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読書夜話2003年10月

空谷跫音 2003/10 #1


2003/11/16

◆ 部屋
 この読書夜話は久しぶりとなった。理由はあるのだけど、まあそういうことだ(笑)。映画館に映画を観に行く生活をしていないのと比例して、読書夜話に書く気持ちも萎えてしまうのかもしれない。とにかく、動くということをしなければ、新しいことは生まれてこないのだろう。
 そういえば、先日部屋の更新ということをしてしまった。もうこの部屋に4年も住んでしまったことになる。僕のキャリアとしては、かなり長い方になる。ひょっとしたら一番長いのだろうか。……ここで調べてみると、最長5年半というのがあった。まだ扶養されていた頃には最長が4年だったので、この部屋は僕の歴代2位の長さに突入したことが判明した。そろそろ引越しをしたい気持ちはあるが、なにせ近くによく行くお医者さんがあるし、お金はないし、本はいっぱい有るし、どうにも難しい。でも、住んでいるところを変えてリフレッシュするというのは、大切なことのようにも思える。僕は子供の頃に引越しを繰り返した生活をしていたもので、そうしたリフレッシュが合っているのかもしれない。
 でも、数日前に更新したばかりで、こんなことを考えても仕方が無いよなぁ(笑)。

■ 松居直『絵本の森へ』(日本エディターズスクール出版部)
 このひと月ばかりあまり本を読んでいない。まあ、数を読めばいいというものでもないが。僕の鞄の中には『絵本の森へ』という本が入っていて、少しずつ、けっこう噛み締めるように読んでいた。この本を読みながら、僕は子どもの頃のことを思い出す。絵本を読んだことがあっただろうか? 覚えていないだけのことかもしれない。多くの人は絵本を読んでいたのだろうか。
 この本はとても衝撃的だった。世の中には「良いモノ」という紹介が溢れている。例えば、子どもの頃に絵本を読んだならば、頭が良くなって……、なんて話があったりするかもしれない。けれど、この本の世界ではそうした考えは、あっさりと否定される。「喜び」こそが絵本の意味だと書かれている。楽しく時間を忘れ、絵本という森の中をさまよう。
 24冊の絵本についての解説が書かれている。どれも驚かされる。大人という生き物はついつい子どもの世界を幼稚だと考えてしまいがちである。しかし、そんなことはなかったのだ。子ども向けの絵本には、大人が感じることのできなくなった大切なものが詰まっている。松居直の解説の文章は、純文学の行間を読むことよりも深い内容のように僕には思えた。いくつかの絵本を、実際に読んでみたい。

■ 松居直『わたしの絵本論 0歳からの絵本』(国土社)
『絵本の森へ』という本は、多くの絵本についての解説が中心となって書かれている。しかし、この『わたしの絵本論』という本は、著者の絵本についての考えが、力いっぱいに書かれている。特に、子どもを育てるお母さん(お父さんもなのだろうけど)に向けての言葉のようだ。
 僕はこの松居直という人の名前を、ほんとうに最近知ったばかりだった。
 この人はどのくらい知られているのだろうか。今という時代は、教育に関して多くの問題が起こっている。悲しいくらいに。例えば、子どもが生まれたときに、この『わたしの絵本論』や『絵本の森へ』を、読んでもらったならば、この国は大きく変わっていくのではないだろうか。国がお祝いにプレゼントしてもいいと思う。もちろん、押し付けになってしまうというのも、問題があるのだろうけど。
 けれど、人が生きていく上での根本的なものがこの本には書かれているように思う。

「最近、幼児教育がなんとなく安定感をなしているように思えるのですが、その原因の一つに、幼児の言葉の貧しさ、言葉の体験の弱さがあるように思えてなりません。」(P198)
「ますます希薄になりつつある現代の人間関係を、もう一度子どもたちのために取りもどす役割をおっているものとして絵本をみてみようとおもいました。」(P222)
 本文から少し引用させてもらった。この本の初版は1981年1月15日である。22年以上も過ぎている……。驚き、いやどうしようもない寂しい気持ちになってしまった。

◆ カド
 神楽坂の会という謎の会合があり、僕は神楽坂の「カド」(http://www.haili.com/kado/)という店に行った。この街は不思議なところである。メインの通りからちょっと横道に入ると、ほんとうに普通の家が建っている。この「カド」という店、子どもの頃によく遊びに行ったオチアイ君の家に似ている。一応お店の名前は小さくあったのだけど、僕には「カド」とは読めなくてうろうろしていた。どう考えても、飲食店には見えない。
 靴を脱いで中へと入る。廊下があり、右手に台所、左手には茶の間、一番奥の部屋へと入る。この部屋にはソファーがあり、小さなテーブルがある。客層は若い人が多いようだった。そうだろう、飲食店だと思って入る人があまりいるとは思えない(笑)。でも、このお店よくテレビにも出る有名なところだという。
 料理はコースになっていて決まっている。少しずつ、和の料理が出てくる。楽しい。美味しい。店員さんも良い雰囲気。それにしてもこの店のインテリアは素晴らしい。ほんとうに、昔よくあった普通の家なのである。最近多くある古い家をベースとしたシャレた雰囲気と同じにしたくはない。ギリギリまで手を加えていないところの拘りが良いのである。ハリガネのハンガーも良かったり、トイレの手洗いも良かった。
 実は家に帰ってから気が付いたのだけど、この「カド」という店は前から行きたいと気になっていたところだった。「東京カフェマニア」(http://homepage3.nifty.com/cafemania/)で、この店をチェックしていた(http://homepage3.nifty.com/cafemania/01cafe/kgrz_kado.html)。また行きたい店である。
 帰り道、地下鉄のホームで携帯電話の番号を教えあっている男女のグループが目に入り、「若いなぁ」なんて思ってしまった。ちなみに、僕が一緒に飲んでいたグループのうちの一人はこのあとスーパーに葱を買いに消えていった。

■ ビデオ『紅夢』チャン・イーモウ監督
 チャン・イーモウ監督の初期の作品をようやく観ることができた。残りはあと2、3本である。
 コン・リーの魅力が全面的に出ている作品なのだけど、よくよく考えるとなんとも凄い話である。コン・リーは第4婦人という役柄。この家の主人が一緒の夜を過ごす妻の部屋の前に、赤い提灯が灯される。その赤い色がなんともむにゃむにゃなのだけど(笑)、なんともいいのである。だってね、この家の古いしきたりとはいえ、選ぶ方だって恥ずかしいと思うのだけど。そうしたことが、とてもとても厳粛に描かれているのであった。

◆ 秋刀魚を喰らう
 スーパーに行くと、どうにも秋刀魚が気になってしまう。なにより値段が安いし(78円)、酒の肴に最高だし。今年になっても何度か購入し、焼いて食べている。
 しかし、どうにも味がもうひとつ。ガスレンジのグリルで焼いているのだけど、これだとうまく焼けないように思うのだ。先日、炭火焼の店で食べた秋刀魚はとても美味しかった。ということで、炭火まではいかないけれど、ガス台に網を置いてそこで秋刀魚を焼くことにした。
 いやぁ、この秋刀魚は美味しそうに焼かれている。その焼き目がついていく様子を見ているのは楽しい。そして同時に僕の目に涙が溢れ、部屋は煙で充満してきた……(笑)。それにしても凄い煙だ。部屋に火災報知器があったならば、鳴ってしまうのではないだろうか。大根をおろし、僕はこの秋刀魚を食べた。美味しかったのだけど、煙はまだ消えない……。

◆ 新しい街と
 休日のお昼ご飯。何を食べようかと少し悩んだりする。でも、結局のところパンを食べることが多い。やっぱりご飯以外のものをたまには食べたいと思うし、麺類は夜が似合う。朝食にパンを食べればいいのだろうけど、休日の朝は遅いのであった。
 しかし、僕の住む街にもう一歩気に入ったパン屋さんがないのである。わざわざ休日に電車に乗ってパンを買うほどの元気はない。なにせ、休む日である。2件のパン屋さんのどちらにしようかというささやかな悩みであった。
 例えば新聞の広告に不動産の情報というものがよくある。新しいマンションや、ニュータウンと呼ばれるもの。近くに学校があったり、公園があったり、スーパーがあったり、なんてのが売り文句だ。ここに美味しいパン屋さんがあったらいいのに、と考える。一軒だけでなく、有名な店、若く希望に満ちた店など。
 生活する場所というのであれば、美味しいものがあってこそ、であるはず。

■ ビデオ『客途秋恨』アン・ホイ監督
 マギー・チャンがとても可愛い。でも、最初の髪の長いシーンが良かったのだけど(笑)。観ていて驚いてしまったのだけど、なんとこの映画、途中から舞台が日本へと変わる。別府らしいのだけど、日本のほんとうにのんびりとした景色が映し出される。定職屋さんとか、お祭りの場面とか。もちろん主人公のマギー・チャンは日本語がわからないのだけど、その姿がまたいいのであった。

◆ 野球の国際化
 一度もテレビを見ることは出来なかったけれど、アジア野球選手権はとても面白かったのではなかっただろうか。韓国戦の終った夜、あちこちのスポーツニュースで選手を見たが、もの凄くいい表情をしていた。日本がこれだけ本格的にプロを集めて試合に望んだのは初めてだと思うし、日本と韓国とのこれだけの真剣勝負というのも初めてだったのではないか。
 サッカーと比べるならば、その試合数とか何かと問題はあるのだろう。でも、こういう国際大会をもっと見てみたいと思ったのは僕だけではないと思うのだが。テレビの視聴率もかなり良かったみたいだ。
 大リーグも面白いけれど、世界中で野球という競技を広める意味でも、野球の国際大会というものをもっと考えてもらいたいものである。

◆ 白虎隊
 NHK「プロジェクトX」で白虎隊が特集されていた。少しの懐かしさを覚えた。僕が日本の歴史に接した入り口というのが、この白虎隊だった。小学校の5年生の頃だったろうか。家族で会津若松に旅行に行ったことがあった。そもそもがそんなに家族旅行などをする家ではなかったので、とても記憶に残っている。
 その日は雨だった。最初に野口英世記念館に行った。それから会津鶴ヶ城に行ったのだろうか。偶然のことだったのだが、ちょうどお祭りだった。記念館のようなところで、はじめて白虎隊のことを知った。自分とそんなに遠くない年齢の人達について。惹きつけるものがあったのだろう、時間を忘れてその展示物を見入っていた。
 白虎隊のことも記憶に残ったのだが、その日お昼に食べた「なめこ蕎麦」の美味しさが忘れられずにいる。蕎麦は手打ちで切られたばかりというもの。なめこ、なんて好きでもなんでもなかったのに、ほんとに美味かったのだ。
 白虎隊と会津の雨、そして、なめこ蕎麦、この3つは僕の中では繋がっているのである。

■ 岸本葉子著『がんから始まる』(晶文社)
 けっこう緊張しながらこの本を読み始めた。けれど、楽しく読ませるようにも書かれている。入院生活などは、ある意味でレストランでの食事の文章と同じようにも感じられた。でも考えてみるならば、入院というものも生活なのだろう。岸本葉子さんという人が、ふつうでいることが何よりも嬉しい。この本を読んで思ったことだ。
 実は僕はこの本を読んでいる頃に体調を悪くしてしまった。医者に行って薬を飲んだりしているうちに、これからの自分の人生のようなものをちらりと考えたりするようにもなった。具体的に何がというわけではないが、人生というものが限られているものだということに、少しばかり気が付いたということだろうか。
 あとがきを何度か読み返している。そして、自分のこれからの実現したいことを考えている。

◆ お寺をみる
 このところ、「五木寛之の百寺巡礼」(http://www.tv-asahi.co.jp/story/hyakuji/index.html)という番組を見るようになっている。お寺なんて別に興味を持った人間ではなかったのに。そんなに強く見たい気持ちがあるわけでもない。でもどうしてだろう。見たくなってしまうようになった。
 だんだんと年齢を重ねるにつれて好みというものが変わっていくのだろうか。

■ 田邊園子著『伝説の編集者 坂本一亀とその時代』(作品社)
 興味深く僕はこの本を読んだ。坂本一亀が編集者として世に送り出した本、『仮面の告白』『真空地帯』『青年の環』など、僕は読んでいない。けれど、編集者という存在の大きさを感じ、彼がいなかったらこうした作家はどうなっていたのだろうかと思ったりもした。本というのは、何も作家一人だけで生まれたわけではないのだろう。
 おもしろい(と言っては失礼なのだが)のは、これだけ存在感の大きな人だったのに関わらず、実際に河出書房「文藝」の編集長であったのは2年足らずであった。問題のある人だったようでもある。
 彼の息子のこともちらりちらりと書かれている。野間宏『真空地帯』のゲラ刷りに取り組んでいるさなかに、一人っ子がこの世に生まれた。その子が坂本龍一なのであった。

◆ 舞台
 NODA・MAP(http://www.nodamap.com/)の「オイル」を観た。とは言ってもテレビ放送でであったが。実は僕はかつて劇団夢の遊眠社の舞台を生で観たこともあった。よくわからなかったけど(笑)。でも、それでも舞台はいい。生で眼の前でやっているからいいのだろう。あの、同じ時間、同じ空間の中にいる感覚というのは、本当に凄いものだと思う。もう一度同じものを観ることはできないのだから。
 ということで、この「オイル」はよくわからなかった(笑)。実際の舞台を観たならば、全く違った感想を持ったのだろう。松たか子の舞台は一度ちゃんと観てみたい。

◆ 誇りと風格
 雑誌の整理をしていた。やや後ろめたい気持ちを持ちながら、雑誌の分解をしていた。本当はずっと長く、そのままの形で所有していたいのだけど、増えてしまう雑誌と本を見て、整理して長く所有することを選択したのだった。
「アミューズ」という雑誌の1999年8月25日号の表紙と、「藤沢周平小説舞台を歩く」という特集を切り取った。最後にと思い、他のページをぱらぱらと捲っていた。老舗喫茶の特集があり、とある店のところで僕の手は止まってしまった。日比谷にある「純喫茶 日比谷」という店が載っていた。特徴のある概観、広い店内、2、3度僕は入ったことがあった。
 この店は今はない。今年のいつだったろうか。日比谷に映画を観に行ったときに、閉店の張り紙を見つけてしまった。その頃の僕は、ほぼ毎週のように日比谷に出かけていた。すぐに工事があり、その建物の姿は消えてしまった。あっという間だった。
 実は、ドルフィンホテルのオフでも2次会として入ったことがあったのだ。この喫茶店があって、一人のときでも入っていたかと問われたならば、、たぶん入らないと思う。時代の流れと言えば、それまで、なんとも勝手な言い草だと思ったりもする。でも、少しの寂しさがあった。
 雑誌の記事をもう一度読み返した。「誇りと風格を守る喫茶店」と書いてあった。創業は1962年、僕の生まれた年だった。



有為転変 2003/10 #2


2003/11/26

◆ 東京都立中央図書館
 図書館という場所が気になる。ということで前から気になっていた「東京都立中央図書館」(http://www.library.metro.tokyo.jp/12/index.html)に行ってみた。景色も良く、とてもいいところだよ、という噂はよく聞いていたのだった。
 生まれて初めて広尾駅で降りる。僕のような田舎モンにはずっと縁がないと思っていた街である(笑)。駅から徒歩8分と案内の地図には書かれていたが、すこし歩くと有栖川宮記念公園があった。とれにしても途中のお店も、なにか雰囲気が違う(笑)。シャレた感じの店に見えてしまうのは僕の錯覚だろうか。
 有栖川宮記念公園は、入り口付近に池がある。そんなに大きくはないけれど、この都会の真ん中にこういう場所があるのは嬉しい。そして、緩やかな坂を歩いていく。考えてみると、高校の頃にあった街の図書館も、坂を歩いて行く公園の中にあった。
 ブランコや滑り台があり、小さな子供たちが遊んでいる。サッカーと野球も行なわれている。そんな中を歩いて、都立中央図書館へと入った。
 受付のところで、入館証を渡される。近所にある図書館とは全く違うことを実感させられる。少しキンチョウ(笑)。荷物をロッカーに入れなければならないという。100円玉を持っていなかった僕はまた受付に戻り、代わりのコインを受け取る。行き慣れている人にとっては、特に何でもないことかもしれないけど、おろおろしながら、なんとか中に入ることができた。なにせ5階立てのビルなので、けっこう広い。とりあえずは3階の人文科学室でうろうろする。机は多くあり、何かの調べものをしている人が多いように思えた。まあ、そのための図書館だと言われそうだけど。奥の方には、パソコンを使える机もあった。ちゃんと電源が取れるようになっているのである。
 特に読みたいと思っていた本も、調べることもなかったので、意味も無くうろうろしていた(笑)。そして5階の食堂でご飯を食べる。多くのメニューがあって、嬉しい。定番と言えるかもしれないけど、カレーライスを食べた。
 もし、この図書館が歩いていけるところにあったならば、と思ったりもする。ただ、ツッカケを履いて行くような雰囲気ではないような気がするし(笑)、ちょっと敷居が高いような……。
 でも、周りの雰囲気も含めてほんとうにいいところなので、お勧めの場所であることは確か。広さは仕方が無いとして、よい雰囲気の図書館が多くあってこそ、シアワセな生活というものがあるのだろう。

◆ ドラマ人間模様
 数ヶ月前のことになるが、NHK衛星第2で放送された「ドラマ人間模様」の「事件」と「続々・事件〜月の景色〜」(なんと佐藤浩市デビュー作!)を観た。ビデオテープが眠っていたのであった。すやすや。これが面白い。なんで眠らせてしまったのだろうか、なんて思ってしまったほど。大岡昌平の原作も読んでみたいし、このシリーズの他の作品も観てみたくなった。調べてみると、あと3本ほどの作品があるみたい。
 よく考えてみると、裁判のノンフィクション物という感じだろうか。ドラマのほとんどは法廷での場面、裁判が進んでいく中で事件が明らかになっていく。裁判の場面などはとても地味である。「アリー・myラブ」とは全く違っている。でも、この地味さがNHKらしさとマッチしていて、すごく良かったのだ。映画だったら、重すぎるようだし、民放でもちょっと違う。あくまでもNHKだからこそのドラマのように思えた。

◆ 残日録
 そうそう、思い出した。NHK衛星第2でときどき少し前の番組が放送されるのだけど、『三屋清左衛門残日録』があった。以前放送されたときには、ほんの数回した見ていなかったので、この再放送は至福の時だった。仲代達矢の存在感が、ほんとうに安心させてくれた。藤沢周平の作品はいくつかドラマになっているが、僕はこの『三屋清左衛門残日録』がとっても好きである。「沸井」に行きたい……。ほんとうに大切なものは、長くは続かないのだろうか。「残日録」という言葉の意味が、これから先、少しずつ変わっていくのだろうと感じている。

■ ビデオ『心臓を貫かれて』アニエスカ・ホランド監督 [WOWOW]
 村上春樹訳の本を読んだことがあったので、期待を持ってこの作品を観た。本と映画とは違うけれど、この話を映像にするのは難しいのだろう、そんなことを考えてしまった。たぶん、原作を読んでなくて映画を観た人はよくわからなかったのではないだろうか(笑)。でも、原作本はとても長い長い話だった。読むのにけっこう苦労したし。この映画は短い時間の中で、ひとつのテーマを持って効果的に捉えていたのだとは思うが。それでも、僕には原作のイメージが強すぎたわけであった。

◆ 24時間営業のスーパー
 久しぶりに友人の家に行ったとき、その駅前のスーパーに変化があったことに気が付いた。なんと24時間営業へと変わっていたのであった。「いやあ、とても便利になったんだよ」と友人は言う。コンビニではなく、大きなスーパーなのである。確かに。夜遅く帰ったときにも、葱や鮭の切り身を買うのに困らない。何と言う幸せなことか。24時間をより有効に活用することができる……。
 数年前の僕だったならば、疑う余地もなくこの便利さに拍手をしただろう。しかし、はたして本当に幸せなことなのだろうか。24時間開いているスーパーを使わなければならないような生活というのは、当たり前のことなのだろうか。通常の労働時間、出勤形態というものを考えるならば、夜の7時か8時には家に帰れるはずである。せめてこのくらいの時間にスーパーで買い物をして、夕食を食べる生活というのが、幸せというものなのではないだろうか。時には遅くなることだってある。しかし、たまに葱を買い忘れても特に困ったりはしない。
 知らないうちに、便利であることが、実は大きな不幸の中にいるだけだったりしているのかもしれない。

■ 安保徹著『免疫革命』(講談社インターナショナル)
 岸本葉子の『がんから始まる』の影響もあって、書店で本を眺めているとどうしても「がん」という名前が気になっている。この本の帯には「ガンは特別な病気ではありません。」と書かれている。池袋のリブロでは、かなり目立つ感じでこの本が置かれていて、ついつい買ってしまったのであった。
 とても面白く読めたことは確か。いたずらに西洋医学を否定するのではなく、東洋医学も西洋医学も良いところをもっと取り入れていきましょう、みたいな感じが違和感なくこちらに伝わってきたように思う。
 それにしても、驚かされることが多い。なにせ、「転移はガンが治るサイン」(P123)なんてことが書かれているのである。もちろん、いろいろな感想があるのだとは思う。でも、ガンの原因が精神的なものだという話は、興味深いものだった。
 この本を読んで僕が何を一番思ったかというと、バランスということである。善と悪、光と影、長所と短所、昼と夜、なんでもいいのだけど、こうした相反すると思われるものがある。どっちがいいとか悪いとかではなく、両者のバランスによって、よい状態が保たれていると、僕は思ったりしている。身体の状態というのも、同じように、バランスが崩れることで変化するのかもしれない。漠然とだが、いろいろなことを考えている。
 ところでこの本では高血圧についても触れられている。「高血圧の治療は、薬を飲むことではなく、仕事を減らすことが大切です。」(P206)と書かれていた。仕事を減らすって?(笑) 減らしたってストレスは変わらないと思うのだけど……。やれやれ。

◆ なまえ
 先日のことなのだが、僕の名前を間違えられてしまった。それが続けてのことだったので、ちょっとため息をついてしまったところだ。そんなに間違い易い名前ではないと思うのだが、決まって別の名前に呼ばれることがある。名詞を渡してあっても、一度訂正しても、間違われるのである。
 実はこうしたことは子供の頃からである。僕の存在感がそれだけ薄いということなのだろうか。
 僕だって、他の人の名前を間違えたことはある。よって、強く非難しようとは思わない。でも、たまには落ち込んでしまうこともあるのだ。
 ということで、「名前悩み倶楽部(NNC)」というのを結成しようと思います。匿名での参加だと、会話にならないのだね(笑)。

■ ビデオ『駅 STATION』降旗康男監督
 高倉健主演の映画をテレビで観た。日本アカデミー賞で作品賞などを受賞するなど、かなり評価が高かったみたい。
 それにしても、これほど演歌の似合う映画というのも珍しいのではないだろうか。居酒屋で酒を飲み、ついつい親しくなっていく場面は、とっても良かった。

◆ 極上の休日
 最近僕が面白いと思っているテレビ番組は「極上の休日」(http://www.tv-tokyo.co.jp/kyujitsu/)である。面白いと言っても、まだ1回しか見てないのだけど(笑)、この回が凄かったのである。僕が見たのは第3回の熊川哲也の特集。キザな奴だなぁと思っていたけど、彼の私生活を見て、完全に参ってしまった。降参である。ダンサーとして有名なのはわかっていたけど、趣味がフェラーリに乗ることなのだ。2台も持っている。欲しい。人生の成功がお金だとは思わないけど、フェラーリを持つことだといわれたならば、僕は納得してしまうだろう。
 フェラーリだけではない。3000坪の土地も所有している。今は何もない自然の土地。カッコいい。こういう人物がいるんだね。

■ 坂東眞砂子著『13のエロチカ』(角川文庫)
 実は何を隠そう僕は坂東眞砂子なのであった。ずっと応援して読んでいて、直木賞を取るまでになった。たまたま文庫売り場で見かけたこの本。そういえば、彼女の作品はご無沙汰だったなぁと、久しぶりに読んでみた。
 まあ、タイトルの通りの本と言っていいのかな(笑)。ある意味で、エロチカというテーマに拘って、その瞬間をリアルに書かれているよう。はっきり言ってエッチなのだ(笑)。たぶん作者は女性に読んで欲しいと思っているのではないだろうか。男にはわからない感覚が描かれているのかもしれない。

◆ 将来の不安
 このところあまりビデオを観ていない。まあ、本も読まないし、なーんにもしていないだけなのだが(笑)。しかし、テレビはよく利用している。WOWOWにも入っているわけで無駄にしないためにも、映画は積極的にビデオに録画している。3倍速で撮るのでテープ1本に、2本から3本の映画が入る。実はこうやって録画されたテープが、すでに20本ほどある。いや25本、もっとあるかな……。さてさて、冷静になって考えてみたい。いつ僕はこのテープを観るのだろうか。そもそも普段のテレビ番組を録画したものが、10本ほどあるのだ。まるでどこかの国の財政問題のように、赤字が膨らんでいるだけのように思える。年金がちゃんと支払われるのか疑問があるのと同じように、このテープはどうなるのだろうかと、不安になったりしているのであった。

■ ビデオ『回路』黒沢清監督
 僕は基本的に怖い映画は苦手である。夜眠れなくなったら、とついつい考えてしまう。なんということだ、この映画はとても怖い映像があった。部屋の奥の方に得体の知れない……。どこかでこうした場面にいたことがあったような。すぐに忘れることにしたいと思っているのであった(笑)。

◆ ドラマの楽しみ
 今シーズン、テレビドラマはあまり見ていない。まあ、この数年しだいに見なくなっているだけのことだが。それでも、毎週楽しみにしているドラマがある。TBS日曜日夜の『末っ子長男姉三人』だ。これがドラマらしく、楽しさに満ちている。難しいことを考えるのでもなく、笑えて、それでいてシミジミとできる。あのお姉さま達の自分勝手なところがすっごくリアルだし(笑)。最近のドラマの中では出演者も充実していて、かなりレベルも高い作品となっているのではなかろうか。
 それにしても、原田知世はいつの間にか大人の女性になっていた。キレイでとても良いのだけど。どうしても僕には『時をかける少女』のイメージが強かったもので。

■ 菅谷明子著『未来をつくる図書館 −ニューヨークからの報告−』(岩波新書)
 帯には「え、これが図書館?」と書かれている。ニューヨーク公共図書館のことが書かれているのだけど、確かに日本では考えられないような図書館の姿があった。単に、どのような図書館かという紹介だけでなく、どのように運営されているかなど、その背景となるところを面白く読んだ。
 何よりも驚かされるのは、スタッフも、利用する人も、誇りに満ちているように思えたことだ。図書館を通して多くのことを学び、富のある人は、こうした図書館を育てようとしている。図書館はただ単に、本を読むだけの場所ではなく、人生と共にある存在という感じなのである。
 少しばかり、本を読むというシンプルが楽しみのようなものが書かれていないことが残念だったけど、こうした図書館があるというのは大きな発見だった。
 日本にもこんな図書館があったなら。強くそう思った。国や地方自治体が運営するのではない、「公共」の図書館があったら、日本という社会もいくらか変わっていくのではないだろうか。
 著者は「進化する図書館の会」(http://fleamarket.shohyo.co.jp/sinka-l/)の運営委員もやっている。注目していきたい。

◆ 村上春樹著『村上春樹全作品1990-2000 7 約束された場所で 村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(講談社)
 いつもの通り、ぜんぶを読み返すことはしていないが、最後の「解題」を読んだ。第2期の作品集はこれで最後となった。村上春樹を読み始めて20年弱くらいだろうか。新作はだいたい全部読んでいるし、こうやって全集も買ったわけで、感慨深いものがあった(まあ少しだけど)。
 第3期の村上春樹全作品が出るのはやはり10年後くらいになるのかな。その頃、どんな本棚にこの本は収まることになるのだろうか。



露往霜来 2003/10 #3


2003/12/1

◆ 夢と現実
 12月になってしまった。この読書夜話はまだ10月なわけで(笑)、なんともフォローのしようがないのだけど。この時期には毎年同じようなことを言っているような気がする。早いものだねぇと言い、年賀状について考え、それなりに一年を振り返る準備をする。少しため息をついたりもする。
 駅前の宝くじ売り場は長い行列となっている。普段は買ったりしないのだけど、僕も買いたいな、と思ったりしている。でも宝くじが当たったとしたら、どうするのだろうか。とりあえずは、会社へ無理して行くこともないのだろうな、というくらいしか思いつかない。マンションも欲しいけど、今の部屋でもそれなりに満足している。僕にだって夢はある。でも、それはお金があれば出来るものではないし。そんなことを考えて、うろうろしている。
 寒さを避けるために、地下の通路を歩こうとする。でも、地下の世界もやっぱり寂しい景色が漂っていたりする。

◆ あれは誰だ
 何十年前になるだろうか(と書いている自分が悲しい……)、何かの雑誌にデビルマンの映画化についての話がでていた。計画があったのかどうかはよくわからない。でも、実現は難しいと思わずにはいられなかった。不動明を演じる役者がいたとしても、飛鳥了を誰がやるのか。
 僕の中にある、マンガ(と言っていいのかわからないけど)のランキングではダントツの1位がこの「デビルマン」である。アニメで放送されていたものではない(笑)。僕が子供の頃には、いわゆるヒーローもののテレビ番組がいくつもあった。ウルトラマン、キカイダー、ゲッターロボ、レッドバロン、キャシャーン……。とにかく、そうしたものを見て、正義というものを考え僕は育ったのである。その中でもデビルマンは衝撃は特別だったのだ。
 そのデビルマンが、実写で映画(http://www.devilmanthemovie.jp/)になるのである。どうしよう。別に何をするわけでもないし、楽しみというわけでもないけど。
 出演者を見るとあまり期待できないかなぁ……。でもシレーヌ役の冨永愛はナイスだね。

■ ビデオ『パルムの僧院』クリスチャン・ジャック監督 [NHK-BS2]
 1947年のモノクロ映画。長い長い映画だった。スタンダールが原作なのかと、しみじみしながら見ていた。恋愛とは辛いものなのだね。

◆ ストーリーのあるモノと暮らし
 雑誌「ku:nel」(http://kunel.magazine.co.jp/)の創刊2号が出た。きんぴらの写真は料理雑誌にはなかったような雰囲気。美味しそう。後ろの方の頁にあるさりげない目玉焼きの写真もたまらなくいい。2個の黄身がなんと肩の凝らない贅沢さだと思えるのだ。
 あちこちと良いコーナーはあるのだが、僕が何よりも好きなのは弁当と部屋について。「エブリディ・マイ弁当」というコーナーは本当に楽しい。この号は男性の弁当が登場している。そして「高橋ヨーコの旅して集めて作った部屋」を見て、大きなテレビが欲しいと思い悩む。
 コーヒーを飲みながら、僕はこの雑誌をパラパラとめくっているのである。

◆ 男たちの食宴
 このところテレビについての話題が多い。まあ、出不精になっているので結果としてそうなっているのだが、面白くないものを紹介しているわけではない。最近のお気に入りのひとつで、あまり知られていないだろう番組がこの「男たちの食宴」(http://www.bs-asahi.co.jp/shokuen/index.html)である。
 まだ数回した見たことはない。BS朝日での番組だったのだが、日曜日の朝6時半から地上波のテレビ朝日でも放送されていて、見るようになったのである。ただ、その時間に見ているわけではない(笑)。なにせ日曜日の早朝、ビデオに撮りあとで見る。
 主人の石川次郎がゲストと、美味しいものを食べながら静かに語り合うのである。マイナーな番組らしい、その会話の雰囲気がいいのである。タイトルの通り、ゲストは男性である。女性が入る雰囲気はない(笑)。そこがいいのだ。

◆ 1回だけの関係
 ついに僕はこの関係を結んでしまった。考えたすぎのことだった。気持ちの上でも、金銭的な点でも、こうした方がいい付き合いになると思ったのだ。、最初の関係は2週間だった。その後は1箇月。これまで以上に優しくしようと気をつかいながら僕は指先を触れた。
 たった1回だけでも別れるときにはものすごく心が痛んだ。捨ててしまっていいのだろうか。ついさっきまで僕と一緒になっていたというのに。
 初めて付けた1日使い捨てのコンタクトはワンデーアクエアというものだった。とりあえず、ひと月分を購入してみた。これまでの1箇月の場合、フルに使用しているわけではなかったので、何かもったいないような気がしていた。付けたい時にだけ付ける、この1日使い捨ての方が得のようにも思えたのだが、計算して比較してみると、やっぱりそれなりの金額だったのかもしれない。難しいものだと、つくづく思う。

■ ビデオ『突入せよ!「あさま山荘」事件』原田眞人監督http://www.toei.co.jp/asamasansou/)[WOWOW]
 正直に言って観る前に少し抵抗があった。何やら重そうなテーマなんじゃないかと。でも、僕の予想とはちょっと違っていた。犯人サイドの話はほとんど出てこない。警察のサイドがノンフィクションのように、淡淡と描かれていく。主人公の家族の場面などがとてもリアルに感じられた。そう、階級の問題なんかも出てくる。考えてみれば、それなりの階級があって、命令権を与えられないような人って、こういうときは何をしているのだろうか。
 それにしても、僕くらいの年齢の人間にとっては、あさま山荘事件というのはかなりリアルな思い出である。微かなものだけど、取り壊される場面がテレビでリアルタイムで放送されていること、それを見ている自分。確か小学校の低学年だったろうか。

◆ 混戦
 ここ最近のJリーグは最終節まで縺れる混戦が多いようである。しかししかし、短期決戦のリーグなわけである。どう考えても混戦になって当たり前なのだと思うのだが。混戦というのは、たまにあってこそ価値があるのではないか。毎回毎回、混戦という言葉が出るようであれば、それはもう混戦とは言えないのではないか。ワールドカップの1次リーグを誰も混戦とは言わないはずである。まあ、僕が言わなくてもそろそろ1シーズン制に移行する雰囲気になっているみたいだが。

◆ 情けないお手紙
 手紙が届いた。手紙といっても、手書きのものではない。ダイレクトメールではないが、とある会社からのお知らせだった。数ヶ月前に光ファイバーを導入しようと申し込みをしていた。キャンペーンということで、1,000円の全国百貨店共通商品券も貰っていた。よくよく考えてみると今年の1月のことなので、もう10カ月以上も前のことだ。一度問い合わせの電話をしたことがあったが、なんとも責任感のない対応だった。まあ、新しいプロジェクトのようなものだ。僕も少しは大人の対応をしようと、連絡が入るのを静かに待っていた。少しは大人になったつもりだった。
 それがお断りの知らせである。理由は「最寄りの電柱に光ファイバケーブルを共架することが困難ため。」と書かれてあった。断りの連絡なのだから、誤字のないようにチェックするのが大人のお仕事だと思うのだけど……。
 やれやれ。
 そう考えても10カ月以上もほっとかれる理由にはなっていないと思う。新しいパソコンを購入して、待っていたのに。
 また僕の血圧は上がってしまうのだろうな(笑)。

■ ジミー<幾米>作・絵『Sound of Colors 地下鉄』(小学館)
 絵本を買ってしまった。買おうと予定していたわけではない。ただ単に、書店をウロウロしていて眼に入った本だった。パラパラをめくって、買わずにはいられなくなった。地下鉄の電車の中で、僕はこの絵本の世界にひたっていた。
 盲目の少女が歩いている。地下鉄の中を、あちこちの世界を。不思議な絵というのだろうか、とても惹き付けられる。一行だけの文章も素晴らしい。
 ジミーという人は台湾在住の絵本作家。まだ1999年に最初の作品が発表されたばかり。台湾で一大絵本ブームが巻き起こったということだ。
 日本ではまだあまり知られていないのだろうか。まさに、大人のための絵本なのだろう。

<岩館真理子小特集>

■ 岩館真理子『五番街を歩こう』(集英社マーガレットコミックス)
 大人の恋愛というのだろうか。そんなに強く激しいという雰囲気はないのだけど、いいのだ。
 僕の場合、姉がいた関係なのだろう、マーガレットとかフレンズという言葉には敏感だったりしている(笑)。こうした女性関係のものは、ずっと嫌いだったのだけど、ときどきは見ていたようだ。あまり、眼がキラキラ輝いているような絵は苦手だったのだが、落ち着いた雰囲気の絵は、けっこう好きなのだろうと思う。岩館真理子の絵というのは、僕にとってとても落ち着くものだ。少なめの台詞もいい。静かだけれど、力強いものが描かれているように、僕には感じられる。

■ 岩館真理子『遠い星をかぞえて』(集英社マーガレットコミックス)
 これはすごく面白かった。家族のこと、恋愛のこと、胸の奥の方に静かに響いてくる。4編の連作になっているのだけど、読み終えたとき、続きを読みたくでどうしようもない気持ちになった。

■ 岩館真理子『薔薇のほお』(集英社ヤングユーコミックス)
「薔薇のほお」「ヴィヴィアンの赤い爪」「黄昏」「世界で1番」いくつかの短編が入っている。こういう少女漫画というのは、僕には純文学と同じように感じられてしまう。行間を味わうように、岩館真理子の絵は楽しませてくれる。じっと同じページを見ていても飽きなかったりする。

■ 岩館真理子『岩館真理子自選集・5 森子物語』(集英社文庫)
 よく考えてみると、この物語は少女が大人になっていく過程を描かれているのだろうか。森子の表情が、少しずつ変わってきているのかもしれない。家の中のごたごたとか、悩んだり怒ったりしている姿が、とても愛らしい。

■ 岩館真理子『岩館真理子自選集・3 えんじぇる』(集英社文庫)
 この「えんじぇる」というタイトルは覚えているので、ずっと前に読んだことがあるのだろう。とても好きな物語である。人は、完全じゃないし、いろいろなすれ違いのようなものはあるけれど。そうしたギリギリのところで、いいものだなぁと思えたりする。ちらりちらりと読み返しているのだけど、やっぱりいいなぁと感じた。



複雑多岐 2003/10 #4


2003/12/8

◆ 年賀状
 12月がどんどん進んでいく。まだ年賀状も買っていない。はたして今の僕には年賀状を書く(印刷する)元気があるのだろうか、なんて思ってしまう。世の中には年賀状を出さない主義なんだ、という人もいる。正直なところ、僕もそうしようと思ったこともあった。でもまあ、そもそも友達というか年賀状を出すような人が少なかったもので、たまぁ〜のお便りという感じで毎年少しの年賀状を出している。昨年というか、今年の年賀状は過去最高の出来栄えだと自分では思っているものが出来た。これでも僕は中学生の頃までは美術が得意科目だったのである(笑)。今度の年賀状はどうしようか。まだ考えていない。3カ月くらい考えてから作っても仕方が無いわけで、今月中くらいには何とか考えなければいけないわけだが……。

■ とよだともゆき著『「がんばらない」宣言 スローライフのすすめ』(九天社)
 スローライフという言葉をこのところよく耳にする。なんとなくはわからなくもないが、よくはわからない(笑)。この本には、スローな生き方、こういうことが大切なのではないか、ということが多く書かれていた。スローネット(http://www.slownet.ne.jp/)というのもあるのだね。ふむふむ。
 あとがきにとても興味深い話があった。「お忙しいところ恐れ入りますが」というのは、一般的な依頼の言葉だろう。ところが、「京都では忙しいことはマイナスやねん。忙しいっていうのは、ゆとりがないみたい」という返事があったのだという。

 やや話は変わるが、「がんばらない」ということについては僕も10年以上も前から実践していた。このドルフィンホテルである。ゆっくりと進もう、それがこのホテルの基本姿勢で、ずっと続けてきている。その当時はスローライフなんて言葉はなかった(笑)。「ようやく、ドルフィンホテルに時代が追いついてきたな」なーんて勝手に思っているのだけど……。

◆ 行商おばさん
 テレビのノンフィクション番組で、行商のおばさんが取り上げられていた。あの電車の中に、でっかり荷物を持ち込んでくるおばさん達である。今でも、たまに電車の中で出くわすことがある。以前、千葉の方に住んでいたときの早朝はかなり多くの行商の人を見たことがあった。
 謎だった。あの大きな荷物の中にはどんなものが入っているのか。彼女たちは、どんなふうにその荷物を積め、どこで売ってしまうのか……。そうした長年の素朴な謎が、この番組を見ることでいくらか解けてきた。一軒一軒、まわって野菜を届けていたのである。嬉しいという言葉をもらい、行商という仕事を続けている。戦後の辛い時代を乗り越えてきた人生……。あの大きな荷物には、予想も出来ないような大きなものが入っているように感じた。

◆ ふぐとの遭遇
 生まれて初めて「ふぐ」のコース料理を食べた。玄品というお店(http://www.tettiri.com/)、場所は神楽坂である。なんだかリッチな雰囲気ではないか(笑)。
 ふぐの産地や大阪などでは、よく知られた食べ物なのかもしれない。高級で、美味しい、そうしたイメージだ。でも、ふぐというものにこれまで縁のなかった生活をしてきた僕にとっては、ドキドキの食事となった。
 最初に皮刺しというものが出てくる。次に泳ぎてっさ、芸術的なお刺身である。おおお、これがフグというものかと、しっかり噛み締める。そして、ぶつさしを食べる。お酒は日本酒をちびりちびりと。そうそう、とらふぐ唐揚というのが出てきたのだ。これがなんとも言えない美味しさ。あっさりしていて、ジューシーで、やさしい味。この日のMVPだった。そして主役となる、泳ぎてっちりという、ふぐ鍋の登場。驚いたのだけど、紙の鍋で食べるのだ。これはオシャレというか、見た目にも嬉しいものだった。あれま、切り身のふぐは動いているぞ。最後には雑炊で食べる。
 けっこうお腹も膨らんでしまった。この店に2時間半いたのだけど、なんと短い時間だったことか。感覚的には1時間もしないで全部の料理が出てきたみたいだった。とにかく、初めて食べる料理ばかりで、フムフムという驚きだったのだけど、たまにはこういう食事も楽しいものだと感じたのだった。

■ ビデオ『男はつらいよ・寅次郎サラダ記念日』山田洋次監督 [テレビ東京]
 数ヶ月に1回は『男はつらいよ』の映画を観たいものだと思う。それはたまに温泉に入るような感覚と似ているのではないだろうか。とにかく、ホッとするのだ。それにしても驚いたのは三田寛子ちゃん。なんとこの映画では大学生の役なのだ。若い!可愛い!(笑)。1988年の作品なので、15年も月日が経ってしまっていたのか。

◆ 新しいソフト
 パソコンのソフトを買ってしまった。「ホームページビルダー8」である。ホームページ作成ソフトは現在、「Dreamweaver 4」を使っている。本当はそのヴァージョンアップ版を買おうと思っていたのだが、ついつい買ってしまったのであった。どうしてかは、よくわかっていない(笑)。値段が安かったというのと、これまでの使いにくいところが頭に浮かんで、新しいチャレンジをしようと考えたようだ。ただ、購入といってもさくらやカードを使ったので、実質的な金銭は0円である。
 でもなぁ、ホームページビルダーを使っているよりも、Dreamweaverを使っているウェブサイトの方が、クールなイメージがあるのだよな……。
 しかし、このソフトはまだ使われていない。使い方がよくわからないのだ(笑)。単に僕の覚え方が悪いだけの話なのだけど。とりあえず、今回の読書夜話は前のソフトで作っている。まあ、大したことはやっていないが。そのうち、この最新ソフトを使って、もう少しカッコいいデザインにしたいと思っている。

■ 映画『女はみんな生きている』コリーヌ・セロー監督http://onna-minna.jp/
 久しぶりに映画を観てきた。とにかく久しぶりなので、できるだけ元気になれるようなものを観ようと思って映画館へと向かった。正直に言うと、ちょうどタイミングの良い上映時間のものを観たのだけど(笑)。
 本編の前に予告編を観て、なんだか嬉しくなった。やっぱりテレビ画面で観るのとは違うのだと、改めて感激。数本の予告編を観るだけでお腹いっぱいという感じだった。ちなみにこの予告編でぜひ観たいと思ったのは、韓国映画の『悪い女』、ドン・ジエを見てみたい『最後の恋,初めての恋』、なんだかよくわからないけど凄く面白そうな『フル・フロンタル』など。
 さて、この映画も楽しく観ることができた。なんといっても、平凡な主婦エレーヌを演じるカトリーヌ・フロがとてもいい! 部屋の様子とか、服装とか、ちょっとした仕草とか。そうした特別でないようなことが、とても魅力的なのであった。
 ところでこの物語、前半と後半とではちょっと違った雰囲気(笑)。それはそれで面白いところではあるのだけど……。でも、このタイトルのように、女性が元気だなと感じることができる楽しい映画だった。

◆ 恍惚と不安
 どうしたことなのだろうか、僕の心を深く深く燻るような映画の撮影が進んでいる。デビルマンもそうなのだが、新造人間キャシャーンはまた違った意味で大きな存在である。デビルマンがセ・リーグだとしたならば、キャシャーンはパ・リーグというようなものだった。キャシャーンというアニメ番組を見ていたときには、そんなに楽しみにしていたわけではなかった。勉強しろ!と親に言われて、テレビを消されたこともあったが、それほど残念にも思わなかったと思う。けれど、何だかよくわからないけど、キャシャーンという存在は僕の胸の中に残っているのである。
 たぶん、今のワカモノの人達も、ウルトラマンや仮面ライダーを知っていても、キャシャーンを知らない人は多いのではないだろうか。
 来年のGW、新造人間キャシャーンが『CASSHERN』(http://www.casshern.com/)として実写の映画として蘇るのだと言う。監督は、むにゃむにゃ(笑)。どんな映画になるのだろうか。かなり不安である。しかし、スタッフが凄そう。題材としても、デビルマンのCGよりはこのCASSHERNのCGの方が、いい感じでマッチするように思う。キャシャーンという存在自体が、ある意味でCG的というテクノロジーと似た感覚を持っているように思うのだ。

<ウォン・カーウァイ小特集>

■ ビデオ『恋する惑星』ウォン・カーウァイ監督
 8月の末くらいからなのだが、ウォン・カーウァイ監督の作品をずっと観ていた。きっかけは、クリストファー・ドイルだった。チャン・イーモウ監督の映画『英雄』で撮影監督をやっていたのがこのクリストファー・ドイル。僕はその独特の映像をもっと観てみたくなったわけだ。クリストファー・ドイルは、ウォン・カーウァイ監督の作品の多くの撮影を行なっている。そんなわけで、ウォン・カーウァイ監督にたどり着いた。
 最初に観たのが『恋する惑星』。カネシロタケシの出世作と言える作品。これがめちゃくちゃ良かった。その流れるような映像。他にもウォン・カーウァイ作品は何本か観たわけだが、この映画が今のところナンバー1。映像だけでなく、ストーリーも凄くいい。簡単に言うと、そんな起承転結があるような話でもないのである。断片が切り取られたような雰囲気なのだが、そこが凄くいい。
 僕という人間は、本や映画を観るときに、簡単にそのテーマや結論のようなものを考えたくなる傾向にある。でも、そんなことをどうでもいいことなのだと、この映画を観て思うようになった。さりげないようなひとつの映像に、揺さぶられるものがあるのならば、それこそが大切なものなのだろうと。
 とにかく、僕はこの映画を観たことでウォン・カーウァイの世界へと嵌ってしまったのであった。

■ ビデオ『天使の涙』ウォン・カーウァイ監督
 この映画も凄く好きな雰囲気。アクションシーンもバシバシある。金城武もかっこいい。それにしても香港映画というのが、こんなにも凄いものだったとは。他にはない世界、どうしようもなく好きだ。

■ ビデオ『欲望の翼』ウォン・カーウァイ監督
 マギー・チャンがもの凄くいい! 大人の女性なのだけど、可愛い雰囲気もあって、なんとも言えない。レスリー・チャン、トニー・レオンなど、ビッグネームがずらりと揃っている。

■ ビデオ『ブエノスアイノス』ウォン・カーウァイ監督
 少しばかり変わった映画だった。アルゼンチンが舞台。そして、男同士のまあなんというか……。でも、その映像世界はとても趣があって、なんとも言えない良さがあるのだ。

■ ビデオ『花様年華』ウォン・カーウァイ監督
 これまでの作品とはやや雰囲気の異なる大人の恋愛が描かれているのだろうか。静かに、時間が流れていく。この映画のマギー・チャンは僕の好みではないのだけど(笑)、トニー・レオンがカッコいい。

■ ビデオ『楽園の瑕』ウォン・カーウァイ監督
 ウォン・カーウァイ監督作品としては、かなり異色なもの。伝統的な武侠映画ということで、チャン・イーモウの『英雄』のような世界が、ウォン・カーウァイ独特のセンスで表現されている。

■ ビデオ『いますぐ抱きしめたい』ウォン・カーウァイ監督 [テレビ東京]
 ウォン・カーウァイ監督のデビュー作、ちなみにこの映画の撮影監督はクリストファー・ドイルではない。でも、アンディ・ラウもマギー・チャンも凄くいい雰囲気を出してくれている。

 ほんの数日の間に、立て続けてウォン・カーウァイ監督の映画を観た。これだけ連続してひとりの監督の映画を観たのは初めてだっただろう。しかし、少しばかり時間が経ってやや後悔していたりもする。これらの映画は、レンタルビデオとテレビ放送のものを、自分の部屋の14インチのテレビ画面で観た。この監督の映画、クリストファー・ドイルの映像というものは、スクリーンで観ないと勿体無かったのではなかったかと思っているのであった。



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