読書日記2001年4月
春という季節だったんだ編
2001年4月某日
我がドルフィンホテル恒例のお花見オフが盛少に開催された。よく晴れた4月の日曜日。前日の土曜日には雪が降っていたんだけどね。それにしても、会場となった新宿御苑の人は凄かった。2日分の人が一日に集中したという感じ。中に入るのにも延々と行列が出来ていた。あの広い公園が人人人……。ほんとに凄い。
でもって、我らのグループの参加者はというと、とっても動きやすいというか経済的というか、ぜんぶで5人。内訳は省略(笑)。
でも、晴れた日に桜を見ながら広い公園でのんびりとワインを飲むなんて、素晴らしい一日だった。
2001年4月某日
岸本葉子の『結婚しても、しなくても』(マガジンハウス)を読む。それにしてもなかなか凄いタイトルだよね(笑)。でもさぁ。彼女が結婚したら、その家庭生活がエッセイになるのだろうか……、などと考えてしまった。
2001年4月某日
続けて岸本葉子の『アジア発、東へ西へ』(講談社文庫)を読む。海外旅行などのエッセイがいくつもまとめられているのだけど、ただのエッセイではなかったりする。いくつかの話はそのテーマで一冊のノンフィクションになってもよいものばかり。岸本葉子のノンフィクションを読みたいと思っているのは僕だけでないと思うのだけど。
北方領土をテーマとしたエッセイがある。住んでいる人は、戦時中に強制的に行かされてそのまま帰って来れなくなってしまったり。それは日本人だけでなかったりする。新たな生活をするために、国籍を変えたり。いろいろな苦難を経て、生きていく。そうした姿が、彼女のやさしい視点から見ることができる。
2001年4月某日
仕事関係の人と、お花見大会を行った。大会ってほどでもないのだけど。場所は豊島園。食べ放題飲み放題のセットがあったので、電話で予約を入れる。ピークを過ぎた延長期間だったからなのだろう、実際に会場に行ってみるとほとんと人がいなかった。僕のグループの他は、20人ほどの会社のお花見宴会。あの広い(というわけでもないけど一応遊園地だからね)場所で、ほんの僅かの人だけが、ほとんど桜の散った桜の木の下で食べ放題飲み放題の夜桜宴会をやっているのだ。想像して欲しい。トイレまでの数百メートルは豪華ライトアップ! 一人でそこを歩いているのはなんともいえない気持ちだった。
2001年4月某日
いつも仕事先に来てくれるクロネコヤマトの配達の人が会社を辞めて実家の四国に帰って行った。毎日、ほんのひと言ふた言、会話をかわすだけだったのだけど。なんだか寂しいものである。
2001年4月某日
田口ランディの『ぐるぐる日記』(筑摩書房)を読んでいたら、目がぐるぐる廻ってしまった(笑)。それにしても、この日記は凄いぞ。なにせ、ほぼ作家としてのでデビュー前から、『コンセント』(幻冬舎)を出版してメジャーになるまで、ほぼリアルタイムで書かれている。彼女の日常というのは、子供の世話だったり変わらなかったりしているのだけど、僕にも名前の知られる存在になっていくわけだ。
ところで、この日記というわけでもないのだけど、彼女の行動には神社とか神と関係するような場所が多く出てきたりする。天河弁才天なんてのが出てきて、あれれれぇと少しばかりびっくりしてしまった。恥ずかしながら、僕もこの天河には行ったことがある。旅行嫌いの僕が2度も行っているのである。2度目なんて、東北の山のほうから車で延々とあの奈良の山奥まで運転して行っていたのだった。けっこう有名なミュージシャンなんかもよく泊まるという民宿に泊まったり、女人禁制の大峰山に登ったりもした。もう10年、いやもっと昔のことだけど。
僕もそういう場所とかに興味を持った時代もあった。今はどうかというと難しいけれど、静かでのんびりできるところだったので、いつかまた行ってみたいとは思っているけど。
自分の知っている土地とかが書かれていたりすると、それだけでなんだか親近感が勝手に(笑)、沸いてきたりするものであった。
他にも、新宿のサウナな泊まったりとかが書いてあって、僕もその場所に泊まったことがあったので、確かに外を眺めながらの朝風呂はよかったなぁとか(笑)。とても楽しい日記なのであった。
2001年4月某日
読み始めたのは先月映画を見た後からなんだけど、少しずつ読んでようやく読み終えることができた。ジェームズ・W・エリソンの『小説家を見つけたら』(ソニー・マガジンズ文庫)である。映画が凄くよくて、作文を朗読する場面とか、その内容を読みたい気持ちが強くなって、それなりに楽しめて読んだ。でも、映画を見てから本を読むというパターンも最近では珍しいような。でも、この本はほぼ映画と同じ。逆に本なりのオリジナリティがあったほうがいいのでは、とも思ってしまった。
映画の方は映像の素晴らしさと、バスケットのリズム感みたいなものがあったけど、その辺はやはり本ではちょいと違ったりする。本の並んでいる描写など、映像よりも文章として読んだほうがわくわくしたりもした。
2001年4月某日
トマス・ハリスのハンニバル・シリーズを読もうと思い、まずは最初の作品である『レッド・ドラゴン(上下)』(小倉多加志訳/早川文庫)を読んだ。ふむふむ。ちゃんとレクター博士も登場してくれるではないか。上下巻の長い話なのだが、やはり小説というものは映画とは違ったものだなぁと思ってしまった。犯人の幼少の頃の話など、とても読ませてくれるのだ。もちろん、映画と小説は別なものなのだけど、ふとそんなことを思った。
そうそう、映画『ハンニバル』を見てしまったのである。いろいろなところでこの映画について語られているけれど、僕はそんなに肯定的でなかったりする。とてもおもしろく見ることが出来たし。怖かったけれど、綺麗な映像もいっぱいあった。それでも、『羊たちの沈黙』と比較してしまうなら、なんだか完成度、ぜんたいのまとまりのような点で落ちてしまっているように思えた。たぶん、本を読むのが好きだという人は僕の同じように考える人の方が多いのではないだろうか。勝手な思い込みだろうか。
世間ではラストシーンがいろいろと問題となっているようだが、やはり2時間と数十分という枠の中に入れてしまうとなれば、何を優先して何を犠牲にするかというのは出てきてしまうだろう。そうしたなかで、リドリー・スコットという監督はこのような選択としたのだろうな。そんなことを振り返って漠然と考えている。でもさぁ、僕はこの映画を見て実は『ルパン3世』を思い出してしまったのさ。何をどうやっても絶対につかまらない、なんてほんとにそっくり。『羊たちの沈黙』の脱走シーンなんてとてもリアルだったのに。
2001年4月某日
実は、『レッド・ドラゴン』と平行して読んでいたのが、宮部みゆきの『模倣犯(上下)』(小学館)だった。アメリカと日本と舞台は別なのだが、よくよく考えてみると同じような話なのであったような。幼少の頃の心の痛みといったらいいのだろうか。もちろん、だからといってすぐに犯罪に結びつくというわけではないのだろうが。
それにしてもこの『模倣犯』はとてつもない物語だった。よくもまあこんなに分厚い本がベストセラーになっているものだと関心してしまった。宮部みゆきというと『火車』を一番にあげたい僕としては、こうした現代社会を反映させた犯罪小説というのは、ずっと待っていた一冊だった。ほんとうに、力強さというものを感じさせられた。上巻に関してはなかなか読み進めなくて、手が疲れてしまったりしたのだが、下巻に進むとほぼ一日で読み終えてしまった。読み終えたときにはもう窓の外は明るくなっていた。こんなふうに本を読んだのはほんとにいつのこと以来だろうか。
この物語には何人かの主役といっていいような登場人物がいる。読者はそれぞれに感情移入して読むことができるかもしれない。いくつかの舞台の中で僕がいつも利用している駅が登場する。バスから電車へと乗り換えるという場面があるのだけど、バス停の前を通ると僕はついついこの物語に登場する兄と妹のことを思い出してしまい、少し悲しくなってしまう。
そういえば、外食のときに蕎麦屋さんに行く回数も多くなっているかもしれない。
2001年4月某日
外で飲んでの帰り道、駅から僕の部屋までほんの数分なのだけど、ついついコンビニとかに寄り道してしまうところ。アイスクリームでも食べたいなと思い、ローソンに行こうとしたら、吃驚。お店が無くなってしまっていた。とても悲しい気持ちになってしまった。まあ、確かにお客さんは入っていなかったもんなぁ。コンビニは近くに他にも何軒かあるので、不便になることはないのだけど。流行っていなくても、店長さんの笑顔がいいなぁというお店があったりするもんね。別に知り合いとか、何かを話すということではないけど、日常生活の一部みたいになっているところがあるし。
2001年4月某日
図書館で書棚を眺めていたら、岸本葉子の本があったので借りて読んでしまう。『もうすぐ私も四十歳』(小学館)ってタイトルも凄いよね(笑)。僕もそろそろ近くなってきているのだけど。
2001年4月某日
ハニフ・クレイシの『ぼくは静かに揺れ動く』という本を読む。これも図書館でぶらぶらしていたときに、なんとなく気になって手に取ってしまった本。外国の本って、かっこがいいんだよね。カバーとかなしで、電車の中で読んでいたような雰囲気。日本の本だとなかなかこうもいかない。なんでなんだろうね。
2001年4月某日
映画を見る。公開されたばかりの『ザ・メキシカン』だったのだけど、寝不足のためか、かなりウトウト状態だった。
2001年4月某日
田口ランディの『もう消費すら快楽じゃない彼女へ』(晶文社)を読む。いつもの通りのコラムなんかがいっぱい入っているのだけど、ついつい読ませてくれる。テレビのワイドショーとかでやっている社会の出来事について、「こんなふうに考えたりできるのか、なるほど」といった感じ。
2001年4月某日
徹夜して朝方からサッカー日本代表のゲーム(対スペイン戦)を見てしまう。当初の予定では、早く帰って早く寝て、早く起きて見るつもりだったのに、何でか飲んで終電で帰ってしまったんだよね。見ている途中だんたん眠くなってきた。もう少しでゲームも終わる、なんとか、最後まで見てから眠りにつこう。がんばろう。日本チームもがんばってくれ! と応援していたのに、僕が眠りにつく(用意をしていたのに)ほんの数分前に失点してしまった。なんだか、とても疲れてしまった。
2001年4月某日
池袋・ジュンク堂をとろとろと歩いていた。1階で雑誌を見て、エスカレーターで上のほうまで登って(ふうふう)、トイレに入ったりなんかして。でもって降りてきて、3階でうろうろする。
新刊の平積みされているところに、な、なんと角田光代の新刊が置いてあった。この人の本は図書館から借りまくって先日ようやく全作品をフォローしたばかり。この本は図書館ですぐ借りるのは難しいのかもしれない、なんてこのときふと思ってしまった。すぐ近くには江國香織の新作も置いてある(!)。こちらの方はところどころにイラストが入っていて、とってもいい感じだ。
うーん、とても悩んだ。角田光代の本は旅のエッセイだった。表紙には砂漠を歩く、角田光代本人の写真が。これまでの本に載っていた写真とは少しばかり印象が違っていたのだけど(笑)、でもでもなんといっても本人の写真だぁということでこの本を手にとってしまった。
本を片手に1階まで降りる。そうそう、このジュンク堂書店というのは、1階のカウンターでの支払いなのである。このシステムになってからそろそろふた月になろうとしているのに、僕は1階以外で本を買うのは初めてなのであった。実は、エスカレーターで降りる途中で「やっぱりこの本を買うのを止めようかな」と思ったのだった。基本的に僕は本を買わないことにしている。買うのはほんとうに好きな作家数人と文庫本と決めているのだ。こんなふうに自分に課した厳しいルールを破り1冊の本を買ってしまったなら、ズルズルと人生を滑り落ちてしまうように、僕の財布のお金がなくなってしまうような気がする。
しかし、1階に降りてから、もう一度3階へ本を返しにいく気力は僕にはなかった。いやぁ、さすがにジュンク堂はいい商売をしている。ふと手にとってしまった本を置いてある場所に返すということは、この8階もある広い広いフロアーでは、とってもめんどくさい。料金カウンターが一箇所しかないというのは、とてつもない戦略だったのか。
角田光代のこの新作は『恋愛旅人』(求龍堂)という。主に東南アジアを中心にした、主に一人旅に関しての、旅のエッセイである。角田光代は僕の注目の作家なのだけど、彼女の作品で特にいいなと思っているのがエッセイなので、購入のあと、すぐさまどんどんと読み入っている。
旅のいろいろな出会いとかが、いかにも角田光代らしく書かれてあって、とてもよい感じだ。ところで、このエッセイではビールを飲んでいることがあちこちで書かれている。1ページに一箇所くらいは、飲んでいるのではないだろうか(笑)。
2001年4月某日
なんだか『模倣犯』のことが気になっている。この本の中で、事件についてのルポを書くライターが登場する。ふとしたきっかけからこの事件に深く関わってくる。そんなことで、実際にあった事件のノンフィクションが読みたくなった。
清水潔『遺言 桶川ストーカー殺人事件の深層』(新潮社)という本なのだが、これは凄かった。
『模倣犯』はとても怖い小説だったのだが、どうしても創られたものだろうという気持ちがある。あまりにも残酷なことがいくつもあるからだ。しかし、世間で騒がれたこの本は現実の事件で、あまりにも残酷で、とてつもない悲しい話だった。
実は『模倣犯』と似ている部分もある。被害にあった女性が年齢的にも、何も罪もないほんとうにどこにでもいるような人だった。どうしてこんなに辛い目にあってしまったのだろうか。もうひとつの似ている側面として、マスコミとそこから情報を得る自分たちという存在も絡んでいるように思えた。
この本を読み終えて、「桶川ストーカー殺人事件」というものに対していかに自分が何も知らなかったかということがわかった。マスコミで言われたいたこととあまりにも違っているからだ。この事件は、この本の著者である清水潔の追及によって、真実が明らかにされ、犯人が捕まったといってもいい。警察はほとんどこの事件を無視し(たといってもいいだろう)、何もしなかったといってもいいだろう。こうした警察のいる社会に今自分たちが生きているのである。情けない現実である。
僕はこの本を図書館で見つけたのだけど、もっともっと読まれて欲しい本だ。この事件に対してのイメージというのがガラリと変わるだけでなく、どうしようもない現実に出会うのではないだろうか。
(2001.5.1)
DOLPHIN
HOTEL
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