1 「YOU ARE THE ONE」
一九九六年の大晦日、日本レコード大賞を安室奈美恵が受賞し、NHK紅白歌合戦には安室の他、TRF、華原朋美、globeが出場した。これらのアーティストの曲をプロデュースしているのは、小室哲哉。ここ数年、小室がプロデュースするいわゆる小室ファミリーの曲から、大ヒットが次々と生まれている。
一九九七年一月一日、「YOU ARE THE ONE」という曲のCDシングルが発売になった。この曲は、紅白出場の各アーティストをはじめとし、浜田雅功(ダウンタウン)、内田有紀、観月ありさなどを含めた小室ファミリーのアーティストがワンフレーズずつ歌って作られている。
小室ファミリー勢揃いというこの企画は、インターネットと関連が深い。現在、NTTが中心となり、文部省などと協力しながら「こねっと・プラン」というプロジェクトが進行している。「こねっと・プラン」とは、全国約一〇〇〇の小学校・中学校・高校などにインターネットを入れようという企画だ。小室はこの企画に賛同し、この企画に協力するためにファミリーを集めて「YOU
ARE THE ONE」のCDを作った。このCDはチャリティであり、収益金などはすべて「こねっと・プラン」のために使われるのである。
一九九四年から動き出した文部省・通産省による「一〇〇校プロジェクト」では、インターネットが全国約一〇〇の学校に導入された。今回の「こねっと・プラン」では十倍の一〇〇〇校が対象となっている。こうしたプロジェクトには多くの資金が必要であるし、社会へのアピールも欠かせない。大ヒットを連発している小室ファミリーの協力は大きな意義をもっている。
2 TK GATEWAY
本連載でもご紹介したことがあるが、小室哲哉はインターネット上に早くからホームページを開いている。「TK
GATEWAY」(旧「PLANET TK」)というページだ(http://www.komuro.net/)。TKというのは小室のイニシャルである。
TK GATEWAYの内容は、盛りだくさんだ。小室や他のアーティストのメッセージ、各曲のサンプル・ファイル、さらにはなかなか凝ったゲームなどまでが掲載されている。すべて見るには何時間もかかりそうだ。
これらの情報の多くは、他の媒体では得られないものである。このため、「小室のページを見たい」ということが、若い層がインターネットを利用する大きな動機の一つになっているとさえ考えられる。
ホームページに関連して、『TK GATEWAY TRAIN』という雑誌も創刊された。この雑誌は、小室ファミリーのホームページに関連した情報を集めたもので、朝日出版社から季刊で発行される。創刊号は一九九七年一月一日発売となっているが、十二月中から売られていた。書店だけではなく、コンビニエンスストアでも売られていた。この雑誌を読めば、ホームページにどんな情報が載せられているかを知ることができ、インターネットを使う助けにもなる。こうした雑誌も、インターネットの普及には力を発揮するだろう。
3 小室哲哉とインターネット
小室哲哉というアーティストは、早くからコンピュータを使っていた。小室はTMネットワーク(後にTMNとなる)というグループでデビューした。このグループは、小室がコンピュータで作り出した音でほとんどの演奏をしていたのである。現在の小室ファミリーの音楽も、演奏部分のほとんどは小室がコンピュータで作り出している。ミュージシャンをスタジオに集めてレコーディングするというスタイルはとられていないのである。こうしたスタイルをとってきた小室にとって、インターネットを活用することは当然のことだったのだろう。
最近、小室は作詞にもインターネットを使っているという。一九九六年の年末から大ヒットしているglobeの「Can't Stop Fallin' in Love」という曲には、「踊る君を見て恋が始まって」という印象的なフレーズがある。この歌詞は、小室がネットサーフィンをしているときに浮かんだものだということだ。雑誌『Bart』一九九六年一一月二五日号に次の記事がある。
┌─────────────────┐
│ スタジオに設置してある専用線に接│
│続されたPCを駆使して、小室哲哉は│
│インターネット空間を縦横無尽に移動│
│する。〔略〕
│
│ そしてリンクをクリックし続けた後│
│に偶然たどりついたのはスーパーモデ│
│ル・ケイト・モスのフォト・アーカイ│
│ブなるホームページ。
│
│ 〔略〕ケイト・モスの画像データを│
│クリック、リズムに合わせてスライド│
│させる。彼の網膜にはケイト・モスの│
│スレンダーでキュートな肢体がダンス│
│しているように映る。
│
│ そのときにフレーズがふと浮かん │
│だ。
│
│ 彼はマウスをペンに持ち換えてそれ│
│をノートに素早く書き留めた。
│
│『踊る君をみている……』
│
└─────────────────┘
小室哲哉にとって、インターネットは当たり前の道具なのである。(文中敬称略)
◆
この道具を教師にとっても当たり前にしたいという願いをもって始めた本連載も、今回で最終回となりました。ご愛読ありがとうございました。次号からの新連載「歌謡曲の教育学」もよろしくお願いします。
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