「バブの反復性肩関節前方脱臼のHP」TOP>脱臼の種類と反復性肩関節前方脱臼
専門的な用語が少し出てきますが、別ページの「このサイトを巡るための予備知識」を用意しました。肩周りの部分などを簡単に説明にしておりますので、いちど目を通されると以下のページにおいてもよりいっそう理解できると思います。
→こちらから「このサイトを巡るための予備知識」
●肩関節脱臼の種類
バブ自身が経験した反復性肩関節前方脱臼が主なこのHPのテーマです。ただ、脱臼というものに関してもさまざまな種類があり、対処法がまったく違ってくる場合も多くあります。
このページにていろいろな種類とその区分けを簡単にご紹介しておきます。
まず、脱臼に関しては外傷に起因するものと起因しないものに分けられます。
- 外傷性肩関節脱臼
- 外傷性肩関節脱臼(狭義)
- 前方脱臼
- 後方脱臼
- 直立脱臼
- 胸郭内脱臼
- 反復性肩関節前方脱臼
- 非外傷性肩関節脱臼(※1A)
- 習慣性後方脱臼
- loose shoulder
- 随意性肩関節脱臼(※1B)
(※1A)実際は完全脱臼にいたるケースより、痛みを伴いながら上腕骨頭が常に浮いているような感覚、ずれているような感覚、亜脱臼している感覚でいることが多い。「非外傷性肩関節不安定症」と言い換えることも出来る。
(※1B) 自分の意思で肩を(亜)脱臼させうる状態。心因性・精神的影響がある場合もある。
肩関節脱臼の起因はそのほとんどが外傷性によって発生するそう。非外傷性によるものもあるが、ある報告によると全体の約4%ほどだそうです。反復性肩関節前方脱臼の話に入る前に非外傷性肩関節脱臼で若年層に多いloose shoulderについて述べておきます。
loose shoulder(動揺性肩関節症、動揺肩)
「肩関節に多大な疾患がみられ、動作時に関節の不安定性が出現するために、疼痛や運動制限、脱臼感などを生じる疾患。」
「20歳までの若年者に多くみられ、両側性が多い。」
成因
「肩甲骨の外転外旋(※2)筋力低下によるもの、肩甲骨臼蓋(※3)後下縁の形成不全や傾斜角度の異常によるもの、臼蓋に肩峰(※3)および烏口突起(※3)までを含めた機能的臼蓋の形成不全によるもの、関節包(※4)や軟部組織の膠原繊維の異常によるものなどさまざまな原因が考えられている。」
(※2)外転、外旋→「このサイトを巡るための予備知識」の「肩の動きの名称」
(※3)臼蓋、肩峰、鳥口突起→「このサイトを巡るための予備知識」の「肩甲骨」
(※4)関節包→「このサイトを巡るための予備知識」の「関節唇」
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手術方法(一部紹介)
- capsular shift・・・関節包をT字に切開して、上と下の関節包を重ね合わせるように縫合する方法。直視下手術で不安定性がある方向の関節包に対して行う。
- glenoid osteotomy・・・お尻の上から腸骨片(約3X2X1.5cm)を採り、楔形またはL型の形にする。臼蓋周辺を骨切りし、隙間を作ってそこに先ほどの採取した骨を打ち込んで臼蓋の角度調整を行う。合わせて関節包の縫合も行う方法。
- 大胸筋移行術・・・大胸筋腱を上腕骨付着部から切り離し肩甲骨の下部に移行させる方法。
- themal capsular shrinkage・・・関節包や靱帯に対して加熱収縮させる方法。関節鏡視下で行う
保存療法
「症状の軽いものに対しては保存的に、重度なものや保存療法が無効な症例には観血的治療が選択される。黒田は動揺肩の7.9%に自然治癒が認められ、オーバーヘッドスポーツはこれを阻害すると報告している。」
「疼痛に対しては三角巾固定による安静、NSAIDの投与、肩峰下滑液包、腱板疎部、結節間溝、烏口突起、肩甲骨内上角、棘下筋筋腹への局所注射、あるいは関節造影によるjoint distensionが有効である。その他の症例に対しては腱板訓練(cuff exercise)(※5)、肩周囲筋筋力強化や協調運動訓練、肩甲上腕リズムの再教育(※6)、オーバーヘッドアクションやボーリングなどのスポーツ禁止、重いものをもたない、かばんの掛け方などのADL指導を行う。(※7)」
(※5)cuff exercise→「初めて脱臼された方へその2」の「●腱板の強化」より
(※6)肩甲上腕リズムの再教育→「初めて脱臼された方へその2」の「●肩甲上腕リズムがきっちり出来ているか?」 より
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(※7) 『「ADL(activities of daily living) :日常生活活動・動作」普段の生活の中で、朝目覚めてから、夜就寝するまでの必要な活動のすべてを含む』
「ショルダーバックは肩甲帯下垂を助長しやすいので避ける。肩をすぼめ猫背の不良姿勢(※8)を呈する症例では姿勢の矯正が大切である。やや大股歩きで早足の歩行は姿勢矯正には有効である。」「腕の使い方の指導も重要である。投球やバレーボールのアタックのように肩関節が常に外旋ストレスに曝されるスポーツに向いていないこと、オーバーヘッドスポーツを継続している限り自然治癒が望めないことをよく説明して、なるべく一時的にでもスポーツ種目を変更するように勧める。投球動作やバレーボールのアタックではそのフォームを変えるのは非常に難しいが、テニスなどのラケット競技の場合ではサーブやストロークに際してなるべく肘を伸ばして肩関節にかかる外旋トルクを小さくするのは可能なことが多い。運動直後に氷を用いたアイシング(※9)を必ず実行させる。腕立て伏せは禁止する。必要に応じて投球動作などの運動量を制限する。」
(※8)肩をすぼめ猫背の不良姿勢→「このサイトを巡るための予備知識」の「肩甲骨」
(※9)アイシング→「アイシング」
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動揺性肩関節症の場合、起因が外傷性肩関節脱臼からはじまる反復性肩関節脱臼とは違うことから、その対処法や手術方法も違ってくるようです。
この項目の最初に説明した肩関節の種類において述べた各脱臼の定義とは別に、MDI(multidirectional instability:肩関節多方向不安定症)という定義があります。MDIの定義は「2方向以上の不安定性を有する肩」の症名であり、非外傷性のloose shoulderはその範疇に含まれますが、外傷性を起因とする反復性肩関節前方脱臼(患者数の多い通常の脱臼)のものでも、2方向以上の不安定性を持つものもいるので、そのような場合も含まれてしまいます。MDIに関してはこの項目の最初に説明した、各定義とは別の考え方が必要であるようです。
スポーツ障害のような形で、例えば投球動作やバレーボールのアタック、水泳などによって肩関節90度外転位での過度に外旋強制、その後の急激な内旋運動の繰り返しによって上腕骨頭が関節窩中央からいろいろな方向へずれてしまうことで、関節唇の剥離を起こしたり腱板の損傷を起こす場合もあるようです。このような潜在的要素を持ち合わせていると反復性となった時にその起因が、医師以外では外傷性か非外傷性かなどを探るのが難しくなる場合もあります。
主にこのHPのテーマは反復性肩関節前方脱臼を扱いますが、このHPの内容でもloose shoulderなどの非外傷性を起因とする肩関節脱臼のものにも有益となる部分も十分あると思います。もちろん、loose shoulderなどは反復性肩関節前方脱臼と同じような原因(関節唇剥離など)を持つものばかりではないので、その症状の原因、保存療法や観血療法における治療方法の違い、反復性肩関節前方脱臼との違いを理解されることが必要となります。
●反復性肩関節前方脱臼の発生原因について
その外傷性脱臼のうち、上腕骨が肩甲骨に対して前方へと脱臼するものを前方脱臼。後方へ脱臼するものを後方脱臼と呼びます。ただ、後方脱臼は前方脱臼の2%程度に過ぎないということです。 (前方脱臼と後方脱臼とでは損傷具合も変わっていき習慣性となった場合の手術方法も違うことから、このサイトでは前方脱臼に焦点を当ててお話をすすめさせていただきます。御了承ください。)
外傷性肩関節前方脱臼は、いろいろなケースが想定されるようですが、スポーツや転倒などによって肩関節が外転、外旋、伸展(※10)の動作を強く起こしてしまった時、肩峰(※11)がテコの支点となって上腕骨頭が関節窩(※11)から前方に脱臼を起こす場合がまずあると思われます。
(※10)外転、外旋、伸展→別ページ「このサイトを巡るための予備知識」の「肩の運動」
(※11)肩峰、関節窩→「このサイトを巡るための予備知識」の「肩甲骨」
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さらに若年層においては腱板(※12)が働いて肩甲骨に引き寄せられる形で脱臼をするので、腱板の付着部である大結節(※13)あたりがもう1つの支点となり関節窩前縁をするように脱臼し、前下方の関節唇剥離(※14)を起こしやすいそうです。
中高年の場合は腱板が年齢による変性を起こしていて、先に腱板断裂等の損傷をしその結果上腕骨頭の引きつけも弱くなり、関節窩前縁を擦ることなく脱臼を起こすので、関節唇の損傷を起こしにくいとも言われています。若年層の方が反復性へと移行する率は高いよう。
(※12)腱板→「初めて脱臼した方へ」の「腱板とは…」
(※13)大結節→「このサイトを巡るための予備知識」の「上腕骨」
(新たにページが立ち上がるようにしてあります)
(※14)関節唇剥離・・・ページ下方参照。
反復性肩関節前方脱臼は外傷性脱臼後に、軽い外力によって前方への脱臼をたびたび起こすようになった状態。その原因は肩関節の内部構造が壊れて本来持つ制動機能がうまく働かなくなったり脱臼しやすい条件を作ってしまうことによるといわれています。その損傷の形により病変と言う名前で幾つかまとめられています。
Bankart lesion(バンカート・リジョン、バンカート病変)
まず、反復性肩関節前方脱臼の代表的病変とも言えるもので、反復性脱臼の約8割にこのBankart lesionを持つといわれています。
Bankart lesionとは、関節唇前下部分が脱臼の際、骨頭が関節窩に激突することで関節窩から剥がれたり、あと磨耗していたり、欠損していたりすることを言います。この関節唇は軟骨質で、肩甲骨関節窩の骨膜にくっいているのですが、初回脱臼時に固定がうまく行けば関節窩から剥がれた骨膜や関節唇はくっ付く可能性はあるそうですが、反復性脱臼となってしまった場合、固定等の保存療法では、修復は出来ないといわれています。


Hill-sachs lesion(ヒル-サックス・リジョン、ヒル-サックス病変)
これは、肩甲骨側ではなく、上腕骨側に発生する病変です。脱臼時に関節窩前下縁部に上腕骨の後方が押し付けられることによって上腕骨のその部分に陥没骨折を起こすことがあります。その陥没骨折もそのまま残った時、腕がある角度になると上腕骨側から脱臼を起こしてしまいやすい病変です。img

Born Bankart lesion(ボーン・バンカート・リジョン、骨性バンカート病変)
脱臼時肩甲骨側の関節窩の前縁部分に骨折を起こすもの。

この3つは代表的な病変です。その他
subscapular pocket
脱臼を繰り返すうちに肩甲下筋と前下臼蓋上腕靭帯を含む関節包は伸展し、肩甲下筋下から下方にかけてポケットを作ります。これをsubscapular pocketといいますが、さらに簡単に脱臼を繰り返すようになります。
肩の内部構造は複雑で脱臼を起こさないよう働いている構造や反復性になってしまう原因については今現在もさまざまな報告がされているようです。いくつか例を挙げると、関節唇剥離があっても中・下臼蓋靭帯がハンモックのようにして下側から骨頭を包み込むように働いているのでそれも1つの制動機能になっているのではないかとか。また、関節内はやや真空気味になっていて内圧が高い状態で肩甲骨と上腕骨が引きあっているのではないかなど。最終的にはそれらさまざまな制動機能がいろんな条件内で複合的に働いているようです。
ただ、現在上記であげたような病変といわれているものがあると、現実的には再脱臼を発生させることは非常に高くなり、腱板などのその他の安定機構に頼らざるを得なくなり、脱臼が起こるような負荷には弱いと言えるようです。
