仮面舞踏会
あるいはシンデレラ異説




顔はいくら綺麗でも、男を満足させることのできないからだのつくりの女が数多くいることを、21歳の誕生日を間近に控えた王子はすでによおく知っていました。 ‥‥‥


若い娘のいる各貴族のもとへ、王子の誕生日を祝って宮殿で行われる仮面舞踏会の招待状が届けられました。 舞踏会は王子の花嫁選考会も兼ねるとも記されてありました。

シンデレラの家にもそれは届きました。

皆さんも知ってのとおり、シンデレラは継母にいじめられていました。しかし、何故父親がシンデレラをかばおうとはしなかったのかという点になると、知っている人は少ないようです。実は父親は、サディスティックな後添えの尻に敷かれることに歓喜しているマゾヒストだったのです。シンデレラを酷(むご)く扱う妻の姿に犯しがたい強い女を見、背徳的な秘楽を味わっていたのです。

それはさておき――――――

仮面舞踏会の当日がやってきました。

ひとり屋敷に残されたシンデレラは窓辺に立って、暮色に犯されつつある広い庭園をぼんやり見ていました。

すると、謐(しず)かな薄闇の中から神様が現れました。そうなのです、今ではニーチェもいいましたように神様は死んでしまっていますが、当時はまだ生きておられました。

さて、 かぼちゃ が華麗な馬車に、6匹のねずみが馬に、もう1匹のねずみが御者に、6匹の蜥蜴(とかげ)が従者に‥‥‥このあたりの神の奇跡は広く知られているところです。

しかし、知られていないことがここにもあります。

―――当時、処女は一人前の大人とはみなされていませんでした。 適当な年齢になった娘を「おんな」にするのは父親の神聖な義務でした。

意地悪な継母のせいで、16歳になって未だ処女だったシンデレラは、その日、神様のおごそかな尊いペニスによって「おんな」にしてもらったのです。シンデレラが感涙に咽(むせ)んだのはいうまでもありません。しかもこのとき、継母に受けた体中の折檻(せっかん)の痕がきれいになくなり、輝くようなすべらかな肌肉(からだ)になったのでした。‥‥‥‥

それは音楽と笑い声のさんざめく盛大な舞踏会でした。国中の貴族の娘さんたちが出席していました。王子がお嫁さんを選ぶ舞踏会なのですから、どの娘(こ)も王子の気を惹くべく特別綺麗に着飾っていました。

頭上には数多くのシャンデリアが光り輝いていました。―――そこから垂れている無数の宝石のカット面のひとつひとつが、娘さんとその親御さんの熱い夢を宿してチカチカと、まばゆい高価なきらめきの飛沫(しぶき)を撒き散らしていました。

王子はダンスを踊る若い貴婦人の一人々々に審査官の厳しい目を這わせていました。―――舞姿に王室へ迎え入れるにふさわしい貴(たか)い品位があり、その上体付きのよさそうな娘(こ)をひとまず選び出しました。その数20名。

花嫁候補者たちは大きい寝台が設けられた絢爛豪華な春めいた閨房(けいぼう)へ連れてゆかれました。

王子は順番に一人ずつ寝台の上で大股を開かせて按配(あんばい)を確かめてゆきます。

マグロもあれば、激しく腰を突き上げてくる女もいます。みだらな姿態を取っていながら湿ってこない女もあれば、しゃぶりついて飲みたくなるほど豊かな女液をあふれさせる女もいます。‥‥‥しかしそんな女体ごとの違いは、王子はとっくに知り尽くしていました。

皆さんは何故「仮面」舞踏会であったのか、その理由がすでにおわかりでしょう。そうです、男を狂喜させるからだを持った女を、美貌に惑わされることなく選び出す、これこそが色道の帝王学を身に付けた聡明な王子の考えだったのです。

一通り味わい終えた王子が、目星を付けた数名の娘をもう一度試婬してみようとしたとき、夜中の12時を告げる鐘の音が、星群(ほしむら)まばたく夜空に、ゆっくりとひびき始めました。

すると、下穿きを小脇に抱えて大慌てで駆け出した若き貴婦人がいました。

そう、勝ち組のひとり、シンデレラです。

王子はハッとしました。

(一番情の濃(こまや)かなおまんこをしていたのはあの娘(こ)ではなかったか‥‥‥)

大理石の階(きざはし)に、華奢なガラスの靴の片方が、空から降ってきた夢のかけらのように、落ちていました。

後を追ってきた王子はそれを拾い上げて匂いをかぎました。かぐわしい女の足の匂いがしました。舌を這わせてみました。秘密めいた重厚(こく)のある夜の味がしました。

「あの娘(こ)のものにちがいない」

念のために、目星を付けておいた残りの女たちを試婬しなおしてみました。どれも中々の名器でしたが、やはり何かが足りません。

―――翌朝、大勢の臣(おみ)が早馬を駆って、国中に御触れを出しました。

昨夜の舞踏会で王子のご賞味にあずかったあと靴を片方落とした女は仮面で顔を隠して宮殿に参上されたし、という御触れです。

なんと、何十人もの女が宮殿にやってきてしまいました。

困った王子は、先ずガラスの靴をひとりずつ履かせてみました。

サイズの合った女が8人いました。

昨夜と同じようにひとりずつ寝台でからだを開かせ、ゆっくりと嵌め込んで締まり具合を確かめてゆきました。

麗しい王子の顔(かんばせ)が曇りました。不思議なことに粗品(そひん)ばかりだったのです。性毛の感触も、太腿の肌合いも明らかに違います。

王子は8人の嘘つき女に臀肉を突き出させ、自ら鞭を振るって仕置きをしてから宮殿から追い払いました。

―――家老が臣(おみ)たちを引き連れ、国中の貴族の館を一軒々々訪ねてガラスの靴の合う女を捜し出しにかかりました。

やがて、そのひとたちがシンデレラの住む館にやってきました。

昨夜王子のご賞味にあずからなかったにもかかわらず、御触れを受けて図々しく宮殿へ参上したものの、やはり靴のサイズが合わず、試婬の前に早々とはねられて帰ってきていた継母の連れ子、ユーフロニアとシャーロットが、又しても未練がましくしゃしゃり出てきましたが、何度やってみてもシンデレラの靴が履けるわけがありません。

ふたりは「チェッ」と蓮っ葉な舌打ちをして家老たちの顰蹙(ひんしゅく)を買いました。

「こちらにはもうひとり娘があるだろう」

すると母親が邪険なせせら笑いをうかべて、

「あの娘(こ)は舞踏会へは行ってませんわ」

「とにかく連れてきなさい」家老は少しいらついていました。

雑巾を持った、薄汚れた服装(みなり)のシンデレラがやってきました。

家老に命じられた臣が靴を履かせてみるとぴったりでした。

シンデレラは家老にお尻を見せるようにいわれました。―――雪のように白いつやつやしい双臀のどこにも、もしやと家老が心配した王子の鞭の痕などあろうはずがありませんでした。

汚らしい格好で王子にお目通りさせたとなると母親が恥をかきます。母親はいやいやながらも大急ぎでシンデレラに入浴をさせ、ユーフロニアとシャーロットの衣装のなかから一等綺麗なドレスを選び出して着せました。ユーフロニアとシャーロットは腹を立てて文句をいいました。するとシンデレラに対する憎しみを煮えたぎらせていた母親はヒステリーを起こし、発作的にユーフロニアを殴り殺し、シャーロットを絞め殺してしまいました。その様子を見ていた父親は犬ぶるいをして射精しました。

―――宮殿へ連れて来られたシンデレラは もう仮面を付ける必要はないと聞かされ、匂いやかな顔にほんのりと含羞の紅を浮かべて、王子の待つ大広間へしずしずと歩み入りました。

王子は固唾(かたず)を飲みました。

(美しい。‥‥‥こんなに美しくて気品のある女が、本当にあの好色(すけべ)なおまんこの持ち主なんだろうか)

王と后(きさき)をはじめ大勢の家来たちの見守るなか、王子はシンデレラを向こうむきにさせ、用意させてあった王家の紋章も麗々しい性戯具の紫檀の横木(バー)に両手をつかせて前屈みにさせ、ドレスをめくり上げ、下穿きを押し下げると、高貴なありがたい肉棒を、じわッ、じわッと、ぬめった擦れ具合を確かめながら少しずつ嵌め込んでゆきました。

「‥‥‥Oh!‥‥‥Ah!‥‥‥Oh!‥‥Ah!‥‥Aah!Aah!Aah!」

間違いありません。王子は恍惚(うっとり)と目を閉じて顔を仰け反らせました。

残るは王の承認です。

「この娘なのか」といいながら王が玉座から立ち上がり、前のものをおごそかにそそり立てて近づきました。

王子が夢現(ゆめうつつ)に愛くるしい柔壷から引き抜いて(このとき、悩ましい白檀の匂いが馥郁と立ち迷いました)席をゆずると、王がじんわりと挿入しました。

「‥‥‥Ooooooh!これは后のものより上物(じょうもの)だ!」

王子の花嫁が決まった瞬間でした。

王の音声(おんじょう)が大広間にひびいたとき、后の瞳に邪悪な黒い光が冷えびえと灯りました。

(わたしの女陰(おそそ)よりいい女がこの世にいるなんて、許せない!)

―――どこからともなく性愛の神、キューピッドがたくさん現れて、黄金(きん)いろの翼をきらきらと羽搏(はばた)かせ、可愛らしいちっちゃな生殖器をのぞかせながら、大勢の高貴な人々の頭上をにこやかに飛び回り始めました。

かくして婚礼の準備が、波乱含みのうちに始まったのでした。


教訓
女の幸せは、 物質的裕福のなかには、ない。


夏子後記
サディスティックな継母の性態、シンデレラが受ける折檻、色道の帝王学、シンデレラの新婚生活、姑=后のいじめ、等々、肉付けを続けていくと長編小説になるかもしれませんね。




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