*『Safa』発表後の初ライブ*

シティ・ヌルハリザ
『Safa』発表後初ライブ
イラマ・ナンバー中心の充実のステージ

歌姫シティ・ヌルハリザが、2月2日に行われた新行政都市プトラ・ジャヤの連邦直轄地区に認定されたことを祝うイベントに出演した。シティにとって新作アルバム『Safa』発表後、初めて一般のファンの前で歌う機会となった。

当日の会場は、驚いたことにプトラ・ジャヤ内の小学校に特設されたステージ。前日の式典は、優美なプトラ・ジャヤモスクを望む人工湖の前の広場で行われたので、随分見劣りしてしまう。しかし、マレーシアでコンサートやショーを観るのであれば、それぐらいのギャップぐらいで驚いていてはいけない。
観衆は、国家的記念行事であるにもかかわらず、ほぼ100%がマレー系。カップルのほかにも家族が多く、夜半まで行われたにもかかわらず、小学生とみうけられる子供も多くみられた。

ショーは、政府主催行事らしく各民族のトラディショナル・ダンスなどがアトラクションであった。コンサート部門に出演したのアーティストは、シティ以外ではイスラム教の賛美歌的な現代ナシッドの火付け役Raihanであった。この辺りの人選にも政府主催行事らしさが感じる。
2年前に「祖国に対して貢献する」ことを公言していたシティに野党から「政府の手先となっている」という批判がなされたことがある。政府主催行事に多く出演することの是非は別にして、シティがこういったイベントに出演することによってファンに無料で来ることができる機会を多く与えていることは確かだ。アーティストが自ら進んでファンの前に立とうとする熱意に対して、政治的な批判を加えても、無粋さと大人気なさしか感じられないのは筆者だけだろうか。

シティが登場したのは予定より15分遅れの10時25分。予定表では20分間程度のショーである。シティは、ピンクのウエストを絞った民族衣装のバジュ・クバヤをベースとした衣装で登場。ソンケット織りのバスト丈のベストをコーディネイトしてしているのがおしゃれだ。
一曲目は2000年リリースのイラマ・アルバム『Sahmura』の「Ya Maulai」。もちろん観衆のほとんどはシティ目当て。待ちきれなかったというばかりに歓声が沸き起こる。もちろん音響の良さは期待できないレベルの会場だが、間奏部分のハミングでは声がよく伸びていた。良いパフォーマンスが見れそうな予感に包まれた。
「Ya Maulai」を歌い終えた後にシティは、プトラジャヤの連邦直轄地を祝う祝辞を述べる。そして、「夜遅いけど、みんな起きてる?」と子供達の多い観衆に呼びかける。もちろん観衆は「起きているよ!」と応える。なんとも素朴なノリだ。

「次はバラードを聞いてもらうわ」という言葉に続いたのは、「Pernama Merindu」。スローテンポであるが、その分叙情的な美旋律を丁寧に歌い上げていた。「Pernama Merindu」をワンコーラスで切り上げ、そのまま「Nian Di Hati」に。99年のコンサート以来、よく使われているパターンの曲順だ。「Nian Di Hati」では、観衆に近づこうとして、シティがステージの階段を一歩一歩下りるたびに観衆から弾けるような歓声があがる。今回は、「Pernama Merindu」「Nian Di Hati」メドレーの最後の至極の美しさのハミングはカットされてしまっていたのが残念だったが。

続いて『Sahmura』から「Joget Kasih Tak Sudah」。曲名の通り軽くジョゲットの振りをしながらシティは、ステージの階段を一歩一歩下りていった。最後には、ステージと観衆との境の柵の間のスペースまで下り、一番前の観衆と出来る限り握手をしていった。た。「シティ、アイ・ラブ・ユー」と叫ぶ少年がいて、妙におかしかった。こういったノリも小さいライブならではか。

迷子探しのお手伝いも...
「Joget Kasih Tak Sudah」の後は、司会がステージ幼児を抱いて登場。なんとステージで迷子のお知らせだ。シティも快く協力している。それにしてもこの迷子はかなりの“役得”ではないだろうか。

次に披露されたのは、マレー民謡の一節。残念ながら浅学の筆者には曲名がわからなかったが(インドネシアのマレー民謡との意見もある)、伝統楽器の横笛スリンをバックにした日本の子守唄を思わせる短調のメロディーをシティの天性の美声と節回しで聴かせた。そして、会場からボランティアの男性をひとりステージに上げ、シティは今度はその曲をフルコーラスで披露。心地よくサビの部分を歌い上げたあと、マイクを幸運な男性に向けて歌わせる。シティは男性にちょっと突っ込みを入れた後、もう一度伸びのある美声でサビを歌い締めくくった。過去リリースしたイラマ・アルバムで聴ける曲のどれにも劣らないすばらしい歌声だった。ファンには、今回のライブで一番おいしい場面だったのではないだろうか。

プニプニショット
ファンサービスの後には、「新アルバム『Safa』から」とのMCに続いて始まったのは、新アルバム中一番のポップなナンバー「Lakaran Kehidupan」だった。「Lakaran Kehidupan」は、新アルバムでの変化を一番端的に表した曲だったことで選ばれたのだろう。しかし、シティは低音があまりでていず、まだ新曲に不慣れであったようだ。ダンスも後に出たプロモーション・ビデオと比べると、まだ振りが固まっていなかったようだ。そうであっても、観衆は生で新曲が聴けたことで大喜びしていた。

この時点で時刻は10時55分。予定の20分よりもかなりオーバーしていたので、観衆も次が最後の曲であることを悟っていたようだ。その期待に応えるように披露されたのは、ジュアララグ2000で年間最優秀曲を受賞した『Sahmura』の「Balqis」。観衆は最後に最高の盛り上がりで、30分あまりの小ライブでのシティの熱演に応えた。

こういった小規模なものでも、選曲と見せ所を押さえた演出で才能を披露し、観衆を存分に楽しませるシティの人気は当分陰ることないであろうということを改めて認識できたライブだった。

文、写真:アサ・ネギシ
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