今をときめく注目の脚本家 岡田惠和


VOL.2

「イグアナの娘」

彼の ターニングポイントになったのがこの作品。菅野美穂主演のテレ朝系アイドルドラマでしたが、映像化が難しいと言われてた作品を見事に成功し、初回視聴率が7.9%と低かったものの最終回には19.4%まで跳ね上がり、“視聴率”を信じられるようになったそうだ。この脚本執筆中に出来た原因不明のデキモノがイグアナに見えたという話もあったらしい。

「僕は一度この企画を断っているんですよ。イグアナの娘イグアナの姿が実際にどういう画になるのか全く想像できなかったので。そしたら高橋浩太郎Pが造形の人を連れてきてくれて、それでひょっとしたらいけるかなぁと。親子を描きたかったんですよ。今まではあまり親というのを書いたことがなかったし、僕は男なので、母と娘という関係に非常に興味があった。」

彼はこの作品の執筆に当たる前に、三浦綾子の『氷点』のドラマを参考にしたそうだ。エグイ展開のドラマ中に微かに漂う品の良さ、それが成功に繋がったとも言えよう。

設定が非現実的だと逆に極めてまっとうなドラマが作れるんですよ。これが単に自分に自信のない女のコの話だったら、背中蹴飛ばしたくなるんだろうけど、無茶な設定があるから、普通では恥ずかしくて言えないようなセリフも言えるし、親子の絆や友情みたいなことを真正面から描けるんですよ。」

『ビーチボーイズ』や『天気予報の恋人』など最近でも極めてリアリティとは程遠いドラマ設定が多いのも彼の特徴のひとつ。そんな中から人間の本質的な部分を心情的に描くのが上手いのも、そのせいなのかも。

「彼女たちの時代」

現時点では彼の最高傑作と言ってもいい作品。もともと深津絵里でいくことが決まっていて,最初はテーマも何も決まっていなかったらしい。それで、彼女の年代の女の子がどういう気持ちで生きているのかリアルに表現した結果がこの作品。彼自身は、加藤晴彦扮する美紀夫が昔の自分に近かったという。あそこまでは酷くなかったらしいが,本人は【ノンエリート】を自認する。

「テレビドラマって、ある種幸せな人たちが作っている感じがするんですよ。いい大学を出て、テレビ局という人が羨むところに就職して、みんなが希望しているドラマに来てる人たち。たぶん彼らの頭の中と自分とはどっか違うし,逆にそこから一つのものを作るから複合的になるんじゃないかと。そういう人たちには理解しにくい部分,挫折した人たちの気持ちを感じられる立場でいたい

加藤晴彦扮する美紀夫や椎名桔平扮する圭介などを上手く描けたのも、彼のこんな気持ちがあったからこそなのかもしれない。

「最終回を書くのがこんなに嫌だったドラマは初めて。というか何が終わりなのか分からなくなった。終わった後はちょっと放心状態でしたね。」

彼自身、この作品を120%満足のいく作品だったと言う。でも、商品的には“不充分だった”とも。【視聴率】というビジネス的観点からみたシビアな答えである。分からない奴が悪いではテレビでは許されないというのが彼の持論。きっと近い将来,商品的にも満足のいく作品を彼なら作ってくれるに違いない。

「ビーチボーイズ」

彼の2度目の“月9”作品。最高視聴率は26.5%と、夏クールにしては高視聴率をマークした。“月9”としては極めて珍しい男の友情を描き、彼なりの挑戦作だったみたいです。ちなみに、主人公の海都広海と言う名前は彼の息子の名前からとったものだそうです。

「男はいつまでたっても子供だと−−−そういう男の人を僕が好きなんだと思うんですよ。『ビーチボーイズ』は、本当に男は限りなく青臭くて、女の人は一貫して強いという座組み(出演者の構成)でした。女の人はほとんどウジウジ悩んでないですから。男は、あんなおじいさん(マイク真木)まで最後にウジウジしてしまうという。男はどうしたらいいかとか、何をすべきかとか悩んでる。女の人はスパッとしてる。女の人はあくまでも潔くあってほしいという思いが,僕にあるんですね。」

男の友情を中心に描きながら、女性にも見てもらう事を意識して書いたそうだ。そんな気持ちが、上のコメントからもうかがえる。

「青春って恋愛ばっかり考えているわけじゃない。恋愛ドラマだと男性像が、どうしてもその面ばかりが強調されてしまうんですね。その人の人生とか生活がカゲになり、出てくるシーンだけ見ると、男はいつも女の子のこと考えて、心配して、悩んで,走っちゃったりして(笑)。(〜中略〜)恋愛とか結婚というのは大イベントだけども、そこまではという感じだし、もし悩んでいても男は口にはしないですよね。ゼロでもないけど100でもない。ビーチボーイズ
 男が仕事中でも恋愛で悩んでたりするシーンとか見ると,ぶん殴ってやりたくなるんですよ(笑)。そんな社員なんかいらない、それで悩んで仕事失敗したりすると、「クビだぁー!」って怒鳴りたくなる(笑)。僕は男が勘違いされるとイヤだな、というのがあって。そういう男のほうがいいんだけど、女性に思ってほしくないんです。恋に人生ささげるみたいな。」

この考え方そのまんまのセリフが『天気予報の恋人』の第一話に佐藤浩市扮する矢野のセリフとして登場するのは、なんか面白い。

余談ですが、稲森いずみ扮する春子が自分のことを母親と知らない幼い一人息子と一日を過ごす回があった。その時息子が機関車トーマスのパジャマを着てたんだけど,春子はトーマスを知らず息子に「トーマス知らないの?」って言われるシーンがあるんです。それで次の回から春子が機関車トーマスのTシャツを着るようになるんですけど、次の回からトーマスのTシャツを着るという設定は岡田さんの脚本にはなかったそうです。彼にとって、こういうシーンが連続ドラマを作ってる“嬉しい瞬間”なのだそうだ。

40代、50代でドラマを書きたい

彼が書きたいのは【自分探し】のドラマだという。現時点では「彼女たちの時代」が、まさにそれだったのかもしれない。

「僕が高校生くらいの時に「俺たちの旅」というドラマがあって,世代的にドンピシャリで。あのドラマの中に「こうすべきだ」という答えは、なかったような気がするんです。でも、いろいろなものが啓示されて、それは今も自分の中に残っているし、僕があの時感じた気持ちを視聴者に感じてもらえたらいいなと思う。そういうドラマは、みんなの記憶の中に残ってくれるんじゃないかと思うんです。(〜中略)
 世の中って嫌だなと思わせて終わるドラマは書きたくない。僕は 社会が悪いとか言うのは嫌ですね。貧乏なのも仕事がうまくいかないのも、自分たちの問題として捉えていれば、人間って前向きでいられるんじゃないでしょうか。
  怖いのは、こういう仕事をしていると自意識のバランスを保っていくのが難しいんです。誇りは持つ必要があるけれど、仕事頑張ってくると、だんだん周りに悪く言う人がいなくなってくる。冷静に自分を客観視しないといけないと思います。
 40代なら40代、50代なら50代の時に書けるドラマを書いて、一生の仕事にしていきたいから。今が旬で何年かして、ああいう人もいたね、と言われたくないんです。僕が鎌田敏夫さんを好きなのは、50代になって「29歳のクリスマス」というドラマを書けるからです。素敵だなと思います。そういう現役で僕もいたい。」

彼はよく雑誌などのインタビューなどで、「野球でいう2番とか6番とかそういうポジションが好き」という話をしている。テレ朝月8のティーン向けアイドルドラマやフジの月9など、どの世代にも興味を持ちたいという彼。今後の活躍にも是非期待しましょう。

 

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