水の人(櫂様より)

言わない絶対。

そう・・・・決めたの。

言ってはいけない。

ずっと隠しておく・・・・・

つもりだった・・・


『水の人』

「はぁ〜」
もう、今日何回目のため息をついたのだろう
私が居るいつものカウンターに片肘をついて外を眺める。
私の憂鬱を増幅させるように、雨が勢いよく降っている・・
(もう!雨なんて大嫌い!髪の毛は爆発するし、洋服は濡れるし、もう最悪!)
そう思い、今度は頭を抱えて下を向く。


私が居るいつもの碁会所。雨の音で石を置く音がかき消されている。
そんな中、扉の開く音がする。
「こんにちは、お久しぶりです。市河さん」

え?今の・・・・声・・・・

私は勢いよく顔を上げる。
「ア・・・アキラ君・・・?」
私の目の前に立っていたのは、あの、塔矢アキラ。
昔は可愛いと、いう印象だったのに、今の彼はもう立派な一人の男性になっている。
心臓がドキドキしてるのがわかる。一瞬にして手のひらに汗をかく。
名人にもなりかなり多忙の日を過ごしていると聞いていたのに、
どうして・・・・

「どうしたの?」
いつからだろう。彼と話をするとき、私が顔を上げて話をするようになったのは・・
「え?いや・・・あの・・」
アキラ君は、少し申し訳なさそうにしている。
「あ!ごめんね。そう言う意味で言ったんじゃないの、ちょっとビックリ
しただけ、凄く久しぶりだから・・・荷物預かるわ」
「すみません。ありがとうございます」
そう言うと、奥へ向かっていく。

すると・・・
「アキラ先生!ちょっと私の相手を・・・」
「いや、私と!」
と、それはもう、大騒ぎで、つい私も・・・
「ちょっと、皆さん静かにして下さい。順番です!」
と、1番大声を出しているのは私自身。
「いっちゃーん、そんなんじゃ、いつまでも結婚できないよ〜」
「ちょ・・・ちょっと!何言ってるんですか!」
「そうだ!この間の縁談どうしたの?」
「断りました!」
もう!どうして、今、その話をするんだろう。しかもアキラ君が居る目の前で。

1週間前碁会所の人から
お見合いをしてみたらどうかと、言われた。でも、到底そんな気にはなれずに、
断ってしまった。私は7歳も年下の男(ひと)を本気で好きになってしまった。
実らない恋・・・結果がわかっている恋・・・・
考えただけで胸が締め付けられるように苦しくなる。

アキラ君がはそんなやり取りを聞いていたのかわわからないけれど、
静かに席に着き、碁盤を眺めている。その目はとても凛々しく美しい。
(そうよね、私が結婚しようが、しまいが、アキラ君にはどうでも良いことだわ)




「それじゃ〜いっちゃん、また明日。」
「気おつけてくださいね。足元滑りますから」
気がつけば、外は真っ暗、雨は昼間と変わらず降り続いている。
片付けも一通り終わって、帰り仕度をし、扉のカギをかける。
「市河さん、お疲れ様です」
一瞬、ビクっとし、声のするほうを向く。
「アキラ君!まだ居たの?もう帰ったと思ってたのに・・・」
「すみません。迷惑でしたか?」
「ち・・・違うの、ちょっとビックリしただけで・・」
「送らせてください」
「・・・・ありがとう」

雨が傘に当たる音がどこか遠くで聞こえるくらい、心臓のドキドキが耳に響く。
並んで歩くのは本当に久しぶりでまた少し背が伸びたように見える。
傘が邪魔をして彼の表情が全くわからない。
さっきからなにも話さない、アキラ君。どうしよう・・・沈黙が、痛い。
でも、何を話したら良いのだろう。えっと、(最近どう?)って
何が?(彼女できた?)って、自分から自分を傷つけることを言ってどうする!
あ〜、もう!どうしたらいいの?もう、久しぶりに会ったら、どう接して良い
のかわからない。

そうこうしてるうちに、私のマンションの前についてしまった。
「ありがとう、ごめんね。遠回りさせちゃって」
「いえ、僕がしたかっただけですから」

沈黙・・・・・

「じゃ・・じゃ〜おやすみなさい、アキラ君」
「はい、おやすみなさい」
私は、アキラ君に背中を向ける。結局、会話らしい、会話が出来なかった。
最悪だ、もう、なんでこんな・・・・目に涙が溢れる。
「市河さん!」
急に呼ばれて、ビックリする。でも、涙目で振り向けない。

「あなたは、僕にとって・・・水のような人です。」
そう言うと、バシャバシャと言う音を立てて走る去るのが背中でわかる。

部屋に入って、電気もつけずに、座り込む。
(え?「水のような人」ってどう言う意味?)
外の雨の音を聞いて、嫌い=雨=水。と考えて、
(嫌われてるの?)


あれから2週間、アキラ君のあの言葉の意味が全くわからず
悩み、妄想をし、悩み・・・・熟睡が出来ない日々が続く・・・
(やっぱり、嫌われてるのかな?)
結局この答えにたどりつく。外を見るとまた、雨が降っている。
もう真っ暗・・・そろそろ帰る用意をしなくては


扉が開く音がする、誰かが入ってきたので
「ごめんなさい、今日はもう・・・」
断ろうと顔を上げると、そこにはこの数週間悩ませた張本人がいる。
「こんばんは」
「こ、こんばんは」
なんとか冷静を装って言葉を発するがいつもと声のトーンが違うのが
自分でもわかる
「アキラ先生!どうしたんですか?」
最後に一人残っていたお客さんが、アキラ君に近づいてくる
「え・・あ・・あの・・」
しかし、その人はかまわず私の方を向き話をする。
「いっちゃん!お見合いの話本気で考えてくれんかね・・」
わ!この人、その為に最後まで残っていたの?あ〜ん、もう、
またその話、断ったのに・・・
「いや・・ですからそのお話は前にも言ったように」
「あの、お話の途中で申し訳ないんですが」
アキラ君が話に割って入ってくる。
「僕はこの間、市河さんに告白したんです、今日はその返事を聞きに
きました。」
「「え?」」
一体何の事?告白?え?わからない。そんな事言われた覚えない・・・
言われたのは・・
「わ、、わしは今日は帰るよ。いっちゃん、またね」
その人は出て行く。今まで気にならなかった雨の音が、妙に五月蝿く聞こえる


「アキラ君、一体どう言う事?告白って、わからないわ」
もう、正直に聞くのが一番速いと思った。
でも何も言わない、アキラ君はずっと外を眺めている
一体どれくらいの時間がたったのだろう、アキラ君が静かに話始める
「すみません、もっとハッキリ言えば良かったんです、でも断られるのが
怖くて、言えませんでした」
今まで外を見ていた顔がこちらを向く
「この間、市河さんに”水のような人”と僕はいいました・・・」
しばらく間があいて

「人間の体の80%は水で出来ているのです。そして、人間は水があれば
何も食べなくても3日は生きられます、けれど食べ物だけで水を取らないと
1日で死んでしまうのです」

「僕の言っている意味わかりますか?」

”あなたが居なければ・・・死んでしまう・・・”

私は驚いて手を口に持っていく。『水のような人』・・・・
私はアキラ君にとって”水”・・・

「あなたが好きです。市河さん」
もう、涙が溢れてアキラ君の顔がよく見えない
この涙の意味をアキラ君もわかっているかのように優しく微笑む。
決して言わないと心に決めていたのに・・・絶対に言わない、と。
「わ・・・私も好き・・アキラ君が」
かろうじてでる声で答える
「良かった、断られたらどうしようかと思いました」
そう言うと、私の背中に手をまわして優しく包み込む
ビックリしたのと、嬉しいのでどうしていいかわからない。
ただただ、首を横に振るだけ、そして耳元で囁くアキラ君の言葉
「                     」
「ふふ・・アキラ君言ってる事がバラバラよ」
「そうですか?」
そして私を強く優しく抱きしめる。流れる涙を口で掬い
そのまま私の口へと重なる。
さっきまで五月蝿い雨音が、優しい癒しのメロディに聞こえる。






”花には水を・・・・・君には愛を・・・・”













後書き
ほんとうにすみません。時間を掛けた割には全くなってません。
なにが言いたいんだ!さっぱりわかりません!
ちょっこむ様の作品の引き立て役になれたら幸いです
駄作も駄作。本当にこんなものですみません。(泣)

●櫂様、本当にありがとうございました!!
頂いたまま全部載せてしまいましたが、引き立て役は逆ですよ〜!
詩的で美しい、私には絶対書けない小説です。皆さんも一緒にうっとりしましょう。(*^_^*)