東北の田舎に住む高校生の女の子・奥山テルが、突然、東京の大学生レンガ(連賀)遥のアパートを訪れるところから話は始まる。テルはレンガの(実に全国で80人もいるという)文通相手のひとりだった。テルは家出をして田舎から東京に出てきたのだという。
彼女は父と兄との3人暮しだったが、先日心臓発作で父をなくした。テルの父は山林を営んでいたが、山林維持の為の借金があった。その借金を返すためには山を手放さなくてはならない。
山を愛するテルはそれを拒む。自分は学校をやめ、東京に出て金を稼ぐと言いはる。反対する兄と喧嘩した末、テルは家出して東京にでてきたのだった。
テルがレンガの前に現れたのは、アパートを借りる際の保証人になってほしいからだった。だが大学生のレンガは、保証人としてテルの責任を負う気にはなれない。しかたなく、レンガはテルを臨時に自分のアパートにとめることにする。
レンガは自分の部屋をシーツできれいに二ツに分け、生活を完全に分けることをテルに約束させる。
部屋を分けたあとは話しかけようともしないにレンガに、テルはシーツごしに手紙を出す。
シーツ越しの文通によって家出のいきさつが語られる。
シーツ越しに手紙を交わすうちに、レンガはテルを自分の卒論の題材にすることを思いつく。大学で社会学を専攻しているレンガは、田舎から都会に出てきた女子高生の生活と意識はどのように変化していくかを論文に書こうと考えたのだ。
レンガはテルに卒論の題材になってくれるよう頼み、その約束を取り付ける。
翌日テルはテレフォン・クラブのバイトの口を見つけてくる。レンガは論文のための調査の一環として、テルのバイト先に電話する。彼女はレンガに気付かず、無邪気な・東北弁丸出しの女子高生として話しかけてくる。レンガの頭は思いがけず混乱する。
彼女はバイト先からしょげて帰ってくる。方言のキツさをバイト先で指摘されたと言う。その治療法としてレンガは「ローレライ」を歌って標準語の語感を覚えることを教える。
やがて毎晩レンガの部屋ではシーツの向こうからローレライが聞こえ、その後すすり泣きが聞こえてくるようになる。
たまらずレンガはシーツ越しの手紙ですすり泣きの理由を訪ねる。テルは故郷の友人や山林へのホームシックにかかっていることを手紙で告げる。
ホームシックのような土地に恋する感情は“ぼくにはわからない”と独白するレンガ。
2週間がたち、テルが標準語にもなれ、ホームシックからもとりあえず立ち直ったころ。
ある日彼女は街でテレビのCMタレントとしてスカウトされる。
レンガのすすめでCMに出たテルはすぐにマスコミにとりあげられるようになり、アイドルとしての進路が開け始める。
テルはレンガのアパートを出てマンションに住むよう、プロダクションの社長に言われる。それからテレフォン・クラブで働いていた過去もなかったことにするようにいわれる。
そんなことをするとレンガさんの書いている論文と矛盾する、と抵抗するテルだったが、言い含められてアパートを出ることになる。
アパートを出るテルのタクシーを見送るレンガ。
“とにかく/僕は/そのとき/深いためいきが/出たのだった”
テルのアイドルとしての生活が、まずは順調にはじまる。田舎の兄には心配しないよう電話をかけ、レンガには“好きなスターがいたらサインもらってあげましょう”と手紙を書く。“好きなスターなんていたためしがねーよ”と独白するレンガ。
レンガのほうはといえば、新たに自分の生活を組み立てなければならない。卒論の新しいテーマだって見つけなければならない。
だがレンガはどうしてもテルが気になる。テルのうわさ話に聞き耳をたて、テレビの番組表をチェックし、風呂に入っていてもテルの出るテレビは風呂飛び出して見る。
“僕は/テルの/保護者気分だった/保証人も/やらなかったのに/保護者/あきれた”
テルの人気は順調に上昇し、忙しいアイドルの生活は寝る暇もない。
レンガはというと、芸能界でのテルの動きが気になってまともな学生生活がおくれないままだ。やがてレンガはテルの事を忘れて学生とし再起しようと決意する。
なんとか元の生活にもどったころ、テルからの手紙が届く。それは多忙な生活の合間を縫って書かれた、自分の生活を綴る12行の手紙だった。
レンガは“はげましのようなファンレターのような”手紙を書くが、その手紙は“本心からずれている”と感じる。
テルの元気で飾らない態度は視聴者にも好評で、いくつかのハプニングをおこしつつも一応順調に人気はあがりつづける。
だがある時テルは不祥事を起こす。酔っぱらったままクイズ番組に出て、やらせの答えを全部先に応えてしまったのだ。この事件がきっかけでテルの人気は一時的に落ちる。
テルのもとに、酔っぱらって仕事に臨んでしまった理由を問うレンガの手紙が届く。
テルは次のような内容の返事を書く。
酒を飲んだのは元気を出したかったからだ。
テルの兄の結婚が決まった。兄嫁の実家は資産家で、そのため山を手放さなくてもよくなった。
山林を手放さないために金を稼ぐ、という目標を、テルは失ってしまった。
彼女は自分が“ホワイトアウト”に入ったと言う。“ホワイトアウト”とは一面の雪の中で方向の手がかりを失った状態を指す。
レンガはそれなら、とテルへの返事の手紙の中で提案する。他にも売られていく山林はあるはずだ。それを買い取って維持するためにお金をかせぐことにしてはどうか。自分も微力ながら協力する、と。
テルはレンガのその提案を読んで、ホワイトアウトする景色の中に遠くレンガの姿が見えたように感じる。元気をとりもどすテル。
“そういうわけで僕は/就職もしないうちから/その金の使い道のみ/明確になってしまったのである”
“そして/このことは僕に/明け方のような/安心感を/ひたひたと/感じさせた”
そこに、かつてテルが勤めていたテレフォン・クラブの社長が、そのことを週刊誌にバクロするという事件が起きる。テルとレンガが同居していたこと、レンガがテルの行動を卒論の題材にしていたこともマスコミの記事にされる。
逆上したレンガはテレフォン・クラブの社長に抗議に行く。が、逆に痛め付けられて放り出される。
レンガがそのままアパートに帰ると、何か勘違いしているテルの兄が待ち受けていた。
テルの週刊誌の記事に対する反論のための記者会見会場。
記者会見会場にあらわれたテルの兄は、あの男(レンガ)をぶん殴ってこれ以上手を出すなと脅した、卒論とやらも破いたから安心だ、とテルに告げる。
怒ったテルは兄に向ってレンガを大声で弁護し、反論記者会見は台無しになる。
レンガの生活はマスコミ攻勢でむちゃくちゃになり、大学も退学処分になる。都内に住む両親からは勘当を受ける。
もはやテルもレンガも四面楚歌だ。
そんな中、たまたまおこったハイジャック事件による報道の空白を利用して、テルはこっそり田舎の兄の結婚式へ帰る。
テルはひさしぶりに帰ったふるさとで、愛着を抱いていた山林が、兄と兄嫁の新しい家族に受け継がれていくのを見届ける。
大きな荷物をかついだ行商のおばさんがレンガのアパートにあらわれる。それは実家でいらない古道具を抱え、変装したテルだった。
自分のスキャンダルにまきこまれたレンガに、土下座してわびるテル。だがレンガは“あんたがおれの大学だった”と思う。
それから二人は夜の街角に出て路上に古道具をひろげ、売る。行商のおばさんの格好で、思い出の古道具が買われていくのを見送るテル。
レンガは、物を売る楽しさをはじめて知る。
週刊誌にテルの復帰を呼び掛ける記事が載るようになったころ、レンガは古道具屋をはじめることを思い立つ。
全国80人の文通友だちに降る道具を送ってくれるよう手紙をかくレンガ。数多くの古道具がレンガのもとに集まる。
やがて、『クレイジーガーデン』と名付けたレンガのシートショップが動き始める。
テルの人気も回復しはじめる。
二人はたまに会いながら、夢に向って働く日々を送るようになる。
“ふたりとも/まだまだ/山を買うほど/金はたまらないが/夢は持続しているのだ”
“山のあなたの/空遠く/クレイジーガーデン”