クロックウオッチの世界
| グランソネリー超絶ハイグレード英製の解説 |
クロックウオッチをお譲りコーナーにて取り扱ったおかげで、
「なんだ、クロック機構も出来るのか」と、検品依頼やメンテ依頼が数件寄せられました。
ここは、そのリピーターの王様であるクロックウオッチを解説します。
まずクロックウオッチというのは、超絶物として代表格のグランソネリーがあり、
他にはミュージックを奏でるもの、キャリオンタイプや船作業の交代時を告げる打ち方が違う、
そしてストライク系という数種類のバリエーションがあります。知る限りは。
普通に見れるのはミュージカル系、ストライク系の懐中時計ですが、
存在しているものが少ないだけに、数を見れること自体が稀です。博物館でも少ない。
アンティコルムなどで出品されるカタログを紐解いても永久カレンダーよりも少ないので、
普通のフリマなどで見れるものではないと思います。
新品の機械式時計では、腕時計では雲上ブランド&ブレゲやランゲ&ゾーネで
3,000万円からありますが、現行品でも懐中時計になると1億円からという破格の値段で出ています。
知らない人が多いのだけど、懐中は腕時計よりも数が出ないため、コスト的に高いです。
しかも、素材が強くて長年もつので、商品の回転は考えるだけ無駄で、とにかく値打ち。
お譲り外のクロックウオッチ検品と修理依頼
さて、斜め読みの方はココから読んで欲しい。本章突入(前置きが長すぎて申し訳ない)。
クロックウオッチはゼンマイの巻き方から違う。これは持つ&持った人にしか分からない事だけど、
最初中の最初からその難解さ具合で進んでいかねばなりません。
私が依頼主から手渡された時、発した台詞は「こ、これは凄い!!!」でした。
永久カレンダー付きグランソネリーを二つも触っていたし、他のクロックウオッチも見てた。
そうそう驚くものかと思っていたけど、このグランドソネリーというヤツは、
どれを取っても同じものがない。したがって、その都度、感激してしまう。
=欲しい。
1850年ごろと思われるもので、ダイヤモンドエンドストーンは標準装備、磨きのかかったネジ類、
重量感のある分厚い機械にも関わらず、実はクロックウオッチとしては小型(50MMちょい)。
バカでかいソネリーだと持ち運びが難しいけど、これは普通のサイズであるし、
やや分厚いケースという感じ、まぁ、素晴らしいという感激と共に、よく見せてくれたと思った。
こういった高額品は、他のグランソネリー2個、ストライク45万円、KWKS修理断念と同じく、
見せるのを拒む人が多い。以前も、気軽に写真を出してしまった際、
「待った、画像は出さないでくれ」などと注意を受けた。
今は未だアップしてないKWKSクロックは後に写真をアップしますが、持ち主が分かるからか、
強盗の危険からなのか、ショップでは金庫付じゃないと心配でという気持ちも分かるが、
そんな様々な気持ちが交錯するからと思った。
時計の形を簡単に言えば、ボタンが多いのが特筆すべきことだろう。
・グランソネリーとPITIソネリーの切り替えスイッチ。
・消音と作動の切り替えスイッチ。
・好きな時に音色を出すリピーターボタン(通常ではなく、力を入れないボタンです)。
・時刻合わせのダボ押し式。
グランソネリーというのは、15分ごとにクオーターリピーターを鳴らすもので、
これがリピーターの究極なわけですね。PITIソネリーは時間だけ鳴らす。
ストライク式というのは切り替えスイッチが少なかったり、消音が出来なかったり、
機構に「あれがあったらなぁ」という部分があるので、まだ見かけるし、安い。
多くのクロック式はコレを指すけど、グランソネリー式は間違えて表記しないのがお約束。
そうそう、ソネリーなどクロック式は鳴らせっぱなしで楽しめるので、各部品がへたる。
前出の4つとも同様に部品がヘタっていたので、修理が出来ない場合も多いので、
真面目に購入は冒険だと思う。そもそもアンティコルムなどでも検品はするけど、
修理まではダメだし、調子が良いものしか出してないと錯覚してはいけない。
しっかりしたキュレーターがいるアンティコルムやサザビーズでもそうなのに、
ヤフオクやebayでは隠れた部分を気にしても尚、ダメなものを引いてきてしまう人が多い。
覚悟しないとね。自己責任だし。その分、当たれば格安ゲットだから、報酬みたいなものだ。
彼は調子が悪いといっていたので診てみると、確かにテンプの振りは悪い。
そして、ソネリー動作が不正確だし、鳴らないときもあって、良好な状態だった。
(150年金庫に入れといても機構が固まるので、このレベルでは”良好”と思った次第)。
早速、ダイヤルを開いてみると、いやその前に長針が緩かった。この時点から困難がスタート。
開けたダイヤル側は、ミニッツリピーターなら機構も頭に入っているところ、これは複雑。
どのパーツが何処と影響しあっているのか、そこから調べなくてはいけない。
スイッチが折れているもの、バネ棒が折れかけてるもの、結果として、
テンプの振りが悪いと、長針緩みで計4点の修理候補が見つかった。
長針なんかの緩みは、このレベルの時計になると気にもならないのが凄いところだった。
接着剤でいいじゃんか。それよりもどうするか。一旦、時計を預かって修理してみた。
まずは銀ロウ付け(ハンダ付けと溶接の中間の作業)をバネ棒部分にやってみる。
すぐに作動が開始され、2日間で耐え切れずに折れるということを繰り返した。
一方、↓左のスイッチは折れてるだけで作動をさせれるので、テキトーな棒を付けておけばOKだ。
結果として、ロウ付けでは長期間のグランソネリー作動に耐えられないこと、
でも、なんとか補強を考えてみると伝えて、とりあえずパーツだけ預かって時計を返した。
数日すると、なんと「ヒゲゼンマイがとれっちゃったよ〜」と泣きながらの勢いで助けを求めてきた。
あらら、そうなるともう簡単な修理で済ますよりも、パーツ段階から直そうよ。3箇所だけだし。
私はパーツ1個2万円ぐらいだから、2つで4万円、ヒゲゼンマイと天真で2万円、
他があるかもしれないので計10万円と伝えた。私が窓口になって修理依頼をある時計店に頼む。
その準備でオリジナル状態が分かるように、バラしてた折れたパーツを取りあえず接着剤で固定し、
画像をプリントしたものに検品のメモを書き加えて、私がした同じ苦労を省けるように配慮した。
=結局、作成となった。
ところがパーツ1個作成で5万円、2個の作成で10万円だった。想定外ということはよくあることだが。
したがって、他の天真は回復させれなかったけど、ヒゲをサービスで修理してくれたので、
後は動かすのと微調整を私がやろうと決意した。
ちなみに、クロックウオッチだけでなく、どんな複雑時計でも、完全メンテを施すなら100万円は覚悟。
腕時計でも懐中時計でも同じだけど、腕時計よりかは懐中時計のほうがパーツの肉厚が大きくて、
100年どころか200年でも碧年変化にも耐えれる。でも、完全にするならお金はかかります。
高額なメンテ代見積もりを聞いて、それがボロだったのかと思い込むのは不正確です。
貴方の周りには、100年超で残ってるものは何がありますか?懐中時計が突出して好いでしょう。
アンクルの出ツメと入ツメ、ガンギの角度などの微調整と、ホゾ曲がりの調整が必要で、
今の状態では脱進しませんよ(動きませんよ)と言われてしまっていた。
そう時計店から前もって教えてもらったので、他の原因を探さずに済み、その結果、早く直せました。
所蔵者に一旦返した時は弱いながらも動いてたのが、ヒゲゼンマイを(彼が)切った後に完全に動かない。
彼のイジリが原因。でも、それなら上手く調整すれば、テンプも回復して更に良く出来るはずです。
これはメリット的に非常に大きく、パーツ作成代が高いと思っては遺憾、安く出来て感謝すべきと思った。
ホゾというのは、テンプの軸の先で、天真の髪の毛のような細いルビー穴にはまる部位。
細いくせに焼入れがされて硬く強いので、力を入れる加減を間違えるとポッキリと再作成となる。
私はこういった微妙な修正&調整作業の時は、超強化パテを使って土台を作る。
金属のように硬くなるという超強化パテは、固まるのに1日掛かるから、
その間にアンクルとガンギの角度、他の部分を(借りてきた)顕微鏡で調べて直しておく。
=テンプ動いてます。私の微調整が成功したのは嬉しかった。
軸の曲がりを土台上でクルクル回しながら出来るだけ修正し、アンクルとガンギの調整をして、
気づいたら、目茶目茶な時間が掛かってしまっていた。本業ではないのに。
しかし、直せた達成感にちょっとばかり嬉しかったなぁ。何週間掛かったんだろう、これ。
=機械で高額感マックス。
さて、返すまでに鳴りの正確さなどをチェック。
全く問題なく、音色も綺麗に、テンプの振りも元気いっぱい、完全になると気持ち良いです。
修理代は私の部分は報酬がないので、完全にスライドの予算通りの10万円だった。
=綺麗だ。
=カットハンマーケース。ボタンが多くダイヤルも美しい。
修理依頼はお譲りコーナー行きでなければ労力的に無理で基本的に受けてないので残念、
しかし、私が(本業の生態研究絡みで)逆らえない人からの依頼だったから、さぁ大変。
でも、クロックウオッチの3つが画像アップ前にSOLDとなり、キャンセル待ちを入れれば、
1つに10名様ずつが並ぶという盛況振りを誇ったせいで、この修理時計を使うことになりました。
これだけ手間を掛けると欲しくなるのが人情。将来的に手放す気があるのか、所蔵元に聞いてみた。
実は意外とミント部も多かったこと、ニコル・ニールセン作だろうことは話してしまっていた。
しかも、最初はガッチャマンケースと思っていたのが、私がオリジナルの可能性が高いと説明。
そもそも、ソネリータイプではカットハンマーケースが意外と多いこと。何と言ってもピンピンに動く。
最後を飾るつもりのお譲りコーナーで、気合の入ったクロックウオッチが3つとも画像前SOLD、
KWKSはゼンマイが止まらず(でかいハンマーで見えないので)断念、
問題は、買えなかった方々がゴッソリいらっしゃって、私個人としては出したい(&欲しい)。
私自身がグランソネリーの魅力に取りつかれてしまったようだ。
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