛋白を放出する小胞表面にはクラスリンは被覆されていない。受容体の媒介するエンドサイトーシス(endocytosis) によって生じる小胞であるエンドソーム表面に存在する。Carroll(1989) とBhagavan(1992)によると,クラスリンは小胞周囲の構造上の足場の機能をもち柔軟性のある格子であり,分子量33,000-36,000 又は180 kDa の軽い蛋白鎖と堅固に結合している,とある。Lipopretein, CURL参照。

Cinical endpoints: 臨床評価項目。降圧剤の効果判定での血圧測定値,フルオロカーボンの心筋梗塞患者での応用では心拍出係数,梗塞の大きさ,転帰等。試験は症例を必ず任意な二群に分けて行われる。Surrogate test参照。

Clone: クローン。細胞分枝系。無性分裂による単一細胞に由来する細胞群。一つの細胞を共通の祖先とする一群の細胞。

Closely linked genes: 密接に連鎖した遺伝子。染色体上の極めて隣接した遺伝子座位にある遺伝子。別々に遺伝する確立は低い。

Coated cells: 感作血球。不完全抗体により感作された血球。これにより完全抗体による凝集が阻止されると遮断血球という。

Code: コードする。 遺伝子が暗号( 又は信号) を出して形質を発現させること。支配する。

Coding triplet: 三連符。Codon と同じ。

Codominace: 相互優性。共優性。等位優性(equistatic inheritance)とも言われる。両親から一つずつ来た二つ以上の対立遺伝子が,F 1 においてそのいずれもそれぞれ完全に発現するとき相互優性遺伝という。血液型ではAとB,Kとk, MとN,Fy a とFyb などほとんどが共優性である。例えば,A( 父) とB( 母) ではABのみ,MとNではMNのみ,Kと kではKk のみが表現型となる。他にも多くの酵素や血清蛋白質にもある。

Codominant genes: 共優遺伝子。二つ以上の対立遺伝子で,それぞれが独立した表現型を示すもの。

Codominant traits: 共優性形質。二つの異なる対立遺伝子が対等に表現型を示す形質。殆どの血液型遺伝子は共優性形質を示す。A 型とB 型は優劣関係はなくそれぞれの形質が対等に発現する。

Codon: コードン。暗号。一つのアミノ酸の産生を決定するDNA の一方(mRNA)の四つの塩基の中の3つのヌクレオチドの組合せ(4 3 = 64組ある) 。つまり3個ひと続きのヌクレオチド。一つ一つのコードンがそれぞれのアミノ酸またはペプチド合成と終止の暗号となる。アミノ酸またはペプチド合成終止の暗号となる。

Cold agglutinin: 寒冷凝集素。反応する至適温度が37℃より低い抗体をいう。37℃では反応しない。Cold autoimmune hemolytic anemia (cold AIHA); 寒冷自己免疫性溶血性貧血。37℃以下の低温で最もよく反応する抗体と結合した赤血球の補体による早期破壊によって生じる貧血。普通はIgM による。抗 Iも寒冷AIHAの原因になる。

Cold panel: 寒冷パネル。血漿又は血清中のと赤血球の寒冷凝集抗体を検出するための,18℃以下で血清学的試験法。

Cold shock: 常温から0℃までの急速冷却によって起こる非凍結状態での細胞障害。細胞膜がレシチン,脂質,カルシウムを失うことによって生じる言われる。Thermal shockと同じ。

Colligative property: 束一性。ある系を構成する化学物質の "モル数" を一定にすると,その物質の化学的組成には関係なく同一の値をとるものを言う。もちろん標準状態あるいは等温等圧などの条件は一定にしなければならない。気体の体積,稀薄溶液の浸透圧,沸点上昇,融点降下等がある。これはF.Wi.Ostwaldによって提唱されたがH.W.Nernst はモル性(molare Eigenschaft)と言っている。Colligatusはラテン語で"tied together" 結束するの意味であり,似通っているのが ligand である。Raoultの法則を参照をされたい。●クライオバイオォジーで言うは束一性凍害保護物質(colligative cryoprotectants) は一般に小分子量( 例。グリセロール C3 H 8 O 3 ) ,細胞膜透過性,水素結合能が強い等の性質の物質である。したがって,沢山の分子( 粒子) が細胞内外に拡散して水と結合し氷晶形成に参加する水分子の量を少なくする,つまり氷晶量を少なくするので塩濃度の上昇が抑制されるので凍害も少なくなる。グリセロール,ヂメチルスルフォキシド,エチレングリコール等はいづれも分子量は類似しており,同じような量( 濃度) で,つまり分子濃度に相応して( 束一的に,colligative に) ,略同じような凍害保護効果を期待できる。束一的と言う言葉がよく使用されるのはそのためである。当然,これらの物質は高濃度でも細胞毒性が無い物質でなければならない。

Colony: コロニー。集落。固体培地上に一団となって生育している細胞の集まり。通常1個の祖先に由来する。

Commensalism: 片利共生。寄生体が利益を得ているが宿主も害をうけていない。異質の二つの生物の共生状態。ごく限られた病気をときたま起こす。大腸菌, 白色ブドウ球菌,緑連菌。

Committed cell: 免疫委託リンパ球。Immunologically committed cellまたはlymphocyteともいう。ある抗原決定群に対して特異的な抗体の産生を委託されたリンパ球。免疫委託リンパ球には免疫の下準備をしたリンパ球,記憶リンパ球, 抗体産生リンパ球等が含まれている。

Compatible: 適合した。受血者の血清で感作されない, あるいは凝集しない赤血球を適合赤血球という。臓器移植では拒絶反応が起こらないことをいう。しかし,適合性ということばは免疫の起こる可能性まで否定するものではない。

Compatible blood: 適合血液。受血者の血清で感作されていないか,あるいは凝集しない赤血球。

Complement(C): 補体( Osler 1976, Law 1988, Morgan, 1990)。新鮮正常血清中に存在する。一群の蛋白で抗原抗体反応に参加する多因子系酵素。溶血素で感作した赤血球を破壊する正常血清中の複合体。細胞破壊,オプソニン作用,趨化性作用他の多くの生物学的作用がある。56℃-30 分間の加熱 (非動化) で溶血に必要な熱不安定成分は崩壊する( 大沢 1979)。補体の不活性化物質(inhibitors, inactivators)または抗補体物質は,@補体消費性物質,A特異的阻害物質,B競合または破壊物質,C Ca2+またはMg2+のキレート剤等がある( 谷本 1974)。desArg 参照。

Complement activation: 補体の活性化。補体の殺菌あるいは溶解性作用の促進。

Complement fixation: 補体結合。抗原抗体複合体に補体が結合すること。

付図14 Complementarity determining region: CDR. 相補性決定領域。抗体の構造の中で対応す抗原と特異的に結合する領域。可変領域(VH と VL ) に存在する。つまりV 鎖とH 鎖のアミノ酸配列の変化の多い領域(1970 年にWuKabat によって発見されたのでWu-Kabatのhot spots と言われる) 。L 鎖とH 鎖にそぞれ3 箇所づつのCDR があり,CDR1,CDR2, CDR3と呼ばれ,鎖のアミノ酸配列のN 末端からの番号で示される。例えばL 鎖CDR1は24〜34番まで。付図14参照。

Complementation test: 相補性試験。2 つの突然変異が同じ遺伝子に起こっているかどうかを見る目的で,同一細胞中に,2 つの変異株の染色体( または染色体の断片) を導入してみること。

Complementary structure: 相補的構造。一方の構造が他方の構造を規定するような2 つの構造。 DNA二重らせんのそれぞれの鎖の塩基は一対になっており一方が決定れば他方も決定する。これが二重螺旋構造の一番重要な点である。A−CとかG−Tとかの結合はありえない。
        │       │
        ├─A─T─┤
        │       │
        ├─G─C─┤
        │       │
        ├─T─A─┤
        │       │

Complete antibodies: 完全抗体。自然抗体。初期抗体。食塩水抗体。定型抗体。凝集素。食塩水中で反応し,免疫時の抗体出現が早く, 熱抵抗(70 ℃) が不安定, 化学的にはeuglobulin, 電気泳動分析ではα・β-globulin,分子量は930,000,拡散性はわるい,胎盤通過できない,遮断現象は示さない, 先天的に産生される( 免疫によることもある)抗体である。以上は総て不完全抗体とは性質を異にする。不完全抗体を参照。

Compromised host: Immunocompromised individuals 参照. 免疫障害患者。免疫抑制患者。Compromiseは妥協する,譲歩する,危うくする,(信用を) 落とす等の意味があるが,免疫学的には免疫力が妥協する,免疫力を譲る,免疫力が落ちる等の意味で使用される。例えば,自家輸血後は同種輸血後より感染が少ないのは細胞免疫の障害が少ない(cell immunity is less compromised)からである( Heiss 1993, Murphy 1991, Mezrow 1992, KirKly 1995, Blumberg 1989),と言うように。または,潜在的な酸素運搬量(能)の低下または障害(potentially compromised O2 delivery) の総合的把握が血液希釈では必要・・・,のようにも使用する( Sphan 1998) 。

Conditioning: 条件付け。同種骨髄幹細胞が着床しやすいように同種骨髄移植前に患者免疫系を抑制する移植前処置。Omenn 症候群参照。

Conformation: 配座。立体配座。コンホメーション。例えば,エタン分子H 3 C −CH3はC −C 結合( 単結合) を軸として2 組の H3 ( またはメチル基) は,一方と固定して相対的に考えると無数の異なる空間配列( 捩じれ角度の違い) が考えられる。事実エタン分子内では1 秒間に数百万回もの変換が起こっていると言われる。しかし,エタン分子を構成する上で重要な共有結合の開裂は起こらない捩じれである。蛋白質のポリペプチド鎖はアミノ酸配列( 無数の単結合がある) に依存した特徴的特異的なコンホメーションを構成している。蛋白では無限の数のコンホメーションを取ることが出来るが,通常はその中の一つが優位を占める。酸素結合能の変化はヘモグロビンのコンホメーションの変化によって起る。Allosteric proteinの説明でも述べたが,ヘモグロビンに最初の1 個の酸素が結合した時のヘモグロビンの酸素親和性は非結合状態の500 倍にもなると言われる。最も優位なコンホメーションを取るのである。蛋白質の生物活性( 機能)はコンホメーションによって生じるのである

Conglutination: 膠着反応。感作赤血球(免疫複合体)によって活性化した補体産物であるiC3b(C3bがH 因子とI 因子の作用で部分分解された分子で,補体活性は無い。i はinactive) 分子は赤血球膜上に沈着しているが,このiC3bの高マンノーズ型糖鎖とコングルチニンがCa++存在下に反応結合する。補体存在下に正常ウシ血清中に存在する物質コングルチニン( 膠着素) による感作赤血球の凝集反応を言う。この反応は免疫複合体の定量分析やウイルスの血清学的診断に利用されている( conglutionin binding test ,conglutinating complement absorption test 等) 。

Conjugation: 抱合。肝臓の解毒機能としての化合物生成反応。肝網内系細胞(Kupffer細胞) が主役となる。グルクロン酸抱合,硫酸抱合,グルクロナイド抱合,アミノ酸抱合等がある。溶血によってヘモグロビンが遊離すると肝網内系でビリルビン+鉄+グロビンとなる。このビリルビンは間接型( 遊離型) で非水溶性である。一部は血清蛋白,例えばアルブミン2 分子と結合して血液循環するが,正常状態では殆どの間接ビリルビンは肝のglucuronyl tansferase によって2 分子のグルクロン酸と抱合( 結合と考えてもよい) して直接型( 結合型) ビリルビン,つまりbilirubin-diglucuronide となる。胎児赤芽球症では肝機能低下とglucuronyl transferase活性が低下していると間接ビリルビンの抱合が出来ないので間接ビリルビンが増加することになる。血清蛋白との結合もあるが,このような胎児あるいは新生児では蛋白合成能低下も伴っているので間接ビリルビンは血中に増加することになる。こうして,肝臓の抱合域値を越えた間接ビリルビン,つまり間接型( 非抱合型) 蛋白非結合ビリルビン分画(unbound fraction of unconjugated bilirubin)は脂溶性のまま脳幹神経節( 視床下核,尾状体,レンズ核,線状体付随細胞群) を中心として侵入沈着すると考えられている (Claireaux 1959, Haymaker 1961, Lee 1977)。

Consanguineous marriage: 血族結婚。

Constant region: C region. 定常部領域。免疫グロブリンのアミノ酸配列は, L鎖の C末端側半分と H鎖の3/4 の部分で比較的一定であるため定常部又は不変部領域と言われる。L 鎖のほうをC L ,H 鎖をC H と表す。

Continuous flow apheresisContinuous flow apheresis: 連続流分離法。間断なく血液成分の分離と採取と返還を行う方法。静脈穿刺を二箇所で行い,一方から脱血して機械( 遠心分離器) に導き,目的の血液成分を採取して残りを別の静脈に返還する方法と装置。

Coombs test: クームス試験。抗グロブリン試験( antiglobulin test)の方が欧米ではより一般的のようである。細胞上の血清タンパク検出の凝集反応。検出されるタンパクは普通機能面からは1価と考えられる抗体,補体の一方または両者である。(a) 直接法=生体内で感作( 反応) している細胞上の抗体の検出法,(b)間接法= 試験管内で反応させた血清中の抗体の検出法。

Cord blood: 臍帯血。hematopoiesis 参照。

CR: Complete remission. 完全寛解。PR: partial remission 部分寛解,主腫瘍サイズの縮小など様の指標が用いられる。癌の治療成績の表現法。

Critical micelle concentration: 臨海ミセル濃度。CMC と略される。脂質分子は水中では臨海ミセル濃度以下ならば一分子ずつ個々の分子に分散しているが( Below the CMC, individual lipid molecules predominate. Garrett 1996), この濃度以上になると自発的に集合して構造化( 凝集aggregatetion)して,ミセルや二重膜を形成する。ミセルは界面活性剤(detergents)や石鹸が水中で一番形成し易い構造である。生体膜を構成している脂質のCMC は非常に低く10-9M 程度のようであるが,界面活性剤のCMC は高く,Triton X-100では0.24mM, Octyl glucoside では25mM, dodecyl octaoxyethyleneether では0.071mM である( Garrett 1996) 。つまり界面活性剤の大きなミセル塊で膜蛋白を包み込んで溶出するのである。

Crossing-over: 乗換え。交叉とも言われる。減数分裂の時に一対の相同染色体において,相同部分の交換つまり相互に遺伝子の組換え(recombination) が起こること。ヒトでは第一成熟分裂の過程で起きて,切断と再結合は太糸期から後期の初めにキアズマ(chiasma,染色体交差) として観察されるようである(山村 1991, 茅野 1990)。新しい遺伝子の組合せが形成される。unequal crossing over, cis-AB 等参照。

Cryophylactic agent: 凍害保護物質。Cryoprotectantと同義語。cryoはcold, frost等,phylactic はphylaktikos(保護する,予防する) 等を意味するギリシア語に由来。英語ではcryoprotectantの方が多用される。文字通り訳せば凍結保護剤であるが凍結による細胞障害をふぜぐ物質と言ういみで凍害保護物質と訳されている。Cryoprotectant参照。

Cryoprecipitate: クリオプレシピテート。新鮮血漿を−80℃に凍結し,+4 〜6 ℃で一晩かけてゆっくり解かすと生じる寒冷非可溶性沈殿物で,第[因子,第T及び]V因子,及びvon Willebrand因子を沢山含む。

Cryopreservation: 凍結保存。0 ℃以下の温度で血液,骨髄,臓器等を凍結保存又はガラス化保存する方法。通常は適当な凍害保護物質液と混合して固形状態(solid state)で保存する。液状保存(liquid preservation) の反対である。

Cryoprotectant: 凍害保護物質。Cryophylactic agent と同義語。グリセール,ヂメチルスルフォキシド,エチレングリコール等が代表的である。これらの物質は水と水素結合する力が強いので,凍害保護物液の組成として添加すると0 ℃以下で氷晶形成に参加しようとする溶液中の水を拘束する。例えば,血液にグリセリンを適切に混合しておけば凍結しても溶血が防がれる。凍害保護物質は氷点降下剤でもある。Cryophylactic agents参照。

Cryptagglutinoid: 一種の不完全抗体。潜在性類凝集素。

CURL endosome: Compartment for uncoupling of receptors and ligands。Clathrinで被覆された細胞膜陥凹(coated pits) がリガンド- 蛋白と受容体の結合物を包み込んで被覆小包(coated vesicle)となり細胞内に取り込まれ(internalization) ,clathrinがはずれて小包膜だけになるとプロトンポンプの作用で小包内pHが低下すると受容体とリガンド−蛋白の親和性を低下させてこの三つを切離(uncoupling)してしまう。切離蛋白片を含んだ低pHの小包をCURLと言う。ある種のリガンド(mannnosylated proteins)や蛋白はCURL endosome の中( この時は2 °lysosomeと言われる) で消化され,受容体は細胞膜表面に運ばれる(receptor recycling)と言われる(Austyn 1989) 。

Cutaneous anaphylaxis: 皮内アナフィラキシー。アナフィラキシー抗体により伝達される特異抗原に対しておこる即時型の皮膚過敏反応。

Cyclic AMP: 環状 AMP。アデノシン1リン酸のリン酸基が分子内で結合し(3′炭素原子と5 ′炭素原子の間でのホスホジエステル結合),環状分子となったもの。細胞膜レセプターから核への情報伝達( 成長因子信号等) などで第二メッセンジャーとなる。

Cyclophosphsmide: シクロフォスファミド。アルキル化抗癌剤。B リンパ球の活性化と抗体形成を抑制する。自己免疫病治療剤。

Cyclosporin A: ciclosporin とも言う。CyA またはCsAと簡略されることがある。1970年始めにサンド社の開発した免疫抑制剤SandimmuneR。T リンパ球の作用を選択的に抑制する。真菌(Trichoderma polyusporunとCylindrocarpon lucidum) からの抽出物。自己免疫疾患( 例えば Beh3et 病) の治療に使用されている。CsA は同種骨髄移植においてGVHD抑制剤として使用されるが,自家骨髄移植では条件によってはautologous GVHD (auto-GVHD) を発現させる(Rapperport 1979) 。auto-GVHD を発現した患者ではNKリンパ球の活性が高まり抗腫瘍効果が促進れると言われ, LAK 療法やTIL 療法に匹敵すると言う報告もあり,CsA の他にRoquinimex(carboxamide-quinoline) も使用されている(Gaspari 1995)。

Cytapheresis: 細胞分離。

Cytokine: サイトカイン. 細胞活性化因子(Callard 1994). 当初はlymphocytoのcyto-と免疫系の生理活性維持作用のあるkinesis のkineの合成用語であったようだ。リンパ球より分泌されるものをlymphokine, 単球やマクロファージより分泌されるものをmonokineと呼んだが,最近ではサイトカインの産生分泌細胞が多岐にわたることがわかってきたため,サイトカインが代表用語となってきたようである。Monokineの代表であるinterleukin(IL-1) は多核白血球,大顆粒リンパ球(NK 細胞) ,線維芽細胞,角質細胞,上皮細胞,神経膠細胞などからも産生される。Interferon (INF) はウイルス増殖を阻害(interfere) する物質とされておりウイルス感染細胞が産生しその細胞をウイルス抵抗性とするが,マクロファージやリンパ球もI 型( α,β) ,II型( α,β) いずれかのINF を産生するとされていいる。コロニー産生刺激因子(colony stimulating factor, CSF)もマクロファージやリンパ球からのみではなく上皮細胞や線維芽細胞からも沢山産生される(表参照)。
このように多種の細胞から産生され,その作用も活性化と抑制( 或いは拮抗) 化などと多面的機能を持っているサイトカインの特徴はpleiotropic(pleio-はー増加,過多,多様等を意味する接頭語で,-tropic は向性,走性を意味する接尾語) と表現されている。表には記述されていないが,サイトカインが細胞に作用するためには,先ず細胞表面の特異的て受容体に結合しなければならない。サイトカインが受容体に結合して受容体が活性化して始めて受容体からシグナル伝達が細胞質内に発信されるのである。臨床的に重要な治療法の一つに受容体の拮抗物質(antagonist)を投与してサイトカインが受容体に結合しないようにする方法がある。エンドトキンシンショック時にはIL-1が遊離するので,IL-1R-antagonist(IL-1Ra)を投与して,体内に広範囲に分布しているIL-1R にIL-1が作用しないようにするという臨床試験がすでにおこなわれある程度の効果をみとめている( Figari 1993, Evans 1993)。個々の受容体の構造,シグナル伝達,染色体部位等もほぼ決定しているようである( Gallard 1994) 。

表7. サイトカインの合成分泌細胞と作用の多面性

サイトカイン(ヒト染色体部位)合成分泌細胞生理免疫学的作用(多面発現性を特徴とする)
インターロイキン
IL-1(2q12-q21)単球,組織巨核球,ランゲルハンス 細胞,樹枝状細胞,T リンパ球,B リンパ 球,NKリンパ 球,大顆粒リンパ 球(LGL), 血管内皮細胞,平滑筋,線維芽細胞,胸腺上皮,星状細胞ミクログリア,神経膠細細胞,角化細胞,軟骨細胞休止期Tリンパ 球活性化,発熱, 血圧低下。急性相応答( 肝細胞のアミロイドA 蛋白合成) * ,炎症等。エンドトキシンショックの&alarm cytokine& 。その他広範な生物活性をもつ
IL-2(4q26-q27)Tリンパ球活性化 Tリンパ球の増殖分化,殺細胞リンパ球活性化,その他のリンフォカイン産生を誘導する主要オートクリン性の成長因子。B リンパ 球, NK, LAK, 単球,巨核球,寡突起神経膠細胞点等も刺激増殖分化。
IL-3(5q23-31)
(multilineage CSF)
活性化 Tリンパ球あらゆる初期造血前駆細胞系の成長分化を促進。多系統CSFと言われる。骨髄移植,再生不良性貧血,化学療法等の後に使用される。
IL-4(5q31)Tリンパ球,肥満細胞休止期 Bリンパ球の早期活性化成長因子, Bリンパ球とマクロファージ細胞上にHLA-DR分子を産生, Bリンパ球アイソタイプからIgG 1 とIgE へのスイッチングを制御等。 Tリンパ球,肥満細胞,顆粒球,巨核球,赤血球等の分化増殖。
IL-5(5q23-q31)Tリンパ球
(肥満細胞,Bリンパ球?)
活性化 Tリンパ球と Bリンパ球への成長,好酸球分化を誘導,好酸性球の分化増殖,クラス特異的 Bリンパ球分化の誘導(IgA産生) 。
IL-6(7p21p14)マクロファージ,マイトゲン活性化 Tリンパ球,繊維芽細胞,血管内皮細胞Bリンパ球への成長と最終分化,急性相応答蛋白の増減, Tリンパ球とB リンパ球への成長, Tリンパ球の活性化,細胞溶解性 Tリンパ球(cyotlytic T cell)活性化,及び肝細胞の血漿蛋白合成作用( 急性相応答による蛋白減少を補う作用) 等。
IL-7(8q12-q13)骨髄基質(ストローマ)細胞,胸腺基質細胞,脾細胞初期 Tリンパ球と Bリンパ球の分化成熟、炎症性サイトカイン。血管新生因子(angiogenic factor-Koch 1993)。
IL-8(4q12-q21)単球,ケラチノサイト,繊維芽細胞,内皮細胞肝細胞,糸球体脈絡膜細胞,軟骨細胞,顆粒球中好性白血球の趨化性と活性化等。
IL-9(5q31.1)IL-2活性化TH2 リンパ球,Hodgkin リンパ 腫細胞T リンパ球,胸腺細胞,肥満細胞などの増殖
IL-10(1 ***Tリンパ球( 肥満細胞,Bリンパ球 ?)サイトカイン合成の抑制,肥満細胞増殖
IL-11(19q13.3-13.4)骨髄基質細胞,線維芽細胞造血制御( 巨核球と骨髄前駆細胞の産生刺激,Ig分泌性 Bリンパ球数を増加)
IL-12(?)Tリンパ球
Bリンパ球
NK リンパ球
単球等
細胞毒性エフェクター Tリンパ球の活性化と細胞溶解作用促進, 活性化NKリンパ球/ リンフォカイン活性化K リンパ球及びCD4 +及びCD8 + Tリンパ球両方の活性化のための成長因子であり,細胞免疫応答の重要な制御因子。CD4+ Tリンパ球はヘルパー Tリンパ球,CD8+ Tリンパ球は活性化TCL となる。したがってIL-12は播種性転移癌の治療効果が期待されている。
IL-13(5q31)活性化T リンパ球LPS 刺激単核球の炎症性サイトカイン(IL-1 β,IL-6, INF-α, IL-8) 遊離を阻止。
IL-14(?)T リンパ 球,B リンパ球活性化B リンパ 球増殖促進,Ig合成阻止,補体Bbと相同部分あり
IL-15(?)末梢単核球,胎盤骨格筋,腎,肝,肺,心,骨髄基質細胞上皮細胞等IL-2と同じ作用,CTLL増殖刺激,同種抗原特異性細胞毒T リンパ 球と非抗原特異性LAK 細胞のin vitro産生
IL-16好酸球,CD8Tリンパ球CD4Tリンパ球の走化性誘導(chemo-attraction)
IL-17CD4Tリンパ球上皮,繊維芽細胞,内皮等のIL-6,IL-8, G-CSF, PGE2 等の遊離。ICAM-1促進,CD34前駆細胞維持のため繊維芽細胞刺激。
IL-18肝細胞INF γ産生誘導,NK活性増強
インターフェロン
IFN α(9p22)白血球NKリンパ球活性を増幅,クラスT抗原表現誘導,抗増殖活性
IFN β(9p22)繊維芽細胞,上皮細胞IL-6と同じ
IFN γ(12q24.1)活性化T リンパ球
NKリンパ球
マクロファージ活性化因子(MAF) の主役で貧食作用増強,クラスT MHC分子の表現増強,多くの細胞上にクラスUMHC 分子表現誘導等の作用。MAF にはGM-CSF,IL-1, TNF 等も含まれる。NKリンパ球と内皮細胞の活性化増強,抗IL-4拮抗作用等。
腫瘍壊死因子(TNF)
TNF α(6p21.3)LPS 活性化マクロファージ,単核球,B リンパ球,T リンパ 球,線維芽細胞ある種の腫瘍細胞に直接細胞毒性作用少量(10 !-9M)はオートクリンまたはパラクリン様に局所炎症作用,中量では発熱,全身炎症反応,血液凝固異常,食欲減退による悪液質,大量(10 !-7M 以上) では心( 抵抗低下と心拍出量低下) ,血管( 血栓) ,肝( 低血糖) ,筋収縮低下等
TNF β =LT (?)活性化 Tリンパ球リンホトキシン(LT)と同じ。局所的にパラクリン作用する。中好性白血球,内皮細胞,NKリンパ球等を活性化し,活性化したこれらの細胞が標的細胞を細胞毒性溶解(CTL-mediated lysis)するのを助ける。 INFγによって促進される。
コロニー刺激因子-CSF
多能性CSFIL-3 に同じ
SCF(12Q22-Q24)骨髄基質細胞,脳,肝,腎,肺,胎盤, 線維芽細胞,卵巣,睾丸造血,生殖,色素等の細胞系の発育。特に骨髄とリンパ 系の細胞の増殖,GM-CSF, IL-7, Epo等と協力作用が強い
GM-CSF(5q21-q32)Tリンパ球,単球,線維芽細胞,内皮細胞白血球の活性化( 顆粒球とマクロファージコロニー形成促進)
valign="top"G-CSF(17q21-q22)単球,線維芽細胞,内皮細胞,骨髄基質細胞顆粒球コロニー形成促進,IL-3と協力内皮細胞の増殖と遊走
M-CSF(5q33.1)G-CSF に同じマクロファージ の増殖分化活性化
Erythropoietin-EPO
(7-q11〜22)
腎血管周囲細胞(傍尿細管間質細胞),肝Kupper細胞造血細胞で産生されないサイトカイン。CFU-E,BFU-E, CFU-Meg。赤血球と血小板産生
Thrombopoietin(?)再生不良貧血患者血清,肝,腎,骨格筋巨核系細胞特異成長分化因子
成長変換因子(transforming growth factor)EGF(endothelial cell growth factor)と生物学的構造的性質が類似した自家誘導型発育因子(autoinductive growth F)
**TGF
anti-cytokine, signal for shutting off immuneresponses 等も同じ。 (19q13)
単球,核化細胞,多くの組織,腫瘍など
血小板( β1,β2), 有核細胞,腫瘍細胞 (β1, β2, β3)
多面発現性(pleiotropic) で多くの免疫系細胞の発育を阻止する( 同じ細胞でも培養条件によっては刺激促進することもある) 。概ね Tリンパ球増殖,混合リンパ球反応,CTL 成熟,マクロファージ活性化などに拮抗する
MIFTリンパ球マクロファージ遊走阻止
MCP-1単球,T リンパ球,肥満細胞,NK細胞,好酸球,幹細胞等の走化性,接着,ヒスタミン遊離,コロニー形勢阻止
MIP-1 α繊維芽細胞単核球,T リンパ球,B リンパ球,NK細胞,肥満細胞,好酸球,樹枝細胞,幹細胞等の走化性,呼吸バースト,接着,コロニー形勢阻止
RANTEST リンパ球単核球,T リンパ球,NK細胞,好酸球,樹枝細胞,塩基好細胞の走化性,ヒスタミン遊離
eotaxin単核球好酸球の走化性
IP-10単核球T リンパ球,NK細胞,,上皮細胞等の走化性,細胞融解活性化,及び血管新生阻止

* 急性相応答(acute phase response)とは,感染,熱傷,外傷,新生物等の生体障害刺激に応答して血漿蛋白組成が迅速に増減する現象である。細菌貧食作用を増幅する非特異的オプソニンである C反応性蛋白,α2 マクログロブリン,フィブリノーゲン,アルブミン,トランスフェリン等はいずれも急性相応答を示す。急性相応答が生じる機序は,例えばフィブリノーゲンではIL-6がIL-6R(受容体) に結合すると細胞内信号伝達によって遺伝子転写の変更(alteration in gene transcription)によって肝細胞が血漿蛋白合成の量的変化を起すためとされている(Abbas 1994)。蠍(scorpion) に刺されても,毒蛇に噛まれても急性相応答が起こり,IL-6が遊離しSIRSと同じ病態を生じるようである( Barraviera 1997)。
** TGF αもあるが,これは上皮性及び間葉性細胞の成長因子であるからここでは述べえない。TGF にはβ1 ,β2 ,β3 等があるが,免疫系細胞の合成するのはβ1 のみである。ここではβ1 のみについて述べβ2 とβ3 は省略した。
*** syntenic region(遺伝子が同じ染色体上の部位に在ること。McConkey 1993)
本表は、最近の出版物を参照して著者が編集した。(Abbas 1994, Callard 1994, Vaddi 1997, Janeway 1997, Roitt 1998)

Cytolysin: サイトリジン,細胞溶解因子。CD8+ cytolytic T lymphocyte がクラスTMHC 抗原提示細胞(APC) の提示する抗原ペプチドを認識したときに遊離するリンフオカインの一種。殺APC 因子。

Cytomegalovirus(CMV): ヒトヘルペスウイルスに属するDNA ウイルスである。血液中の白血球を輸血することによって感染する(Prince 1971) 。従って輸血血液のCMV の抗体スクリーニング,感染予防の目的で白血球除去や放射線照射が行われる。先天性のCMV は分娩時の母体血による垂直感染である。乳児間の水平感染もある。周産期の感染は帝王切開と授乳である。尿,唾液,精液,子宮頸管粘液,血液とその製剤,移植臓器等もCMV 感染の原因となっているようである。一度感染すると宿主体内の腺組織に永久に潜伏感染する。臓器移植における免疫抑制治療,AIDS, 癌等によってCMV が再活性化されて発症する。白血球減少症,間質性肺炎,胃腸炎,網膜炎,時に脳炎等を起こす。CMV の再活性化の機序の解明が重要な課題となっている。ウイルス同定法( 組織培養) ,ウイルス抗原検出法(DNA-PCR, IF蛍光抗体法, EIA 酵素免疫測定法),抗体検査法(CF 補体結合試験, IFA 間接蛍光抗体法, EIA)等の検査法がある。DNA-PCR 法は最も確実な方法と言われるが,例え陽性でも同じ血液中のウイルスを培養によって検出することは出来ない(Smith 1995)。

Cytophilic antibodies, cytotropic antibodies: 細胞親和性抗体。細胞趨向性抗体。抗 原抗体の結合力とは別な力によって細胞に結合する親和性をもつ抗体。

Cytoplasmic granules: 細胞質内顆粒。細胞質内の顆粒状粒子で,中に各種の代謝産物を含む。脂肪滴,グリコーゲン顆粒,色素,結晶,ステロイドホルモン,酵素等。顆粒の中,一定の大きさで密集しているものをα顆粒,散在性のものをβ顆粒と言っているようである。血小板は電顕像で透過性の悪い円形濃縮体(dense bodies, granules)と透過性の良い円形淡薄顆粒とを持つ。後者をα顆粒(alpha particles, α granules)と言っている(Erslev 1975, Myers 1992) 。α顆粒は細胞質内を移動して細胞膜に接近融合し内容物を細胞外に放出(discharge, extrusion) する電顕像が撮られている。α顆粒は酵素を含み,Dense bodies (またはparticles)はセロトニン,ADP 等を含む。従って,血小板ではβ顆粒と言う表現は見かけない。もっぱらα顆粒と濃縮体と膜燐脂質の三点に焦点が絞られている。α顆粒には凝固因子としてHMWK, fibrinogen, Factor V, Factor [:vWF等,凝集因子として血小板第4 因子,thrombospondin, 脈管修復因子としてPDGF, βthromboglobulin, その他の因子としてplasminogen, α2 -Antiplasmin, 補体C1 esterase inhibitor等が含まれている。濃縮顆粒には凝集因子としてADP, Ca 2+, 血管収縮因子としてserotonin が含まれる。損傷部位の血管収縮因子Thromboxane A 2 は血小板膜燐脂質から形成される。