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読書日記2001年2月
いつの間にか時は過ぎていく編


2001年2月某日
 なぜか。なぜかなぜか。この読書日記の2月分は4月の中頃に書かれている。別に、なぜか、なんて説明することではなく、ただ単に面倒だっただけなんだけどね。
 今書きたい文章は、今読んでいる本なのだけど、まあそれは少しだけ我慢してこの2月という月を振り返りたいと思う。実は、この読書日記というのは、辞めよう辞めようと思っていたりしている。楽しみにしているという人が一人だけいたので、なんとかやろうかなという気になっていたのだけど、残念ながらこのところそうでもないというか、悩むことも多かったりしているのであった。

2001年2月某日
 この2月、まず読んだ本は梁石日の『死は炎のごとく』(毎日新聞社)だった。彼の作品は読まずにはいられない。なんといったらいいのだろうか、強力な磁石のような力で引き寄せられてしまう。こうした力強さを感じされる作家いうのはこの2001年において、他にいるのだろうかと思ってしまう。書店でこの作家の新作を見つけてしまうと、ふと手にしてしまうのである。もちろん、黙って持って帰るわけではない。財布から僕のお金が消えていく。読まなくても、ただ僕の部屋の本棚に並んでいるだけで、それだけで満足してしまう。
 この本はテロリストの話だった。わけのわからない犯罪が毎日のようにある現在、テロリストという存在自体が何か時代錯誤のような雰囲気さえあったりする。今の若い人には(笑)、このテロリストという言葉自体が何を意味しているのかわからなかったりして(ゴメンナサイ)。僕も知らないと言えば知らないのだけど。ただ、子供の頃の記憶というのかな。いくつかの事件の残像のようなものが、忘れられない記憶として残っていたりする。
 とても迫力のある物語だ。どうしようもなく。

2001年2月某日
 昨年から、久間十義という作家が気になってしまっている。図書館で『聖マリア・らぷそでぃ』(河出書房)を借りて読んだ。タイトルから想像できるように、宗教、いや宗教団体のようなものを取り上げている。こんなふうに真正面から、このテーマに取り組む作家というのも珍しいような気もする。とにかく気になる作家である。これからも読んでいくだろう。

2001年2月某日
 ドルフィンホテルの新年会が開催された。場所は新宿にある「ブラッスリーナガノ」というフランス料理のお店である。そこら辺の、チェーンの居酒屋さんではない。オシャレなお店である。すごいなぁ(笑)。9人もの参加者が集う。次回はいつになるのだろうか。新年会の開催は当然来年になると思うけど。実はもう9年ほど、ドルフィンホテルではオフ会なるものを行っている。トータルにすると、かなりの人と酒を飲み、語り合った。でも、もう会わなくなった人もいっぱいいたりする。これはこれで、寂しいことだったりもする。

2001年2月某日
 いやいや、すごい面白かった。江國香織の『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』(集英社)である。この本が出版されたのは2000年4月30日で、実はこの出版の数日後から僕の本棚に並んでいたのであった。ところがそのまま、読まれることなく、悲しく、辛い時間をこの本は過ごしていたんだよね。ごめんなさい。
 それにしてもこの本は面白かった。読み終わって僕は自分の愚かさに落ち込み、悲しくすらなった。
 こんなことを書くと作者の江國香織にオコラレルかもしれないけど、僕はこの本を読んで、昔TBSで放送された「金曜日の妻たちへ」を思い出した。何人かの、夫婦と恋人たちが出てくる。特別に誰が主人公ということでもなかったりする。少しずつ、微妙に、ひとりひとりが絡み合う。ニンゲンカンケイは複雑で、酷いこともあったりする。でも、そうしたことが、さりげなく、書かれているんだよね。ええーっ、というくらいに。こんなにも、サラリと隣の人のことを描く作家がいるんだ、と嬉しい気持ちでいっぱいだった。

2001年2月某日
 池袋にある「上海ヌードル」というお店に飲みに行った。仕事関係での、新人歓迎会みたいな飲み会だったのだけど、そこでの新人の食べっぷりに唖然としてしまう。まだ23歳の若い女の子だったのだけど、ほんとうに食べる食べる。ほとんど限界じゃないかと思われるくらい食べたあとに、ちゃんと「世界最強の杏仁豆腐」(マジでこういう名前です)と「ごま団子」も、美味しく食べていた。いやぁ、ワカモノは凄いなあ。

2001年2月某日
 本を読み始めるときに、時折あとがきから読んだりする。そこに、作者のどうしようもない胸の内が書かれていたりして、その作家の作品をとことんまで読んでみたくなる。
 田口ランディの『縁切り神社』(幻冬舎文庫)を読んで、こうした気持ちがとてつもなく膨らんできた。田口ランディという作家は21世紀の日本の始まりを象徴しているような気がする。とても身近で、そんなに好きになりたくないのだけど(笑)、どうしようもなく気になってしまう。

2001年2月某日
 角田光代の『愛してるなんていうわけないだろう』(中公文庫)を読んだ。このエッセイ集の2番目の話「贈り物」を読んで、僕は角田光代という作家の作品をぜんぶ読んでみたくなった。さりげない、ほんとうにさりげない話だ。題材としては、ちょっとつまらないくらいの。でもさ、こんな話を書く角田光代という作家に僕は惚れてしまったのである。簡単に女流作家に惚れてしまうのだけどさ(笑)。たぶん、誰にでも好かれるエッセイだと思う。

2001年2月某日
 さっそく角田光代作品ツアーを始めた。まずは、『菊葉荘の幽霊たち』(角川春樹事務所)。いいよ、すごくいい。学生の頃を思い出してしまった。彼女の作品の多くは“部屋”をテーマとしている。僕がその昔の昔、住んでいたアパートは渡辺荘といった。トイレは共同で、僕の部屋には電話もなかった。現代からは考えられないよね(笑)。でも当時はそれが普通だった。でもさ、一番良い時代にいたなぁと思っているけど。
 角田光代は、彼女の時代を書いている。それは、今だなぁと読むほどに感じられる。

2001年2月某日
 本が好きだと言うようになった。でも、子供の頃は本は読まない少年だった。でも、なぜだか本屋さんになりたいな、という夢はあったんだよね(笑)。なんだか、楽なんじゃないかなぁと。佐野眞一の『だれが「本」を殺すのか』(プレジデント社)には、本に関するいろいろな事が載っている。こんなふうに、本というものが僕の手元に届くのかと改めて関心し、どうしようもない感動を覚える。

2001年2月某日
『灰夜 新宿鮫Z』(光文社カッパノベルズ)を読んだ。大沢在昌の新しい側面というのかな。たまらなく良い作品だった。改めて鮫島という刑事を好きになった。この物語を読んで、感じたことがひとつあった。それは「友達」というものについてである。鮫島が、新宿鮫になるきっかけといってもいいかもしれない、宮本という人物について。
 この物語の最初の方の場面で、鮫島と宮本と2人が居酒屋で飲み、語り合う。場所は僕が昔近くに住んでいた荻窪だった。なんでだろう、この場面がとても心に残ってしまっている。とてもいい。そんなに仲がいいわけではない。信頼している部分と、突き放している部分とを、酒という存在が両者を包んでくれているかのようだったりしている。
 なんだか、たまらなく男くさい物語だったような気がする。

2001年2月某日
 秋田料理のお店にときどき行くことがある。池袋にある「いろり」という名前のお店なのだけど、「きりたんぽ」とか「しょっつる」とか「なんたらかんたら」とか、他のお店では食べられないような美味しい食べ物があってとても嬉しかったりする。けっこう年配の人と2人で語り合いながら飲んでいた。その人は飲むとそんなに食べないという、典型的なオジサン酒飲みタイプの人なのだけど、このお店の「ハタハタ」と美味しい美味しいと言って食べていた。なんでも、子供の頃にいつも食べていたのと同じ味だったと言っていた。

2001年2月某日
 角田光代の『まどろむ夜のUFO』(幻冬舎文庫)を読んだ。彼女の世界が凝縮されたような作品ではないだろうか。恥ずかしながら、僕もUFOとかに興味を持っていた時代があった。空を見上げたこともあった。最近はないけれど。でも、時には空を見上げる自分でありたいなぁと思ったりする。

2001年2月某日
 15歳の人にぜひ読んで欲しい本である。江國香織のインタビュー本(というのだろうか)『十五歳の残像』(新潮社)は、そのタイトルの通りの本である。僕の15歳の頃にはこんな本はなかったように思う。もちろん、あっても気が付かなかっただけなのだろうけど。
 いろいろな人が登場している。それぞれの人が、15歳について振り返り考えるのだけど。どの人も、とても自由な、のびのびとした15歳を過ごしていたように僕には思えた。

2001年2月某日
 最近の江國香織は大人向けの本がメインになっているようだが、子供向けに書かれた本もなんとも言えない魅力がある。『こうばしい日々』(あかね書房)と、『つめたいよるに』(理論社)と、どちらもとてもよかった。やさしかった。
 読んでいて感じるのは、子供じゃないというか、背筋をピンとした雰囲気だったりする。ふと、僕の子供の頃の写真を思い出した。恥ずかしながら、僕の子供の頃の写真というのは、口がキッと真一文字になっているんだよね(笑)。写真を撮るときには、ちゃんとキョウツケしなくちゃいけないと思っていたもんで。手とかも真っ直ぐにしてたりして(笑)。
 江國香織は、これから全作品を見つけてフォローしていこうと思っている。

(2001.4.16)



DOLPHIN HOTEL