『まあだだよ』



 文豪・内田百閧フ晩年を淡々とつづったハートフルストーリーであると共に、黒澤明監督の遺作でもあるという本作。教え子たちが「なかなかくたばらないのに業を煮やして作った」という摩阿陀会〔まあだかい〕や、半ノラ猫のノラの失踪で生気を失い日々泣き暮らす老百閧フ人間味あふれるエピソードがしみじみ胸に染みいります。当時の様子がよくわかる『百鬼園随筆』も併せて読むとなお面白い。オススメです。


 黒澤明というと、初期の『羅生門』や『七人の侍』といった50〜60年代の作品が聖典のごとくあがめられ、晩年の作品はさほど省みられない傾向にあるようですが、僕はなぜか晩年の作品が好きです。私的黒澤ランキングは


一位 七人の侍
二位 まあだだよ
三位 夢
四位 八月の狂想曲
五位 椿三十郎


といったかんじ。


 ちょっとでも映画の見方を知っている人がこのランキングを見たら、まず唖然とし、次に腹を抱えて笑い転げ、そして急に真顔になって僕の顔をまじまじと見つめ、「果たしてこの男の気はたしかだろうか?」とでもいいたげな顔つきで「なあキミ、かかりつけの医者はどこだい。僕がこれから連れていってあげようじゃないか」などと言いだし、心身ともにいたって健康だと答える僕の手を両手で強く握りしめ、「なあキミ、それじゃあ今度ぼくの家に遊びにきなさい。きみの好きなビーフシチュウを愚妻に作らせようじゃないか。だから、ね、ぜひいらっしゃい。いいね。そしていっしょに『生きる』と『天国と地獄』のDVDでも観ようじゃないか。ね。ね。それからきみ、とうぶん映画に対する所感をインターネット上で公開するのはやめたまえ。いいね、絶対だよ」と諭すように言いきかせ、帰り際も見送りに出た僕に向かって「絶対さっきのランキングのことは口外してはいけないよ。絶対だよ」と幾度となく念を押しながら去っていくことでしょう。そのくらいおかしいランキングなのです。


 かくもおかしげな人間の書いている映画評ですので、どうぞこのブログに書かれていることは話半分で聞き流すようにしてくださいね。これから先『ブリジット・ジョーンズの日記』とか『タイタニック』とか『パール・ハーバー』とか『踊る大捜査線』シリーズとか『世界の中心で、愛をさけぶ』とか上映間近の『デビルマン』とか、北村龍平監督とか井筒和幸監督とか篠田正浩監督とか、映画じゃないけど『冬のソナタ』とかペ・ヨンジュンとか外国人になにかと「様」をつけたがるばか女とかマスコミとかを徹底的にこきおろしたりすることがあるかもしれませんけど、そこはそれ、映画のことがなにもわかっていない人の書く文章なのですから、目くじらを立ててもしょうがないことなんですよね。かわいそうな人なんです。なので正体が割れていない頃の山下清を見るような生暖かい目で見守ってあげてください。それが一番の供養になります。アーメン。


 かくして予防線が張られたのであった。そしてレビューは『ブリジット・ジョーンズの日記』へと突入するのであった。くくく。