第2章  ラテン語・ギリシア語講座



第1項 ラテン語・ギリシア語の読み方

基本的にローマ字どおりに読みますが、注意すべき読み方があります。

 

    読み方)    (読み方の例)

      Cは<k>の音。  SCIENTIA[スキエンティア]
     Jは<y>の音。  JUSTUS[ユストゥス]   
     Vは<w>の音。  VICTORIA[ウィクトーリア]
     PHは<p>の音。 SOPHIA[ソピア]
     CHは<k>の音。 SCHOLA[スコラ]
     THは<t>の音。 THEORIA[テオーリア]
     Yは<yu>の音。 TYPOS[テュポス]

 

    PH,CH,TH,Yは主にギリシア語に現れます。(注1)

    子音の重複は日本語と同じように「ッ」で読みます。

(例)ACCEPTUS[アッケプトゥス]

   ATTENDERE[アッテンデレ]

    ラテン語・ギリシア語とも母音には長短の区別がありますが、ここでは表記しません。本書では
カタカナで発音及び母音の長短を表すこととします。(注2)



(注1)厳密に言うと、PHの音は、Pの音とHの音を同時に出します。この音を出すのは難しいですが、「パハパハ...」と
    だんだん速く言ってみると出せます。CH及びTHの音も同様にします。この音は現代のギリシア語には
    なくなってしまいましたが、朝鮮語などにはあります。Yはウの口構えでイを出します。この音はフランス語や
    ドイツ語にあります。

(注2)母音の長短はラテン語ギリシア語を学ぶ際には必要ですが、「大学受験の英語」という観点からローマ字表記に
    おいては考慮しないこととしました。そのかわりに、カタカナ表記の際にはこれを区別し、将来のラテン語・
    ギリシア語学習に資するように配慮しました。

 

第2項 綴り字の推移

ラテン語→フランス語→英語、あるいはギリシア語→ラテン語→フランス語→英語という流れの中で、
ギリシア語やラテン語を英語に転写する際に、本来の綴り字が変化します。

主な推移は次のとおりです。

 

ギ語

ラ語

英語

katalogos→catalogos→catalog

AI

AE

phainomenon→phaenomenon→phenomenon

OI

OE

oikonomia→oeconomia→economy

 

 例にあるように、各語の文法に合わせて語尾も変わります。

 

第2項 ラテン語概説

(1)品詞

 英語とほぼ同じです。そのうち、名詞・形容詞・動詞・前置詞が重要です。

 

(2)名詞

 英語の代名詞は

    he     his     him

   主格(彼は) 所有格(彼の) 目的格(彼を)

 のように変化します。これを格変化といいます。

ラテン語の場合、代名詞はもとより、普通の名詞や形容詞までもがこうした格変化をします。

 <例>

@vita[ウィータ](=life)の変化

VITa    VITae    VITam・・・

[ウィータ]  [ウィータエ]  [ウィータム]

主格(バラは) 所有格(バラの) 目的格(バラを)

    

Arex[レークス](=king)の変化

REX    REGis   REGem・・・

[レークス]   [レーギス]  [レーゲム]

 主格(王は)  所有格(王の) 目的格(王を)

 

 大文字で記した部分を語幹といい、英語学習においては語幹の形を覚えることが肝要です。
主格と所有格の語幹の形が違っているものもあれば、同じものもあります。これはひとつひとつ
覚えていかなくてはなりませんが、記憶に当たってはそれほど混乱することはないと思われます。

@において、vitaはvitaminなどの語源となっており、Aにおいてrexの語幹
“REG”はregalなどの語源となっています。

 

(3)形容詞

名詞の形に合わせて名詞と同じ変化をします。

英語において“great king”は文中の位置によって「偉大な王は」「偉大な王を」の
いずれの意味にもなります。

 ラテン語の場合magnus[マグヌス](=great)を例にとれば

MAGNus REX[マグヌス レークス]・・・偉大な王は

MAGNi REGis[マグニー レーギス]・・・偉大な王の

MAGNum REGem[マグヌム レーゲム]・・・偉大な王を

というふうに修飾する名詞の形に合わせて変化します。

形容詞においても名詞と同様に語幹の形を覚えることが肝要です。magnusはmagnitude
などの語源となっています。

 

(4)動詞

英語の動詞が過去形・過去分詞・動名詞などと変化するようにラテン語の動詞も様々に変化します。
英語学習においては原形と過去分詞の形を覚えることが肝要です。

<例>

@amare[アマーレ](=love)の変化

  <原形>   <過去分詞>

AMare  AMATus[アマートゥス]

  語幹     語 幹

過去分詞の語幹“AMAT”の部分がamateurなどの語源になっています。

Afacere[ファケレ](=make)の変化

  <原形>   <過去分詞>

FACere  FACTus[ファクトゥス]

 語幹      語 幹

過去分詞の語幹“FACT”の部分がfactorなどの語源になっています。

 

(5)前置詞

文法上、英語と同様の働きをします。

AD[アドゥ](=to) SUB[スブ](=under)DE[デ](=of)などがあります。

これらは動詞と結びついて、英語の接頭辞となっており、さまざまな意味を構成します。

 

 

(6)接頭辞のついた動詞

 日本語では「送る」+「出す」→「送り出す」

      「開く」+「直る」→「開き直る」

のように「動詞」+「動詞」という組み合わせで様々な動詞を作りますが、ラテン語では
「前置詞」+「動詞」で様々な動詞を作ります。

このような動詞には以下のような特徴があります。

@前置詞の音便化

日本語で「活」(かつ)+「発」(はつ)→「活発」(かっぱつ)のように、「発音しやすく」
変わることがあります。同様にラテン語の前置詞も「発音しやすく」形が変わります。ただ「発音し
やすく」というのはあくまでラテン語話者にとってということであり、必ずしも日本語話者に当て
はまるとは限りません。

<例>

SUB[スブ](=under)+PENDere[ペンデレ](=hang)

→SUSPENDere[ススペンデレ](=suspend)

前置詞SUBがPENDereのPに引っ張られてSUSと変化します。

A動詞の母音変化

日本語で「雨」(あめ)+「具」(ぐ)→「雨具」(あまぐ)のように、語がくっつくと母音が
変わることがあります。同様にラテン語でも「前置詞+動詞」となったときに、動詞部分の母音が
変わることがあります。

 

<例>

前置詞ADと動詞FACereの過去分詞FACTusがくっついた場合

   AD+FACTus→AFFECTus[アッフェクトゥス]

ADが音便によりAFと変化し、FACTusが母音変化によりFECTusと変わります。なお
この形はaffectなどの語源となっています。

  

上述@及びAにおいて、音便による変化の仕方、母音変化の仕方は各語によって決まっています。
当座は煩雑な印象を受けますが、元の形の語をしっかりおさえれば、見分けるのに大きな支障は
ありません。

 

第3項 ギリシア語概説

文法事項はラテン語にほぼ同じです。名詞・形容詞・動詞にラテン語のような変化があることも
同じです。

 英語学習において、名詞・形容詞については語幹の形を、動詞はラテン語の語幹に当たる「基本形」を
覚えるのが肝要です。

<例>

HISTANAI[ヒスタナイ](=stand)の基本形は“TEM”

 これが前置詞SYN[シュン](=with)と結びつくと、

 SYN+TEM+A(名詞を表す語尾)→SYSTEMA [シュステマ]となります。この語はsystemの語源です。



第4項 フランス語経由による音の変化

第1章で述べたように、フランス語を経由して取り入れられたラテン語・ギリシア語に「フランス語の
味」が加わることがあります。

 これはラテン語がフランス語として発展して行き、それが英語に持ち込まれたために起こった現象です。

<例>

FACereの過去分詞FACTus

 ラテン語から直接取り入れられてfact「事実」という語になる。

 フランス語を経て取り入れられてfact→fait→feat「偉業」という語になる。

 ☆factとfeatのような語を「二重語」といいます。



    

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    導  入  部
    第1章 英語の歴史とラテン語・ギリシア語・フランス語
    第3章 ラテン語・ギリシア語の易しい単語を覚えよう
    第4章 ラテン語・ギリシア語一覧


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