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都市再開発と都市デザイン 伊達 美徳
(「都電型都市空間のすすめ」1994 アーク都市塾企画 掲載) ○都市景観と都市デザイン 「都市デザイン」と「都市景観」は、近年になって特にまちづくりの重要な視点となってきた。 都市は風土、地理、自然、歴史、生活等の物理的、文化的両面からの時間的な積み重なりが複雑にからみあって、その立地に適した都市活動の環境を、一種の秩序ある文脈として構成してきており、生態的な概念としてとらえることが適切と考えられる。 それらの総体としての表れが「都市景観」とよばれ、それをプラニングする目で見るときには「都市デザイン」と呼ばれるのである。 都市再開発は、積み重ねてきた都市機能と空間秩序の再生あるいは再編成を目的とする。その時に新しい機能も登場して新しい空間を生み出すこともあるが、同時にその場とその周辺の街にすでにあった独自の成り立ちがつくりあげてきている地域景観をすべてをスクラップ化して改変するのではなく、新しい評価のもとに受け継ぐべきものは受け継いでいく姿勢が大切である。 再開発地区のデザインには、西ドイツの多くの都市で行われた戦災復興のように以前の街の姿をそのままに再現しようとしたものもあれば、アメリカに多く見られた以前とは全く姿を一変するスクラップアンドビルド型など、いろいろな方向性がありうる。どのような方向がよいかは地区ごとに適切な選択をしなければならない。 ○地域の文脈を読み込む いずれにしても、都市再開発であろうと単独にビルであろうと、建築物単体としてではなく、連続した空間である都市あるいは地域のスケールの視野を持って、周辺との関係の中でデザインされなければならない。周りと無関係に突然に巨大建築となったり、孤立した機能であったり、あるいはあまりにも異なるデザインの空間とすることは避けるべきである。 都市再開発の結果、再開発された内部はともかくとしても、周辺の街と一体としてみたときに異物が混在して、地域としての景観や環境は乱れ、コミュニティーに摩擦が生じては、都市の再生という再開発の基本的な意味を失うことになる。 建築意匠について言えば、とくに目立つデザインとするか、街並みに溶け込むデザインか、いずれが適切かについては、単に建築の単体デザインとして決まるものではなく、街並み全体の中でここの建築のありかたをとらえなければならない。 例えばその建築物が、街中から見える美しい山並みの景色を遮るものとならないか、あるいは逆にその建築が街のランドマークとなる位置にあって特別な建築意匠を要求されるものか、と言うように、ある建築は自ずから都市において景観上の文脈としての位置づけは異なるのである。 街並みの中に巨大な形で出現するとしても、既存の街並みに連続するところは、そのスケールに対応して、ファサードや低層部あるいはスカイラインのデザインがなされなければならない。都市の街並みの中で建物の低層部・中層部はパースペクティブに見られることが多く、連続する 街並みを形成したり、アイストップになったりする。一方高層部は多くの場合、街並みを超越して都市スケールのランドマークとなる可能性がある。都市景観を通しての都市全体のイメージに及ぼす影響は非常に大きく、都市のアイデンティティへの視点が重要になる。 中景・遠景・近景・接景には、それ相応の肌理の荒さやこまやかさがあり、それぞれの見え方を意識したデザインとする必要がある。そのような点を踏まえ、周辺地区の街並みを構成している地域の社会的、空間的、生態的な特性を生かしたデザインが求められる。 ○景観コーディネーター 既成市街地の都市機能や空間をつくりかえる都市再開発の事業こそは、建築と土木とが同時に登場して、都市景観を再生・創造する絶好の機会であるが、これまでの例では景観的に優れたものは残念ながら希である。 その理由として、事業の採算性や権利関係からくる制約条件が多いからだといわれることもあるが、必ずしもそれだけ理由ではなく、都市と建築との適切な関係について、その都市デザインに関わる建築と土木の設計者の双方に、まだ都市景観に関しての認識が浅いことや偏っていることが大きな原因にある。 都市再開発では多くの場合に、道路・広場・公園等の公共施設と、複数の建築群とを総合的に一体的に整備するので、このような機会にこそこれらを一体としたデザインとすることができるにもかかわらず、別個に設計されて関係のないデザインとなることが多い。 事業者の縦割り体制がもたらす設計者間での個性の張り合いで、混乱した景観が生れたり、逆に没個性の風景になる。困ることは、都市デザインとは面白い格好をつくることと勘違いして、善意であれ、これ多様な飾りを施すことで、最近は特に土木にそれが見られる。 都市再開発に限らないが都市をつくるにあたっては、都市計画家が景観コーディネーターとでもいうべき立場での役割を果たすことも必要であり、都市デザインのための一定のデザインコード手法を働かして、その地区らしいアイデンテイティーのある空間デザインのコントロールをすることが重要となっている。これは多くの建築家にも土木技術者にも欠けている職能であり、今、都市計画家に求められている職能であるといえよう。 |